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いざ、魔王討伐!・・・したいのですが。~その2~
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「伝令!道を開けよ!急ぎの伝令である!」
早朝、聞き慣れない音と共に大声を上げて街中を駆けていたのは
王室付きの衛兵であった。
「な、何だ・・・あれは。」
「馬だね。」
「馬ですね。」
「馬だな、ありゃ。」
「・・・お前らなぁ・・・んなモン見りゃ分かるわッ!」
「!・・・そちらに居りましたか!亮殿!」
「あぁ、俺達を探してたのね。・・・と、いう事は・・・。」
次の展開を予想しつつ、身なりを整えた。
「ロダージャ様より、伝令を授かってまいりました。」
「それはそれは・・・どーも。」
「至急、王室までお向かい下さい!そこで王がお待ちです!」
「あぁ、やっぱり?分かりました。はい・・・。行きます。」
『いや、そもそも急ぐならお前が来いよ!』などとは口が裂けても言えず
王室へと向かう事になった。
「来てくれたか。亮殿!」
「王、ご用向きとは?」
「それなのだが、昨晩遅くに早馬が来てな。」
「早馬・・・ですか。」
「ここより、遥か北にある『アデナン山脈』で魔王軍の侵攻が始まった。と」
「そ、それで?」
「地の利は、魔王軍にある。増援の要求がこの早馬の目的でな。」
「・・・。」
「山脈の更に奥には、魔王が座する城もある故・・・。」
「はぁ・・・分かりました。行きますよ。」
「そ、そうか!すまんな。余としても旅の者に押し付けるなど心苦しくてな。」
『どの口が言うんだ、どの口が。』
昨日から思っていた事だ。
この王は、要求をストレートに言わない。
まぁ、市民の前で馬の骨に頭を下げる訳にも行かないのだろうが
これでは、彼が大人になった時に誰がそれを注意し正していけるのだろうか。
王政というのも、それはそれで闇がありそうだ。
まぁ、無理もないのだろう。
彼の周りは、利権に塗れた貴族が多い。
それらを相手執るには、根回し・先読み・後出しジャンケンなどは当たり前。
自然と言い分も回りくどくなるのだろう。
「おい、皆。行くぞ。」
「それじゃぁね、王様。」
「失礼しました。」
「・・・リョウ、俺、あいつ嫌いだ。」
「言うなよ、カスール。俺もだ。」
「ここから、北の地形は俺じゃ案内出来ないぞ。」
「それなら、シルヴィーを頼ると良いよ?」
「どういう事だ?ディオラ。」
「「シルヴィーは風の精霊だよ?」
「・・・だから、どういう・・・。」
「北風も、春風も、突風も、暴風も、追い風も。全てはシルヴィーの生み出すのもだよ?」
「・・・。」
「つまり!シルヴィーは世界の何処でも知ってるよ?」
「そうなんですか!シルヴィーさん!」
「え?えぇ、まぁそうなりますね・・・。」
「すげぇ~。」
「でも、それを言ったらディオラも・・・。」
「こいつはどうでも良い。シルヴィーさん!道案内お願いできますか!」
「え、ちょっと、今の酷くない?」
一行は、冗談を言いながらも北を目指し、城を後にする。
一方、その城の王室にて。
「彼らは行ったか?」
「は。先刻、城下を発ったと知らせが入っております。」
「そうか。」
「宜しかったのですか?ロダージャ様。」
「何がだ?」
「そ、その・・・彼らを引き留めて置けば、利用価値もあったでしょう。」
「利用価値・・・か。」
「アレだけの力、みすみす手放すとは・・・。」
「黙れ!・・・誰に口を訊いて居るのだ。」
「も、申し訳ありません。」
「良いのだ、これで。彼らはまだ完全ではない。足りない物があるのだ。それが無ければ、魔王など・・・倒せまい。」
・・・・・・・・・。
「あぁ~、オジサン疲れたよぉ~。」
「おい、グズグズするな。ディオラ。行くぞ!」
「えぇ~・・・リョ~ウ。おい、リョ~~ウ。」
「何だ!」
「おんぶして?」
「子供か、お前は!」
「亮、ここで野宿の準備をした方が無難だぜ?」
「カスール?」
「そうですねぇ。この先は登りの道が多くなりますから、疲れを残したままは危険です。」
「二人がそういうなら・・・ここで止めておくよ。・・・お荷物も居るしな。」
