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異変
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今日も今日とて、敷地内をぶらつく俺は、視界にある物を捉える。
校門から数十メートル先、女二人が全速力で走って来る。
「・・・なんだ?あれ。」
「た・・・んよ!」
「ん?」
校内に居た俺には、女が叫んだ言葉が聞き取れなかったが
次第に近付くその顔の表情で異常事態だという事は察しがついた。
「おい!誰か!校門開けに行くぞ!」
廊下を走りながら叫んだものの、その後には二班の男一人が付いてきた。
「アンタ、名前は。」
「新ケ谷 亮太!」
自慢じゃないが、俺は足が速い方だ。だが、彼もまた物凄い速さで追い上げてきて横並びになった。
二人のスプリンターは恐るべき速さで校内を出て、校門の端を掴み引き合っていた。
校門が開かれると、間を置かずに彼女たちが入り、崩れるように這った。
「たい・・・へん、なのよ!」
「何があったんですか?」
「雨・・・」
「あ、雨?」
「赤い雨が宇宙船の方から来てるの!」
「!」
「一緒に行ってた男性が・・・雨に打たれて・・・。」
「それで?」
「ひ・・・悲鳴を上げながら火傷を負った様になって・・・死んじゃったのよぉ!」
「ば、馬鹿な。赤い雨は浴びたとしても3時間は・・・。」
「亮太さん!」
「え?」
「この事を全班のリーダーに報告を。俺は二人を医務室に連れていきます。」
「あ、あぁ!任せろ!」
俺は極めて冷静だった。
二人を医務室に運び終え、報告を聞いたリーダー達や気象観測班などが慌ただしく動き
議論を重ねる中、自分の教室に戻る頃にはある仮説を立てていた。
そして、間もなく雨が降る。
彼女たちの報告のお陰で、野外で行動をしていた者は皆、校内へ避難。
被害は皆無だった。
お堅い議論がなされる体育館に乗り込む決意を固め、俺は立ち上がる。
俺の表情から何かを読み取ったのか、正春は黙ったまま俺の後を付いてきた。
「だから!今はなぜ赤い雨の変異がこれほどまで大きいのかを・・・!」
「何を言う!気象観測の機材を持ち込んでおいて1キロ先が見通せないとは嘆かわしい!」
「黙れ!」
入り口から聞こえた一喝に、一同は怪訝な表情を浮かべた。
「開口一番に黙れは無いでしょうよ、虹色ちゃんよぉ・・・。」
「赤い雨が観測され始めたのは、第二次調査船団が調査を始めた頃。つまり20年以上も前の事だ。」
「華麗なスルーありがとよ、虹色・・・。」
「この地球はもう今までのようなノロマではない。急速な変化の間にある。」
「・・・はいはい、分かったよ。黙ってますよーだ。」
「柔軟に思考しなければ、次の被害者はお前らだ。進化しているんだよ!雨も、地球も。」
「私は3-Bの大貫だ。君は?」
「・・・1-Aの茨 虹色。」
「茨君、雨が進化しているとは?」
「気象観測できない。という事はこれまでの『雲』の概念は通用しない。という事。それに
これを見てください。」
俺は懐から手記を取り出した。
「これは、第3次調査船団所属『遠坂 桔平』氏によって綴られた手記です。彼の手記にも
何度も『赤い雨』についての調査資料が残されていますが『雲』という単語は一つも出ていない。
即ち、予想されるに『赤い雨』には『雲』が必要ない。という事です。」
「なんと・・・。」
「突発的に降る雨・・・お天気雨のような物でしょう。それに20年の歳月です。3時間の猶予が即死に変わっていても不思議じゃない。雨に含まれる毒性は強くなっていく一方なのだから。」
リーダー衆、観測衆をその一蹴で黙らせ、場の冷静さを取り戻した。
