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アムス草原の死線 ~後編~
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馬車は駆ける。
普段はゆったりと優雅に進む馬車だが、状況が状況だ。
多少揺れる籠の中、ジュナはブレアを問い詰めた。
「あの時、やっぱりって言っていたのは何?」
「アムス草原での戦の痕。妙に不自然だったのです。物も散発的にしか落ちていないし
争った形跡はあっても遺体すらない。・・・思うにあれは殺し合いの為の戦ではなく
誘拐・略奪の為の戦だったのだと感じました。」
「そんな・・・。でも、ここ数日は行商も来てないし、一体だれが襲われたの?」
「晩餐会に参加されていた貴族・皇族の方々でしょう。」
「!」
「また、戦地の草原に武器が落ちていた事を考えると、夜盗や知的魔族ではなく
低級な魔物たち・・・。誰かに入れ知恵をされたか、あるいは・・・。」
「なんで、武器だけでそんな事が言えるのよ?」
「襲った連中が夜盗などであれば、武器や防具は格好の金もうけのアイテム。必ず回収していきますよ。
ましてや、貴族・皇族が持つような宝剣などは間違いなく。」
「なるほど・・・。」
「と、止まれ!馬車を止めろ!」
前方を走る伝令の騎兵が、急に踵を返し停止を求めた。
「何事か!」
「・・・こんな場所で!」
「ん?・・・なにぃ!」
緩やかな下り坂、その道の先。
一体のジャイアントオーガが聳えていた。
通常、ジャイアントオーガは騎士以上の兵士が3人以上の場合に限り戦闘が成り立つ。
それほど凶悪な力の持ち主なのだ。
「・・・ここが俺の・・・。」
「っ!・・・い、いけません!ブレア卿!王族傍付の騎士が率先して王族から離れるなど!
・・・こ、此処は私にお任せを!」
ブレアは床に寝かせていた刀を手に取り馬車から降りる。
しかし、後ろからストレイ卿に抑えられ、入れ替わってしまった。
「すぅ、はぁぁ。・・・行くぞ!」
「ストレイ卿!」
「わ、私も続きます!ギム老!今のうちに馬車を!」
呼吸を整え、ジャイアントオーガに向かい突進するストレイ卿。
そして、それに続く騎兵。
戦況はどうみても圧倒的不利である。
走り去る馬車の窓から、戦闘の一部が見える。
「ぐぅ!くっそぉ!重い一撃じゃないか!デクの棒めぇ!」
「このぉぉ!」
頭上より遥か高い位置から振り下ろされる棍棒をストレイ卿が盾で受け止め
その隙をついて騎兵が槍で刺す。
だが、ジャイアントオーガの脂肪は厚く、致命傷とはならなかった。
ジャイアントオーガはニタリと笑うと再び棍棒を振り上げた。
・・・・・。
「こ、ここまで来れば安心ですぞ・・・。」
急いだ甲斐もあり、馬車はアムス草原の中腹へと差し掛かっていた。
安心した一行は馬を休ませるために小休止を得る。
そして、10分が過ぎる頃・・・。
「ひ、ひぃ!騎士様!大変だ!イ、インプの群れだぁ!」
『インプ』
猿のような四肢に蝙蝠のような翼をもつ低級魔族。
人間の言語を理解する程度の知能を持っているが話す事は出来ない。
人間に対して過度ないたずらを仕掛けたり、家畜の略奪などを行う。
「ざっと見ただけでも30は居るな・・・。」
「も、もうおしまいだぁ!」
「ギム老師、落ち着いて。」
「どうしてこんな所にインプが・・・。」
「恐らく、今回の件はこいつらが主犯でしょう。とはいっても、こいつらを嗾けた何者かが居る筈です。」
インプは弧を描く様に馬車を囲む。
「ギム老師、進路を切り開く故、東に向かってくれ。」
「えぇ!何言ってるんだ、騎士様。いくら騎士様でもこの数は・・・。」
「東にいくんだ。・・・良いな。」
「・・・わ、分かりましたぁ・・・。」
「では・・・騎士ブレア。参る!」
「ブ、ブレア!絶対に死んだらダメよ!」
「っは!仰せのままに!」
ブレアは馬車の前に立ち、ゆっくりといやらしい笑みを浮べる魔族と対峙する。
その刹那、馬の嘶き。馬車は走り出し魔族へと猛進する。
馬を先導するように、ブレアは魔族を切り伏せ、あっという間に馬車を向こう側の道まで向かわせた。
そのまま馬車は駆けて行く。
「ブレアァ!帰って来なかったら承知しないからねぇ!」
