28 / 257
第二章 未知の世界への移住
総員無傷で生還しました
しおりを挟む
「それで、外はどうだったの!?」
ソニアのワクワクして仕方ないという素直な声がコックピットに響いた。
俺達は、どうにか全員が無傷でナサニエルに帰って来ることができた。
そして、休む間もなく今回のことを知っているアーデルやチーム・ロジャーとの今後の話し合いが始まった。
「教科書や、古い映画で見たような人工物じゃない自然が広がってたよ」
「あと、大発見! 僕達が今いる位置は日本だった場所ってことがわかった!」
「ナサニエルの周りは森で、しばらく行くと荒廃した大都市だ!」
地上の調査報告は包み隠さず、ほぼほぼ俺、サトル、ハロルドが話した。
「ライオンという猛獣が、群れで何頭も目の前に現れてだな? しかし、そこで慌てふためいてはアーデルの実習班長の名に恥じる! 私は冷静な判断で、全員を木の上に誘導し……」
というか、後半部分はハロルドの独壇場だったと思う。
そしてなぜか、ライオンの話になるとハロルドは得意げに壮大なフィクションを語り始めた。
まあ、ほとんどの人間がハロルドの大活躍したという話は受け流し、ライオンの話題だけを上手いこと聞き分けていたようだけど……
あのクレアでさえも苦笑いだ。
一方で、望とアランが無口なのは通常運転だったが、ゾーイが大人しいことを俺は不審に思っていた。
あの拒絶は本当に一瞬だったけど、史学科に入ったことをそんなに触れられたくない理由とは何なのだろうか……
「それなら、当面は食料や飲み水に問題はなさそうね。よかった……」
「まあ、少し……いや、かなり遠いってことが課題だけど……」
「何人かでチームを作って、三日に一度ほどのペースで食料と飲み水を調達しに行きましょう」
報告が終わり、その場のクレアに安堵の表情が浮かんだ。
それにサトルが苦笑いで返すと、モーリスがその場で的確な提案を出す。
誰もがその案でいこうという空気を出して、解散かとなった時……
「それ、本気で言ってるの?」
やっぱり、大人しいままでいるなんてゾーイじゃないよな……
「話はまとまったではありませんか」
自分の提案を否定されたことがカンに触ったのか、モーリスは絶対零度の目でゾーイに噛み付いた。
「あのね? 三日に一度、行きはまだマシだけど、帰り道を想像した? 全員分の食料と飲み水を担いで、あの遠い距離をまた戻る。それって果てしなく時間の無駄だと思わない?」
「そ、それは何か対策を……」
「それに、いつまで続けられると思う? そのうち誰かの不満が爆発して、あっという間に今より悲惨な状況になると思うけど?」
「それでは、どうしろと……!!」
「エリートでしょ? それぐらいのことわからないの?」
こんなに感情的になっているモーリスは初めて見た。
けど、その対象になっているゾーイは悪気もなく、また挑発するようなことを言う。
二人の温度差はひどいものだった。
「ナサニエルを捨てて、地上に移り住むって言いたいのか」
「あら、一番の悪人面の君が真っ先に答えを出すとは、予想外だった」
「ぞ、ゾーイ……? 今は顔のことは関係ないだろ……な、なあ?」
そんなモーリスとゾーイの気まずい空気に割って入ったのは、アランだ。
けど、またまたゾーイは余計な一言を言ってアランに睨まれる。
堪らずに、シンが止めに入っていく。
一連の流れに、全員が顔の引きつりと冷や汗が止まらなくて困っている。
「……どうすることが効率的かぐらいのこと、バカでもわかるだろ」
「まさかの伏兵か。これは驚きね?」
「あ? 別にお前なんかの味方をしたわけじゃない。勘違いするな」
「そこは心配無用ですわよ、兄さん」
俺達の方が驚いた、意外なことに今回の二人の議論は平和的解決の方向に向かっているようだ。
けど、そんな二人のやり取りにあからさまに面白くなさそうな人間が一人。
「お前らの脳みそは、花畑か何かか?」
「……何だと?」
突っかかったのは望だった。
ソニアのワクワクして仕方ないという素直な声がコックピットに響いた。
俺達は、どうにか全員が無傷でナサニエルに帰って来ることができた。
そして、休む間もなく今回のことを知っているアーデルやチーム・ロジャーとの今後の話し合いが始まった。
「教科書や、古い映画で見たような人工物じゃない自然が広がってたよ」
「あと、大発見! 僕達が今いる位置は日本だった場所ってことがわかった!」
「ナサニエルの周りは森で、しばらく行くと荒廃した大都市だ!」
地上の調査報告は包み隠さず、ほぼほぼ俺、サトル、ハロルドが話した。
「ライオンという猛獣が、群れで何頭も目の前に現れてだな? しかし、そこで慌てふためいてはアーデルの実習班長の名に恥じる! 私は冷静な判断で、全員を木の上に誘導し……」
というか、後半部分はハロルドの独壇場だったと思う。
そしてなぜか、ライオンの話になるとハロルドは得意げに壮大なフィクションを語り始めた。
まあ、ほとんどの人間がハロルドの大活躍したという話は受け流し、ライオンの話題だけを上手いこと聞き分けていたようだけど……
あのクレアでさえも苦笑いだ。
一方で、望とアランが無口なのは通常運転だったが、ゾーイが大人しいことを俺は不審に思っていた。
あの拒絶は本当に一瞬だったけど、史学科に入ったことをそんなに触れられたくない理由とは何なのだろうか……
「それなら、当面は食料や飲み水に問題はなさそうね。よかった……」
「まあ、少し……いや、かなり遠いってことが課題だけど……」
「何人かでチームを作って、三日に一度ほどのペースで食料と飲み水を調達しに行きましょう」
報告が終わり、その場のクレアに安堵の表情が浮かんだ。
それにサトルが苦笑いで返すと、モーリスがその場で的確な提案を出す。
誰もがその案でいこうという空気を出して、解散かとなった時……
「それ、本気で言ってるの?」
やっぱり、大人しいままでいるなんてゾーイじゃないよな……
「話はまとまったではありませんか」
自分の提案を否定されたことがカンに触ったのか、モーリスは絶対零度の目でゾーイに噛み付いた。
「あのね? 三日に一度、行きはまだマシだけど、帰り道を想像した? 全員分の食料と飲み水を担いで、あの遠い距離をまた戻る。それって果てしなく時間の無駄だと思わない?」
「そ、それは何か対策を……」
「それに、いつまで続けられると思う? そのうち誰かの不満が爆発して、あっという間に今より悲惨な状況になると思うけど?」
「それでは、どうしろと……!!」
「エリートでしょ? それぐらいのことわからないの?」
こんなに感情的になっているモーリスは初めて見た。
けど、その対象になっているゾーイは悪気もなく、また挑発するようなことを言う。
二人の温度差はひどいものだった。
「ナサニエルを捨てて、地上に移り住むって言いたいのか」
「あら、一番の悪人面の君が真っ先に答えを出すとは、予想外だった」
「ぞ、ゾーイ……? 今は顔のことは関係ないだろ……な、なあ?」
そんなモーリスとゾーイの気まずい空気に割って入ったのは、アランだ。
けど、またまたゾーイは余計な一言を言ってアランに睨まれる。
堪らずに、シンが止めに入っていく。
一連の流れに、全員が顔の引きつりと冷や汗が止まらなくて困っている。
「……どうすることが効率的かぐらいのこと、バカでもわかるだろ」
「まさかの伏兵か。これは驚きね?」
「あ? 別にお前なんかの味方をしたわけじゃない。勘違いするな」
「そこは心配無用ですわよ、兄さん」
俺達の方が驚いた、意外なことに今回の二人の議論は平和的解決の方向に向かっているようだ。
けど、そんな二人のやり取りにあからさまに面白くなさそうな人間が一人。
「お前らの脳みそは、花畑か何かか?」
「……何だと?」
突っかかったのは望だった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

