エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ

どうせ帰りはするのだけど

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「あー、ゾーイ? あくまで、これは僕の解釈なんだけど……鉄の鳥って飛行機のこと? 今、ゾーイは僕達に、この飛行機のどれかを飛ばせって言ったってことで合ってる?」
「さすが、サトルね! 話がわかってるじゃん!」


 あのサトルがどんよりとした表情を隠しもせず、ゾーイに確認するようにそう尋ねた。
 それを聞いたゾーイは、それは嬉しそうな笑顔を浮かべるので……俺達は、全員でその場に手をついたのだった。


「全員、どうしたよ? 熱中症か?」
「お前のせいだろ! 何が、熱中症かだよ! 熱中症の方が百倍マシだ!」
「ゾーイ、わかってるのか!? これは冷蔵庫を直すのと訳が違うんだぞ!?」


 そんな俺達に向かってかけられたゾーイの言葉に、望はブチ切れ、シンは絶叫をするのだった。


「大丈夫だって! 空島の構造は、地上時代の飛行機の機体のほとんどを参考に製造されたらしいから、エリート学園に入学できたあんた達なら必ず直せるってば! あたしは信じてるよ!」


 その言葉で、ゾーイは俺達のことを慰めてるつもりなのだろうか?
 今、俺達がいる空港の滑走路には、約千年前に乗り捨てられたのであろう飛行機が、十機ほど残っている状態だ。
 約千年分の汚れとかは目立つけど、外装に特に問題はなさそうだ、翼もエンジンもちゃんとついている。
 ゾーイの言う通りに、空島の製造の元となったのは紛れもなく飛行機だ。
 機械工学科のアランとシンはその空島の整備を勉強してるし、建築科の望とサトルも大まかな設計などは一通りに網羅してると言っいた。
 確かに、理論上では、四人に飛行機を直せないこともないんだろうけど……


「ああ言ってるけど、どうなんだ?」
「まあ、中を見てみないことには何も言えないよな……ははっ」


 俺は隣の、ゾーイに質問をしてから無言を貫いていたサトルに、恐る恐る同情の眼差しとともに問いかけた。
 そして、俺の質問に返ってきたそのサトルが、これまた同情を誘った。
 もう目とか、焦点合ってないし、その笑い方とか諦めてるじゃないか……


「つまり、ゾーイ。お前の考えは、この飛行機を直して、これで空島まで飛んで行くってことなわけだな?」
「ご名答! さすがアラン! よっ、若旦那!」
「……わかった。直してやるよ、時間は必要だろうけどな」


 しかし、サトルが何か大切なものを諦めていた一方で、アランとゾーイの会話は意外な方向に進んでいたのだった。
 俺もだけど、全員が耳を疑ったことであろう……


「は、はあ!? 何言ってんだ!?」
「そういう展開か……」
「アラン、正気なのかよ!?」


 アランに掴みかかろうとした望を、俺は慌てて押さえるが、俺にいたっては驚きすぎて声も出なかった……
 サトルは静かに呟きを零すのと同時に天を仰ぎ、シンはオーバーリアクションとともにアランに叫んでいた。
 よりにもよって、アランから肯定の言葉を聞くことになろうとは……


「話が早くて助かるわ。レオ達にはこのことは話してるから、当分の王国とナサニエルの仕事は気にしないで、飛行機のことだけに集中して。明らかに人手が足りないんだったら、何人駆り出したって構わないから」
「ああ、こっちに集中させてもらう」
「よかった~! じゃあ……!!」
「その代わり、ゾーイ。お前からは、俺達に何かないのか?」


 ゾーイはニヤリと笑って、アランにことの次第を共有していく。
 待って、レオ達にはって……明らかにもうこの展開に何がなんでも持っていく気だったんじゃないかよ……
 俺達は口々に確信犯かよとか、その他にもいろいろと呟いていたのだが、アランだけは、どうやらそれを予想していたようでまったく驚いていなかった。
 これはもう確定だなと、ゾーイもそう思ったであろう時に、何とアランがそこに待ったをかけたのだ。
 そんな展開に、俺達は目を見張った。


「あたしから?」
「借りを作るのは嫌いだろ? 俺達はこの鉄の鳥を生き返らせるなんて、大層なことをするんだ。それなりの見返りはお前から、何かあるのか?」
「ほほう、そうきましたか?」


 ゾーイもそんなアランの言葉は意外だったようで、ほんの一瞬だけ驚きの表情を見せていた。
 しかし、アランからのニヤリとした挑戦的な笑みをくらうと、ゾーイも同じようにニヤリと面白そうに返したのだ。
 ああ、なるほど……アランはゾーイに一杯食わせようとしてるのか。
 どうせ、空島に帰るために大変な重労働を課せられるのなら、何か旨味をゾーイから搾り取ろうってわけなんだ。


「アランも考えたよな」
「そりゃ、タダじゃ起きないだろ?」


 俺の言葉に、サトルは面白いものに期待を寄せてる目をしながら返事を返してきた。


「散々、好き勝手やられたからな?」
「さてさて、女王様はどうする……」


 さらに、俺の反対側では、望は苦い顔をしながら、シンはまるでギャンブラーの顔をしながら、呟く。
 俺達四人は、この歴史的な瞬間を絶対に逃すまいとして、アランとゾーイに釘付けだった。
 単純に、全員がゾーイが何を送るのか興味があったのだ……けど。


「それじゃあ、キスでどう?」
「は?」
「だから、あたしからのキスよ。望とアランは、あたしのこと好きじゃん? それにサトルとシンだって、あたしのことは憎からず思ってるでしょ?」


 聞き間違いかと思って、アランが間の抜けたような声を出したが、それは全然聞き間違いではなく……
 君はそうやって、また淡々と俺達のことを翻弄するのだった。
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