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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ
ビックダディでした
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「はい、今度こそ解散ね! 誰が何と言おうとね? わかったわよね?」
ゾーイの言葉は、ほとんど脅すような強制させるような口調で、俺達は頷くことしかできなかった。
「クレアもゆっくり寝な? 明日は明日の風が吹くってね?」
「う、うん……」
そして、隅の方で俯き落ち込んでいたクレアにも、ゾーイはまるでさっきまでのことがなかったかのように、いつもと変わらない様子で声をかけた。
クレアはゾーイとシンのことを気にかけていたようだけど、二人に声をかけることはできなかったようだった。
そして、それぞれみんなが戻って行くのを俺、シン、ゾーイは見送った。
「じゃあ、レオの家にレッツゴー!」
「え? 何で、レオの家だ?」
ゾーイの言葉に、シンは不思議そうに質問を投げかける。
「そんなの、レオの家の方がお菓子とか揃ってるからよ」
さも当然だというように、ゾーイが答えるから、まるでこっちがおかしいのかという感覚になる時がある。
絶対に俺の顔、今引きつってるよ……
「そ、そうか……鍵は? あるのか?」
「当たり前。好きな時に使っていいって合鍵もらってんの。今日はもう、アランの大捜索で戻らんでしょ。行くよ?」
本当にもらったのかと、それを言葉にしなかった自分を褒めようと思う。
***
「まあ、適当に座ってよ。あ、牛乳はその棚の中で、鍋はそこね!」
まるで、自分の家かのように指示を出していくゾーイに、俺とシンは顔を見合わせて苦笑いをするしかなかった。
場所把握しすぎじゃないか? どれだけ来てるんだよ……
言われるがままに、シンは牛乳を鍋に注ぎ、火打石と打ち金で火を起こす。
まだこの王国には地上ガスや電気が通ってないので、火起こしは必須。
最初の頃はなかなか上手くいかずに苦労していたけど、半年も経てばすっかり慣れたものだ。
「ねえ、シンとアランっていつからの知り合いなの?」
「は?」
「沸騰するまで時間あるでしょ? その間つまらないじゃん、話そうよ」
俺とシンが席に着くと、ゾーイは突然そんな質問をシンに投げかけた。
シンは驚いていたけど、俺はやっぱりと心の中で妙な緊張が走る。
さっきのシンがブチ切れた時のゾーイのあの空気を読まない言葉は、話を逸らしすためのものだと俺は思っていた。
そして、シンをここに連れて来た一連の流れもゾーイだからと、誰も違和感を抱かなかった。
本当にゾーイって計算高いのか、ただ無茶苦茶なだけなのか……
とりあえず、ゾーイに言われるがままシンは話し出す。
「初めて会ったのは、多分俺が十歳の時とかだったっけな……」
「長い付き合いね、何がきっかけよ?」
「あー、俺の親父がアランの親父の直属の部下なんだよ」
そこからシンは、前にレイモンド兄妹に聞いたアランの話より深い話を、俺とゾーイに話し出した。
シン達の出身である空島のアイランド63は、大きく三大の勢力で成り立っており、昔から抗争を繰り広げているのだそうだ。
その中でも一大勢力だと言われているのが、アランの父親がトップに君臨するロジャー家なのだそうだ。
すると、ゾーイはこんなことを言い出した。
「前から思ってたんだけど、何で、アランってナサニエルに入学したの? 話を聞いてると、エリート学校とアランが全然結びつかないんだけど」
それは確かに俺もずっと思っていた。
アランの実家のことや将来のことを考えると、まず学校に行く必要もなかったのではないかとすら思ってしまう。
「それは……最後の自由ってやつだよ」
「最後の?」
「ああ。アランはナサニエルを卒業すると同時に、ロジャー家を継ぐことが決まってるんだ」
「え? それとナサニエル入学と、何が関係あるのよ?」
「……アランは親父を憎んでるんだ。殺してしまいたいほどにな?」
ゾーイの質問に、シンはものすごく悲しそうな顔でそう答えた。
アランの父親は根っからの裏社会気質の人間らしく、そのやり方は残虐非道で傍若無人。
その残酷なやり方で何人の人間の人生を狂わせてきたのか、もうそれは数えきれないほどなのだそうだ。
その人生を狂わせた人間の中にはアランの実の母親や、何人もの弟や妹達も含まれるとアランは思ってるらしい。
アランの下には何と十一人もの弟と妹達がいるらしいが、全員揃って母親は別の人間なのだという。
そんな自分の父親みたいな人間には絶対ならないと、アランは思って外の世界を知るためにナサニエルに入学してきたのだそうだ。
何か、不謹慎かもしれないけど、俺にはその全ての話が本の中とか、テレビの中の話を聞いている感覚だった。
それほど、シンから聞くアランの人生は俺にとっては非現実的で、シンへの言葉が見つからないでいると……
「まあ、そんな壮絶だと、あの目付きの悪さも当然だわね?」
ゾーイはどこまでもゾーイで、いつだってゾーイのままだった。
「……ぶっははっ! こんだけ深く俺に話させといて、そこかよ!?」
どうやら、シンも予想外の反応に気が抜けたようで、笑いが止まらないらしかった。
「ゾーイは、目の付け所が違うね?」
