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パニック・ギフト ~前編~
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体育館までの道中、新たに3人の被害者を生みつつ
俺は大山隊員の元へ着いた。
「こ、こりゃ・・・清水さんか!?・・・ひでぇ、誰がこんな事・・・。」
「これを見て、まだ政府が正しいって言える様なら、頭おかしいぜ?」
「・・・。」
「手足を縛られた無抵抗な人間にここまでの事が出来るんだ。政府サマサマだぜ。」
「急ごう。」
「おう。清水さんの事は任せる。露払いは俺がやる。」
改めて、大山隊員の無残な姿を見た時、内側から煮えたぎる怒りが再燃してきた。
しかし、神は無情だ。
「おい、茨!外見てみろよ!」
「ん?」
「雨だ・・・。」
「・・・マズいな。乱戦になる・・・。」
「乱戦?」
「校内では生きた人間に、外では歩く死体に襲われる事になる。どっちに転んでも地獄だ。」
「冗談じゃない、逃げ場がねぇじゃないか!」
「・・・。」
「そもそも、雨が止むまで体育館から出られない。」
再三のゾンビ襲撃。俺達人間側も対策は講じている。
校庭に侵入されない様、校門を机などで補強し、より強固なものにした。
だが、ゾンビ共はそれすらも乗り越え侵入してくる者が居る。
いや、そもそも門の強化などするだけ無駄だった。
2回目の襲撃時、校門に屯するゾンビを踏みつけてまでよじ登って来るゾンビが確認されていた。
その時点で、いくら倒れない門を構築した所で意味はない。
校門以外の塀には、有刺鉄線が貼られているが、連中にとってそんなものは
無い物に等しい。
故に、これまで4度もゾンビ襲撃を許していた訳だ。
「どうする、茨。」
「盛大な囮作戦と行こう。」
「え?」
「校門という堤防が決壊した後、連中の取る行動はシンプルだ。校舎目掛けて一直線。」
「だ、だけど!」
「分かってる。内部から頑丈にブロックされてる。そのブロックのせいで校舎になだれ込むハズの
ゾンビの群れが校庭に溢れる訳だ。」
「意味無いじゃないか。」
「もし、出入口が解放されていたら?」
「どういう・・・。」
「俺が校舎内からブロックを外して、ゾンビを引き入れる!」
「そうなれば、連中は悲鳴や怒号に釣られて更に校舎に・・・。」
「その間に、俺達は優雅に裏門から脱出だ。」
「そうか、ゾンビは雨を追う習性があるから・・・」
「ゾンビの層が厚いのは正門だけだ。」
その後、雨は10分程降り続いた。
体育館から顔を覗かせ正門を見ると、既に壁が迫って来るかのように
ゾンビの集団が正門前で群れていた。
「やべぇ、急がねぇと。じゃあ、大山隊員・・・清水さんの事よろしく!」
「了解。」
体育館を出て、外廊下を進み裏口へ。
この裏口も、ストッパーを使い、ゾンビの侵入を許す形として開け放った。
それは、退路を断つも同義だ。
廊下を悠然と走り込み、階段を目指す。
「あいつ!茨か!待て、てめぇ!大人しく捕まれぇ!」
「ふ。」
階段前、反対側の廊下から男たちが走って来る。が、虹色はそれを鼻で笑いながら階段を駆ける。
声を出せば、音を上げればそれだけ、ゾンビは寄り付く。
虹色はしばらくの間、わざと見つかる様に走り回り、校内をかき乱した。
その後、ある教室のロッカーに潜み、昇降口が手薄になるのを見計らった。
俺は大山隊員の元へ着いた。
「こ、こりゃ・・・清水さんか!?・・・ひでぇ、誰がこんな事・・・。」
「これを見て、まだ政府が正しいって言える様なら、頭おかしいぜ?」
「・・・。」
「手足を縛られた無抵抗な人間にここまでの事が出来るんだ。政府サマサマだぜ。」
「急ごう。」
「おう。清水さんの事は任せる。露払いは俺がやる。」
改めて、大山隊員の無残な姿を見た時、内側から煮えたぎる怒りが再燃してきた。
しかし、神は無情だ。
「おい、茨!外見てみろよ!」
「ん?」
「雨だ・・・。」
「・・・マズいな。乱戦になる・・・。」
「乱戦?」
「校内では生きた人間に、外では歩く死体に襲われる事になる。どっちに転んでも地獄だ。」
「冗談じゃない、逃げ場がねぇじゃないか!」
「・・・。」
「そもそも、雨が止むまで体育館から出られない。」
再三のゾンビ襲撃。俺達人間側も対策は講じている。
校庭に侵入されない様、校門を机などで補強し、より強固なものにした。
だが、ゾンビ共はそれすらも乗り越え侵入してくる者が居る。
いや、そもそも門の強化などするだけ無駄だった。
2回目の襲撃時、校門に屯するゾンビを踏みつけてまでよじ登って来るゾンビが確認されていた。
その時点で、いくら倒れない門を構築した所で意味はない。
校門以外の塀には、有刺鉄線が貼られているが、連中にとってそんなものは
無い物に等しい。
故に、これまで4度もゾンビ襲撃を許していた訳だ。
「どうする、茨。」
「盛大な囮作戦と行こう。」
「え?」
「校門という堤防が決壊した後、連中の取る行動はシンプルだ。校舎目掛けて一直線。」
「だ、だけど!」
「分かってる。内部から頑丈にブロックされてる。そのブロックのせいで校舎になだれ込むハズの
ゾンビの群れが校庭に溢れる訳だ。」
「意味無いじゃないか。」
「もし、出入口が解放されていたら?」
「どういう・・・。」
「俺が校舎内からブロックを外して、ゾンビを引き入れる!」
「そうなれば、連中は悲鳴や怒号に釣られて更に校舎に・・・。」
「その間に、俺達は優雅に裏門から脱出だ。」
「そうか、ゾンビは雨を追う習性があるから・・・」
「ゾンビの層が厚いのは正門だけだ。」
その後、雨は10分程降り続いた。
体育館から顔を覗かせ正門を見ると、既に壁が迫って来るかのように
ゾンビの集団が正門前で群れていた。
「やべぇ、急がねぇと。じゃあ、大山隊員・・・清水さんの事よろしく!」
「了解。」
体育館を出て、外廊下を進み裏口へ。
この裏口も、ストッパーを使い、ゾンビの侵入を許す形として開け放った。
それは、退路を断つも同義だ。
廊下を悠然と走り込み、階段を目指す。
「あいつ!茨か!待て、てめぇ!大人しく捕まれぇ!」
「ふ。」
階段前、反対側の廊下から男たちが走って来る。が、虹色はそれを鼻で笑いながら階段を駆ける。
声を出せば、音を上げればそれだけ、ゾンビは寄り付く。
虹色はしばらくの間、わざと見つかる様に走り回り、校内をかき乱した。
その後、ある教室のロッカーに潜み、昇降口が手薄になるのを見計らった。
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