221 / 257
第四章-⑵ ナサニエル墜落事件の真相
必ず帰るから待っていて
しおりを挟む
「納得しろとは言わないが、受け入れてくれると助かる」
頭を下げたアランは、群衆に向かって静かにそう告げる。
そこまで大きな声でもないのに、妙に響いた気がするのは、その発言者がアランということが関係しているだろう。
「ね、ねえ? あれって……アラン・ロジャーだよね?」
「え? あ、あー、人違いか!?」
「それはねえな……アラン・ロジャー以外に、あんな青髪の奴はいないだろ」
ほら、静まっていた群衆もあっという間に騒がしさを取り戻した。
おそらく、目の前の光景が信じられなくて、困惑の声が上がってるんだろう。
確かに、入学式当日に暴力事件を起こして数十人を病院送りにした不良のレッテルを貼られた上に、当の本人も無口で目付きが悪くて、何を考えているのかがわからない誰もが恐れる存在だっていうのが、アランの印象だ。
俺も最初の頃は話しかけることも、情けないけどビビってたな、けど……
「今回のこの事態を招いたのは、完全に俺達のエゴで、信頼の問題だ。はっきり言って、俺は誰を一番信頼してるか、命を預けられるかと問われれば、迷わず、この処刑台に上がってる奴ら全員の名前を上げる。悪いが、俺に限って言えば、この作戦は、こいつらじゃなければ成り立たないとすら思っている」
アランは頭を上げて、見下ろす群衆にはっきりとそう言ったのだ。
泣きそうになるのをどうにかこうにか堪えたのは、我ながら懸命だった。
他のみんなも、アランの言葉に目を赤くしてるし……シン、ジェームズ、菜々美に関しては完璧に泣いてる。
俺達がこんなに嬉しいんだから、群衆の奴らなんて意味わからないだろうな。
孤高の存在で、血も涙はもちろん、情けさえもないって言われてるアラン・ロジャーが、平凡な俺達に命を預けられるって、言ってんだから……
「けど、それと同時にお前らが、俺達のことをそこまで信頼してないってことは重々承知してるつもりだ。何せ、俺達とお前らにはナサニエルを出てからの空白の数か月間があるからな……けど、俺は生憎、話しをするってことがどうにも苦手なんだ。だから、頭を下げる。この行動の意味と覚悟ってやつを、汲み取ってくれると助かる。それだけだ……」
ああ、本当に俺の周りの人間っていうのは、どいつもこいつも馬鹿みたいにかっこいい奴ばっかりだ……
群衆の奴らは知らないだろうな?
アランがどんなに、男らしくて、仲間思いで、優しくなったか……いや、アランは最初から、誰より男らしくて、仲間思いで、優しかったな。
それを示すことが、不器用で、人より誤解されやすかっただけだ。
アラン・ロジャーって男は、仲間のためなら、平気で自分がどう思われたって構わないって思うし、いつも全力で仲間を守ってくれるような人間だよ。
「鎮まりたまえ! まだ、私達の話は終わってはいないぞ!」
そして、もう一人だ……見違えるほど堂々とするようになったよな?
「私達はまだまだ未熟だ! そのことを偽るつもりはないが、これだけはどうか信じてはくれないだろうか!」
ハロルドの力強い言葉、一言、一言に心からの気持ちが込められているのが伝わってくる。
一歩、前に出たハロルドの背中を、アランは笑いながら叩いて、元いた場所へと戻っていく。
それって、この後のことはハロルドに任せたってことだよな?
