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第三章-⑵ デルタとソニア
赤髪の姉妹と青髪の男の子
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「……ていうか、何であんた達はこんな真夜中に二人で温泉にいたのよ」
「あ、それは、一度でいいから温泉を貸し切ってみたくてよ!」
「昼間は長居もできないので、シンと相談していたら夜中はどうだという話になったのだ!」
「それは仲のよろしいことで……」
ゾーイは自分で聞いておいて、心底興味がないということを隠しもせず、そう吐き捨てた。
まあ、確かに昼間に長居ができなくてゆっくりできないってのは、わかる。
この温泉施設は、今のこのワンニャン王国にはなくてはならない施設で、毎日夕方は超満員だからだ。
ゾーイの自然いっぱいにしての一言で俺、サトル、望は知恵を絞りまくった。
そして、緑、木、岩、景色なんかに工夫をした和風建築だっけな? こだわり抜いた温泉が出来上がったのだ。
大浴場に見晴らしのいい露天風呂、石鹸、シャンプーとリンスも備え付きだ。
元々有難いことに地上には固形石鹸があった。
そして、シャンプーは蜂蜜とお湯を混ぜて、リンスはお酢とお湯を混ぜて代用している。
まあ、使っている時の匂いの違和感はあるけど、洗い流せば問題はない。
おかげで、体を清潔に保つという人間としての最低限のマナーは守っている。
ちなみに、発案者は史学科の授業で習ったというゾーイからだ。
「ゾーイ、何も俺とハロルドは根拠もなく騒いでいるんじゃねえぞ?」
「そうだ! 間違いなく、あれは人の姿をしていたんだ!」
「犬族や猫族ではないとなれば俺達の中の誰かって話になるけど、俺とハロルド以外は教会で眠っていたはずだ!」
「そうなれば、もう考えられる可能性は一つしかないだろう!」
シンとハロルドは、ゾーイに対して大げさすぎるほどの身振り手振りで説明を試みている。
とりあえず、俺達は目の前の温度差が激しすぎる三人を見守っていたが……
「あんたら二人が揃って、五感全部イカれてるって可能性のこと?」
ゾーイの言葉のそれには、本当にお世辞抜きに棘しか感じられなかった。
おかげで、その言葉を真正面から浴びせられたシンとハロルドは固まってる。
「冗談よ」
「わかりにくいんだよ! お前はよ!」
「君の冗談は心臓に悪すぎる……!!」
あ、わかったぞ? ゾーイ、話題に飽きてるな、完全に。
俺はゾーイに振り回されてる二人があまりに不憫になり、とりあえず質問を投げかけてみることにした。
「なあ、本当に見たのか? その……幽霊を?」
ぐりんっと音がしそうなほどの勢いで俺の方に向き直った二人は、それはそれは顔を輝かせていた。
少し顔が引きつってしまったけど、話を聞こうと次の言葉を探している時……
「相手にしてんな、昴。よりによって、こいつら二人の話なんて、聞くだけ時間の無駄だ」
「ど、どういう意味だよ!? 澤木弟!」
「俺の名前は弟じゃなくて望だ、このクソボケが」
望から、それはまた辛口のストップが入ってしまった。
すかさず、突っかかるシンだけど、それにまた望は言い返す。
けど、さらなる追い打ちは……
「本気で自覚ないの? あんたら信頼が薄い人間ランキングツートップでしょ」
二人は絶望の底って顔をして、地面に手をついている。
ゾーイ? 思いやりって知ってる?
「望、お前が悪いぞ」
「はあ!? 待て、俺はあそこまで言ってねえだろ!?」
「言ってなくてもだ、確実にこの流れはお前が作っただろ!?」
「理不尽すぎるだろ、それは!?」
あまりの気まずさに俺と望は小声で話をするしかなかった。
ほら、周りの犬族や猫族も憐れむ顔ばっかりだよ、もう……
「ゾーイ、素直なとこがあんたの長所だけど、最大の短所でもあるわよ?」
「え? あたし何か言った?」
「嘘でしょ!? まあ、そもそもこんな文明第二次開花の時代に幽霊とか、シンとハロルド正気?」
しかし、意外なことにソニアがこの話の収拾をつけようとしていた。
いや、というより、シンとハロルドのことを小馬鹿にしているだけか?
素直って言ってる時点で、特に二人には何のフォローにもなってないしな……
あれ? けど、いつもだったらここでデルタが出て来て笑い飛ばすはず……
そう思ってデルタを捜すと、後ろでアランと話しているのを見つけた。
しかも、とても神妙な顔をしながら。
あれ、待てよ?
