if you wanna... ~君が願うなら~

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鬼神の道

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「おい、2-Cの連中見なかったか!」

「見てねぇよ!それより、茨とかいう奴探す方が先だろ!」

「そもそも、俺達そいつの顔知らないんだぞ?どうやって探せっていうんだよ。」

「そ、それは・・・。」

「第一、宇宙船は逃げた連中が陣取ってるんだろ?どうやって俺達の自由が保障される訳?」

2-Cの仲間とはぐれた『仙堂 衛』。
彼の疑問は的を得ていた。帰る手段である宇宙船は逃げた面々によって抑えられている。
総力戦を仕掛けたとしても、戦力は半々。どう転ぶかなど分かったものではない。

「た、大変だ!」

「ん?」

「おい、どうした?そんなに焦ってよぉ。」

「俺達・・・やべぇモンに触れたかも知れねぇ・・・。」

息を切らせ走って来た男は、その場にうずくまるとガタガタと震え始めた。

「おにーさん、ちゃんと説明してくれよ。でないと、分からんぜ。」

「あいつだ。・・・茨 虹色。・・・」

「み、見つかったのか!?」

「俺達、7人係で抑えにかかったんだ・・・。」

「やるじゃん!で、そいつは今どこ?」

「・・・俺以外の6人、全員。なぎ倒していきやがった・・・。」

「!」

「やべぇよ・・・あんなもん見た事ねぇ。・・・まるで修羅だ・・・。」

「全員、それなりに武装してたんだろう?なのに何で!」

「・・・あいつも、木刀を持ってた。」

「ぼ、木刀・・・。」

「悪い事は言わねぇ!お前ら、もっと人数を集めるか、逃げるかしねぇと・・・こ、殺される!」

「と、とにかく追うぞ!」

「止めろ!アイツに関わるんじゃない!どうなっても知らねぇぞ!」

今の話が本当であれば、極めて危険な奴を俺達は追い回している事になる。
野放しになどできるか。
被害者が増える前に取り押さえるのだ。
それが出来なければ、自由どころの話ではない。

「おい、あれ。」

「ん?」

「さっきの話の6人か?」

男の話通り、大の男6人が重症・軽傷を問わず立てないまでになっている。

「おい、大丈夫か!」

「すまねぇ・・・。逃がした・・・。」

「何があった!」

「分からねぇ。奴に飛びかかっていった事までは覚えてるんだけどよ。」

「・・・。」

「気付いたら、このザマで・・・足に・・・力が入らねぇ!」

「ゆっくり休んでくれ。歩けるようになったら保健室へ。」

「あぁ。」

「奴は何処に?」

「校長室に向かった。」

「分かった。」

「気をつけろ・・・アイツはやべぇよ。」

話が本当であった以上、一刻の猶予もない。
その場で組んだ即席とはいえ4人いるメンバーで取り押さえるしかない。

「行くぞ!」

廊下を猛進していくと、奴は直ぐに見つかった。

「茨 虹色!・・・とまれ!」

まるで酔っ払いの様に、ゆらゆらと歩いていたその男。
急ぐでもない、隠れるでもない。
その背中には、生気を感じなかった。
それ以上に、その背中を見ていると悪寒を感じる程だ。
『人じゃない』・・・ゾンビにはじめて対面した時に感じた恐怖。
その恐怖が、今また俺の背中に走っている。

「どうする?囲ってやっちまうか!」

「いや、様子が変だ。待った方が・・・。」

「そんなまどろっこしい事出来るか!奴さえボコれば俺達は自由なんだぜ!おらぁぁ!」

「よせ!出方を・・・!」

一瞬だ。
後ろから追いついてきた男の一人が、虹色目掛けバットを振りかぶりながら走る。
振り下ろされたバットは空を切った。
まるで、舞踊でも踊っているかのように、奴はひらりと回り込み
男の脇腹に木刀の塚を押し込んでいた。

「・・・っぐぅ。」

脇腹を抱え、男はうずくまる。
そして、高く突き上げられた木刀が、男の後頭部に命中する。
鈍い音と共に、男は倒れた。
虹色が此方を見据え、木刀を治める。
その顔には覇気などない。亡者そのもの。表情は冷たく、瞳の奥には憎悪が見える。

「や、やべぇ・・・彼、死んだんじゃ・・・。」

「それ以上前に出るな!下手に茨を刺激するんじゃない・・・。」

両手を広げ、後ろの2人を庇う事で精一杯だ。
此方が襲う意思なしと見るや、茨は踵を返し
また、ゆらゆらと歩を進めるのであった。
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