ゲノム~失われた大陸の秘密~
Deckbrush0408
ファンタジー
青年海外協力隊としてアフリカに派遣された村田俊は、突如として起きた飛行機事故により神秘の大陸「アドリア大陸」に漂着する。
未知の土地で目を覚ました彼は、魔法を操る不思議な少年、ライト・サノヴァと出会う。
ライトは自分の過去を探るために、二人は共に冒険を始めることに。
果たして、二人はアドリア大陸の謎を解き明かし、元の世界に帰る方法を見つけることができるのか?そして、ライトの出生にまつわる真実とは何なのか?
冒険の果てに待ち受ける真実が、彼らの運命を大きく変えていく。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
エレメンツハンター
kashiwagura
SF
「第2章 エレメンツハンター学の教授は常に忙しい」の途中ですが、3ヶ月ほど休載いたします。
3ヶ月間で掲載中の「第二次サイバー世界大戦」を完成させ、「エレメンツハンター」と「銀河辺境オセロット王国」の話を安定的に掲載できるようにしたいと考えています。
3ヶ月後に、エレメンツハンターを楽しみにしている方々の期待に応えられる話を届けられるよう努めます。
ルリタテハ王国歴477年。人類は恒星間航行『ワープ』により、銀河系の太陽系外の恒星系に居住の地を拡げていた。
ワープはオリハルコンにより実現され、オリハルコンは重力元素を元に精錬されている。その重力元素の鉱床を発見する職業がルリタテハ王国にある。
それが”トレジャーハンター”であった。
主人公『シンカイアキト』は、若干16歳でトレジャーハンターとして独立した。
独立前アキトはトレジャーハンティングユニット”お宝屋”に所属していた。お宝屋は個性的な三兄弟が運営するヒメシロ星系有数のトレジャーハンティングユニットで、アキトに戻ってくるよう強烈なラブコールを送っていた。
アキトの元に重力元素開発機構からキナ臭い依頼が、美しい少女と破格の報酬で舞い込んでくる。アキトは、その依頼を引き受けた。
破格の報酬は、命が危険と隣り合わせになる対価だった。
様々な人物とアキトが織りなすSF活劇が、ここに始まる。

NEOの風刺ジョーク集
夜美神威
SF
世の中のアレやコレを面白おかしく笑い飛ばせ!
クスッと笑える世相を切る風刺ジョーク集
風刺ジョークにおいて
ご気分が害される記事もあるかと思いますが
その辺はあくまでジョークとして捉えて頂きたいです

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる