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鬼の誕生
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百数十人が俺を追う。暴力的な武器を持って。
目を血走らせ、彼らはやって来る。
そんな危機的状況下に思い出されるのは、些細な過去だ。
俺は昔から、体力だけはあった。
人並み以上の持久力。
でも、運動はドベだった。
サッカーや野球といった球技では、何時も目立たないポジション。
最早居なくてもいい。
それだけ、下手くそだった。
水泳も、人並み以上の距離を泳げるものの、人より遅く
俺がゴールする頃には、次の生徒が泳いでるザマ。
鬼ごっこも、足の遅さが目立ち長く走れても、短距離決戦を挑まれ捕まる。
何時も追う側だった。
肉体的に高いポテンシャルを持っていても、それを使いこなせない。
クラスメートからは宝の持ち腐れ。とまで言われた。
だが、そんな人生も中学へ上がり変わった。
興味本位で入った剣道部。
一年で、県大会上位。
二年目にして県大会優勝を飾る。
二年の中盤から、柔道部と掛け持ち。
そちらも、そこそこの成績を残した。
高校に上がり、付いた通り名は武者。
嬉しくはなかったが、今まで俺を馬鹿にしていた連中も息をひそめるようになった。
そして、この頃から運動能力が開花し、走る事も泳ぐ事も上手くなった。
ただ、相変わらず球技だけは苦手だった。
突き詰めていった結果、最終的には
剣道 6段
柔道 黒帯
居合道 4段
という変わった経歴となった。
温厚な性格の奴が、切れると怖い。
・・・よく言ったものだ。
自分自身、ここまで容赦なく人に手を上げられる事を一番驚いている。
そして、また一人・・・。
大人げなくも後ろから、雄叫びを上げながら凶器を振りかぶりやって来た。
汚い・・・汚い!
本来、丸腰であったであろう俺に貴様らは狂気を持って凶器を振るう。
スポーツマンシップの欠片もない。
後ろ向きの相手に、拳以上の物を振りかぶるなど・・・。
許せない!許せない!!
彼らはその気で武器を手にし、襲い掛かって来た。
であるならば、返り討ちに合っても文句は言えまい。
一世紀前の斬首刑の様に、横から後頭部を殴打してやった。
男は、脳震盪を起こし倒れた・・・。
見据えた先、他にも仲間が居たようだ。
だが、リーダー格の男が仲間を必死に抑えている。
根性なしなのか、理性的なのか。
どちらでもいい。俺の目的は宇宙船のマスターキーを手に入れ
大山隊員を連れ帰る事。
皆が待っている。すぐにでも逃げ出したい彼らが、マスターキーなしにどうするかを
今、まさに討論しているはずだ。
彼らの為に、大山隊員の為に、俺達の自由の為に。
ノアの闇を暴かねばならない。
その為の障害があるのであれば、力の限り切り伏せよう。
俺に出来る事はそれだけだ。
だから残った。だから皆を先に行かせた。
きっと彼らは、待っている。
一人の男の凱旋を。
・・・残党狩りなどさせてなるものか・・・。
今まさに、会議室で行われているであろう
逃げた者に対する制裁やそれを捕まえる為の班編成など・・・知った事か。
その前に、届ける。
最後の希望を。マスターキーを。
それでフィナーレだ。
色々な思いを交錯させながら、虹色は校長室を目指す。
目を血走らせ、彼らはやって来る。
そんな危機的状況下に思い出されるのは、些細な過去だ。
俺は昔から、体力だけはあった。
人並み以上の持久力。
でも、運動はドベだった。
サッカーや野球といった球技では、何時も目立たないポジション。
最早居なくてもいい。
それだけ、下手くそだった。
水泳も、人並み以上の距離を泳げるものの、人より遅く
俺がゴールする頃には、次の生徒が泳いでるザマ。
鬼ごっこも、足の遅さが目立ち長く走れても、短距離決戦を挑まれ捕まる。
何時も追う側だった。
肉体的に高いポテンシャルを持っていても、それを使いこなせない。
クラスメートからは宝の持ち腐れ。とまで言われた。
だが、そんな人生も中学へ上がり変わった。
興味本位で入った剣道部。
一年で、県大会上位。
二年目にして県大会優勝を飾る。
二年の中盤から、柔道部と掛け持ち。
そちらも、そこそこの成績を残した。
高校に上がり、付いた通り名は武者。
嬉しくはなかったが、今まで俺を馬鹿にしていた連中も息をひそめるようになった。
そして、この頃から運動能力が開花し、走る事も泳ぐ事も上手くなった。
ただ、相変わらず球技だけは苦手だった。
突き詰めていった結果、最終的には
剣道 6段
柔道 黒帯
居合道 4段
という変わった経歴となった。
温厚な性格の奴が、切れると怖い。
・・・よく言ったものだ。
自分自身、ここまで容赦なく人に手を上げられる事を一番驚いている。
そして、また一人・・・。
大人げなくも後ろから、雄叫びを上げながら凶器を振りかぶりやって来た。
汚い・・・汚い!
本来、丸腰であったであろう俺に貴様らは狂気を持って凶器を振るう。
スポーツマンシップの欠片もない。
後ろ向きの相手に、拳以上の物を振りかぶるなど・・・。
許せない!許せない!!
彼らはその気で武器を手にし、襲い掛かって来た。
であるならば、返り討ちに合っても文句は言えまい。
一世紀前の斬首刑の様に、横から後頭部を殴打してやった。
男は、脳震盪を起こし倒れた・・・。
見据えた先、他にも仲間が居たようだ。
だが、リーダー格の男が仲間を必死に抑えている。
根性なしなのか、理性的なのか。
どちらでもいい。俺の目的は宇宙船のマスターキーを手に入れ
大山隊員を連れ帰る事。
皆が待っている。すぐにでも逃げ出したい彼らが、マスターキーなしにどうするかを
今、まさに討論しているはずだ。
彼らの為に、大山隊員の為に、俺達の自由の為に。
ノアの闇を暴かねばならない。
その為の障害があるのであれば、力の限り切り伏せよう。
俺に出来る事はそれだけだ。
だから残った。だから皆を先に行かせた。
きっと彼らは、待っている。
一人の男の凱旋を。
・・・残党狩りなどさせてなるものか・・・。
今まさに、会議室で行われているであろう
逃げた者に対する制裁やそれを捕まえる為の班編成など・・・知った事か。
その前に、届ける。
最後の希望を。マスターキーを。
それでフィナーレだ。
色々な思いを交錯させながら、虹色は校長室を目指す。
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