if you wanna... ~君が願うなら~

メカ

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拠点

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宇宙船を下り、北に1キロほど進んだ所に、当時使われていたであろう学校設備が残っていた。
生憎、ガラスなどは割れていて修復が必要な個所もあるものの
300人という大規模な人数が一か所に固まっておくには良い場所であった。
学校設備は3階建てであり、屋上や体育館といった設備も整っていた。
さらに嬉しい事に、調理実習室には調理器具が残されており、簡易的な調理であれば
此処で行えるようになった。

そして、数日が過ぎた。

「なぁ、虹色。お前は何で調査団に志願したんだ?」
「それは・・・。」
「よう、にぃちゃんたち。それより自己紹介しようや。」

300人もの人員を一人のリーダーが指示を飛ばし面倒を見る事には限度がある。
そこで、俺達は学校の階数を利用し、一階の一班、二階の二班という様に100人づつで班分けを行った。
更に、100人を5つのグループに分け各教室をそれぞれの拠点とした。
無論、教室での寝泊まりも自由であるが、宇宙船での寝泊まりも原則可能となった。

「俺、『志村正春』。虹色(こいつ)と同期で幼馴染なんすよ。まぁ、昔から兄貴分というか
そんな感じでやってます。」
「・・・『茨 虹色』です。宜しく。」
「お前・・・それだけかぁ!?」
「鬱陶しいぞ、正春。」
「そーかぁ。ワシ。『清水源生』言うもんや。よろしくな。にぃちゃんたち。」
「よろしく~」
「ほかの人らも、同じグループになったんやし、自己紹介頼むわぁ。」

清水さんの仕切りにより、一人一人の紹介が始まったものの
正直な所、覚える気はなかった。
必要最低限、顔と名前さえ一致していれば、調査に支障を出す事は無い。
それに、他のグループとの連携などもある。一々、個人の内容まで仕入れていたら
キャパシティがオーバーする。

「おい、どこ行くんだよ!虹色!」
「基本は自由なんだ、放っておいてくれよ。」
「おい!」
「まぁまぁ。志村君やっけ?ワシから見ても君、暑すぎるわ。一人にしといたり。」
「ど、どういう事っすか!それ!」
教室を後にした直後笑い声が響いた。恐らくは清水さんが何か言ったのだろう。
そして、それに反応を取る正春。目に浮かぶようだ。
俺は、この学校をくまなく散策する事にした。
何があって何が出来るのか、そして、現状何ができないのかをはっきり整理したかったからだ。
この数日間で、学校は見る見るうちに姿を変えた。
外装こそ、学校そのままではあるが、屋上では気象などの観測設備が整いつつあるし
体育館は、実験や研究の為の機材が運ばれ、保健室はそのまま医師常駐の簡易的な病室へと変貌した。

調査団の人員は、基本的に何かしらのエリートや資格持ちの人間が選ばれている。
全く持って何もできない人種は、此処には存在しない。
事実、正春でさえも建築や測量についての資格を持ち選ばれている。
だが・・・肝心の俺は・・・。
皆が役立つ資格や技術を発揮していく中で、ただ俺一人が浮いた存在であった。
それを見せ付けるかのように、俺の孤独感は増していったのだ。
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