再び議論が始まり、ソレが今まで罵り合い出ない事を確かめた俺は、体育館を後にした。
だが、次なる異変は、もう始まっていたのだ。
校門から数十メートル先、女二人が全速力で走って来る。
「・・・なんだ?あれ。」
「た・・・んよ!」
「ん?」
校内に居た俺には、女が叫んだ言葉が聞き取れなかったが
次第に近付くその顔の表情で異常事態だという事は察しがついた。
「おい!誰か!校門開けに行くぞ!」
廊下を走りながら叫んだものの、その後には二班の男一人が付いてきた。
「アンタ、名前は。」
「新ケ谷 亮太!」
自慢じゃないが、俺は足が速い方だ。だが、彼もまた物凄い速さで追い上げてきて横並びになった。
二人のスプリンターは恐るべき速さで校内を出て、校門の端を掴み引き合っていた。
校門が開かれると、間を置かずに彼女たちが入り、崩れるように這った。
「たい・・・へん、なのよ!」
「何があったんですか?」
「雨・・・」
「あ、雨?」
「赤い雨が宇宙船の方から来てるの!」
「!」
「一緒に行ってた男性が・・・雨に打たれて・・・。」
「それで?」
「ひ・・・悲鳴を上げながら火傷を負った様になって・・・死んじゃったのよぉ!」
「ば、馬鹿な。赤い雨は浴びたとしても3時間は・・・。」
「亮太さん!」
「え?」
「この事を全班のリーダーに報告を。俺は二人を医務室に連れていきます。」
「あ、あぁ!任せろ!」
俺は極めて冷静だった。
二人を医務室に運び終え、報告を聞いたリーダー達や気象観測班などが慌ただしく動き
議論を重ねる中、自分の教室に戻る頃にはある仮説を立てていた。
そして、間もなく雨が降る。
彼女たちの報告のお陰で、野外で行動をしていた者は皆、校内へ避難。
被害は皆無だった。
お堅い議論がなされる体育館に乗り込む決意を固め、俺は立ち上がる。
俺の表情から何かを読み取ったのか、正春は黙ったまま俺の後を付いてきた。
「だから!今はなぜ赤い雨の変異がこれほどまで大きいのかを・・・!」
「何を言う!気象観測の機材を持ち込んでおいて1キロ先が見通せないとは嘆かわしい!」
「黙れ!」
入り口から聞こえた一喝に、一同は怪訝な表情を浮かべた。
「開口一番に黙れは無いでしょうよ、虹色ちゃんよぉ・・・。」
「赤い雨が観測され始めたのは、第二次調査船団が調査を始めた頃。つまり20年以上も前の事だ。」
「華麗なスルーありがとよ、虹色・・・。」
「この地球はもう今までのようなノロマではない。急速な変化の間にある。」
「・・・はいはい、分かったよ。黙ってますよーだ。」
「柔軟に思考しなければ、次の被害者はお前らだ。進化しているんだよ!雨も、地球も。」
「私は3-Bの大貫だ。君は?」
「・・・1-Aの茨 虹色。」
「茨君、雨が進化しているとは?」
「気象観測できない。という事はこれまでの『雲』の概念は通用しない。という事。それに
これを見てください。」
俺は懐から手記を取り出した。
「これは、第3次調査船団所属『遠坂 桔平』氏によって綴られた手記です。彼の手記にも
何度も『赤い雨』についての調査資料が残されていますが『雲』という単語は一つも出ていない。
即ち、予想されるに『赤い雨』には『雲』が必要ない。という事です。」
「なんと・・・。」
「突発的に降る雨・・・お天気雨のような物でしょう。それに20年の歳月です。3時間の猶予が即死に変わっていても不思議じゃない。雨に含まれる毒性は強くなっていく一方なのだから。」
リーダー衆、観測衆をその一蹴で黙らせ、場の冷静さを取り戻した。
再び議論が始まり、ソレが今まで罵り合い出ない事を確かめた俺は、体育館を後にした。
だが、次なる異変は、もう始まっていたのだ。
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