「おぉ~?誰の事じゃ?」
「お前だ!お前!!」
魔王討伐・・・前途多難なんですけど・・・。
早朝、聞き慣れない音と共に大声を上げて街中を駆けていたのは
王室付きの衛兵であった。
「な、何だ・・・あれは。」
「馬だね。」
「馬ですね。」
「馬だな、ありゃ。」
「・・・お前らなぁ・・・んなモン見りゃ分かるわッ!」
「!・・・そちらに居りましたか!亮殿!」
「あぁ、俺達を探してたのね。・・・と、いう事は・・・。」
次の展開を予想しつつ、身なりを整えた。
「ロダージャ様より、伝令を授かってまいりました。」
「それはそれは・・・どーも。」
「至急、王室までお向かい下さい!そこで王がお待ちです!」
「あぁ、やっぱり?分かりました。はい・・・。行きます。」
『いや、そもそも急ぐならお前が来いよ!』などとは口が裂けても言えず
王室へと向かう事になった。
「来てくれたか。亮殿!」
「王、ご用向きとは?」
「それなのだが、昨晩遅くに早馬が来てな。」
「早馬・・・ですか。」
「ここより、遥か北にある『アデナン山脈』で魔王軍の侵攻が始まった。と」
「そ、それで?」
「地の利は、魔王軍にある。増援の要求がこの早馬の目的でな。」
「・・・。」
「山脈の更に奥には、魔王が座する城もある故・・・。」
「はぁ・・・分かりました。行きますよ。」
「そ、そうか!すまんな。余としても旅の者に押し付けるなど心苦しくてな。」
『どの口が言うんだ、どの口が。』
昨日から思っていた事だ。
この王は、要求をストレートに言わない。
まぁ、市民の前で馬の骨に頭を下げる訳にも行かないのだろうが
これでは、彼が大人になった時に誰がそれを注意し正していけるのだろうか。
王政というのも、それはそれで闇がありそうだ。
まぁ、無理もないのだろう。
彼の周りは、利権に塗れた貴族が多い。
それらを相手執るには、根回し・先読み・後出しジャンケンなどは当たり前。
自然と言い分も回りくどくなるのだろう。
「おい、皆。行くぞ。」
「それじゃぁね、王様。」
「失礼しました。」
「・・・リョウ、俺、あいつ嫌いだ。」
「言うなよ、カスール。俺もだ。」
「ここから、北の地形は俺じゃ案内出来ないぞ。」
「それなら、シルヴィーを頼ると良いよ?」
「どういう事だ?ディオラ。」
「「シルヴィーは風の精霊だよ?」
「・・・だから、どういう・・・。」
「北風も、春風も、突風も、暴風も、追い風も。全てはシルヴィーの生み出すのもだよ?」
「・・・。」
「つまり!シルヴィーは世界の何処でも知ってるよ?」
「そうなんですか!シルヴィーさん!」
「え?えぇ、まぁそうなりますね・・・。」
「すげぇ~。」
「でも、それを言ったらディオラも・・・。」
「こいつはどうでも良い。シルヴィーさん!道案内お願いできますか!」
「え、ちょっと、今の酷くない?」
一行は、冗談を言いながらも北を目指し、城を後にする。
一方、その城の王室にて。
「彼らは行ったか?」
「は。先刻、城下を発ったと知らせが入っております。」
「そうか。」
「宜しかったのですか?ロダージャ様。」
「何がだ?」
「そ、その・・・彼らを引き留めて置けば、利用価値もあったでしょう。」
「利用価値・・・か。」
「アレだけの力、みすみす手放すとは・・・。」
「黙れ!・・・誰に口を訊いて居るのだ。」
「も、申し訳ありません。」
「良いのだ、これで。彼らはまだ完全ではない。足りない物があるのだ。それが無ければ、魔王など・・・倒せまい。」
・・・・・・・・・。
「あぁ~、オジサン疲れたよぉ~。」
「おい、グズグズするな。ディオラ。行くぞ!」
「えぇ~・・・リョ~ウ。おい、リョ~~ウ。」
「何だ!」
「おんぶして?」
「子供か、お前は!」
「亮、ここで野宿の準備をした方が無難だぜ?」
「カスール?」
「そうですねぇ。この先は登りの道が多くなりますから、疲れを残したままは危険です。」
「二人がそういうなら・・・ここで止めておくよ。・・・お荷物も居るしな。」
「おぉ~?誰の事じゃ?」
「お前だ!お前!!」
魔王討伐・・・前途多難なんですけど・・・。
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