ソニア、デルタ、アランは幽霊騒動で駆け付けた時、ここにいたっけ?
「あ、それは、一度でいいから温泉を貸し切ってみたくてよ!」
「昼間は長居もできないので、シンと相談していたら夜中はどうだという話になったのだ!」
「それは仲のよろしいことで……」
ゾーイは自分で聞いておいて、心底興味がないということを隠しもせず、そう吐き捨てた。
まあ、確かに昼間に長居ができなくてゆっくりできないってのは、わかる。
この温泉施設は、今のこのワンニャン王国にはなくてはならない施設で、毎日夕方は超満員だからだ。
ゾーイの自然いっぱいにしての一言で俺、サトル、望は知恵を絞りまくった。
そして、緑、木、岩、景色なんかに工夫をした和風建築だっけな? こだわり抜いた温泉が出来上がったのだ。
大浴場に見晴らしのいい露天風呂、石鹸、シャンプーとリンスも備え付きだ。
元々有難いことに地上には固形石鹸があった。
そして、シャンプーは蜂蜜とお湯を混ぜて、リンスはお酢とお湯を混ぜて代用している。
まあ、使っている時の匂いの違和感はあるけど、洗い流せば問題はない。
おかげで、体を清潔に保つという人間としての最低限のマナーは守っている。
ちなみに、発案者は史学科の授業で習ったというゾーイからだ。
「ゾーイ、何も俺とハロルドは根拠もなく騒いでいるんじゃねえぞ?」
「そうだ! 間違いなく、あれは人の姿をしていたんだ!」
「犬族や猫族ではないとなれば俺達の中の誰かって話になるけど、俺とハロルド以外は教会で眠っていたはずだ!」
「そうなれば、もう考えられる可能性は一つしかないだろう!」
シンとハロルドは、ゾーイに対して大げさすぎるほどの身振り手振りで説明を試みている。
とりあえず、俺達は目の前の温度差が激しすぎる三人を見守っていたが……
「あんたら二人が揃って、五感全部イカれてるって可能性のこと?」
ゾーイの言葉のそれには、本当にお世辞抜きに棘しか感じられなかった。
おかげで、その言葉を真正面から浴びせられたシンとハロルドは固まってる。
「冗談よ」
「わかりにくいんだよ! お前はよ!」
「君の冗談は心臓に悪すぎる……!!」
あ、わかったぞ? ゾーイ、話題に飽きてるな、完全に。
俺はゾーイに振り回されてる二人があまりに不憫になり、とりあえず質問を投げかけてみることにした。
「なあ、本当に見たのか? その……幽霊を?」
ぐりんっと音がしそうなほどの勢いで俺の方に向き直った二人は、それはそれは顔を輝かせていた。
少し顔が引きつってしまったけど、話を聞こうと次の言葉を探している時……
「相手にしてんな、昴。よりによって、こいつら二人の話なんて、聞くだけ時間の無駄だ」
「ど、どういう意味だよ!? 澤木弟!」
「俺の名前は弟じゃなくて望だ、このクソボケが」
望から、それはまた辛口のストップが入ってしまった。
すかさず、突っかかるシンだけど、それにまた望は言い返す。
けど、さらなる追い打ちは……
「本気で自覚ないの? あんたら信頼が薄い人間ランキングツートップでしょ」
二人は絶望の底って顔をして、地面に手をついている。
ゾーイ? 思いやりって知ってる?
「望、お前が悪いぞ」
「はあ!? 待て、俺はあそこまで言ってねえだろ!?」
「言ってなくてもだ、確実にこの流れはお前が作っただろ!?」
「理不尽すぎるだろ、それは!?」
あまりの気まずさに俺と望は小声で話をするしかなかった。
ほら、周りの犬族や猫族も憐れむ顔ばっかりだよ、もう……
「ゾーイ、素直なとこがあんたの長所だけど、最大の短所でもあるわよ?」
「え? あたし何か言った?」
「嘘でしょ!? まあ、そもそもこんな文明第二次開花の時代に幽霊とか、シンとハロルド正気?」
しかし、意外なことにソニアがこの話の収拾をつけようとしていた。
いや、というより、シンとハロルドのことを小馬鹿にしているだけか?
素直って言ってる時点で、特に二人には何のフォローにもなってないしな……
あれ? けど、いつもだったらここでデルタが出て来て笑い飛ばすはず……
そう思ってデルタを捜すと、後ろでアランと話しているのを見つけた。
しかも、とても神妙な顔をしながら。
あれ、待てよ?
ソニア、デルタ、アランは幽霊騒動で駆け付けた時、ここにいたっけ?
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