罪と愛

黒田亜味

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些細な理由。

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 私が矢野君に興味を持ち始めたのは中学二年生のときだった。
 彼はサッカー部のキャプテンであり、周囲の人からの人望も厚かった。私も何度か話したことがあるけど、優しく接してくれた。
  そんな彼に興味を持ったのは些細な出来事だった。
 それは秋と部活動をしていた時だ。
 私の中学校は生徒全員が部活動に入らないといけない校則があった。そのため私と秋は陸上部で活動していた。
 矢野くんがいるサッカー部はグラウンドの中心にあるサッカーコートで練習をしている。だから陸上部とサッカー部は隣り合わせで練習をしている。
 夏の練習の際、私は長距離の練習をしていた。当時、外の気温は30度をとうに超えていた。あまりの暑さに私は体の不調により倒れてしまった。助けを呼びたくても、あまり声が出なかった。
 そんな時私の元に駆けつけてくれたのが矢野くんだった。矢野くんは私のことを介護してくれた。
  軽い女と言われても仕方ないけど、私はこの日から矢野君に興味を持ち始めた。彼と話したい。最初は些細な思いしかなかった。けれど日が経つにつれ彼に対する思いが強く、深くなった。彼の横を歩く女になりたい。私はそんなことを毎日のように考えるようになった。
 
  しかし、私の想いを一瞬で裏切るような出来事が起きた。
 それは、矢野君と美希が付き合い始めたことだ。
 初めてそのことを知った時、私は信じられなかった、また同時に美希に対する怒りを覚えた。
 秋の想いを知ったのは数ヶ月後だった。驚きも強かったが、私は一つのことが頭によぎった。


「秋と美希を付き合わせればいいんだ。」


 そうだ。うまくいけば、私が矢野君に近づける機会ができる。私は、最低な女だと思う。それでも自分のためという気持ちが勝ってしまったのだ。 

 その日から、私は必死に秋の為に相談を受けたり、アドバイスをした。罪悪感は多少あったが、応援はしていた。
  中学校卒業後ももちろん秋の気持ちは変わらず、美希も矢野君と未だに付き合っている。そんな私達を神様は見ていたのか、四人とも同じ高校に入学した。しかし、何年も美希と矢野君が一緒にいることを見るのは、辛い。早く付き合いたい。

「いつか、君の隣にいるからね。」
  そんなことを毎日想いながら、私は今日も彼を見ている。
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