俺も……俺達も、それには賛成だよ。
「空島に帰り、また元通りの平和な日々を取り戻したいと、君達と同じ気持ちを抱いている! そして、私は、君達に空島の景色を再び見せると、それを必ず叶えてみせると……この、ハロルド・早乙女の名のもとに誓ったのだ! すべての不安や不満は、私にぶつけてくれ! 頼む! どうか……信じて、待っていてはくれないだろうか!」
言い切った、普段から言い負かされてばっかりだったハロルドが、今回は最後まで言い切った……まあ、今回は口を挟む隙なんてなかったな。
なあ、ハロルド? 俺は、君に謝らなきゃいけないことがあるんだ。
初めて会った時、俺はハロルドのことを軽視していた。
よく口が回るけど、それだけで実力が伴わなくて、何か威厳がない奴だなって思ってたんだ。
けど、間違ってたよ……お前は、誰よりも必要な存在だったんだ。
空気が読めなくてすぐ誰かの逆鱗に触れるし、すぐパニックになるし、怖がりのくせに変なとこで強がりだし……
そんな感じで、まだまだダメダメなとこは出てくるけど、それ以上にハロルドは、その場にいるだけで雰囲気を明るくしてくれるって長所がある。
ハロルドもゾーイとは違う意味で、その場の空気を一瞬で覆してしまう能力を持っている。
今回のハロルドは、その能力を遺憾なく発揮したな。
空回りしたって、どんな時でも一所懸命なハロルドの言葉だったから、群衆は信じたんだ……
その証拠に、もうどこにも、不平不満を言ってる奴なんていなかった。
「まあ、少し待ってな。さっさと首相の首、へし折って来るからさ」
すると、ずっと黙ってたのに、ここにきて満を持してと言うか?
言ってることは物騒だけど、君の声は本当にすごく安心する……案の定、君はニヤリと笑っていた。
懐かしいな……地上に落ちてすぐ、ナサニエルで君が群衆を言い負かした時のことを思い出すよ。
あの時は、君を群衆の中から見上げたり、背中に隠れているだけだった俺達だけど、今なら少しは君の力になれるよ。
そのゾーイの言葉に対し、割れんばかりの歓喜の声が空を突きぬけたのは言うまでもなかった。
頭を下げたアランは、群衆に向かって静かにそう告げる。
そこまで大きな声でもないのに、妙に響いた気がするのは、その発言者がアランということが関係しているだろう。
「ね、ねえ? あれって……アラン・ロジャーだよね?」
「え? あ、あー、人違いか!?」
「それはねえな……アラン・ロジャー以外に、あんな青髪の奴はいないだろ」
ほら、静まっていた群衆もあっという間に騒がしさを取り戻した。
おそらく、目の前の光景が信じられなくて、困惑の声が上がってるんだろう。
確かに、入学式当日に暴力事件を起こして数十人を病院送りにした不良のレッテルを貼られた上に、当の本人も無口で目付きが悪くて、何を考えているのかがわからない誰もが恐れる存在だっていうのが、アランの印象だ。
俺も最初の頃は話しかけることも、情けないけどビビってたな、けど……
「今回のこの事態を招いたのは、完全に俺達のエゴで、信頼の問題だ。はっきり言って、俺は誰を一番信頼してるか、命を預けられるかと問われれば、迷わず、この処刑台に上がってる奴ら全員の名前を上げる。悪いが、俺に限って言えば、この作戦は、こいつらじゃなければ成り立たないとすら思っている」
アランは頭を上げて、見下ろす群衆にはっきりとそう言ったのだ。
泣きそうになるのをどうにかこうにか堪えたのは、我ながら懸命だった。
他のみんなも、アランの言葉に目を赤くしてるし……シン、ジェームズ、菜々美に関しては完璧に泣いてる。
俺達がこんなに嬉しいんだから、群衆の奴らなんて意味わからないだろうな。
孤高の存在で、血も涙はもちろん、情けさえもないって言われてるアラン・ロジャーが、平凡な俺達に命を預けられるって、言ってんだから……
「けど、それと同時にお前らが、俺達のことをそこまで信頼してないってことは重々承知してるつもりだ。何せ、俺達とお前らにはナサニエルを出てからの空白の数か月間があるからな……けど、俺は生憎、話しをするってことがどうにも苦手なんだ。だから、頭を下げる。この行動の意味と覚悟ってやつを、汲み取ってくれると助かる。それだけだ……」
ああ、本当に俺の周りの人間っていうのは、どいつもこいつも馬鹿みたいにかっこいい奴ばっかりだ……
群衆の奴らは知らないだろうな?
アランがどんなに、男らしくて、仲間思いで、優しくなったか……いや、アランは最初から、誰より男らしくて、仲間思いで、優しかったな。
それを示すことが、不器用で、人より誤解されやすかっただけだ。
アラン・ロジャーって男は、仲間のためなら、平気で自分がどう思われたって構わないって思うし、いつも全力で仲間を守ってくれるような人間だよ。
「鎮まりたまえ! まだ、私達の話は終わってはいないぞ!」
そして、もう一人だ……見違えるほど堂々とするようになったよな?
「私達はまだまだ未熟だ! そのことを偽るつもりはないが、これだけはどうか信じてはくれないだろうか!」
ハロルドの力強い言葉、一言、一言に心からの気持ちが込められているのが伝わってくる。
一歩、前に出たハロルドの背中を、アランは笑いながら叩いて、元いた場所へと戻っていく。
それって、この後のことはハロルドに任せたってことだよな?
俺も……俺達も、それには賛成だよ。
「空島に帰り、また元通りの平和な日々を取り戻したいと、君達と同じ気持ちを抱いている! そして、私は、君達に空島の景色を再び見せると、それを必ず叶えてみせると……この、ハロルド・早乙女の名のもとに誓ったのだ! すべての不安や不満は、私にぶつけてくれ! 頼む! どうか……信じて、待っていてはくれないだろうか!」
言い切った、普段から言い負かされてばっかりだったハロルドが、今回は最後まで言い切った……まあ、今回は口を挟む隙なんてなかったな。
なあ、ハロルド? 俺は、君に謝らなきゃいけないことがあるんだ。
初めて会った時、俺はハロルドのことを軽視していた。
よく口が回るけど、それだけで実力が伴わなくて、何か威厳がない奴だなって思ってたんだ。
けど、間違ってたよ……お前は、誰よりも必要な存在だったんだ。
空気が読めなくてすぐ誰かの逆鱗に触れるし、すぐパニックになるし、怖がりのくせに変なとこで強がりだし……
そんな感じで、まだまだダメダメなとこは出てくるけど、それ以上にハロルドは、その場にいるだけで雰囲気を明るくしてくれるって長所がある。
ハロルドもゾーイとは違う意味で、その場の空気を一瞬で覆してしまう能力を持っている。
今回のハロルドは、その能力を遺憾なく発揮したな。
空回りしたって、どんな時でも一所懸命なハロルドの言葉だったから、群衆は信じたんだ……
その証拠に、もうどこにも、不平不満を言ってる奴なんていなかった。
「まあ、少し待ってな。さっさと首相の首、へし折って来るからさ」
すると、ずっと黙ってたのに、ここにきて満を持してと言うか?
言ってることは物騒だけど、君の声は本当にすごく安心する……案の定、君はニヤリと笑っていた。
懐かしいな……地上に落ちてすぐ、ナサニエルで君が群衆を言い負かした時のことを思い出すよ。
あの時は、君を群衆の中から見上げたり、背中に隠れているだけだった俺達だけど、今なら少しは君の力になれるよ。
そのゾーイの言葉に対し、割れんばかりの歓喜の声が空を突きぬけたのは言うまでもなかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ラストフライト スペースシャトル エンデバー号のラスト・ミッショ
のせ しげる
SF
2017年9月、11年ぶりに大規模は太陽フレアが発生した。幸い地球には大きな被害はなかったが、バーストは7日間に及び、第24期太陽活動期中、最大級とされた。
同じころ、NASAの、若い宇宙物理学者ロジャーは、自身が開発したシミレーションプログラムの完成を急いでいた。2018年、新型のスパコン「エイトケン」が導入されテストプログラムが実行された。その結果は、2021年の夏に、黒点が合体成長し超巨大黒点となり、人類史上最大級の「フレア・バースト」が発生するとの結果を出した。このバーストは、地球に正対し発生し、地球の生物を滅ぼし地球の大気と水を宇宙空間へ持ち去ってしまう。地球の存続に係る重大な問題だった。
アメリカ政府は、人工衛星の打ち上げコストを削減する為、老朽化した衛星の回収にスペースシャトルを利用するとして、2018年の年の暮れに、アメリカ各地で展示していた「スペースシャトル」4機を搬出した。ロシアは、旧ソ連時代に開発し中断していた、ソ連版シャトル「ブラン」を再整備し、ISSへの大型資材の運搬に使用すると発表した。中国は、自国の宇宙ステイションの建設の為シャトル「天空」を打ち上げると発表した。
2020年の春から夏にかけ、シャトル七機が次々と打ち上げられた。実は、無人シャトル六機には核弾頭が搭載され、太陽黒点にシャトルごと打ち込み、黒点の成長を阻止しようとするミッションだった。そして、このミッションを成功させる為には、誰かが太陽まで行かなければならなかった。選ばれたのは、身寄りの無い、60歳代の元アメリカ空軍パイロット。もう一人が20歳代の日本人自衛官だった。この、二人が搭乗した「エンデバー号」が2020年7月4日に打ち上げられたのだ。
本作は、太陽活動を題材とし創作しております。しかしながら、このコ○ナ禍で「コ○ナ」はNGワードとされており、入力できませんので文中では「プラズマ」と表現しておりますので御容赦ください。
この物語はフィクションです。実際に起きた事象や、現代の技術、現存する設備を参考に創作した物語です。登場する人物・企業・団体・名称等は、実在のものとは関係ありません。
ゲノム~失われた大陸の秘密~
Deckbrush0408
ファンタジー
青年海外協力隊としてアフリカに派遣された村田俊は、突如として起きた飛行機事故により神秘の大陸「アドリア大陸」に漂着する。
未知の土地で目を覚ました彼は、魔法を操る不思議な少年、ライト・サノヴァと出会う。
ライトは自分の過去を探るために、二人は共に冒険を始めることに。
果たして、二人はアドリア大陸の謎を解き明かし、元の世界に帰る方法を見つけることができるのか?そして、ライトの出生にまつわる真実とは何なのか?
冒険の果てに待ち受ける真実が、彼らの運命を大きく変えていく。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
エレメンツハンター
kashiwagura
SF
「第2章 エレメンツハンター学の教授は常に忙しい」の途中ですが、3ヶ月ほど休載いたします。
3ヶ月間で掲載中の「第二次サイバー世界大戦」を完成させ、「エレメンツハンター」と「銀河辺境オセロット王国」の話を安定的に掲載できるようにしたいと考えています。
3ヶ月後に、エレメンツハンターを楽しみにしている方々の期待に応えられる話を届けられるよう努めます。
ルリタテハ王国歴477年。人類は恒星間航行『ワープ』により、銀河系の太陽系外の恒星系に居住の地を拡げていた。
ワープはオリハルコンにより実現され、オリハルコンは重力元素を元に精錬されている。その重力元素の鉱床を発見する職業がルリタテハ王国にある。
それが”トレジャーハンター”であった。
主人公『シンカイアキト』は、若干16歳でトレジャーハンターとして独立した。
独立前アキトはトレジャーハンティングユニット”お宝屋”に所属していた。お宝屋は個性的な三兄弟が運営するヒメシロ星系有数のトレジャーハンティングユニットで、アキトに戻ってくるよう強烈なラブコールを送っていた。
アキトの元に重力元素開発機構からキナ臭い依頼が、美しい少女と破格の報酬で舞い込んでくる。アキトは、その依頼を引き受けた。
破格の報酬は、命が危険と隣り合わせになる対価だった。
様々な人物とアキトが織りなすSF活劇が、ここに始まる。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる