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悪魔の証明 ~中編~
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「それで、裏切者は一体誰なんだい?茨君。」
「・・・その前に、皆さん。自分が裏切者でないと言えますか?」
「というと?」
「俺の調べでは、最低でも二人以上は裏切者が居る計算なんですよ。」
「ば、馬鹿を言うな!リーダー長!そんな妄言を吐かせておいて良いのか!信用問題に関わるぞ!」
「そういう貴方は、必死で止める素振り・・・図星かな?」
「く・・・そぉ!」
これで場の空気は掌握した。だが、同時に俺自身にも疑いの目が掛かる事は承知だ。
被害者が加害者でした。なんてシナリオは地球がまだ青かった時からの常套句として使われたものだ。
「困りましたねぇ、これでは埒が明かない。何か方法はあるのか?茨君」
「一つ、面白い話をしましょうか・・・。」
「どうぞ。」
「最初のゾンビ襲撃の際、俺は面白い事実をいくつか仕入れています。皆さんにはそれを聞いていただきます。」
互いを敵と見なし、隣に座る者にも睨みを利かせていたリーダー達は
各々、深い息をすったり目薬を差し直すなどして落ち着きを取り戻した。
「あの時、俺は校内の窓からゾンビの一団が此方に歩を進めている事に気が付きました。
しかし、肝心のゾンビの群れは俺にはただの人の塊にしか見えませんでした。
なんせ、校舎の窓から校門までは、約Ⅰキロ。更に最短でも校門から50メートルは離れていましたから。」
「ソレの何がおかしいんだ!」
「おかしいのはこれからなんですよ。だって、校舎の中でゾンビの群れが来たと騒ぎだした人がいるのだから。」
「な・・・!そ、それって・・・。」
「えぇ、清水さん。貴方の事ですよ。」
「ちょ、ちょい待ってんか!あいつらは血流しとったんやで!?気付かん方が可笑しいやんか!」
「たしかに、彼らは血まみれで闊歩していた。だが、1キロ以上先の人間が血塗れで歩いてるなんて
良く気付いたね?オッチャン。まるで、近くで観てたかの様だね。」
「あ、赤い雨に打たれた死体は活性化する!そんなん常識やで、自分!」
「語るに落ちたな。ジジィ!確かに、赤い雨による作用は周知の事実だ。でもね
それを試したやつは、今の今まで何処にもいねぇーんだよ!」
「な・・・。」
「どういう事なんだ?茨君」
「リーダー長もご存じでしょう。これ。」
俺は懐から桔平氏の残した手記を取り出し、皆に見えるように掲げた。
「遠坂レポート・・・しかも、原本・・・どこでそんなものを!」
「桔平氏の残した手記によれば、確かに実験用のマウスの施術痕が、赤い雨によって消失したと
罹れている。もちろん、この雨が大量に降った場合の懸念材料も掛かれている。
しかし、それはあくまでも桔平氏個人の見解であり、実際に死体が歩き回るのかという研究は
誰にもされていなかった。そんな悪魔崇拝のような研究、誰も行わなかったんですよ。
にも拘わらず、まるで雨の後にゾンビが歩くのが当然のような口ぶり・・・知ってたんだろう?ジジィ。」
「・・・。」
「何とか言ったらどうだ!清水源生さんよぉ!」
一同の冷たく刺さる視線、常人であれば耐えられず5分もしない内に口を割るであろう。
だが、源生の沈黙は凡そ30分にも及んだ・・・。
「・・・その前に、皆さん。自分が裏切者でないと言えますか?」
「というと?」
「俺の調べでは、最低でも二人以上は裏切者が居る計算なんですよ。」
「ば、馬鹿を言うな!リーダー長!そんな妄言を吐かせておいて良いのか!信用問題に関わるぞ!」
「そういう貴方は、必死で止める素振り・・・図星かな?」
「く・・・そぉ!」
これで場の空気は掌握した。だが、同時に俺自身にも疑いの目が掛かる事は承知だ。
被害者が加害者でした。なんてシナリオは地球がまだ青かった時からの常套句として使われたものだ。
「困りましたねぇ、これでは埒が明かない。何か方法はあるのか?茨君」
「一つ、面白い話をしましょうか・・・。」
「どうぞ。」
「最初のゾンビ襲撃の際、俺は面白い事実をいくつか仕入れています。皆さんにはそれを聞いていただきます。」
互いを敵と見なし、隣に座る者にも睨みを利かせていたリーダー達は
各々、深い息をすったり目薬を差し直すなどして落ち着きを取り戻した。
「あの時、俺は校内の窓からゾンビの一団が此方に歩を進めている事に気が付きました。
しかし、肝心のゾンビの群れは俺にはただの人の塊にしか見えませんでした。
なんせ、校舎の窓から校門までは、約Ⅰキロ。更に最短でも校門から50メートルは離れていましたから。」
「ソレの何がおかしいんだ!」
「おかしいのはこれからなんですよ。だって、校舎の中でゾンビの群れが来たと騒ぎだした人がいるのだから。」
「な・・・!そ、それって・・・。」
「えぇ、清水さん。貴方の事ですよ。」
「ちょ、ちょい待ってんか!あいつらは血流しとったんやで!?気付かん方が可笑しいやんか!」
「たしかに、彼らは血まみれで闊歩していた。だが、1キロ以上先の人間が血塗れで歩いてるなんて
良く気付いたね?オッチャン。まるで、近くで観てたかの様だね。」
「あ、赤い雨に打たれた死体は活性化する!そんなん常識やで、自分!」
「語るに落ちたな。ジジィ!確かに、赤い雨による作用は周知の事実だ。でもね
それを試したやつは、今の今まで何処にもいねぇーんだよ!」
「な・・・。」
「どういう事なんだ?茨君」
「リーダー長もご存じでしょう。これ。」
俺は懐から桔平氏の残した手記を取り出し、皆に見えるように掲げた。
「遠坂レポート・・・しかも、原本・・・どこでそんなものを!」
「桔平氏の残した手記によれば、確かに実験用のマウスの施術痕が、赤い雨によって消失したと
罹れている。もちろん、この雨が大量に降った場合の懸念材料も掛かれている。
しかし、それはあくまでも桔平氏個人の見解であり、実際に死体が歩き回るのかという研究は
誰にもされていなかった。そんな悪魔崇拝のような研究、誰も行わなかったんですよ。
にも拘わらず、まるで雨の後にゾンビが歩くのが当然のような口ぶり・・・知ってたんだろう?ジジィ。」
「・・・。」
「何とか言ったらどうだ!清水源生さんよぉ!」
一同の冷たく刺さる視線、常人であれば耐えられず5分もしない内に口を割るであろう。
だが、源生の沈黙は凡そ30分にも及んだ・・・。
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