if you wanna... ~君が願うなら~

メカ

文字の大きさ
上 下
16 / 31

悪魔の証明 ~中編~

しおりを挟む
「それで、裏切者は一体誰なんだい?茨君。」

「・・・その前に、皆さん。自分が裏切者でないと言えますか?」

「というと?」

「俺の調べでは、最低でも二人以上は裏切者が居る計算なんですよ。」

「ば、馬鹿を言うな!リーダー長!そんな妄言を吐かせておいて良いのか!信用問題に関わるぞ!」

「そういう貴方は、必死で止める素振り・・・図星かな?」

「く・・・そぉ!」

これで場の空気は掌握した。だが、同時に俺自身にも疑いの目が掛かる事は承知だ。
被害者が加害者でした。なんてシナリオは地球がまだ青かった時からの常套句として使われたものだ。

「困りましたねぇ、これでは埒が明かない。何か方法はあるのか?茨君」

「一つ、面白い話をしましょうか・・・。」

「どうぞ。」

「最初のゾンビ襲撃の際、俺は面白い事実をいくつか仕入れています。皆さんにはそれを聞いていただきます。」

互いを敵と見なし、隣に座る者にも睨みを利かせていたリーダー達は
各々、深い息をすったり目薬を差し直すなどして落ち着きを取り戻した。

「あの時、俺は校内の窓からゾンビの一団が此方に歩を進めている事に気が付きました。
しかし、肝心のゾンビの群れは俺にはただの人の塊にしか見えませんでした。
なんせ、校舎の窓から校門までは、約Ⅰキロ。更に最短でも校門から50メートルは離れていましたから。」

「ソレの何がおかしいんだ!」

「おかしいのはこれからなんですよ。だって、校舎の中でゾンビの群れが来たと騒ぎだした人がいるのだから。」

「な・・・!そ、それって・・・。」

「えぇ、清水さん。貴方の事ですよ。」

「ちょ、ちょい待ってんか!あいつらは血流しとったんやで!?気付かん方が可笑しいやんか!」

「たしかに、彼らは血まみれで闊歩していた。だが、1キロ以上先の人間が血塗れで歩いてるなんて
良く気付いたね?オッチャン。まるで、近くで観てたかの様だね。」

「あ、赤い雨に打たれた死体は活性化する!そんなん常識やで、自分!」

「語るに落ちたな。ジジィ!確かに、赤い雨による作用は周知の事実だ。でもね
それを試したやつは、今の今まで何処にもいねぇーんだよ!」

「な・・・。」

「どういう事なんだ?茨君」

「リーダー長もご存じでしょう。これ。」

俺は懐から桔平氏の残した手記を取り出し、皆に見えるように掲げた。

「遠坂レポート・・・しかも、原本・・・どこでそんなものを!」

「桔平氏の残した手記によれば、確かに実験用のマウスの施術痕が、赤い雨によって消失したと
罹れている。もちろん、この雨が大量に降った場合の懸念材料も掛かれている。
しかし、それはあくまでも桔平氏個人の見解であり、実際に死体が歩き回るのかという研究は
誰にもされていなかった。そんな悪魔崇拝のような研究、誰も行わなかったんですよ。
にも拘わらず、まるで雨の後にゾンビが歩くのが当然のような口ぶり・・・知ってたんだろう?ジジィ。」

「・・・。」

「何とか言ったらどうだ!清水源生さんよぉ!」

一同の冷たく刺さる視線、常人であれば耐えられず5分もしない内に口を割るであろう。
だが、源生の沈黙は凡そ30分にも及んだ・・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~

こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。 人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。 それに対抗する術は、今は無い。 平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。 しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。 さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。 普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。 そして、やがて一つの真実に辿り着く。 それは大きな選択を迫られるものだった。 bio defence ※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

東京が消えたなら。

メカ
SF
2XXX年、日本最大の山「富士山」が噴火した。 その時、貴方は 「どう生き延びますか?」

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

処理中です...