if you wanna... ~君が願うなら~

メカ

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隠れんぼ ~後編~

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時間は残酷だ。必要な時ほど残り時間は少ない物で
そして、大事な時ほど一秒の感覚にはズレが生まれる。

「もう隠れておける場所が無いな・・・。どうするか・・・。」

「まだ見つからないのか!早く探せ!」

「校内だけとは限らないぞ!範囲を広めよう!」

脱走してから30分、連中のなりが若干変わってきている。
最初こそ、丸腰で探していた連中だが何処から持ってきたのか
バットや鉄パイプやらを装備し始めているのだ。

「おいおい・・・俺の事、殺す気かよ・・・。」

逃げる俺は丸腰だというのに、追う側の心理とは怖い物だ。
ましてや、自分の自由が掛かっているとなれば必死にもなるだろう。
だが、我慢して逃げに徹した甲斐あって、目的の場所。放送室へとたどり着いた。
ここでの目的、それは
録音機能を使った時間差の誘導だ。
適当にしゃべる事、10分。これを1時間後に校内放送するようにセットすれば、全員の目は
放送室へ向く。だが、同時に分かりやすいフェイクでもある。
自分の居場所を教えるなんて馬鹿な真似する訳がない。
見抜いて警戒を強める連中も居る事だろう。だが・・・その時には遅い。

「ふふ。」

小走りしながら笑みが零れた。
体育館の方法室から逃げる際、俺は体育館内をくまなく探索した。
本来学校には似付かわしくない『ソレ』を探して。
そして、それは体育館の倉庫内に眠っていた。
俺の計画として
最初から体育館に戻る事を視野に入れていた。
逃げるにしても、リーダー長を抑え鍵を手にしなければならない事を考えると
一人での遂行はほぼ不可能だ。
故に、清水さんの力を借り、二人係でリーダー長の山崎を抑える事を計画していたのだ。

しかし・・・。
俺の計画は、折られてしまった。
急いで戻った体育館の放送室。そこには、清水の変わり果てた姿があった。

「な・・・。し、清水さん!?」

近寄り、起こそうとするも意識が無い。
辛うじて生きているが、虫の息だ。
顔面は晴れ上がり、変形しもはや誰かも分からない。

「どう・・・して。」

虹色が脱走した後、突発的に様子を見に来たメンバーによって
脱走の手引きがバレた。
そして、この様子からすると、清水は最後まで虹色の事を話さずに事切れたのだろう。

「・・・オッチャン。」

その手には、紙が強く握られていた。
白かったであろうその紙は清水の血で所々、滲んでいた。

「カギ 校長室」

たったその一言。ただのその一言の為に彼は最後の力を使って、虹色にメッセージを残した。

「必ず・・・戻って来るよ。大山隊員。」

彼の執念に敬礼。
覚悟を決めた青年は今、鬼と化す。
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