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第三章-⑸ クレアとハロルド
それぞれの恋のカタチ
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「あー、今日も朝から疲れた!」
俺は、家の屋上に繋がっている扉を開け放って、叫びながら背伸びをする。
最初に屋上を作ろうと言い出したのはゾーイだった。
初めは、屋上なんかいらないだろとか言われてて、まあ結局はゾーイが自分のアイデアを押し切ったけど、こうしてると作ってよかったなと思う。
特に夜にここで寝転んで見る星は、本当に綺麗だから。
「お疲れ様! 菜々美と二人で腕によりをかけて作ったから、昴も雨野もこれ食べて午後からも頑張って!」
「ありがとう。それにしても、今日はこれまた快晴だな~!」
そんな俺の少し後に真由が大きなバスケットを持って、サトルが快晴の空を見上げながら屋上にやって来た。
「真由、サンキュー。けど、そんなに重そうな弁当なら俺のこと呼べよ」
「え? ああ、別に大丈夫だよ?」
「大丈夫じゃねえの。わかったか?」
「……うん、了解しました!」
笑顔で頷く真由に満足し、俺は真由の頭を撫でてバスケットを受け取るが……
「相変わらず、仲が良いね~?」
サトルがいることをすっかり忘れており、二人で固まる……またやったわ。
ニヤニヤしっぱなしのサトルに俺は申し訳なさと恥ずかしさがぐちゃぐちゃに混じって、きっと今の顔色は青くなったり、赤くなったりしてるだろう……
真由も、赤くなって俯いてしまった。
「そ、そそっ、そういえば! 橘さんはどうしたんだよ!?」
「あー、菜々美はちょっと遅れるって言ってたけど……そういや、望くんは?」
「え? あ、望も誘ったんだけど、今日は用事があるからって……」
どうにか話題を逸らそうとして、俺は必死に吃りながらサトルに問う。
サトルは驚き、察したように苦笑いで俺に答えてくれた……有難いすぎる。
それもそうだが、今日の屋上のランチには望のことも誘ったが、用事があると断られた。
それも普段と違う……すごく真剣な顔をしていたから、理由を聞くに聞けなかったんだよな……
「というか、あの三人ってその後の進展とかは、どうなってるわけ?」
そんなことを考えていると、サトルが思い出したように話題を振ってくる。
「まあ、アランは変わらず押せ押せな感じだけど、そのアピールが自然でしつこくないのよね」
「意外だよな? あのアランが恋愛には積極的だなんてさ」
「アランがってより、相手がゾーイってことの方が大きいんじゃない?」
「それは確かに、間違いないかもな」
サトルの質問に対して、真由は最近のアランとゾーイのことを思い出すように答える。
あの日から、ますますアランのゾーイへの構いっぷりはエスカレートした。
何かというと話しかけるし、変化に気付くし、常に隣をキープしていたような気もする。
本当に、俺もサトルと同意見で意外だけど、真由の言う通りゾーイが相手だとしつこいぐらいが丁度いいのかもな……
その真由の投げかけた言葉に、同じくサトルも大きく頷いて笑っていた。
「デルタは、ソニアとジェームズのバックアップで頑張ってるよな」
「何より安心したのは、ジェームズが完全にデルタを吹っ切れたことよ」
「あー、それは激しく同意」
「一歩間違えれば、恋愛恐怖症とかになってもおかしくないもの」
次にサトルは、デルタのことを話題に上げてきた。
前々から、ソニアはデルタの恋を応援していたけど、あの日から、なぜかソニアの応援に拍車がかかった。
その拍車がかかった応援は、三食の献立の変化に大きく影響した。
少なくとも週三でゾーイの好物が食卓に並ぶことが多くなったし、俺達全員に作ってくれる昼の弁当はゾーイだけ特別メニューだし……
まあ、傍から見てたら、ゾーイを餌付けしてるように見えなくもないけど……
そして、驚いたのは、デルタの応援メンバーにいつの間にかジェームズも加わっていたことだ。
まあ、どこでそんな距離が縮んだのか把握はしてないけど、二人の言う通りにデルタとジェームズがいい関係になってくれたことは本当によかったなと思う。
「それで、望くんはどんな感じ?」
すると、遂にサトルは、望の名前を出してきて俺に質問をしてくる。
「あ、真由、代わりに話して」
「ごめん、昴……私も知らないのよ」
誤魔化すような俺の申し出は、真由にあっさりと断られてしまう。
きっと、今の俺の顔は気まずそうだなという印象を与えてることだろう。
「……その昴の表情で十分だけど、上手くはいってないっぽいな」
そんな俺の表情を読むかのように、サトルは苦笑いでそう言った。
望の性格上、素直になるということほどハードルの高いこともなく……そのことで他の二人と比べて遅れをとっているのではないかと、とても悩んでいた。
どうにか力になりたくてもこれは自分の問題だと、話を聞いてくれるだけで十分だと言われてしまえば、俺には見守ることしかできない。
そのことでここ数日間どうしようもなくもどかしさを感じており、再びその感覚を俺が思い出してきた時……
「ねえ、何でわざわざ屋上なの?」
「それは……気分だ! 気分!」
聞き覚えのありすぎる二人分の声が扉の向こうから、聞こえてきたのだ。
「あの声って……望とゾーイだよね?」
「は? 何でここに……!?」
俺は、同じく混乱してる真由と目を合わせる……何で、しかも二人で!?
