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出陣。

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外の闘争は丸二日間、死傷者を増やしながらも続いた。
この時点で、ブレアは普通に歩けるまでに回復し、病室に次々となだれ込む負傷兵に
ベットを奪われていた。
気付けば、手当を待つ負傷兵は廊下にもあふれていた。

「ストレイ卿!」

「ブレア殿・・・。こ、こんな見苦しい姿を晒してしまうとは。」

「かなりの深手じゃないか・・・。外はそんなにも激しい戦いに?」

「城門の突破は何とか防いでおりますが、城外では戦地が広がり乱戦状態です。」

「なんと・・・。」

「大量のインプに用心棒の様に張り付くオーガ、そしてそれを統率するガーゴイル。外は台風一過です。」

「ガーゴイルだと!」

ガーゴイル。
これまで、姿が確認されていた魔族の中でも、比較的、人間に近い知能を持つ。
よく「ずる賢い」と評価される魔物であるが、その実、争いなどは好まない種族である。
自身のテリトリーに多くの仕掛けをつくり、侵略者を拒む事でその高い知能を発揮している。
それ故に、ガーゴイルが侵略側に回る事の方が、珍しいのだ。
ましてや、同族ではなく他種族を。それも複数の種族を連れて来るなど本来であれば考えられない。
ガーゴイルの知能が加わっているとなれば、外の乱戦も頷ける。

「あんな下賤な奴らにッ・・・!私たちの故郷であるこの国を、奪われてたまるか!」

「よせ、ストレイ卿。動くな。傷に響くぞ。」

「この国は!我々が守って来たのです!我々が育ってきた土地なのです!それを・・・。」

「分かっている。落ち着くんだ。・・・あとは任せて置け。」

「ブレア殿・・・貴方一人が加わったとて戦況は変わらない。何をする気なのですか。」

「安心しろ。すぐに終わる。」

「王国最弱の騎士が!何を出来るっていうんですか!!」

「・・・弱者には弱者の戦い方があるさ。ストレイ卿、この国は守って見せるさ。」

「無茶だ・・・。」

「友よ、ゆっくり休めよ・・・。」

病室から、愛用の刀を持ち出し、ストレイ卿の体を気遣いながら
ブレアは穏やかな声で、興奮状態の彼を宥める。
涙を流しながら国の事を叫ぶストレイ卿は最後の一言を捻り出し、意識を失った。

ブレアは、腰帯に刀を差し、悠然と歩き出す。
負傷者が、タンカーや人力で運ばれる中、誰の邪魔にもならぬよう
まるで、霧や残像の如く人の波をすり抜けていく。

これが東洋に古くから伝わるという、俗にいう「縮地法」という足法。である。
本来、武器を構え合っている相手との間合いを一気に詰める為に編み出された足法であり
袴で隠した足捌きによって、360度どの角度にどれだけ進むのか、相手からは見当が付かない。
袴が足に触れ、揺れ動いた時には既に、相手との距離が縮まっている事から
その名が付いた。とされている。

ブレアの場合
この縮地法を応用する事で、人ごみの中を無駄な動きなく、抜けていく事が出来るのである。
いつか見せた、ジュナと出会い去っていく彼の素早さもこれに当たる。

揺れる霞が如く、彼は行く。
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