6 / 31
手記4 ~人類~
しおりを挟む
虹色は、教室の片隅で腰かけ手記を開く。
実の所、この手記を見返すのは3度目だ。
桔平氏が残したこの手記はある情報筋から入手した。
というのも、俺と彼の息子が同年代で、かつ共通点があったからだ。
『人類について』
この手記を手にした者は疑問に思うだろう。
今の地球が、人類に置いて劣悪な環境と化したにも関わらず
調査員が平然と闊歩している事を。
そこにはある理由がある。
それは、現在の地球の環境に対応すべく、後天的に遺伝子を操作し人間を作り替える。
というものだ。
耐熱性や耐寒性、他にも皮膚に影響を及ぼすであろう紫外線への対策。
それだけ聞くと、非人道的とも取られかねないが
政府は、地球探査において必要措置である事を市民に訴え続け、クルーにも
施術前の意思確認など、準備は怠らなかった。
それに留まらず、市民に対し施術が失敗に終わった場合、全面的に責任を負う事を公約に掲げた。
結果
『第一調査団』『第二次調査船団』ともに、十分なクルーの数を用意出来た。
だが、『第三調査船団』のクルー以降、特殊な人間が確認されていた。
後天的施術を行った記録のないクルー。
そのカラクリは、親が『第一調査団』『第二調査船団』のクルーだった場合における
遺伝的獲得。所謂「ナチュラルボーン」だ。
余談であるが、先日私の息子も「ナチュラルボーン」であることが発覚した。
第三次調査船団は、当初の調査機関を満了しノアへと戻る事となる。
その実、何の成果も無い形だけの報告書を政府に提出するのだから肝が冷える。
「またその手帳、読んでいるのか。虹色。」
「当然だ。この手記は調査の過程で知り得た情報が如実に書かれている。ノアで発表されている地球の状態だって
この手記の報告が元になっているんだぞ。」
「それは知ってるけどさぁ・・・。」
「それに、この手記にはまだ説かれていない謎があるんだ。」
「謎?」
「そう。第一・第二のクルーの行方・・・。」
「確かに・・・。ノアでもクルーの安否より気象情報とかの方が重要視されてるもんな。」
元々、第一のクルーは切り捨てられるはずの人材であった。
だが、そのクルーを助けるという名目で集められた第二調査船団も連絡を断つ。
その後の第三調査船団なんて、約二年の空白の時間の後に発足したのだ。
それだけではない。
手記には続きがあり、第四調査船団についても触れられているが、その内容も驚愕ものだ。
第四調査船団とは名ばかりで、その殆どが第三調査船団の元クルーから選抜されていたという。
しかも、第三調査船団がノアに帰ってから10年後の事である。
そして、その第四調査船団もノアへの帰投を間近に控えたタイミングで消息を絶った。
「この手記には数多くの矛盾と謎が書かれてる。俺はそれの推論を立てるのが好きなんだよ。」
「ふ~ん。入れ込み過ぎんなよ?なんか危ない橋っぽいぞ。聞いてるとさ。」
「分かってる。」
手記をカバンに仕舞い、窓から外を見ていると・・・思わぬ地獄がやってきていたのだ・・・。
実の所、この手記を見返すのは3度目だ。
桔平氏が残したこの手記はある情報筋から入手した。
というのも、俺と彼の息子が同年代で、かつ共通点があったからだ。
『人類について』
この手記を手にした者は疑問に思うだろう。
今の地球が、人類に置いて劣悪な環境と化したにも関わらず
調査員が平然と闊歩している事を。
そこにはある理由がある。
それは、現在の地球の環境に対応すべく、後天的に遺伝子を操作し人間を作り替える。
というものだ。
耐熱性や耐寒性、他にも皮膚に影響を及ぼすであろう紫外線への対策。
それだけ聞くと、非人道的とも取られかねないが
政府は、地球探査において必要措置である事を市民に訴え続け、クルーにも
施術前の意思確認など、準備は怠らなかった。
それに留まらず、市民に対し施術が失敗に終わった場合、全面的に責任を負う事を公約に掲げた。
結果
『第一調査団』『第二次調査船団』ともに、十分なクルーの数を用意出来た。
だが、『第三調査船団』のクルー以降、特殊な人間が確認されていた。
後天的施術を行った記録のないクルー。
そのカラクリは、親が『第一調査団』『第二調査船団』のクルーだった場合における
遺伝的獲得。所謂「ナチュラルボーン」だ。
余談であるが、先日私の息子も「ナチュラルボーン」であることが発覚した。
第三次調査船団は、当初の調査機関を満了しノアへと戻る事となる。
その実、何の成果も無い形だけの報告書を政府に提出するのだから肝が冷える。
「またその手帳、読んでいるのか。虹色。」
「当然だ。この手記は調査の過程で知り得た情報が如実に書かれている。ノアで発表されている地球の状態だって
この手記の報告が元になっているんだぞ。」
「それは知ってるけどさぁ・・・。」
「それに、この手記にはまだ説かれていない謎があるんだ。」
「謎?」
「そう。第一・第二のクルーの行方・・・。」
「確かに・・・。ノアでもクルーの安否より気象情報とかの方が重要視されてるもんな。」
元々、第一のクルーは切り捨てられるはずの人材であった。
だが、そのクルーを助けるという名目で集められた第二調査船団も連絡を断つ。
その後の第三調査船団なんて、約二年の空白の時間の後に発足したのだ。
それだけではない。
手記には続きがあり、第四調査船団についても触れられているが、その内容も驚愕ものだ。
第四調査船団とは名ばかりで、その殆どが第三調査船団の元クルーから選抜されていたという。
しかも、第三調査船団がノアに帰ってから10年後の事である。
そして、その第四調査船団もノアへの帰投を間近に控えたタイミングで消息を絶った。
「この手記には数多くの矛盾と謎が書かれてる。俺はそれの推論を立てるのが好きなんだよ。」
「ふ~ん。入れ込み過ぎんなよ?なんか危ない橋っぽいぞ。聞いてるとさ。」
「分かってる。」
手記をカバンに仕舞い、窓から外を見ていると・・・思わぬ地獄がやってきていたのだ・・・。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる