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第三章-⑶ ジェームズとコタロウ
理由は窓が開いていたからだ
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「どうやったら、あんな風に運転できるのか今度聞いてみようかな……」
俺は自分の顔が引くついているのを感じながら、そう呟いていた。
ゾーイが運転しているであろう赤い屋根なしの自動車は、今も右へ左へ飛んだり落ちたり、そうかと思えば突然回り始めたり、あちこちにぶつけたり……
「ギャアアアアアアアアアアア……!!」
現在進行形で、ジェームズの絶叫は鳴り止む気配がなかった。
「時間の無駄だ、やめとけって……」
「うん、そうだな……」
望がそれは深いため息をつき、俺の呟きに答えると同時に、また俺も答える。
あの大量の動物の群れが一斉に逃げて来てたのも、遠くに聞こえていた聞き覚えのある絶叫も……
つまり、ゾーイが元凶だったわけだ。
多分だけど、あの暴走運転で動物の群れに突っ込んだりしてたんだろな……
そして、案の定、絶叫はジェームズのものだったわけで……
きっと、今の俺は傍から見たら遠い目をしてるだろうな。
「おい、あいつらの真横につけろ!」
そんな呆れと同情の空気は、コタロウの一言によって一瞬でピリつく。
そして、コタロウは立ち上がり、そのまま運転席の方に歩いて来た。
俺達は見るからに不機嫌なコタロウのことを自然と避けて、道を開ける。
「真横にとは……このバスをですか!?」
「はっ、他に何がある」
「そんなこと危険です! 少しでもこのハンドル操作を誤れば……」
「そんなこと知るか。泥棒の末路には興味はねえ」
コタロウの無茶苦茶な要望に、モーリスは断固として反対する。
しかし、コタロウはその言い分と、ゾーイとジェームズの存在までもを冷たく吐き捨てるだけだった。
「コタロウ、信じられない! 何てこと言うのよ!」
「頼む、コタロウ! とにかく、今回のことは話し合ってから……!!」
「ああ!? まずは、お前らはいつの間にそんなに仲良くなったんだよ? 人間に味方するのか? どうなんだよ!!」
黙っていられないとばかりに、モカとレオはコタロウに言い返す。
けど、それすらコタロウには火に油だったようで……
動物特有の威嚇を意味する唸り声まで聞こえるほど、コタロウは完全にブチ切れていた。
これ、本格的にまずくないか……?
今にも飛びかかりそうなコタロウの背中を前にして、誰もがどうすることもできないでいた時……
「なーんだ、全員来たわけね?」
場にそぐわない明るい声のした方に振り返ると、そこには窓枠に足を組んで座っているゾーイがいた。
「ゾーイ!? これは、どういう……何をしてるの? え、本当に何してるの!?」
受け入れられない状況にパニックになった真由が、一気にまくし立てる。
「ここ開いてたから、窓枠に座ってた」
「そうじゃなくて!」
わかってるのか、わざとなのか定かではないゾーイの返事に、さらに真由は声を荒らげる。
てか、今あのゾーイが運転してた自動車はどうなってんだ!?
俺は慌てて、窓に張り付く勢いであの赤い自動車を捜すと、そこにはバスの横を並行してるジェームズが運転する姿があった。
多分、ジェームズの背中が泣いているのは気のせいじゃないだろうな……
え? どうやってここに?
バスとこの自動車じゃ、結構な高さの差があるけど……ここを飛んだのか?
「それじゃ、とりあえずは、海まで競走しよっか?」
あまりの衝撃的な目の前の出来事に俺達が動けないでいると、またゾーイが無茶苦茶なことを言い出した。
「え? 何だって?」
「決まり! よーい、スタート!」
「おいコラ、待て!」
俺の聞き返す声を当たり前にゾーイは無視して、勝手にスタートと高らかに宣言する。
そして、宣言したかと思えばコタロウの制止する声も無視して、あろうことかゾーイは窓から飛んだのだ。
「ぞ、ゾーイ!?!?」
その場の誰もが悲鳴を上げ、誰もが君の名前を呼んだ。
そして、今度はほぼ全員が窓に張り付きながら外を覗き見る。
「お先に失礼しまーす!」
けど、そんな俺達のパニックっぷりを知ってか知らずなのか、ゾーイは呑気にピースを掲げながら、ジェームズからハンドルを奪っていた。
「クソが……!! おい、そこ代われ!」
「は? なっ、何を!?」
それを見たコタロウは、無理矢理モーリスを運転席からどかして、ハンドルを握る。
そして、一気にバスを加速させた。
「うおっ!? ちょっ、みんな! すぐにどこかに掴まって!」
「きゃあああ……!! 待って待って!」
「乱暴すぎるって……もう少し、あ、安全運転で……!!」
「倒れる! 絶対倒れるって! 本当に倒れるってばああああ!!」
バスは乱暴に、上下左右に大きく揺れ動く。
その度に、俺達はバスの中を転がったり、はたまた宙を舞ったり……
「真由! 望! 手伸ばせ!」
「はあ、はあ……す、昴……!!」
「本当にろくなことねえ……マジで!」
俺は真由と望の手を掴み、自分の方に力の限り引っ張り上げた。
そして、二人を抱え込んでどうにか無事を確保する。
明日、絶対に全身痣だらけだ……
どうやら、コタロウはあの赤い自動車を追いかけているようだ。
けど、バスより小型で小回りがきくあの自動車と同じルートを走るなんて、無理がある。
しかも、ただでさえ荒いゾーイの運転について行こうなんて……そりゃ車内がパニックにもなるわけだよ。
