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第二章 未知の世界への移住
三秒で時速百キロに到達
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俺達の目の前には、ほっそりとした体の四足歩行の動物。
この前見たライオンより、はるかに小さかった。
頭は体に対して小さく丸く、四肢は長くて細いが、筋肉はよく発達している。
体から細く長いしっぽまで広がる黄色と黒の斑点模様が特徴的だった。
間違いなく、あいつらはチーターだ。
「ち、チーター? 群れって……それは何なんだ!?」
「見たまんま。また猛獣のご登場ってわけよ」
「かつては、地上で最も走るのが速いと言われた動物だよ」
「あら、それは大変。ハロルド、油断は禁物だからね?」
既に動揺がすごいハロルドの横で、呑気にゾーイは欠伸をしながら答える。
俺の若干の脅すような言い回しへの返答さえ、この緊張感のなさだよ……
「そ、そんな……そそその……!!」
「テメーに震えてる暇はねえ! 運転に全神経使ってろ!」
「三人とも、今の状態でハロルドにこれ以上の要求は酷じゃない?」
まだ何もされていないのに、もう怯えきっているハロルド。
それに対し、望が立ち上がりながら怒鳴るという状況。
さすがに、脅しまくる俺達に挟まれる怯えきってしまったハロルドのことを不憫に思ったのか、サトルが苦笑いでそう言ってきた。
「あ、そっか……ごめん、ハロルド」
「はは……ははは……へ、平気だ! このハロルド・早乙女に、不可能なんて言葉は似合わな……」
普段より三倍は饒舌なハロルドが、演説をしながら振り返った時……
その場に轟いた、どこまでも響く不快極まりないような大音量。
「うおおわ!?!? 何事だ!? 今度はどうした!? 敵の集落か!?」
「ハロルド、前見て! 前を!」
「え? あ……どわあああああああ!?」
謎の大音量のせいで、チーター達は興奮状態になってしまった。
六匹は、俺達が乗る自動車に一直線に襲いかかって来る。
余所見をしていたハロルドは突然のチーターの襲撃にパニックになり、ハチャメチャにハンドルをきりまくる。
そのおかげで、車体は揺れまくりだ。
「ハロルド、落ち着け! 頼む、一旦冷静になってくれ!」
「す、すまない! しかし、この謎の音の正体は……」
サトルの叫びで、どうにか落ち着こうとハロルドは深呼吸をする。
けど、その間も謎の大音量は鳴り止むことをせずに鳴り響いている。
「ハロルド、一回左手を離して」
「は!? ゾーイ、正気なのか!? そんなことをすれば……」
「誰よりはるかに冷静だから、さっさと左手をどけて! そうしないと、この不快な大音量が鳴り止まないの! これはクラクション! 今、あんたがずっと左手で押してんのよ!」
ほとんどキレながらそう言ったゾーイの剣幕に負けて、ハロルドは左手をハンドルから離した。
すると、ずっと鳴り響いていた謎の大音量は見事に収まったのだ。
まあ、とりあえず原因がわかったのはよかったけど……
「この責任どう取るつもりだ、この疫病神がよ!! ああ!?」
「あ、あああ、あの、それは……!!」
「望くんは、落ち着いて! ハロルドを運転に集中させて! 間違いは誰にでもあるでしょ!?」
「人様に迷惑をかけねえ間違いなら関係ねえけどな!? 残念ながら、今回は俺に多大な精神的苦痛を味あわせてんだよ!」
「望! とにかく、まだ今は……」
「お前が言ってたんだろ!? あいつらは、地上最速の動物だって! こいつのドジのおかげで、この最悪な状況が出来上がってんだぞ!?」
「わ、わかった! わかったから……!!」
どうにか運転を続けているハロルドに掴みかかる望のことを、サトルと俺で必死に引き離しにかかっている。
メーターを見ると、今の自動車の速度は百キロを越えているが、隣を見るとチーターはピッタリと横に並走している。
というか、こちらの様子を伺っているようにも見えるし……
振り返ると、クレアとモーリスがそれぞれ運転する二台の自動車もチーターに追われているようだった。
「とにかく、どうにかして振り切る方法を考えないと……」
「あ? 振り切る? 数時間前に初めてハンドル握った奴らの運転で、あの今か今かと襲いかかる瞬間を待ち構えている目をした猛獣を、本気で振り切れると思ってんのか?」
サトルが考え込んでいると、横で望がほとんど諦めたようにそう言った。
「望! お前はどうして……何で、そう諦めるんだ!?」
「じゃあ、どんな策があるんだ!? 早く答えてみろよ!」
「しかし、やっぱり諦めるのは早いと思うぞ! 何か方法があるはずだ!」
「テメーは黙って運転しろ! 元はと言えば、テメーが戦犯だろうが!」
「ちょっと運転代わるよ!」
「今度はお前か!? お前はまた余計なことを……今、何て言った?」
とにかく、俺とハロルドに噛み付きまくる望。
それにゾーイも参戦し……今、本当にゾーイは何て言った?
