骸行進

メカ

文字の大きさ
上 下
130 / 336
葬儀業者「島さん(仮名)」の話。

炉に居座る者。 1/2

しおりを挟む
葬儀業者に勤める「島さん」。
彼との出会いは、若くして亡くなった父の葬儀だった。
第一印象は「怖い人」だった。

なぜなら、黒いスーツ姿にスキンヘッド。そして、細身で170以上あろう身長。
年齢は40代後半という「威圧感満載」の出立だったからだ。
だが、その印象は直ぐ間違いである事に気付かされる。

葬儀の最中、家族と同じように葬儀場の隅で涙する彼を
私は見てしまったからだ。

そして、彼から心霊体験を聞くきっかけとなった出来事が起きる。
葬儀は進み、ついに私が焼香を行う番となる。
父の遺影を前に、香を一つまみしたその時。

「お前・・・しっかりやれよ。」

まぎれもない父の声でした。
その言葉を耳元で聞いた時、私は驚き遺影に目を向けました。
しかし、変化などある訳もなく・・・次の事を考え、足早に席へ戻ろうとした時に
ちらっと見えたスキンヘッド。
彼もまた、目を見開きこちらを見ているのです。
式が終わり、食事の席にて
私は、島さんにこう告げた。

「あれが父の声です。」

島さんは、動きを止め、まるで時間が止まったような反応でした。

「聞こえたんですよね?父の声。」

「・・・はい。」

「怖がる必要は無いと思いますよ。・・・元々、父はのんびりした人でしたから。」

「・・・いえ、実はこういう仕事をしていると・・・その・・・。
トラウマと言いますか、怖い目にも合うんです。それを思い出してしまって・・・。」

そうして、彼は自身の恐怖体験を語り出したのである。

数年前の話
彼が葬儀屋に勤め出してから半年が過ぎた頃。
彼は、炉の清掃担当をしていたそうだ。
炉の二十扉を開き、中に入り炉にこびり付いた煤や灰を清掃する事が主な業務。
その他にも、炉が正常に動くかどうかのメンテナンスも任されていたという。

その日も、彼は炉の内部に入り、掌サイズの放棄とヘラを持って
掃除に当たっていたという。

炉の内部は熱にも耐えられる鋼鉄製だ。
ヘラでこすれば、最悪「黒板をひっかいた様な音」もするという。
そして、もし前日に炉が使われていた場合
一日経っていたとしても、炉の中は熱がこもり蒸し暑いままなのだそうだ。

そして・・・
お決まりの、ヘラの異音を聞きながら、一息ついた時
彼は真後ろから「フフッ」という女性の声を聞いたという。
その音は、何時も聞くヘラの異音にも近い為
一瞬、自分が力み過ぎたのか?と疑問に思ったそうだ。

しかし、その次に聞こえて来たのは

ガラガラガラ。という乾いた音だ。

彼は一瞬にしてパニックになったそうだ。
その音は聞き覚えのある物だったからだ。
炉の内扉が下りてきているのだ。

マズイ!そう感じた時にはもう遅かった。

だが、最近の火葬場はシステム的にも優秀であり
二重扉を両方閉めなければ、火が入る事は無い。

・・・しかし、彼が働いていた所は、老舗。
そんなハイテクなシステムは備わっていない。
内扉一枚を閉めた時点で、火を入れる事が可能になるそうだ。

扉も、火も別室にて操作しなければどうなる事もない。

彼は必至で、助けを求めたそうだが
最悪な事に、炉には火が入ったそうだ。
今まで以上に、扉に拳を叩きつけ、助けを求めた結果
異変に気付いた他の職員によって助けられたという。

その時、炉の操作パネルを使用していた老年の職員が
手違いによって重大インシデントを起こした事になり、その老年はクビになったそうだ。

だが、彼の語る恐怖はこれで終わりではなかった・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...