「そう? あの目付きってちょっとやそっとじゃ身につかないじゃん」
俺も少し茶化すように、ゾーイに話を振ってみる。
けど、安心したのもつかの間で……
「てか、シンとアランって何なの? 友達なの?」
ゾーイの言葉は、ほとんど脅すような強制させるような口調で、俺達は頷くことしかできなかった。
「クレアもゆっくり寝な? 明日は明日の風が吹くってね?」
「う、うん……」
そして、隅の方で俯き落ち込んでいたクレアにも、ゾーイはまるでさっきまでのことがなかったかのように、いつもと変わらない様子で声をかけた。
クレアはゾーイとシンのことを気にかけていたようだけど、二人に声をかけることはできなかったようだった。
そして、それぞれみんなが戻って行くのを俺、シン、ゾーイは見送った。
「じゃあ、レオの家にレッツゴー!」
「え? 何で、レオの家だ?」
ゾーイの言葉に、シンは不思議そうに質問を投げかける。
「そんなの、レオの家の方がお菓子とか揃ってるからよ」
さも当然だというように、ゾーイが答えるから、まるでこっちがおかしいのかという感覚になる時がある。
絶対に俺の顔、今引きつってるよ……
「そ、そうか……鍵は? あるのか?」
「当たり前。好きな時に使っていいって合鍵もらってんの。今日はもう、アランの大捜索で戻らんでしょ。行くよ?」
本当にもらったのかと、それを言葉にしなかった自分を褒めようと思う。
***
「まあ、適当に座ってよ。あ、牛乳はその棚の中で、鍋はそこね!」
まるで、自分の家かのように指示を出していくゾーイに、俺とシンは顔を見合わせて苦笑いをするしかなかった。
場所把握しすぎじゃないか? どれだけ来てるんだよ……
言われるがままに、シンは牛乳を鍋に注ぎ、火打石と打ち金で火を起こす。
まだこの王国には地上ガスや電気が通ってないので、火起こしは必須。
最初の頃はなかなか上手くいかずに苦労していたけど、半年も経てばすっかり慣れたものだ。
「ねえ、シンとアランっていつからの知り合いなの?」
「は?」
「沸騰するまで時間あるでしょ? その間つまらないじゃん、話そうよ」
俺とシンが席に着くと、ゾーイは突然そんな質問をシンに投げかけた。
シンは驚いていたけど、俺はやっぱりと心の中で妙な緊張が走る。
さっきのシンがブチ切れた時のゾーイのあの空気を読まない言葉は、話を逸らしすためのものだと俺は思っていた。
そして、シンをここに連れて来た一連の流れもゾーイだからと、誰も違和感を抱かなかった。
本当にゾーイって計算高いのか、ただ無茶苦茶なだけなのか……
とりあえず、ゾーイに言われるがままシンは話し出す。
「初めて会ったのは、多分俺が十歳の時とかだったっけな……」
「長い付き合いね、何がきっかけよ?」
「あー、俺の親父がアランの親父の直属の部下なんだよ」
そこからシンは、前にレイモンド兄妹に聞いたアランの話より深い話を、俺とゾーイに話し出した。
シン達の出身である空島のアイランド63は、大きく三大の勢力で成り立っており、昔から抗争を繰り広げているのだそうだ。
その中でも一大勢力だと言われているのが、アランの父親がトップに君臨するロジャー家なのだそうだ。
すると、ゾーイはこんなことを言い出した。
「前から思ってたんだけど、何で、アランってナサニエルに入学したの? 話を聞いてると、エリート学校とアランが全然結びつかないんだけど」
それは確かに俺もずっと思っていた。
アランの実家のことや将来のことを考えると、まず学校に行く必要もなかったのではないかとすら思ってしまう。
「それは……最後の自由ってやつだよ」
「最後の?」
「ああ。アランはナサニエルを卒業すると同時に、ロジャー家を継ぐことが決まってるんだ」
「え? それとナサニエル入学と、何が関係あるのよ?」
「……アランは親父を憎んでるんだ。殺してしまいたいほどにな?」
ゾーイの質問に、シンはものすごく悲しそうな顔でそう答えた。
アランの父親は根っからの裏社会気質の人間らしく、そのやり方は残虐非道で傍若無人。
その残酷なやり方で何人の人間の人生を狂わせてきたのか、もうそれは数えきれないほどなのだそうだ。
その人生を狂わせた人間の中にはアランの実の母親や、何人もの弟や妹達も含まれるとアランは思ってるらしい。
アランの下には何と十一人もの弟と妹達がいるらしいが、全員揃って母親は別の人間なのだという。
そんな自分の父親みたいな人間には絶対ならないと、アランは思って外の世界を知るためにナサニエルに入学してきたのだそうだ。
何か、不謹慎かもしれないけど、俺にはその全ての話が本の中とか、テレビの中の話を聞いている感覚だった。
それほど、シンから聞くアランの人生は俺にとっては非現実的で、シンへの言葉が見つからないでいると……
「まあ、そんな壮絶だと、あの目付きの悪さも当然だわね?」
ゾーイはどこまでもゾーイで、いつだってゾーイのままだった。
「……ぶっははっ! こんだけ深く俺に話させといて、そこかよ!?」
どうやら、シンも予想外の反応に気が抜けたようで、笑いが止まらないらしかった。
「ゾーイは、目の付け所が違うね?」
「そう? あの目付きってちょっとやそっとじゃ身につかないじゃん」
俺も少し茶化すように、ゾーイに話を振ってみる。
けど、安心したのもつかの間で……
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