「ハロルド、三秒でどいて」
そう言うやいなや、ゾーイはハロルドを自分が座っていた助手席に文字通り放り投げた。
そして、ゾーイは運転席に座った。
この前見たライオンより、はるかに小さかった。
頭は体に対して小さく丸く、四肢は長くて細いが、筋肉はよく発達している。
体から細く長いしっぽまで広がる黄色と黒の斑点模様が特徴的だった。
間違いなく、あいつらはチーターだ。
「ち、チーター? 群れって……それは何なんだ!?」
「見たまんま。また猛獣のご登場ってわけよ」
「かつては、地上で最も走るのが速いと言われた動物だよ」
「あら、それは大変。ハロルド、油断は禁物だからね?」
既に動揺がすごいハロルドの横で、呑気にゾーイは欠伸をしながら答える。
俺の若干の脅すような言い回しへの返答さえ、この緊張感のなさだよ……
「そ、そんな……そそその……!!」
「テメーに震えてる暇はねえ! 運転に全神経使ってろ!」
「三人とも、今の状態でハロルドにこれ以上の要求は酷じゃない?」
まだ何もされていないのに、もう怯えきっているハロルド。
それに対し、望が立ち上がりながら怒鳴るという状況。
さすがに、脅しまくる俺達に挟まれる怯えきってしまったハロルドのことを不憫に思ったのか、サトルが苦笑いでそう言ってきた。
「あ、そっか……ごめん、ハロルド」
「はは……ははは……へ、平気だ! このハロルド・早乙女に、不可能なんて言葉は似合わな……」
普段より三倍は饒舌なハロルドが、演説をしながら振り返った時……
その場に轟いた、どこまでも響く不快極まりないような大音量。
「うおおわ!?!? 何事だ!? 今度はどうした!? 敵の集落か!?」
「ハロルド、前見て! 前を!」
「え? あ……どわあああああああ!?」
謎の大音量のせいで、チーター達は興奮状態になってしまった。
六匹は、俺達が乗る自動車に一直線に襲いかかって来る。
余所見をしていたハロルドは突然のチーターの襲撃にパニックになり、ハチャメチャにハンドルをきりまくる。
そのおかげで、車体は揺れまくりだ。
「ハロルド、落ち着け! 頼む、一旦冷静になってくれ!」
「す、すまない! しかし、この謎の音の正体は……」
サトルの叫びで、どうにか落ち着こうとハロルドは深呼吸をする。
けど、その間も謎の大音量は鳴り止むことをせずに鳴り響いている。
「ハロルド、一回左手を離して」
「は!? ゾーイ、正気なのか!? そんなことをすれば……」
「誰よりはるかに冷静だから、さっさと左手をどけて! そうしないと、この不快な大音量が鳴り止まないの! これはクラクション! 今、あんたがずっと左手で押してんのよ!」
ほとんどキレながらそう言ったゾーイの剣幕に負けて、ハロルドは左手をハンドルから離した。
すると、ずっと鳴り響いていた謎の大音量は見事に収まったのだ。
まあ、とりあえず原因がわかったのはよかったけど……
「この責任どう取るつもりだ、この疫病神がよ!! ああ!?」
「あ、あああ、あの、それは……!!」
「望くんは、落ち着いて! ハロルドを運転に集中させて! 間違いは誰にでもあるでしょ!?」
「人様に迷惑をかけねえ間違いなら関係ねえけどな!? 残念ながら、今回は俺に多大な精神的苦痛を味あわせてんだよ!」
「望! とにかく、まだ今は……」
「お前が言ってたんだろ!? あいつらは、地上最速の動物だって! こいつのドジのおかげで、この最悪な状況が出来上がってんだぞ!?」
「わ、わかった! わかったから……!!」
どうにか運転を続けているハロルドに掴みかかる望のことを、サトルと俺で必死に引き離しにかかっている。
メーターを見ると、今の自動車の速度は百キロを越えているが、隣を見るとチーターはピッタリと横に並走している。
というか、こちらの様子を伺っているようにも見えるし……
振り返ると、クレアとモーリスがそれぞれ運転する二台の自動車もチーターに追われているようだった。
「とにかく、どうにかして振り切る方法を考えないと……」
「あ? 振り切る? 数時間前に初めてハンドル握った奴らの運転で、あの今か今かと襲いかかる瞬間を待ち構えている目をした猛獣を、本気で振り切れると思ってんのか?」
サトルが考え込んでいると、横で望がほとんど諦めたようにそう言った。
「望! お前はどうして……何で、そう諦めるんだ!?」
「じゃあ、どんな策があるんだ!? 早く答えてみろよ!」
「しかし、やっぱり諦めるのは早いと思うぞ! 何か方法があるはずだ!」
「テメーは黙って運転しろ! 元はと言えば、テメーが戦犯だろうが!」
「ちょっと運転代わるよ!」
「今度はお前か!? お前はまた余計なことを……今、何て言った?」
とにかく、俺とハロルドに噛み付きまくる望。
それにゾーイも参戦し……今、本当にゾーイは何て言った?
「ハロルド、三秒でどいて」
そう言うやいなや、ゾーイはハロルドを自分が座っていた助手席に文字通り放り投げた。
そして、ゾーイは運転席に座った。
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