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最終話 「IF WANNA」
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全ての班は順調に動いていた。
救護班も、道の途中で千羽と合流。
後の事は彼に任せ、虹色は鍵運搬班の元へと走った。
だが、懸念材料も浮き彫りになった。
一つ、千羽の話によると船の方ではパニックが続きゾンビを引き寄せているらしい。
まだ、取り返しのつかない事にはなっていないがそれも時間の問題だ。
二つ、ここに来て俺の体力は底を突きかけてる。
無理もない、今朝から動きっぱなし走りっぱなしだ。
未だ、足は走る事を許しているが、その足は既に重い。
何度、歩みを辞めてしまおうかと考えた事か。
「そろそろだ。みんな準備はいい?」
「OK!」
鍵運搬班の準備が整ったと同時に、コンビニ内部には一陣の風が吹いた。
「ピッタリじゃないか。虹色。」
「・・・当たり前だ。」
「流石に疲労の色も見える。歩いて行こう。虹色。」
「そうしたい所だが、早歩きで頼む。」
「どうした?」
「船が・・・パニックが続いてて、このままだとゾンビに囲まれる。」
「何・・・。」
「急ぐぞ。皆。」
船がピンチと聞き、誰も反論するものなど居なかった。
だが、本当の事を言えば
今すぐにでも倒れ込んでしまいたかった。
歩く事を辞めたら、崩れ落ちてしまいそうだ。
脹脛が熱を持ち、足の裏には最早、感覚など残っていなかった。
そんな足を無理やり動かしているのは気力と太ももの筋力だけだ。
幸い、足の裏に感覚が無くともバランスはとれた。脹脛が熱くなろうと足を蹴り出せた。
今しかないのだ。彼らを安全に護衛できるのは・・・。
「お、おい、あれ。」
「・・・!?」
だが、無情にもそんな一団の前に3匹のゾンビが現れる。
「に・・・虹色。」
「・・・分かってる。」
ゾンビはこちらに気付いていない。
道を迂回すべきか、殴り倒していくべきか・・・。
答えは簡単だ。こんな体で3匹も相手には出来ない。
しかし、迂回ルートを取る事によって、千羽との合流は難しくなってしまった。
正春はこの場合の事も考慮していた。
合流ポイントで落ち合えなかった場合、千羽は船に撤収。
時間を置いて、捜索。というものだ。
だが、捜索になるまで行かず俺達は船の近くまで到着した。
宇宙船は後部ハッチが開いている。
とはいえ、梯子を使い上る様になっている都合上、ゾンビの襲撃は受けていない。
だが、船の周囲をゾンビ数十体が既にうろついていた。
後部ハッチから千羽の姿が見えた。
彼は両手で大きな丸を示している。どうやら船内の混乱は収まったようだ。
しかし、肝心の鍵がなければ離陸は難しい。
「・・・虹色の言う通りになっちまった・・・どうしよう・・・。」
「・・・。」
「どうするんだよ、正春君!」
「ど、どうするって・・・。」
胸倉を掴まれた正春の表情は、思考が停止したかの様に困り果てている。
「・・・俺に、考えがある。」
「虹色?」
「いいか。俺が合図したら皆は走るんだ。良いな?」
「おい、虹色。どんな作戦だよ。」
「五月蠅い、YESかNOかで答えろ!」
「・・・。」
「合図をしたら走るんだ。」
「・・・分かった。」
全員とアイコンタクトをとった虹色は再び、小走りで路地の裏に入る。
直後、大きな金属音がした。
「何だ?あれが合図・・・なのか?」
音に釣られ、少しずつゾンビが動き出す。
だが、音は止まない。
「皆!行け!」
「合図だ!いこう!」
男が走り出す。
だが、正春は動かなかった。
「虹色ぉ!」
「行け!正春!」
「お前、そんな路地に入って・・・どうするんだよ!」
「良いから、行け!」
「正春君、早く!」
「馬鹿野郎、置いて行くわけねぇだろ!」
仲間の一人に腕を引っ張られても、正春は動かなかった。
「くっそ、このままじゃ・・・。」
「虹色!」
「・・・お前が望むなら・・・ゾンビだって蹴散らしてやるよ!・・・だから・・・行け!正春!」
「ほら、行くんだ、正春君。」
「止めろ!放してくれ、虹色!虹色ぉ!」
遅れてやって来たメンバーと二人係で正春を引きずってゆく。
その姿を・・・俺は安堵してみていた。
「放してくれよ!頼むよ!・・・もう一人にしないでくれよ!兄ちゃん!」
「!」
知っていたのか。あるいは本能か。
正春は俺を兄だと認めた・・・。
「お前がまた・・・助けに来てくれるまで。くたばるもんかよ。」
