1 / 31
手記1 ~滅亡した大地~
しおりを挟む
目覚ましが鳴り、青年はベッドから起き上がる。
いよいよ、今日が地球降下の日だ。
青年は表紙がボロボロに朽ちかけている手記を手に取り、読み更けた。
人類が地球から逃げ延びて、早30年が経った。
滅亡の足音は人類が察知するよりも早く、訪れた。
だが、人類は宇宙に箱庭を作っただけで、他の惑星に逃げられる程
準備の整っている状態ではなかった。
箱庭は、かの有名な終末思想の一つである絵画から
「ノア」と名付けられた。
なぜ、母なる地球が滅んだのか。
そこから説明せねばなるまい。
ある年代を境に、地球の人口は減少の一途を辿った。
無理もない。
昔であれば一つの家庭で子供が複数いる事は当たり前であったが
人類は産まない選択をしたのだ。
・・・正確には、産む事の自由は守られていた。が、当事者たちの判断で
産んでも一人。という事が常態化した。
その結果、数十年単位の時間を経て、人類は衰退していった。
大地が死んだ理由
それは、人類衰退に反比例するように消費されていくエネルギー源が
とうとう、枯渇したからである。
兼ねてより、数多くのエネルギー源が底をつくことは懸念材料であった。
だが、人類は数が減ったにも関わらず、一人当たりの使用エネルギー量の総量が
統計的に上がっていた。
そして、「あれが使えない」「これが出来なくなった」という負の部分が徐々に見えてきたのだ。
それだけではない。
エネルギーを消費した結果、その副産物として廃棄物・廃熱などの理由から
現在の地球の平均温度は、凡そ49度という人類にとってはとても住める物ではなくなった。
さらに、地表に見える火山は、月に一度は噴火を起こし大地をさらに焦がした。
ある程度噴火が収まると、今度は噴煙により疑似的な氷河期へと変貌を遂げる。
地表に降る「灰の雪」は人類にとって殺人的な有害物質へと変わった。
雪が解け、川に流れ、有害物質の川水は海へ流れる。
そして、海の生命を脅かし、食物連鎖の輪を完全に崩壊へと導いた。
人類が「ノア」に移住して尚、地球の状態を観測している理由は
他の惑星がまだ、人の住めるような惑星として適応していないからだ。
準備の出来ていない惑星よりも、地球の再生を願っていたのだろう。
そうして、ノアへの移住から5年
地球調査の名目で調査団が派遣された。
第一調査団「エスト1」
聞こえは良いが、その実
ノアで賄いきれなくなった人類を一時的にノアから追い出すための口実であった。
それを裏付ける様に、選ばれた人員は50代から60代の構成員からなる。
調査の期間は3年。その間にノアの物資を増強する計画が裏で練られていた。
だが、地球の状態は想像以上に酷く、また初調査という事も有り
万全の準備を整えた筈の調査団も、誰一人帰ってくる事は無かった。
なぜそのような事態になったのか、皆目見当もつかないが
最後の通信を行った「大山隊員」は
「見込みが甘かった。地球はもう人の住める場所ではない!」
という鬼気迫る発言を残し、通信が途切れたという。
「おい、虹色!時間だぞ。」
「あ、あぁ。すまない。今行く。」
青年は手記をカバンに収め・・・今、旅立つ。
いよいよ、今日が地球降下の日だ。
青年は表紙がボロボロに朽ちかけている手記を手に取り、読み更けた。
人類が地球から逃げ延びて、早30年が経った。
滅亡の足音は人類が察知するよりも早く、訪れた。
だが、人類は宇宙に箱庭を作っただけで、他の惑星に逃げられる程
準備の整っている状態ではなかった。
箱庭は、かの有名な終末思想の一つである絵画から
「ノア」と名付けられた。
なぜ、母なる地球が滅んだのか。
そこから説明せねばなるまい。
ある年代を境に、地球の人口は減少の一途を辿った。
無理もない。
昔であれば一つの家庭で子供が複数いる事は当たり前であったが
人類は産まない選択をしたのだ。
・・・正確には、産む事の自由は守られていた。が、当事者たちの判断で
産んでも一人。という事が常態化した。
その結果、数十年単位の時間を経て、人類は衰退していった。
大地が死んだ理由
それは、人類衰退に反比例するように消費されていくエネルギー源が
とうとう、枯渇したからである。
兼ねてより、数多くのエネルギー源が底をつくことは懸念材料であった。
だが、人類は数が減ったにも関わらず、一人当たりの使用エネルギー量の総量が
統計的に上がっていた。
そして、「あれが使えない」「これが出来なくなった」という負の部分が徐々に見えてきたのだ。
それだけではない。
エネルギーを消費した結果、その副産物として廃棄物・廃熱などの理由から
現在の地球の平均温度は、凡そ49度という人類にとってはとても住める物ではなくなった。
さらに、地表に見える火山は、月に一度は噴火を起こし大地をさらに焦がした。
ある程度噴火が収まると、今度は噴煙により疑似的な氷河期へと変貌を遂げる。
地表に降る「灰の雪」は人類にとって殺人的な有害物質へと変わった。
雪が解け、川に流れ、有害物質の川水は海へ流れる。
そして、海の生命を脅かし、食物連鎖の輪を完全に崩壊へと導いた。
人類が「ノア」に移住して尚、地球の状態を観測している理由は
他の惑星がまだ、人の住めるような惑星として適応していないからだ。
準備の出来ていない惑星よりも、地球の再生を願っていたのだろう。
そうして、ノアへの移住から5年
地球調査の名目で調査団が派遣された。
第一調査団「エスト1」
聞こえは良いが、その実
ノアで賄いきれなくなった人類を一時的にノアから追い出すための口実であった。
それを裏付ける様に、選ばれた人員は50代から60代の構成員からなる。
調査の期間は3年。その間にノアの物資を増強する計画が裏で練られていた。
だが、地球の状態は想像以上に酷く、また初調査という事も有り
万全の準備を整えた筈の調査団も、誰一人帰ってくる事は無かった。
なぜそのような事態になったのか、皆目見当もつかないが
最後の通信を行った「大山隊員」は
「見込みが甘かった。地球はもう人の住める場所ではない!」
という鬼気迫る発言を残し、通信が途切れたという。
「おい、虹色!時間だぞ。」
「あ、あぁ。すまない。今行く。」
青年は手記をカバンに収め・・・今、旅立つ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる