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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
滑走路の散歩は地獄道
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「地上の夏も終わりか? 最近になって涼しい日が多いと思わない?」
「あ、ああ……まあね?」
「冬になる頃には、あたし達は空と地上のどっちにいるだろうね~?」
「どっちだろうな……ははっ……」
俺の今の願いは帰りたいすぐに、ただそれだけだ。
アラン、サトル、シン、望の四人を見送ってから、俺とローレンさんはゾーイに促されるままに、滑走路を散歩することになった。
まだ歩き始めて五分とかだけど、俺には三時間ぐらいに感じてる……
主に会話をするのは俺とゾーイで、ローレンさんは三歩ぐらい後ろから俺達の後をついてくるばかり。
見事に、一言も発そうとしなかった。
本当に何でこんな、気まずいって検索をかけたら例として出てきそうな場面に俺はいるのだろうか……
そもそも、俺とローレンさんは、何で空港に連れてこられたんだ?
「さてさて、世間話はこれぐらいにして本題に入ろっか!」
「……え?」
「だって、このままだと、いよいよシャノンが一言も喋らないで帰ることになりそうじゃん?」
そんな疑問を覚え、思考に意識を飛ばしていると、ゾーイからそんな声が上がり、思わず現実に引き戻される。
ゾーイは、俺の零した聞き返すような言葉に、俺ではなく、俺の後ろに……ローレンさんに視線を向けながら答えた。
「あ、いえ……私のことは、その……別に気にしなくても大丈夫だから」
「そうはいかないのよ。今日は、シャノンに話が聞きたかったんだもの」
「私に、あなたが話を……?」
視線を向けられたローレンさんは、少しだけ体をビクつかせながら、俯きがちに答える。
そんなローレンさんに、ゾーイは見たこともないような笑顔で話しかけるのだけど……これって、まさか、ゾーイなりの愛想笑いなのかな?
そして、何より、ローレンさんに話が聞きたいって……俺はいよいよ、何でここにいるんだよ!?
まあ、そんな俺の疑問なんかをこんなそこら中をまるで針がつんざくような、ギスギスした空気の中で聞けるわけもなく、とにかく俺は見守ることにした。
「そうよ? だから、そんなに離れたところにいないで。というか、あたしの前を歩けばいいのに」
「そっ、それは結構よ!」
しかし、ゾーイが前に来ればと、ローレンさんに告げると、ローレンさんは異常なほどに慌て、大声を上げたのだ。
「あの、近くに行くから大丈夫……!!」
「あ、そう? じゃあ、お願いするわ」
凍りついた空気に気付き、ハッとしたように我に返ったローレンさんは、また俯きがちに答える。
けど、何よりも驚いたのは、それに対して、ゾーイが特に気にした様子もなく受け流したことだった。
嘘だろ? そこ突っ込まないのか?
「じゃあ、本題ね。シャノンは、例の殺人事件の犯人像について、どう思う?」
俺が混乱してると、ゾーイは再び歩き出し、まっすぐローレンさんに告げた。
俺とローレンさんは、とりあえず、ゾーイの後ろをついて行く。
正直、その質問をゾーイが、ローレンさんに投げかけたことには、疑問はあまりなかった。
ローレンさんに、今ゾーイが用があるとしたら、そのことしかないと、何となく思っていたから。
「どうっていう……のは……?」
「それがさ、まったくもって、犯人像が浮かび上がらないのよ。毒殺なんて、正直男女関係ないと思うしさ」
「あ、ああ……!! そういうことね……それならば、私は犯人は屈強な男性かなと思ったわね……」
最初は探るように、警戒していたローレンさんだったが、ゾーイの言葉を聞くとなぜかホッとしたようにすら見えた。
そして、犯人像をローレンさんは迷うこともなく、男だと言い切った。
「へー、その理由は?」
「それに、正直言うと、内部の人間の犯行だとも限らないと思うわ。以前から、計画的にナサニエルのことを調べていた外部からの侵入者の犯行って線も捨ててはいけないと思うのよ」
「ほうほう、外部で男の犯人ね~?」
「遺体は身長百八十越えの男性だったのよね? 仲間割れをして、抵抗しようとした犯人がとっさに飲ませたとか……そうなると、抵抗されたら女性に犯行は難しいと思うのよね……」
「すごいね。初めて、シャノンがそんなに喋ってるとこ見たかも」
「あ、今回は、私が思ったことを、ただ単に言っただけだから……!!」
饒舌に喋るなんて、ローレンさんには当てはまらないかと思っていたが、今のローレンさんは誰が見ても饒舌だった。
言ってることはわかるけど、何だか違和感があるんだよな。
しかも、あんなにスラスラと……今度は、ゾーイもそんなローレンさんのことを指摘している。
すると、指摘をされたローレンさんは笑いながら……誰が見ても明らかな愛想笑いで、答える。
何なんだ……彼女は一体、何を?
そんな風に、俺の中での違和感と不信感が爆発しようとしていた時……
「本当。まるで、何かから目を逸らさせようとしてるみたいに、饒舌ね?」
「あ、ああ……まあね?」
「冬になる頃には、あたし達は空と地上のどっちにいるだろうね~?」
「どっちだろうな……ははっ……」
俺の今の願いは帰りたいすぐに、ただそれだけだ。
アラン、サトル、シン、望の四人を見送ってから、俺とローレンさんはゾーイに促されるままに、滑走路を散歩することになった。
まだ歩き始めて五分とかだけど、俺には三時間ぐらいに感じてる……
主に会話をするのは俺とゾーイで、ローレンさんは三歩ぐらい後ろから俺達の後をついてくるばかり。
見事に、一言も発そうとしなかった。
本当に何でこんな、気まずいって検索をかけたら例として出てきそうな場面に俺はいるのだろうか……
そもそも、俺とローレンさんは、何で空港に連れてこられたんだ?
「さてさて、世間話はこれぐらいにして本題に入ろっか!」
「……え?」
「だって、このままだと、いよいよシャノンが一言も喋らないで帰ることになりそうじゃん?」
そんな疑問を覚え、思考に意識を飛ばしていると、ゾーイからそんな声が上がり、思わず現実に引き戻される。
ゾーイは、俺の零した聞き返すような言葉に、俺ではなく、俺の後ろに……ローレンさんに視線を向けながら答えた。
「あ、いえ……私のことは、その……別に気にしなくても大丈夫だから」
「そうはいかないのよ。今日は、シャノンに話が聞きたかったんだもの」
「私に、あなたが話を……?」
視線を向けられたローレンさんは、少しだけ体をビクつかせながら、俯きがちに答える。
そんなローレンさんに、ゾーイは見たこともないような笑顔で話しかけるのだけど……これって、まさか、ゾーイなりの愛想笑いなのかな?
そして、何より、ローレンさんに話が聞きたいって……俺はいよいよ、何でここにいるんだよ!?
まあ、そんな俺の疑問なんかをこんなそこら中をまるで針がつんざくような、ギスギスした空気の中で聞けるわけもなく、とにかく俺は見守ることにした。
「そうよ? だから、そんなに離れたところにいないで。というか、あたしの前を歩けばいいのに」
「そっ、それは結構よ!」
しかし、ゾーイが前に来ればと、ローレンさんに告げると、ローレンさんは異常なほどに慌て、大声を上げたのだ。
「あの、近くに行くから大丈夫……!!」
「あ、そう? じゃあ、お願いするわ」
凍りついた空気に気付き、ハッとしたように我に返ったローレンさんは、また俯きがちに答える。
けど、何よりも驚いたのは、それに対して、ゾーイが特に気にした様子もなく受け流したことだった。
嘘だろ? そこ突っ込まないのか?
「じゃあ、本題ね。シャノンは、例の殺人事件の犯人像について、どう思う?」
俺が混乱してると、ゾーイは再び歩き出し、まっすぐローレンさんに告げた。
俺とローレンさんは、とりあえず、ゾーイの後ろをついて行く。
正直、その質問をゾーイが、ローレンさんに投げかけたことには、疑問はあまりなかった。
ローレンさんに、今ゾーイが用があるとしたら、そのことしかないと、何となく思っていたから。
「どうっていう……のは……?」
「それがさ、まったくもって、犯人像が浮かび上がらないのよ。毒殺なんて、正直男女関係ないと思うしさ」
「あ、ああ……!! そういうことね……それならば、私は犯人は屈強な男性かなと思ったわね……」
最初は探るように、警戒していたローレンさんだったが、ゾーイの言葉を聞くとなぜかホッとしたようにすら見えた。
そして、犯人像をローレンさんは迷うこともなく、男だと言い切った。
「へー、その理由は?」
「それに、正直言うと、内部の人間の犯行だとも限らないと思うわ。以前から、計画的にナサニエルのことを調べていた外部からの侵入者の犯行って線も捨ててはいけないと思うのよ」
「ほうほう、外部で男の犯人ね~?」
「遺体は身長百八十越えの男性だったのよね? 仲間割れをして、抵抗しようとした犯人がとっさに飲ませたとか……そうなると、抵抗されたら女性に犯行は難しいと思うのよね……」
「すごいね。初めて、シャノンがそんなに喋ってるとこ見たかも」
「あ、今回は、私が思ったことを、ただ単に言っただけだから……!!」
饒舌に喋るなんて、ローレンさんには当てはまらないかと思っていたが、今のローレンさんは誰が見ても饒舌だった。
言ってることはわかるけど、何だか違和感があるんだよな。
しかも、あんなにスラスラと……今度は、ゾーイもそんなローレンさんのことを指摘している。
すると、指摘をされたローレンさんは笑いながら……誰が見ても明らかな愛想笑いで、答える。
何なんだ……彼女は一体、何を?
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