骸行進

メカ

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葬儀業者「島さん(仮名)」の話。

年末特集 「二度目の葬儀」

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その日、島さんの務める葬儀会社に、一本の電話が。

その相手は、中年女性だった。

「20年来連れ添った夫が、急逝してしまった為に、葬儀をお願いしたい。」

そういう連絡だったそうだ。
直ぐにお宅へ伺い、見積もりなどの話を詰める為に
指定された住所へ。

其処には、平屋の一軒家があり、見目「豪華」とまではいかないものの
それなりの資産家家庭だろう。と推測したそうです。

直ぐにインターホンを押し、間を開けず女性が出て来た。

「○○葬儀社の者です。ご主人の事は心よりお悔やみ申し上げます。
つきましては、葬儀の件についてお話をさせていただきたく・・・。」

先輩職員が淡々と話を進めていく中
島さんは、女性の顔が一瞬、曇った事を見逃しませんでした。

そして、リビングへ通され、話が進んで行く。

先輩職員がせっせと資料を片手に、説明していく中
女性は「はぁ、そうなんですか・・・。」という、空返事。

女性が席を立った間に、島さんは先輩にその様子を話すと
先輩もどうやら異変には気付いていた様子。

女性が戻り、意を決して異変について尋ねると・・・。

「あのぉ。兄が亡くなったのは一年前なのですが・・・。」

「・・・え。」

「葬儀の事で何か、会ったのかなぁとお話を伺っていたのですが・・・違いますよね?」

「お、お兄さん・・・ですか?私どもは奥様からお電話を受けてやって来たのですが・・・。」

「そんな!・・・申し訳ありませんが、帰ってください!」

女性は、驚くと同時に島さん達は家から追い出されたという。

後日、葬儀の記録を整理して居た時
島さんは、ある資料を見つけた。
その資料の、喪主の欄には、先日、電話をしてきた女性の名前があった。

妹を名乗る女性の言う通り
一年前に、その男性は亡くなっていたのだ。
そうなれば、先日の電話は質の悪い悪戯か?
島さんは、そう考えたそうですが
その一週間後
同じ女性を名乗る中年女性から、再び電話が・・・。

「お宅にお電話差し上げて一週間たちますが・・・
いつ、夫の葬儀についてお話させてもらえるのでしょうか?」

これが、悪戯であれば諫めなければ。
島さんはそう思い、女性に対し言葉をかけたそうです。

「先日、教えていただいたご住所のお宅に伺いました。○○さんは一年前に亡くなられてますよね。
しかも、当時の葬儀はわが社で行わせていただいております。
このような悪戯電話は困るのですが・・・。」

すると、女性は電話を切り、それ以降連絡は来なかったという。

しかし、島さんは妹さんの態度が急変した事が気にかかり
プライベートで話を伺いに行ったそうです。

「先日は申し訳ありませんでした。」

「いえ、こちらも直ぐにお話していれば・・・。」

「あのぉ、差し出がましいのですが・・・○○さんの奥さんについてお話を伺っても?」

「・・・えぇ。」

「先日も、会社に電話がありまして・・・。それで・・・その・・・
非常に申し上げにくいのですが、このような悪戯をするような質の悪い方なのでしょうか・・・?」

すると、やはり女性の態度は明らかに変わったそうだ。
だが、女性の態度が変わった理由は、身内の恥を言い当てられたから。ではない。

「本当に・・・義姉から連絡が?」

「えぇ・・・。社の方に二度、お電話がありましたから・・・。」

「・・・あり得ないんです。」

「え?」

「義姉から連絡が来ることは・・・あり得ないんです。だって・・・兄が亡くなった時
一緒に亡くなっていますので・・・。」:

「はい?」

「ですから・・・兄と一緒に、交通事故で・・・。」

「・・・。」

妹さんの話では
奥さんは、熱心な宗教家だったそうで
葬儀も、旦那さんとは別の場で行われていたそうです。

兄夫婦のなくなった後、遺産相続のもめ事で思い出の実家を売られてしまう。となった時
妹さんが、移り住む形で守ったそうです。

その後、妹さんの計らいにより
規模はとても小さかった物の、二度目の葬儀を行い
それ以降、不思議な電話が掛かってくることは無くなったそうです。
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