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第三章-⑸ クレアとハロルド
怪我をしたって元気ハツラツ
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「ねえ、デルタってば! もう野菜とかばっか飽きた! 肉がいい! てか、刺激物がいい!」
「そんなもの、ケガ人に食べさせられるわけないだろ!?」
「だから、重症患者じゃないの! 大げさなの! ねえ、ソニア? あたし、カレーが食べたい! めっちゃ辛いの!」
「……甘口ならいいけど?」
「はあ!? 辛くなきゃカレーじゃないでしょうよ!?」
「それじゃ、作ってあげません!」
デルタは頭を抱えながらもオーバーリアクションで説得を試みるが、ゾーイのわがままは収まらなかった。
そして、ゾーイは次にソニアに助けを求めていたが、ソニアはそっぽを向いて取り合わなかった。
そんなソニアに、ゾーイは大声で不平不満を、これでもかと叫んでいた
今日も今日とて、ゾーイはデルタとソニアとの攻防を続けている。
自分の部屋のベッドの上で、右足に包帯を巻いた状態で……
「コラアッ! ゾーイ! もう、何度言ったらわかるのよ!」
「ウゲ……鬼が来た!」
「……誰が、誰が鬼ですって!?」
「わあああ! 真由、落ち着いて! ゾーイもケガしてるんだから、治るまで安静にしててって!」
そこに、真由が目を吊り上げた状態で部屋に入って来た。
真由を見ると、ゾーイは嫌という感情を隠しもせずに暴言を吐いて、それを真由の登場から少し遅れた橘さんが止めに入っていた。
最近はここまでのやり取りが、ワンセットって感じだよな……
「このままでは、精神的に誰かが大ケガをしそうですね」
そんなゾーイ達のやり取りを、部屋の端の方で見ていたモーリスが小さく誰に聞かせるわけでもない呟きを残し、静かに部屋を後にした。
「まあ、モーリスの気持ちもわからねえこともねえけどな? まず、ケガ人の時ぐらい、少しは大人しくしてることはできねえのかよ……」
「無理なんじゃない? まあ、ゾーイはケガしたところで、何も変わらないってことは勉強になったね……」
「そんな知識、死ぬほどいらねえ……!!」
モーリスの呟きが聞こえたのか、シンは疲れたように吐き捨て、それにジェームズが苦笑いで返す。
すると、シンはガックリとこれでもかと肩を落として、頭を抱えていた。
今日は週に一度の報告会をしていた。
じゃあ、どうして、ゾーイの部屋に全員が集合してるのかというと、ゾーイが動けないので、お見舞いついでにここで報告会をやったからだ。
あの木が倒れて、ハロルドを庇ったゾーイが目の前で気を失ってすぐ、ゾーイは俺達の家に運び込まれた。
本当にあの時は、リアルに心臓が止まってしまうかと思った……
幸いなことにゾーイはすぐに目を覚ましたし、骨折もしていなかった。
しかし、右足が激痛のため、ゾーイは自分の足で歩くことが、しばらくできなくなった。
何かの拍子で捻ったか、知らないうちに木の下敷きになっていたか、真由や橘さんも原因はわからないと言っていた。
そこでゾーイは絶対安静、治るまでは作業もお休みとの診断が下って、現状の全員一苦労な状況にいたるわけだ……
「あー、叫んで喉がカラカラだわ! 喉乾いた! ハロルド~?」
「たっ、只今!」
まあ、一番苦労してるのは間違いなくハロルドだけどね……
ゾーイがシンお手製のトランシーバーに呼びかけると、すぐさまハロルドの返事が聞こえ、そこから数分でハロルドは部屋にやって来た。
「はあ……はあ……モカ特製、トマトジュースとオレンジジュースで……ある」
「ご苦労、ご苦労!」
ハロルドは息も絶え絶えな真っ青な状態で、二つの瓶をゾーイに差し出す。
それにゾーイは、笑顔でご満悦という状況だ……ハロルド、俺は味方だぞ。
「ノイローゼになるとしたら、ハロルド一択だな……」
「ま、まあ、あれでこそゾーイだし、無事で何よりだよ……うん」
俺の隣では望が心底呆れたように吐き捨て、それに対して、サトルが苦笑いで取り繕うようにそう返していた。
「ケガをして落ち着くどころか、さらにパワーアップか……」
俺も、サトルの言葉に続けるように小さく呟いた。
あの日から三日、すっかりハロルドはゾーイの手足となっている。
まあ、ゾーイがそうしろと無理矢理言ったわけではなく、ハロルドが自分で申し訳なさから言い出したんだけど……
あまりの使いっ走りぶりには、本当に心配になる。
けど、その他にも心配事はあって……
「あ、てか、クレアは? 部屋から脱出した?」
そんなことを考えてると、タイミング最高なのか最低なのか、ゾーイが今一番の心配事の話題を切り出す。
すると、途端に部屋の中は気まずい沈黙に支配された。
というか、脱出って……クレアは出て来れないわけじゃないよ、ゾーイ。
「クレアは、部屋に篭ったままだ」
その沈黙を破ったのは、何とも皮肉なことにアランだった。
「ふーん、了解したわ」
それに対し、ゾーイは大して気にした様子もなくサラッと流す。
あの日から、ゾーイのケガの責任を感じたクレアは部屋に引きこもった。
