if you wanna... ~君が願うなら~

メカ

文字の大きさ
上 下
9 / 31

日没

しおりを挟む
「正春!モップで鍵!」

「おうさ!」

息を切らせながらも、俺は顔を上げ生存数を確認。
生き残ったのは自身を含めて8名だ。

「体育館には何名いたのですか・・・。」

「・・・各班のリーダーと気象観測班・・・ざっと合わせても30~40は居たんじゃないか?」

「総クルーの約一割も・・・。」

「ま、まだだ。まだ安全じゃない。」

「虹色?」

「正春、誰か二人連れて、裏口のバリ、頼む!残りは此処のげた箱ひっくり返して扉の前に!」

言い終わると同時に足の力が抜け、その場に崩れ込んだ。
幸い、生き残った屈強な男たちによって俺の出した指示は迅速に進められた。
だが、俺はその場で意識を失い、医務室へと運ばれた。

医務室にて目を覚ますと、俺が気を失っていたのは数分間だったという。
しかし、医務室越しに見える、ゾンビによる校門突破の瞬間は
俺にとっては唯の絶望感だけでは言い表す事が出来なかった。
真っ先に立ったのは敗北感そして、その敗北を追い抜くように焦燥が、そして
立て篭もるしか選択できなかった自身への無力感であった。
これではまるで「袋のネズミ」。
逃げ場など何処にもなかった。
しかも、目を覚ました俺に医師は一日安静という枷を施したのである。
校庭を我が物顔で歩くゾンビたちは、最初程の勢いを感じず
得物が居ない事への脱力を現しているようだ。まるで週明けのサラリーマンのようだ。
そして、俺はある事に気が付く。

「校門前で襲われた奴・・・動いてないな・・・。」

「当然でしょうが、死んでるんだから。死んでるのに動いてる方が異常だっての。」

間髪入れずに、医師の突っ込みが入ったが俺が気になったのはまさにそこだ。
現に死人は歩いている。なのに襲われた連中はそのままなのだ。

「そのうち動く・・・とでもいうのか?」

俺はそれが気になり、医務室の窓に張り付いたまま観測を続けた。
時間は進み、既に日没だ。
だが、襲われた者が動き出す事は無かった。
それどころか、時間が経つに連れ、ゾンビの数が減っているのだ。

「窓ガラス一枚あったって安心はできない。ほら、何時までも張り付いてないで退きな。」

そういうと医師は、カーテンを閉め下の部分をガムテープで貼り付けた。

「視力が生きてるのかしらないけどさ・・・見えてなかったとしても、そもそもこっちの姿を見せない方がいいのさ。こういうのは。」

そもそも連中が、何を頼りに人を襲ったのか不明なままなのだ。
医師の判断は正しい。
生きている人間の情報というものは「視力」によるものが9割を占めるそうだ。
それが死人に当てはまるかは別としても
病人側にしてみれば「見えない安心感」は存在するものだ。

「ここは複数の医師が交代で見張ってる。アンタもさっさと寝ちまいな。・・・寝れるうちに。」

医師に促されベットに戻るが、最初は寝付けなかった。
しかし、一連の事件を思い返す内に、眠っていた様だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~

こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。 人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。 それに対抗する術は、今は無い。 平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。 しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。 さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。 普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。 そして、やがて一つの真実に辿り着く。 それは大きな選択を迫られるものだった。 bio defence ※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

東京が消えたなら。

メカ
SF
2XXX年、日本最大の山「富士山」が噴火した。 その時、貴方は 「どう生き延びますか?」

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

処理中です...