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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
ホウレンソウを守ってくれ
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「救援部隊をって……え、待って? ゾーイさん? その調査って、何日前から行ってたんだい?」
「ざっと、十日とか?」
サトルが顔を引くつかせながら、動揺マックスで聞いた質問に、ゾーイはこれっぽっちの悪気なんてないように、ケロリと衝撃的な答えを吐き出した。
え、今のって俺の聞き間違いかな?
「十日!?!? ととっ、ととととととととと、十日!?!?」
まあ、ハロルドがとを連発しすぎて言葉なのか何なのかがわからない言語を発したのを皮切りに、あっという間にコックピットは大パニックに陥った。
ちなみにだが、その時のハロルドの顔色は真っ青を通り越し、真っ白だった。
「そんなことって……あ、誰がこのことを知ってたのですか!? さすがに、誰かに言って、出て行ったのですよね!?」
「は? 誰にも言ってないけど? 別に言うほどでもないかと思って」
続くのは、最近ではゾーイに振り回されすぎて、すっかり喜怒哀楽がはっきりしてきたモーリスだ。
ゾーイの肩に手を置き、距離感迷子の状態でゾーイの目と鼻の先で詰め寄ったモーリスだが、ゾーイは一切の動揺や驚く素振りすら見せずに言い放った。
すると、そのままモーリスはあまりの自分の中の常識という名のキャパに収まりきらない情報量とゾーイの態度に、その場に崩れ落ちたのだった……
改めて思うけど、ゾーイと俺達の常識には上ることのできない壁みたいなのがあると思う……待て、そもそもゾーイに常識って概念あるのかが疑問だぞ?
「どうやったら、そんな判断になるんだよ!? 言わなきゃダメだろ!? 基本は報告、連絡、相談だろ!? ホウレンソウを知らねえのか、お前は!?」
「初めて会った時から思ってたけど、ゾーイには人間としての大事な何かが欠落してるわ! どこで落としたのよ!?」
それを聞いたシンが、大げさなほどのジェスチャーをつけて世間一般の常識の大切さを問いて、さらに続くあの人一倍思いやりを大切にしている真由でさえ、もう遠慮も無礼もあった状態じゃなくなっており、すっかり忘れて叫んでいた。
「あ、けど、デルタには大量に弁当の発注をしたわよ?」
「は? ああ、確かに、十日前に、俺に大量のって……それで察しろってか!? 俺はエスパーじゃねえわあああ!!」
「ありゃま。やっぱり、チャラにならねえか」
ああ、完全にわかるぞ、もうゾーイは若干どころか、かなりこの状況に飽きており、自分は悪くないアピールに入ろうとしている。
それが、デルタへの弁当の発注問題なわけだろうけど……あれかな、十日も王国を出て行くわけだから、十日分の食料をデルタに頼んだんだろうな。
それでゾーイは、そんなに大量の弁当の発注はおかしいだろ、そこで何かを察しなかったデルタが悪いだろうよとか何とかって言いたいんだろけど、デルタがブチ切れてる通り、それは無理だよ……
つーか、やっぱりって言ってる時点で自分でもわかってんじゃないかよ……
「そんな怒らなくてもいいじゃん。こうして、無事に帰って来たし?」
「それは結果論だよ、ゾーイ!? 僕達は君に出会ってから、心臓がヒビだらけで安心できないよ! 君にもしものことがあったら、どうすればいいのさ!」
「手がかりもなければ、あなたの行方だって追えないわ! 怒る以前に、私達は心配してるの! 今日という今日は我慢の限界だわ……そこに正座しなさい!」
「無理、絶対的に拒否なんですが」
最終的にはほとんど開き直っていたゾーイだったが、それが許されるはずもなく、ジェームズはゾーイの足元に縋り付きながら号泣し、クレアはすっかり説教モードに突入している。
まあ、そんな大迫力の二人に対し、正面切って無理だなんて言えるのはゾーイぐらいなものだろうけど……
そんな俺達とゾーイの攻防が数十分は続いていた時に、終止符を打ったのは意外な人物であった。
「何か、収穫はありましたか……?」
ローレンさんが神妙な面持ちで、ゾーイにそう問うたのだ。
気のせいなのかはわからないけど、俺にはその声が鉛のように重くのしかかりその空気に呑み込まれていくような気がして、妙に落ち着かなかった。
「あったよ」
けど、その空気を一蹴するゾーイのその言葉に、俺達の意識は完全にゾーイに持っていかれたのだが……
「ざっと、十日とか?」
サトルが顔を引くつかせながら、動揺マックスで聞いた質問に、ゾーイはこれっぽっちの悪気なんてないように、ケロリと衝撃的な答えを吐き出した。
え、今のって俺の聞き間違いかな?
