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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
捨てるなんて誰が言った
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「ゾーイが、私達を認めた……!? 火事になるぞ! それか洪水だ!」
「地の果てまで蹴り飛ばされたいの?」
ハロルドはゾーイの怒りを買って、見事な蹴りをお見舞いされており、そのまま床にひっくり返っていた。
けど、ハロルドの言うことは最もだと誰もが思っていたと思う……まあ、それを口に出すなんてヘマはしないけど。
ゾーイは平気で嘘をつく。
その俺達にとって都合のいい言葉の裏には、きっと思惑がある……けど。
君のそれだけの、信用してるなんて簡単な言葉で、俺達の中の恐怖がすべて吹き飛んでしまったのは事実だ。
本当に思うんだよ、ゾーイならすべてを叶えちゃうんじゃないかって――
「……こんな半端な俺達が、国家を敵に回してひと暴れか。悪くないな」
アランは無表情なはずなのに、どこか嬉しさを含んだような表情で、そう言葉を発した。
それを皮切りに、すっかり笑顔と自信を取り戻した俺達は頷き合っていく。
我ながら、何て単純なんだよと笑ってしまうほどだけど、もう今は怖さなんかよりも、今度はどんな景色が待っているのかと楽しみさえ感じてしまっていた。
「はあ? 何をかっこつけてんの? 今さっきまで、渋りまくってたくせに!」
「記憶にないな。何の話だ」
「そんな雑な逃げ方が許されるの!?」
けど、アランの言葉を聞いて急に態度を変えた俺達を、ゾーイは訝しげに見回して、文句を言う。
それをアランがすっとぼけて、ゾーイは叫んでいた。
ゾーイ? 子どもみたいなことを言うけれど、君は魔法使いだよ。
君の言葉と君の存在が、俺達を変えてくれるんだ。
「まあ、やる気になったならあたしにはどうでもいいわ。とにかく! このコックピットから、すべては始まったの。何事も初心を忘れるべからずよ!」
「あー、ちょっと、言葉の使い方が違う気もするんだけど……?」
「細かいことも、どうでもいいわ。それじゃ、改めて、あのナサニエルが墜落をした日のことを、一から洗い直す! そのために、まずは何人かにグループを分けるわよ!」
すると、ゾーイは呆れたように、すぐさま切り替えて、そう叫ぶけど……それって、何か違くないかとゾーイの言葉に違和感を持った。
すぐにクレアが指摘するが、そんなことはゾーイには文字通り、もう塵ほどにどうでもいいことのようで、問答無用でグループ分けが始まったのだった。
「クレア、ハロルド、モーリス、ジェームズの四人は、防犯カメラの映像と音声データの解析をもう一度! 真由、菜々美、デルタ、ソニアの四人は、遺体の男の遺留品の捜査! その他はあたしと楽しくドライブ! さあ、頑張れ!」
「ままっ、待ちたまえ! ゾーイ!」
「ああ?」
「ヒイイイイ……!! あ、いや、いくつか質問があるのだが!」
「質問? 何がよ?」
そして、ゾーイは自分の言いたいことを終えると、何の説明もなしに、そのまま出て行こうとするので、叫びながら、体全体を使ってハロルドがゾーイの行く手を阻んだ。
正直、ナイスだと思ったが、それと同時にあの眼力でゾーイに睨まれたら、俺は立ち直れないなと思った……
ハロルド、お前は本当にいい奴だよ。
「まず、あの日に遺体の遺留品は粗方処分したのではなかったか? 遺体も土の中であるし……ハッ! まさか、遺体を掘り返すのか!?」
「そのままバチ当たって、地獄にでも連れ去られとけば?」
ゾーイは冷え切った目で、ハロルドに吐き捨てた。
ハロルドの言う通りに、俺達は全員で遺体をナサニエルが墜落した場所の、大きな木の根元に遺体を埋めた。
そして、遺留品は……と言っても、その遺体が身に付けていた作業着とアクセサリーしかなく、その時も調べたけど、手がかりになりそうなものは、何も出てこなかった。
それで、確かゾーイが、その遺留品は処分しておくと……そうか。
俺は記憶を辿りながら、そのすべてを察した。
「誰がないものを捜査しろなんて言うのよ、まったく……ほら」
ゾーイはため息をつきながら、コックピットの床下の収納の扉を開ける。
そして、そこから、あるものを取り出して、テーブルに置いたのだ。
そのあるものに、全員が目を丸くして驚いていた……そして、それは俺が予想した通りのものだったのだ。
「遺留品ならここよ。付着している血痕とか、全部がそのままよ。とにかく、ビリビリに破いたりしてもいいから、隈なく細部まで調べてちょうだいな。そのために、細かい作業が得意そうな医療科と調理科のあんた達に任せるんだから」
「何で、取ってあるんだよ!?」
「別に捨てるだなんて、一言も言った覚えないけど?」
望の叫びに、ゾーイはいつものごとくどこ吹く風で清々しく答える。
もう誰も、何もゾーイには言えないなと思っていたのだが……
「あの! それなら、私も! 私も医療科なのだけれど……その、遺留品の捜査のグループに呼ばれていないわ……!!」
「ああ、シャノンは、あたし達と別のところに来て? さっきから遺体って言葉を聞く度に顔色が悪くなってるし、遺留品を調べるのは難しいでしょ?」
「そんなことは……!!」
「来てね? 一緒に……ね?」
出会ってから一番、この時がローレンさんが大声を出した瞬間だったと思う。
焦ったように下手な笑顔で誤魔化すローレンさんだったが、ゾーイはそんな彼女に優しく問いかける……怖いほど。