虹色は満面の笑みを正春に向け、ゾンビを背に走り出した。
生き抜いてやるよ・・・お前が望むなら。
救護班も、道の途中で千羽と合流。
後の事は彼に任せ、虹色は鍵運搬班の元へと走った。
だが、懸念材料も浮き彫りになった。
一つ、千羽の話によると船の方ではパニックが続きゾンビを引き寄せているらしい。
まだ、取り返しのつかない事にはなっていないがそれも時間の問題だ。
二つ、ここに来て俺の体力は底を突きかけてる。
無理もない、今朝から動きっぱなし走りっぱなしだ。
未だ、足は走る事を許しているが、その足は既に重い。
何度、歩みを辞めてしまおうかと考えた事か。
「そろそろだ。みんな準備はいい?」
「OK!」
鍵運搬班の準備が整ったと同時に、コンビニ内部には一陣の風が吹いた。
「ピッタリじゃないか。虹色。」
「・・・当たり前だ。」
「流石に疲労の色も見える。歩いて行こう。虹色。」
「そうしたい所だが、早歩きで頼む。」
「どうした?」
「船が・・・パニックが続いてて、このままだとゾンビに囲まれる。」
「何・・・。」
「急ぐぞ。皆。」
船がピンチと聞き、誰も反論するものなど居なかった。
だが、本当の事を言えば
今すぐにでも倒れ込んでしまいたかった。
歩く事を辞めたら、崩れ落ちてしまいそうだ。
脹脛が熱を持ち、足の裏には最早、感覚など残っていなかった。
そんな足を無理やり動かしているのは気力と太ももの筋力だけだ。
幸い、足の裏に感覚が無くともバランスはとれた。脹脛が熱くなろうと足を蹴り出せた。
今しかないのだ。彼らを安全に護衛できるのは・・・。
「お、おい、あれ。」
「・・・!?」
だが、無情にもそんな一団の前に3匹のゾンビが現れる。
「に・・・虹色。」
「・・・分かってる。」
ゾンビはこちらに気付いていない。
道を迂回すべきか、殴り倒していくべきか・・・。
答えは簡単だ。こんな体で3匹も相手には出来ない。
しかし、迂回ルートを取る事によって、千羽との合流は難しくなってしまった。
正春はこの場合の事も考慮していた。
合流ポイントで落ち合えなかった場合、千羽は船に撤収。
時間を置いて、捜索。というものだ。
だが、捜索になるまで行かず俺達は船の近くまで到着した。
宇宙船は後部ハッチが開いている。
とはいえ、梯子を使い上る様になっている都合上、ゾンビの襲撃は受けていない。
だが、船の周囲をゾンビ数十体が既にうろついていた。
後部ハッチから千羽の姿が見えた。
彼は両手で大きな丸を示している。どうやら船内の混乱は収まったようだ。
しかし、肝心の鍵がなければ離陸は難しい。
「・・・虹色の言う通りになっちまった・・・どうしよう・・・。」
「・・・。」
「どうするんだよ、正春君!」
「ど、どうするって・・・。」
胸倉を掴まれた正春の表情は、思考が停止したかの様に困り果てている。
「・・・俺に、考えがある。」
「虹色?」
「いいか。俺が合図したら皆は走るんだ。良いな?」
「おい、虹色。どんな作戦だよ。」
「五月蠅い、YESかNOかで答えろ!」
「・・・。」
「合図をしたら走るんだ。」
「・・・分かった。」
全員とアイコンタクトをとった虹色は再び、小走りで路地の裏に入る。
直後、大きな金属音がした。
「何だ?あれが合図・・・なのか?」
音に釣られ、少しずつゾンビが動き出す。
だが、音は止まない。
「皆!行け!」
「合図だ!いこう!」
男が走り出す。
だが、正春は動かなかった。
「虹色ぉ!」
「行け!正春!」
「お前、そんな路地に入って・・・どうするんだよ!」
「良いから、行け!」
「正春君、早く!」
「馬鹿野郎、置いて行くわけねぇだろ!」
仲間の一人に腕を引っ張られても、正春は動かなかった。
「くっそ、このままじゃ・・・。」
「虹色!」
「・・・お前が望むなら・・・ゾンビだって蹴散らしてやるよ!・・・だから・・・行け!正春!」
「ほら、行くんだ、正春君。」
「止めろ!放してくれ、虹色!虹色ぉ!」
遅れてやって来たメンバーと二人係で正春を引きずってゆく。
その姿を・・・俺は安堵してみていた。
「放してくれよ!頼むよ!・・・もう一人にしないでくれよ!兄ちゃん!」
「!」
知っていたのか。あるいは本能か。
正春は俺を兄だと認めた・・・。
「お前がまた・・・助けに来てくれるまで。くたばるもんかよ。」
虹色は満面の笑みを正春に向け、ゾンビを背に走り出した。
生き抜いてやるよ・・・お前が望むなら。
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