三日間一切食べ物を口にしないし、誰とも話そうともしない。
責任感の強いクレアには、今回のことはすごくショックだったのだろうが、全員どうしたらいいかわからず、ずっと足踏みしてる状態が続いていたのだ。
「そんなもの、ケガ人に食べさせられるわけないだろ!?」
「だから、重症患者じゃないの! 大げさなの! ねえ、ソニア? あたし、カレーが食べたい! めっちゃ辛いの!」
「……甘口ならいいけど?」
「はあ!? 辛くなきゃカレーじゃないでしょうよ!?」
「それじゃ、作ってあげません!」
デルタは頭を抱えながらもオーバーリアクションで説得を試みるが、ゾーイのわがままは収まらなかった。
そして、ゾーイは次にソニアに助けを求めていたが、ソニアはそっぽを向いて取り合わなかった。
そんなソニアに、ゾーイは大声で不平不満を、これでもかと叫んでいた
今日も今日とて、ゾーイはデルタとソニアとの攻防を続けている。
自分の部屋のベッドの上で、右足に包帯を巻いた状態で……
「コラアッ! ゾーイ! もう、何度言ったらわかるのよ!」
「ウゲ……鬼が来た!」
「……誰が、誰が鬼ですって!?」
「わあああ! 真由、落ち着いて! ゾーイもケガしてるんだから、治るまで安静にしててって!」
そこに、真由が目を吊り上げた状態で部屋に入って来た。
真由を見ると、ゾーイは嫌という感情を隠しもせずに暴言を吐いて、それを真由の登場から少し遅れた橘さんが止めに入っていた。
最近はここまでのやり取りが、ワンセットって感じだよな……
「このままでは、精神的に誰かが大ケガをしそうですね」
そんなゾーイ達のやり取りを、部屋の端の方で見ていたモーリスが小さく誰に聞かせるわけでもない呟きを残し、静かに部屋を後にした。
「まあ、モーリスの気持ちもわからねえこともねえけどな? まず、ケガ人の時ぐらい、少しは大人しくしてることはできねえのかよ……」
「無理なんじゃない? まあ、ゾーイはケガしたところで、何も変わらないってことは勉強になったね……」
「そんな知識、死ぬほどいらねえ……!!」
モーリスの呟きが聞こえたのか、シンは疲れたように吐き捨て、それにジェームズが苦笑いで返す。
すると、シンはガックリとこれでもかと肩を落として、頭を抱えていた。
今日は週に一度の報告会をしていた。
じゃあ、どうして、ゾーイの部屋に全員が集合してるのかというと、ゾーイが動けないので、お見舞いついでにここで報告会をやったからだ。
あの木が倒れて、ハロルドを庇ったゾーイが目の前で気を失ってすぐ、ゾーイは俺達の家に運び込まれた。
本当にあの時は、リアルに心臓が止まってしまうかと思った……
幸いなことにゾーイはすぐに目を覚ましたし、骨折もしていなかった。
しかし、右足が激痛のため、ゾーイは自分の足で歩くことが、しばらくできなくなった。
何かの拍子で捻ったか、知らないうちに木の下敷きになっていたか、真由や橘さんも原因はわからないと言っていた。
そこでゾーイは絶対安静、治るまでは作業もお休みとの診断が下って、現状の全員一苦労な状況にいたるわけだ……
「あー、叫んで喉がカラカラだわ! 喉乾いた! ハロルド~?」
「たっ、只今!」
まあ、一番苦労してるのは間違いなくハロルドだけどね……
ゾーイがシンお手製のトランシーバーに呼びかけると、すぐさまハロルドの返事が聞こえ、そこから数分でハロルドは部屋にやって来た。
「はあ……はあ……モカ特製、トマトジュースとオレンジジュースで……ある」
「ご苦労、ご苦労!」
ハロルドは息も絶え絶えな真っ青な状態で、二つの瓶をゾーイに差し出す。
それにゾーイは、笑顔でご満悦という状況だ……ハロルド、俺は味方だぞ。
「ノイローゼになるとしたら、ハロルド一択だな……」
「ま、まあ、あれでこそゾーイだし、無事で何よりだよ……うん」
俺の隣では望が心底呆れたように吐き捨て、それに対して、サトルが苦笑いで取り繕うようにそう返していた。
「ケガをして落ち着くどころか、さらにパワーアップか……」
俺も、サトルの言葉に続けるように小さく呟いた。
あの日から三日、すっかりハロルドはゾーイの手足となっている。
まあ、ゾーイがそうしろと無理矢理言ったわけではなく、ハロルドが自分で申し訳なさから言い出したんだけど……
あまりの使いっ走りぶりには、本当に心配になる。
けど、その他にも心配事はあって……
「あ、てか、クレアは? 部屋から脱出した?」
そんなことを考えてると、タイミング最高なのか最低なのか、ゾーイが今一番の心配事の話題を切り出す。
すると、途端に部屋の中は気まずい沈黙に支配された。
というか、脱出って……クレアは出て来れないわけじゃないよ、ゾーイ。
「クレアは、部屋に篭ったままだ」
その沈黙を破ったのは、何とも皮肉なことにアランだった。
「ふーん、了解したわ」
それに対し、ゾーイは大して気にした様子もなくサラッと流す。
あの日から、ゾーイのケガの責任を感じたクレアは部屋に引きこもった。
三日間一切食べ物を口にしないし、誰とも話そうともしない。
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