エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第四章-⑶ ラスボスとの直接対決

フライト時間は確かめて

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「あのさ、いつまで泣いてるわけ?」
「もう、すこ……少しだ! あと少しで止ま……止まらせるから……!!」
「そう言い続けて、何時間経っているかわかってる?」


 隣からは、そんなゾーイの呆れた声が聞こえてくるが、しょうがないだろ!
 こればっかりは、俺の意思だけじゃ止まらないんだよ!
 飛行機は、クレアとモーリスによって無事に離陸をして、俺達は地上に別れを告げた。
 その際に、少し離れたところから、手を振って、俺達のために最後まで走り続けてくれた、レオ、コタロウ、モカ。
 最後の最後にまた俺は、聞こえているわけもないのに、必死に名前と感謝の意を叫びまくったのだが、興奮冷めやらぬ状態というか何というか……俺は、出発してからだいぶ経つ今も、涙が止まってくれることがなく、隣のゾーイにため息をつかれる始末だった。


「あのね? さすがに泣きすぎ。もうあれから二時間以上は経ってんのよ? まあ、そんな状態でも、しっかり地図係として責務を全うしてる姿には、ある意味関心するけどね?」
「は、はあ!? に、二時間って……それは大げさすぎるだろう!?」
「どこがよ。自分で地図してるくせに時間把握ぐらいしといてよね? もう、韓国の上空ら辺だとかって、自分でさっき言ったんじゃないのよ」
「そ、そうだったっけかって……韓国を通り過ぎたってことは、北京まで二時間切ったじゃないか!」
「だから、さっきから、そう言ってんでしょうが! 何を聞いとんだ!」


 この飛行機の目的地は、日本からのフライト時間、約四時間にあたる、地上時代に中国と呼ばれた国の首都、北京。
 正確には、その遥か上空に浮かぶ中心島である……そこに俺達は乗り込む。
 ボロボロになりながらも、どうにか地図係として機能をしていた俺だったが、とにかく、細かいところまでの把握をできておらず、気付けば目的地まで二時間を切っていると、ゾーイからの激しめの怒号が飛ぶことになった。
 まさかの事実のおかげで、知らぬ間に涙も引っ込むわけだ……


「つーか、昴が引くぐらい泣くから、クレアもモーリスも、あんたの勢いに圧倒されて、全然泣けてないのよ?」
「え? それ、本当か……?」


 すると、ゾーイはようやく落ち着いた俺に、さらなる衝撃の事実を告げる。
 まさかの内容に、俺は目の前の二人に問うのだが……


「ま、まあ……自分より悲しんでる人を見たら、何か冷静になっちゃって……」
「まさか、ここで一番取り乱すのが、昴くんだとは……計算外でしたね?」
「うわあ……二人とも、本当にごめ……」
「謝る余裕あるなら、大丈夫ね? 目的地に着く前に作戦の最終確認したいんだけど?」
「本当に、面目ないです……」
 

 その時の振り返った、クレアの精一杯の愛想笑いとか、モーリスの眼鏡の奥の目が俺から逸れた時とか……こういうのを居た堪れないって言うんだな。
 けど、そんな俺より、さっさと本題に入りたいゾーイの言葉と圧により、俺は俯くことしかできなかった。
 まさか、自分がここまでお涙頂戴的展開に弱いとは……


『全員、聞こえてる? 今から、作戦の最終確認をするわよ』


 まあ、そんな情けなく縮こまる俺のことなんか気にするはずもなく、ゾーイは機内放送を使って、俺達全員に対しての作戦の最終確認を始めた。


『まず、このまま中心島にある首相官邸の裏にある飛行場に着陸する。混乱を避けるために、大人しく全員で素性を明かして、あくまで話し合いからマイルズに会わせてもらう算段を取り付ける』


 そう、俺達はあくまで平和的な方向で話を進めるつもりだ。
 初めはいろいろと面倒なこととか、警戒とかをされるだろうけど、素性を明かせば問題はないはずだ……


『ここで重要なことが、マイルズとの話し合いの席には、シャノンは当たり前だけど、必ずあと三人は同席するように仕向ける。そして、ローレン家一族には自首を促す』


 自首――それが、この作戦の最終的な満点の目標だ。
 そして、それを成功させるには、その話し合いの場には、ローレンさん以外の人間が必要不可欠だ。
 洗脳が解けたとはいえども、マイルズ本人に会ったらまだまだ油断は皆無。
 俺達全員が難しくても、意地でもそこの条件は譲ってはいけないだろうということが、俺達の総意だが……


『もし、マイルズが自首を拒んだ時の場合のことを考え、すべての会話をボイスレコーダーで録音しておき、後にそれをメディア各社に送り付けて罪を暴く。そして、地上への救出隊を要請する。ここまでが、作戦よ』


 今これを、ローレンさんは、どんな表情で聞いているのだろうか……
 すでに、最悪の場合の対処はローレンさんも同意済みだが……そうならないことを、この場の誰もが望んでいる。
 俺達は何も、無駄な戦争を始めたいわけではないけど、最悪の場合は鬼になるしかないのだ。


『それと、もう一つのお知らせよ。北京上空に入ったわ』
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