異世界なんてもう嫌だ

メカ

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異世界なんてもう嫌だ。~終 前編~

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「リョウ殿!お戻りになられたのですね!?」
「はい。それで、早速本題の魔王の件なのですが・・・。」
「無事、討伐されたのですね?」
「・・・その・・・。言いにくいのですが、王よ。」

一連の流れを話した俺は、肩の荷を下ろし席へと着いた。
だが、同時にその責は王の肩へ圧し掛かったようだった。

「そ、そんな・・・魔王が死の間際であったと・・・。」
「ロ、ロダージャ様!」
「大丈夫だ、少し驚いただけだ・・・。じぃ。水を持ってきてくれ。」
「はい、今直ぐに!」
「魔王はそんな有り様。でも軍勢は動いている・・・。」
「そうすると気になるのは、魔王の代わりに軍勢を動かす者の影だな。」

まるで、トカゲのしっぽ切りだな。
仕えなくなった者は例え魔王であろうが切り捨てられる。
そして、この滅茶苦茶な世界観に辟易し始めたのも事実だ。
何故なら・・・。
俺の推測が間違っていなければ、この世界は・・・。

「リョウ殿?」
「っへ、あぁすみません。考え事をしていたもので・・・。」
「やはり、リョウ殿にも心当たりはありませんか・・・。」
「一つ、気になる事はあります。」
「な、何です?」
「・・・ディオラと魔王は顔見知りでした。というか、そう感じたまでですが・・・。」
「水霊殿が?」
「そして、魔王はディオラこそ真に恐ろしい存在だ。と」
「確かに、水霊は他の四大精霊も及ばない力を有していると聞いたことがあります。」
「魔王の言葉が気になって、ディオラを問い正しましたが、収穫はなしです。」

王との会談は、数時間続いたが、結論を見出すまでには至らなかった。
だが・・・お陰で、俺は自分の中の推測がどれ程有力な物かを手に入れた。

魔物による散発的な攻撃
魔王城への安易な道乗り
道中見つけた違和感満載の革靴
魔王の容態を知っていた四大精霊の一角
それに違和感を覚えない他の四大精霊
魔王の状況に動じない王

「・・・っふ。とんだクソゲーだよな。」
「ん?どうしたのだ?リョウ。」
「何でもないよ。」

翌日、俺達は再び、王室へと招集された。
だが、これが今回の事件の種明かしだ。

「リョウ殿!」
「おはようございます。王様。」
「王は辞めろとあれほど・・・。」
「策士、策に溺れる・・・。」
「え?」
「僕の居た世界でのことわざです。王よ。」
「ど、どういう意味だ・・・?」
「今回の魔王復活は、あなたの仕業ですね?ロダージャ。」
「な、何を・・・。」
「おかしいと感じたのは、先代の王が亡くなった時です。」
「リョウ殿?」
「王族とはいえ、実の父が亡くなったのに、貴方は涙一つみせなかった。」
「それは、父の様に偉大に振る舞うべく!」
「違う。貴方は先代が亡くなる事を知っていたのでは?」
「ぶ、無礼な!いくらリョウ殿でも・・・そ、そんな云われなき疑いを!」
「その証拠に、あの日。貴方の周囲には従者は愚かネズミ一匹近くには居なかった。」
「それが何だというのだ!」
「普通、先王が没落などすれば王子の身を案じ従者などが居ても不思議じゃない。」
「な・・・。」
「貴方は知っていたんだ。これが従者による暗殺だという事を。」
「莫迦な!」
「恐らくは貴方の信奉者による暗殺だ。でなければ王族である貴方が無事なのはおかしい。」
「・・・。」
「そして、魔物の襲撃。これも恐らくは貴方の信奉者の手引きだ。」
「それは、おかしいではないか!魔物の襲撃は以前から!」
「そう!以前からあった!それは何故か!?先王を戦の中で始末するつもりだったのだよ。」
「な、に・・・。」
「だが、上手く事が運ばなかった。そして先王の暗殺が起きる。」
「そんな・・・父上が・・・殺されたなんて・・・。」
「知っていたはずだよ。君はね。」
「・・・。」
「先王の没後、信奉者から接触があったのだろう。それを皮切りに魔王討伐を謳い出したんだね。」
「なぜそのような事を・・・。」
「信奉者から耳打ちでもされたんだろう?魔物を一層すれば王位が確かになる。と。君は王としては若い。
その座を狙う者も少なからずいた筈だ。そういう者への見せしめにね。」
「そんなつもりは!」
「真意はどうあれ、今回の魔王討伐はただの茶番さ。俺達が魔王城への道中で魔物と殆ど合わなかったのは
恐らく、信奉者が飼いならした魔物を使った襲撃だったからだ。」
「・・・。」
「そして、君は信奉者の口利きで、魔王の現状を知っていたんだろう。で、すべての責を魔王に被せる計画を練ったんだね?」
「お見事です。リョウ殿。」
「・・・人を試すような事、してほしくなかったんだがねぇ・・・。」


ロダージャがどうなるかは、王都の裁判で決まる事だろう。
俺達は、王都を後にし四大精霊たちも各々、散っていった。
俺は、始まりの村に戻る為、荒野を進んだ・・・。

「ねぇ、リョウ。天然水、飲む?」
「うるせぇよ!お前は。」

唯一人、しつこい水霊を除いて・・・。
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