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手記2 ~ノア~

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第5次調査船
クルー総数300名
ロケットと大型ジェット機を合わせたような宇宙船にて
昼の12時ぴったりに地球へ向けて降下を開始する。
座席に着いた青年は、再びボロボロになった手記を手にしていた。

「ノア計画について」
人類は、大地を棄てる決断をしてから、ある計画を推し進めた。
当時、比較的安全だった大地から、取れるだけの作物と海洋類の採取。
そして、その人工養殖を始めた。
だがこの計画は、半ば頓挫する。
人工的に作り上げるにしても、土や水といった資源が必要になる。
大地は汚染されていく一方で、限られた資源のなかでそれを賄っていく事には限度がある。
ましてや、当時急造されていた箱庭では土は愚か水も大地よりも圧倒的に少ない。

しかし、人類はある生物の力を借り、箱庭でそれらを人工的に作り出すことに成功した。
それが「バクテリア」である。
生物から出る排泄物を一か所に集め、大量のバクテリアを用いて分解する。
その結果、もたらされた物は、土や水だけではなかった。
分解において発生する熱は、蒸気機関に回され、ガスは箱庭の移動用エネルギーへと転換された。

試験的に行われたこの試みによって、2回目の人工養殖も軌道に乗る算段が持ち上がった。
これにより、箱庭建造は急速に速度を増し、その数年後には人類を宇宙へと避難させる事に成功した。
しかし、箱庭が出来あがり人類が宇宙で暮らす事も試験的な試みだった為に
随所に綻びも生じ始めた。
避難当初の計算では、箱庭に用意された物資で10年は持つ計算であった。
だが、それは人々がエネルギー使用を控えつつ生活を行った場合の計算であり
今の人類には遠慮など微塵も無かった。
結果として、先に見えている資源枯渇を懸念した政府が、5年の歳月を経て「調査団」を設立したのである。
しかし、此処にはあるカラクリが存在する。
第一調査団の船には「片道分」の燃料しか補給されていなかった。
しかも、それはクルーや市民には知らされていなかったという。

そして、「問題」が発生した。
地球探査の一環で、彼らは現在の地球にも「雨」が降る事を確認した。
しかし、その色は明らかに異常であった。
「赤い雨」・・・まるで、鮮血が空から降る様にソレは降って来たという。
成分を調査した結果「極めて有害な毒素」が検出されたらしい。
宇宙服なしで、この雨に降られた場合、その毒素によって3時間で死に至る事が判明した。
その事が発覚した辺りから、調査団の中では失踪事件が散発し始めたという。

しかし、箱庭では調査団が順調に地球を調べている事しか報道されていなかった。
「私」は、自身が第三次調査団に任命されてから、これまでの調査の過程や現地での実態を
この手記に残す事にした。
これが、心ある者の手に渡る事を願うばかりである。

「当機は間もなく地球へ到着します。調査団の皆さん。シートベルトをお締め下さい。
また、舌を噛む恐れがありますので、座席についたら私語などはお控えください。」

初めての地球
知らない物ばかりなのだろう。
そもそも、知りもしない物をどう比較するのか・・・俺は謎であった。
だが、その答えも時期に出る。
俺は瞼を閉じ、じっと、その時を待った。
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