「十日!?!? ととっ、ととととととととと、十日!?!?」
まあ、ハロルドがとを連発しすぎて言葉なのか何なのかがわからない言語を発したのを皮切りに、あっという間にコックピットは大パニックに陥った。
ちなみにだが、その時のハロルドの顔色は真っ青を通り越し、真っ白だった。
「そんなことって……あ、誰がこのことを知ってたのですか!? さすがに、誰かに言って、出て行ったのですよね!?」
「は? 誰にも言ってないけど? 別に言うほどでもないかと思って」
続くのは、最近ではゾーイに振り回されすぎて、すっかり喜怒哀楽がはっきりしてきたモーリスだ。
ゾーイの肩に手を置き、距離感迷子の状態でゾーイの目と鼻の先で詰め寄ったモーリスだが、ゾーイは一切の動揺や驚く素振りすら見せずに言い放った。
すると、そのままモーリスはあまりの自分の中の常識という名のキャパに収まりきらない情報量とゾーイの態度に、その場に崩れ落ちたのだった……
改めて思うけど、ゾーイと俺達の常識には上ることのできない壁みたいなのがあると思う……待て、そもそもゾーイに常識って概念あるのかが疑問だぞ?
「どうやったら、そんな判断になるんだよ!? 言わなきゃダメだろ!? 基本は報告、連絡、相談だろ!? ホウレンソウを知らねえのか、お前は!?」
「初めて会った時から思ってたけど、ゾーイには人間としての大事な何かが欠落してるわ! どこで落としたのよ!?」
それを聞いたシンが、大げさなほどのジェスチャーをつけて世間一般の常識の大切さを問いて、さらに続くあの人一倍思いやりを大切にしている真由でさえ、もう遠慮も無礼もあった状態じゃなくなっており、すっかり忘れて叫んでいた。
「あ、けど、デルタには大量に弁当の発注をしたわよ?」
「は? ああ、確かに、十日前に、俺に大量のって……それで察しろってか!? 俺はエスパーじゃねえわあああ!!」
「ありゃま。やっぱり、チャラにならねえか」
ああ、完全にわかるぞ、もうゾーイは若干どころか、かなりこの状況に飽きており、自分は悪くないアピールに入ろうとしている。
それが、デルタへの弁当の発注問題なわけだろうけど……あれかな、十日も王国を出て行くわけだから、十日分の食料をデルタに頼んだんだろうな。
それでゾーイは、そんなに大量の弁当の発注はおかしいだろ、そこで何かを察しなかったデルタが悪いだろうよとか何とかって言いたいんだろけど、デルタがブチ切れてる通り、それは無理だよ……
つーか、やっぱりって言ってる時点で自分でもわかってんじゃないかよ……
「そんな怒らなくてもいいじゃん。こうして、無事に帰って来たし?」
「それは結果論だよ、ゾーイ!? 僕達は君に出会ってから、心臓がヒビだらけで安心できないよ! 君にもしものことがあったら、どうすればいいのさ!」
「手がかりもなければ、あなたの行方だって追えないわ! 怒る以前に、私達は心配してるの! 今日という今日は我慢の限界だわ……そこに正座しなさい!」
「無理、絶対的に拒否なんですが」
最終的にはほとんど開き直っていたゾーイだったが、それが許されるはずもなく、ジェームズはゾーイの足元に縋り付きながら号泣し、クレアはすっかり説教モードに突入している。
まあ、そんな大迫力の二人に対し、正面切って無理だなんて言えるのはゾーイぐらいなものだろうけど……
そんな俺達とゾーイの攻防が数十分は続いていた時に、終止符を打ったのは意外な人物であった。
「何か、収穫はありましたか……?」
ローレンさんが神妙な面持ちで、ゾーイにそう問うたのだ。
気のせいなのかはわからないけど、俺にはその声が鉛のように重くのしかかりその空気に呑み込まれていくような気がして、妙に落ち着かなかった。
「あったよ」
けど、その空気を一蹴するゾーイのその言葉に、俺達の意識は完全にゾーイに持っていかれたのだが……
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