そう思いながら、つかの間の休息をとっていた時……
「コタロウ!? 待て、そこの道に入るのは無理だ! 別の道を探そう!」
俺は自分の顔が引くついているのを感じながら、そう呟いていた。
ゾーイが運転しているであろう赤い屋根なしの自動車は、今も右へ左へ飛んだり落ちたり、そうかと思えば突然回り始めたり、あちこちにぶつけたり……
「ギャアアアアアアアアアアア……!!」
現在進行形で、ジェームズの絶叫は鳴り止む気配がなかった。
「時間の無駄だ、やめとけって……」
「うん、そうだな……」
望がそれは深いため息をつき、俺の呟きに答えると同時に、また俺も答える。
あの大量の動物の群れが一斉に逃げて来てたのも、遠くに聞こえていた聞き覚えのある絶叫も……
つまり、ゾーイが元凶だったわけだ。
多分だけど、あの暴走運転で動物の群れに突っ込んだりしてたんだろな……
そして、案の定、絶叫はジェームズのものだったわけで……
きっと、今の俺は傍から見たら遠い目をしてるだろうな。
「おい、あいつらの真横につけろ!」
そんな呆れと同情の空気は、コタロウの一言によって一瞬でピリつく。
そして、コタロウは立ち上がり、そのまま運転席の方に歩いて来た。
俺達は見るからに不機嫌なコタロウのことを自然と避けて、道を開ける。
「真横にとは……このバスをですか!?」
「はっ、他に何がある」
「そんなこと危険です! 少しでもこのハンドル操作を誤れば……」
「そんなこと知るか。泥棒の末路には興味はねえ」
コタロウの無茶苦茶な要望に、モーリスは断固として反対する。
しかし、コタロウはその言い分と、ゾーイとジェームズの存在までもを冷たく吐き捨てるだけだった。
「コタロウ、信じられない! 何てこと言うのよ!」
「頼む、コタロウ! とにかく、今回のことは話し合ってから……!!」
「ああ!? まずは、お前らはいつの間にそんなに仲良くなったんだよ? 人間に味方するのか? どうなんだよ!!」
黙っていられないとばかりに、モカとレオはコタロウに言い返す。
けど、それすらコタロウには火に油だったようで……
動物特有の威嚇を意味する唸り声まで聞こえるほど、コタロウは完全にブチ切れていた。
これ、本格的にまずくないか……?
今にも飛びかかりそうなコタロウの背中を前にして、誰もがどうすることもできないでいた時……
「なーんだ、全員来たわけね?」
場にそぐわない明るい声のした方に振り返ると、そこには窓枠に足を組んで座っているゾーイがいた。
「ゾーイ!? これは、どういう……何をしてるの? え、本当に何してるの!?」
受け入れられない状況にパニックになった真由が、一気にまくし立てる。
「ここ開いてたから、窓枠に座ってた」
「そうじゃなくて!」
わかってるのか、わざとなのか定かではないゾーイの返事に、さらに真由は声を荒らげる。
てか、今あのゾーイが運転してた自動車はどうなってんだ!?
俺は慌てて、窓に張り付く勢いであの赤い自動車を捜すと、そこにはバスの横を並行してるジェームズが運転する姿があった。
多分、ジェームズの背中が泣いているのは気のせいじゃないだろうな……
え? どうやってここに?
バスとこの自動車じゃ、結構な高さの差があるけど……ここを飛んだのか?
「それじゃ、とりあえずは、海まで競走しよっか?」
あまりの衝撃的な目の前の出来事に俺達が動けないでいると、またゾーイが無茶苦茶なことを言い出した。
「え? 何だって?」
「決まり! よーい、スタート!」
「おいコラ、待て!」
俺の聞き返す声を当たり前にゾーイは無視して、勝手にスタートと高らかに宣言する。
そして、宣言したかと思えばコタロウの制止する声も無視して、あろうことかゾーイは窓から飛んだのだ。
「ぞ、ゾーイ!?!?」
その場の誰もが悲鳴を上げ、誰もが君の名前を呼んだ。
そして、今度はほぼ全員が窓に張り付きながら外を覗き見る。
「お先に失礼しまーす!」
けど、そんな俺達のパニックっぷりを知ってか知らずなのか、ゾーイは呑気にピースを掲げながら、ジェームズからハンドルを奪っていた。
「クソが……!! おい、そこ代われ!」
「は? なっ、何を!?」
それを見たコタロウは、無理矢理モーリスを運転席からどかして、ハンドルを握る。
そして、一気にバスを加速させた。
「うおっ!? ちょっ、みんな! すぐにどこかに掴まって!」
「きゃあああ……!! 待って待って!」
「乱暴すぎるって……もう少し、あ、安全運転で……!!」
「倒れる! 絶対倒れるって! 本当に倒れるってばああああ!!」
バスは乱暴に、上下左右に大きく揺れ動く。
その度に、俺達はバスの中を転がったり、はたまた宙を舞ったり……
「真由! 望! 手伸ばせ!」
「はあ、はあ……す、昴……!!」
「本当にろくなことねえ……マジで!」
俺は真由と望の手を掴み、自分の方に力の限り引っ張り上げた。
そして、二人を抱え込んでどうにか無事を確保する。
明日、絶対に全身痣だらけだ……
どうやら、コタロウはあの赤い自動車を追いかけているようだ。
けど、バスより小型で小回りがきくあの自動車と同じルートを走るなんて、無理がある。
しかも、ただでさえ荒いゾーイの運転について行こうなんて……そりゃ車内がパニックにもなるわけだよ。
そう思いながら、つかの間の休息をとっていた時……
「コタロウ!? 待て、そこの道に入るのは無理だ! 別の道を探そう!」
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