「っふ。相変わらず・・・じゃじゃ馬娘だ。」
ブレアは、魔族の大群を背に馬車を見送った。
普段はゆったりと優雅に進む馬車だが、状況が状況だ。
多少揺れる籠の中、ジュナはブレアを問い詰めた。
「あの時、やっぱりって言っていたのは何?」
「アムス草原での戦の痕。妙に不自然だったのです。物も散発的にしか落ちていないし
争った形跡はあっても遺体すらない。・・・思うにあれは殺し合いの為の戦ではなく
誘拐・略奪の為の戦だったのだと感じました。」
「そんな・・・。でも、ここ数日は行商も来てないし、一体だれが襲われたの?」
「晩餐会に参加されていた貴族・皇族の方々でしょう。」
「!」
「また、戦地の草原に武器が落ちていた事を考えると、夜盗や知的魔族ではなく
低級な魔物たち・・・。誰かに入れ知恵をされたか、あるいは・・・。」
「なんで、武器だけでそんな事が言えるのよ?」
「襲った連中が夜盗などであれば、武器や防具は格好の金もうけのアイテム。必ず回収していきますよ。
ましてや、貴族・皇族が持つような宝剣などは間違いなく。」
「なるほど・・・。」
「と、止まれ!馬車を止めろ!」
前方を走る伝令の騎兵が、急に踵を返し停止を求めた。
「何事か!」
「・・・こんな場所で!」
「ん?・・・なにぃ!」
緩やかな下り坂、その道の先。
一体のジャイアントオーガが聳えていた。
通常、ジャイアントオーガは騎士以上の兵士が3人以上の場合に限り戦闘が成り立つ。
それほど凶悪な力の持ち主なのだ。
「・・・ここが俺の・・・。」
「っ!・・・い、いけません!ブレア卿!王族傍付の騎士が率先して王族から離れるなど!
・・・こ、此処は私にお任せを!」
ブレアは床に寝かせていた刀を手に取り馬車から降りる。
しかし、後ろからストレイ卿に抑えられ、入れ替わってしまった。
「すぅ、はぁぁ。・・・行くぞ!」
「ストレイ卿!」
「わ、私も続きます!ギム老!今のうちに馬車を!」
呼吸を整え、ジャイアントオーガに向かい突進するストレイ卿。
そして、それに続く騎兵。
戦況はどうみても圧倒的不利である。
走り去る馬車の窓から、戦闘の一部が見える。
「ぐぅ!くっそぉ!重い一撃じゃないか!デクの棒めぇ!」
「このぉぉ!」
頭上より遥か高い位置から振り下ろされる棍棒をストレイ卿が盾で受け止め
その隙をついて騎兵が槍で刺す。
だが、ジャイアントオーガの脂肪は厚く、致命傷とはならなかった。
ジャイアントオーガはニタリと笑うと再び棍棒を振り上げた。
・・・・・。
「こ、ここまで来れば安心ですぞ・・・。」
急いだ甲斐もあり、馬車はアムス草原の中腹へと差し掛かっていた。
安心した一行は馬を休ませるために小休止を得る。
そして、10分が過ぎる頃・・・。
「ひ、ひぃ!騎士様!大変だ!イ、インプの群れだぁ!」
『インプ』
猿のような四肢に蝙蝠のような翼をもつ低級魔族。
人間の言語を理解する程度の知能を持っているが話す事は出来ない。
人間に対して過度ないたずらを仕掛けたり、家畜の略奪などを行う。
「ざっと見ただけでも30は居るな・・・。」
「も、もうおしまいだぁ!」
「ギム老師、落ち着いて。」
「どうしてこんな所にインプが・・・。」
「恐らく、今回の件はこいつらが主犯でしょう。とはいっても、こいつらを嗾けた何者かが居る筈です。」
インプは弧を描く様に馬車を囲む。
「ギム老師、進路を切り開く故、東に向かってくれ。」
「えぇ!何言ってるんだ、騎士様。いくら騎士様でもこの数は・・・。」
「東にいくんだ。・・・良いな。」
「・・・わ、分かりましたぁ・・・。」
「では・・・騎士ブレア。参る!」
「ブ、ブレア!絶対に死んだらダメよ!」
「っは!仰せのままに!」
ブレアは馬車の前に立ち、ゆっくりといやらしい笑みを浮べる魔族と対峙する。
その刹那、馬の嘶き。馬車は走り出し魔族へと猛進する。
馬を先導するように、ブレアは魔族を切り伏せ、あっという間に馬車を向こう側の道まで向かわせた。
そのまま馬車は駆けて行く。
「ブレアァ!帰って来なかったら承知しないからねぇ!」
「っふ。相変わらず・・・じゃじゃ馬娘だ。」
ブレアは、魔族の大群を背に馬車を見送った。
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