if you wanna... ~君が願うなら~

メカ

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「ねぇ、正春君。彼遅すぎないか?」

「・・・。」

「雨も降った、ゾンビもうろついてる。こ、このままじゃいずれ僕等も・・・。」

「大丈夫。」

「な、何の根拠があってそんな事を!」

気弱な小島は長すぎる籠城に耐え兼ね、奇声にも近い叫びをあげていた。
しかし、正春はコンビニ内部の物陰から外をじっと見据え動かない。

「作戦は失敗だ!このままじゃ僕等、死んじゃうよ!」

「黙れよ、オタ眼鏡!」

「ひ・・・。」

「アンタさぁ、さっきから男のくせにピーピーやかましいわ!」

「だ、だってそうじゃないですか!当初の予定では20~30分程度で合流してたはずでしょ!
そ、それなのにもう3時間以上も経ってる!彼はもうここには来ないよ!」

「はぁ?お前こそ何の根拠でそんな事・・・。」

「二人とも!静かに!」

正春の一喝で我に帰った木島はブ男に掴みかかった手を放し、再び座り込んだ。
彼もまた、力が抜けたかのようにその場にへたり込む。

「ははは・・・きっと虹色君は奴らに掴まったか、道中で雨かゾンビにやられたかしたんだろう。
きっともうここには来ない・・・。僕等も終わりだ・・・。」

それは此処に居る誰もが不安視していた事だ。
だが、正春は小島の方へ向き直し、胸倉を掴み往復ビンタをした。

「生きてたらどうする。俺達があいつを見捨ててどうする。あいつは俺達が此処に居ると信じて
向かってるかもしれない。やっとの思いでたどり着いた時、誰も居ませんでした。なんて
俺は恥ずかしくてあいつに顔見せ出来ない!行きたきゃ勝手に一人で宇宙船まで行け!」

「・・・どうしてそこまで・・・。」

虹色は頑固で頭の固い奴だ。・・・あの日もそうだった。

皆でかくれんぼをした時の事。
鬼は虹色で俺達は思い思いの場所に隠れた。
隠れる範囲から言っても、10分程度でカタのつく遊びだった。
だが、20分経っても30分経ってもその遊びが終わる事は無かった。

「なぁ、虹色。もう帰ろうぜ。正春だってどうせとっくに帰ってるだろ。」

「ダメだよ。まだ正春の事見つけてないもん。」

「ったくよぉ、勝手にしろ。俺達は帰るぞ。」

皆が此処まで薄情な事には理由がある。
彼ら孤児と俺達のような家族ありの子では、やはりどうしても差別が生まれる。
家庭のある子は孤児を相手にしないようにと育てられ
遊びの途中で帰ってしまったり、無言でいなくなったりという事がよくあった。
その度に、孤児たちは自分たちが異質な存在である事を認識させられていた。
それ故に、彼らもまた家庭のある子に対しては批判的な目をむけ、薄情にもなった。

しかし、その実
俺は橋の真裏の足場に隠れようとし足を滑らせ転落。片足を骨折し動けずにいたのだ。
虹色の懸命な捜索により、1時間後に俺は救い出された。

孤児たちの間では、彼は英雄となったが
家族持ちの子供たちは親によってより一層厳しく彼らに関わりを持つなと教え込まれた。
俺が救出されたその日
病院にやって来た親は、虹色に感謝の言葉を述べるより先に
彼の頬を平手打ちにした。

「アンタなんかと遊んでいたから正春が危険な事に目覚めるんだわ。出て行って頂戴!」

俺はあの日の光景が忘れられない。
俺の恩人は出自だけの理由で迫害された。

後日、再三の説明によって両親は虹色が悪くない事は納得したが
それでも尚、両親の彼に対する目は変わらなかった。
だが、俺は両親がただ孤児だからという理由で虹色を憎んでいた訳ではない事を知っていた。

「・・・虹色。」

本当であれば今すぐにでも飛び出し、彼を探したい。
大声で叫びながら、彼の捜索に当たりたかった。しかし、そうもいかない。

ふと目を向けた先、二人組の男が此方に向かってきているのを発見した。

「あれは・・・に、虹色!」

虹色を目視した正春は、誰よりも先に外に出て彼らの元に駆けつけた。
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