そして、さらに言葉を続けようとしたローレンさんのことを、ゾーイは有無を言わせぬ笑顔で黙らせたのだ。
その二人のやり取りに、誰も口を挟むことなんてできなかった……
「地の果てまで蹴り飛ばされたいの?」
ハロルドはゾーイの怒りを買って、見事な蹴りをお見舞いされており、そのまま床にひっくり返っていた。
けど、ハロルドの言うことは最もだと誰もが思っていたと思う……まあ、それを口に出すなんてヘマはしないけど。
ゾーイは平気で嘘をつく。
その俺達にとって都合のいい言葉の裏には、きっと思惑がある……けど。
君のそれだけの、信用してるなんて簡単な言葉で、俺達の中の恐怖がすべて吹き飛んでしまったのは事実だ。
本当に思うんだよ、ゾーイならすべてを叶えちゃうんじゃないかって――
「……こんな半端な俺達が、国家を敵に回してひと暴れか。悪くないな」
アランは無表情なはずなのに、どこか嬉しさを含んだような表情で、そう言葉を発した。
それを皮切りに、すっかり笑顔と自信を取り戻した俺達は頷き合っていく。
我ながら、何て単純なんだよと笑ってしまうほどだけど、もう今は怖さなんかよりも、今度はどんな景色が待っているのかと楽しみさえ感じてしまっていた。
「はあ? 何をかっこつけてんの? 今さっきまで、渋りまくってたくせに!」
「記憶にないな。何の話だ」
「そんな雑な逃げ方が許されるの!?」
けど、アランの言葉を聞いて急に態度を変えた俺達を、ゾーイは訝しげに見回して、文句を言う。
それをアランがすっとぼけて、ゾーイは叫んでいた。
ゾーイ? 子どもみたいなことを言うけれど、君は魔法使いだよ。
君の言葉と君の存在が、俺達を変えてくれるんだ。
「まあ、やる気になったならあたしにはどうでもいいわ。とにかく! このコックピットから、すべては始まったの。何事も初心を忘れるべからずよ!」
「あー、ちょっと、言葉の使い方が違う気もするんだけど……?」
「細かいことも、どうでもいいわ。それじゃ、改めて、あのナサニエルが墜落をした日のことを、一から洗い直す! そのために、まずは何人かにグループを分けるわよ!」
すると、ゾーイは呆れたように、すぐさま切り替えて、そう叫ぶけど……それって、何か違くないかとゾーイの言葉に違和感を持った。
すぐにクレアが指摘するが、そんなことはゾーイには文字通り、もう塵ほどにどうでもいいことのようで、問答無用でグループ分けが始まったのだった。
「クレア、ハロルド、モーリス、ジェームズの四人は、防犯カメラの映像と音声データの解析をもう一度! 真由、菜々美、デルタ、ソニアの四人は、遺体の男の遺留品の捜査! その他はあたしと楽しくドライブ! さあ、頑張れ!」
「ままっ、待ちたまえ! ゾーイ!」
「ああ?」
「ヒイイイイ……!! あ、いや、いくつか質問があるのだが!」
「質問? 何がよ?」
そして、ゾーイは自分の言いたいことを終えると、何の説明もなしに、そのまま出て行こうとするので、叫びながら、体全体を使ってハロルドがゾーイの行く手を阻んだ。
正直、ナイスだと思ったが、それと同時にあの眼力でゾーイに睨まれたら、俺は立ち直れないなと思った……
ハロルド、お前は本当にいい奴だよ。
「まず、あの日に遺体の遺留品は粗方処分したのではなかったか? 遺体も土の中であるし……ハッ! まさか、遺体を掘り返すのか!?」
「そのままバチ当たって、地獄にでも連れ去られとけば?」
ゾーイは冷え切った目で、ハロルドに吐き捨てた。
ハロルドの言う通りに、俺達は全員で遺体をナサニエルが墜落した場所の、大きな木の根元に遺体を埋めた。
そして、遺留品は……と言っても、その遺体が身に付けていた作業着とアクセサリーしかなく、その時も調べたけど、手がかりになりそうなものは、何も出てこなかった。
それで、確かゾーイが、その遺留品は処分しておくと……そうか。
俺は記憶を辿りながら、そのすべてを察した。
「誰がないものを捜査しろなんて言うのよ、まったく……ほら」
ゾーイはため息をつきながら、コックピットの床下の収納の扉を開ける。
そして、そこから、あるものを取り出して、テーブルに置いたのだ。
そのあるものに、全員が目を丸くして驚いていた……そして、それは俺が予想した通りのものだったのだ。
「遺留品ならここよ。付着している血痕とか、全部がそのままよ。とにかく、ビリビリに破いたりしてもいいから、隈なく細部まで調べてちょうだいな。そのために、細かい作業が得意そうな医療科と調理科のあんた達に任せるんだから」
「何で、取ってあるんだよ!?」
「別に捨てるだなんて、一言も言った覚えないけど?」
望の叫びに、ゾーイはいつものごとくどこ吹く風で清々しく答える。
もう誰も、何もゾーイには言えないなと思っていたのだが……
「あの! それなら、私も! 私も医療科なのだけれど……その、遺留品の捜査のグループに呼ばれていないわ……!!」
「ああ、シャノンは、あたし達と別のところに来て? さっきから遺体って言葉を聞く度に顔色が悪くなってるし、遺留品を調べるのは難しいでしょ?」
「そんなことは……!!」
「来てね? 一緒に……ね?」
出会ってから一番、この時がローレンさんが大声を出した瞬間だったと思う。
焦ったように下手な笑顔で誤魔化すローレンさんだったが、ゾーイはそんな彼女に優しく問いかける……怖いほど。
そして、さらに言葉を続けようとしたローレンさんのことを、ゾーイは有無を言わせぬ笑顔で黙らせたのだ。
その二人のやり取りに、誰も口を挟むことなんてできなかった……
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