「気分屋ね~? 振り回されるこっちの身にもなってよね」
「はあ!? そのセリフはこの世界中でお前にだけは言われたく……あれ、鍵閉め忘れたのか?」
そうこうしてる間にも、扉の向こうの二人はこっちに来ようとしていた。
俺は、家の屋上に繋がっている扉を開け放って、叫びながら背伸びをする。
最初に屋上を作ろうと言い出したのはゾーイだった。
初めは、屋上なんかいらないだろとか言われてて、まあ結局はゾーイが自分のアイデアを押し切ったけど、こうしてると作ってよかったなと思う。
特に夜にここで寝転んで見る星は、本当に綺麗だから。
「お疲れ様! 菜々美と二人で腕によりをかけて作ったから、昴も雨野もこれ食べて午後からも頑張って!」
「ありがとう。それにしても、今日はこれまた快晴だな~!」
そんな俺の少し後に真由が大きなバスケットを持って、サトルが快晴の空を見上げながら屋上にやって来た。
「真由、サンキュー。けど、そんなに重そうな弁当なら俺のこと呼べよ」
「え? ああ、別に大丈夫だよ?」
「大丈夫じゃねえの。わかったか?」
「……うん、了解しました!」
笑顔で頷く真由に満足し、俺は真由の頭を撫でてバスケットを受け取るが……
「相変わらず、仲が良いね~?」
サトルがいることをすっかり忘れており、二人で固まる……またやったわ。
ニヤニヤしっぱなしのサトルに俺は申し訳なさと恥ずかしさがぐちゃぐちゃに混じって、きっと今の顔色は青くなったり、赤くなったりしてるだろう……
真由も、赤くなって俯いてしまった。
「そ、そそっ、そういえば! 橘さんはどうしたんだよ!?」
「あー、菜々美はちょっと遅れるって言ってたけど……そういや、望くんは?」
「え? あ、望も誘ったんだけど、今日は用事があるからって……」
どうにか話題を逸らそうとして、俺は必死に吃りながらサトルに問う。
サトルは驚き、察したように苦笑いで俺に答えてくれた……有難いすぎる。
それもそうだが、今日の屋上のランチには望のことも誘ったが、用事があると断られた。
それも普段と違う……すごく真剣な顔をしていたから、理由を聞くに聞けなかったんだよな……
「というか、あの三人ってその後の進展とかは、どうなってるわけ?」
そんなことを考えていると、サトルが思い出したように話題を振ってくる。
「まあ、アランは変わらず押せ押せな感じだけど、そのアピールが自然でしつこくないのよね」
「意外だよな? あのアランが恋愛には積極的だなんてさ」
「アランがってより、相手がゾーイってことの方が大きいんじゃない?」
「それは確かに、間違いないかもな」
サトルの質問に対して、真由は最近のアランとゾーイのことを思い出すように答える。
あの日から、ますますアランのゾーイへの構いっぷりはエスカレートした。
何かというと話しかけるし、変化に気付くし、常に隣をキープしていたような気もする。
本当に、俺もサトルと同意見で意外だけど、真由の言う通りゾーイが相手だとしつこいぐらいが丁度いいのかもな……
その真由の投げかけた言葉に、同じくサトルも大きく頷いて笑っていた。
「デルタは、ソニアとジェームズのバックアップで頑張ってるよな」
「何より安心したのは、ジェームズが完全にデルタを吹っ切れたことよ」
「あー、それは激しく同意」
「一歩間違えれば、恋愛恐怖症とかになってもおかしくないもの」
次にサトルは、デルタのことを話題に上げてきた。
前々から、ソニアはデルタの恋を応援していたけど、あの日から、なぜかソニアの応援に拍車がかかった。
その拍車がかかった応援は、三食の献立の変化に大きく影響した。
少なくとも週三でゾーイの好物が食卓に並ぶことが多くなったし、俺達全員に作ってくれる昼の弁当はゾーイだけ特別メニューだし……
まあ、傍から見てたら、ゾーイを餌付けしてるように見えなくもないけど……
そして、驚いたのは、デルタの応援メンバーにいつの間にかジェームズも加わっていたことだ。
まあ、どこでそんな距離が縮んだのか把握はしてないけど、二人の言う通りにデルタとジェームズがいい関係になってくれたことは本当によかったなと思う。
「それで、望くんはどんな感じ?」
すると、遂にサトルは、望の名前を出してきて俺に質問をしてくる。
「あ、真由、代わりに話して」
「ごめん、昴……私も知らないのよ」
誤魔化すような俺の申し出は、真由にあっさりと断られてしまう。
きっと、今の俺の顔は気まずそうだなという印象を与えてることだろう。
「……その昴の表情で十分だけど、上手くはいってないっぽいな」
そんな俺の表情を読むかのように、サトルは苦笑いでそう言った。
望の性格上、素直になるということほどハードルの高いこともなく……そのことで他の二人と比べて遅れをとっているのではないかと、とても悩んでいた。
どうにか力になりたくてもこれは自分の問題だと、話を聞いてくれるだけで十分だと言われてしまえば、俺には見守ることしかできない。
そのことでここ数日間どうしようもなくもどかしさを感じており、再びその感覚を俺が思い出してきた時……
「ねえ、何でわざわざ屋上なの?」
「それは……気分だ! 気分!」
聞き覚えのありすぎる二人分の声が扉の向こうから、聞こえてきたのだ。
「あの声って……望とゾーイだよね?」
「は? 何でここに……!?」
俺は、同じく混乱してる真由と目を合わせる……何で、しかも二人で!?
「気分屋ね~? 振り回されるこっちの身にもなってよね」
「はあ!? そのセリフはこの世界中でお前にだけは言われたく……あれ、鍵閉め忘れたのか?」
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