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第一章 物語は落下して始まった
誰もが強いわけじゃないよ
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「え……ぞ、ゾーイ!?」
「何でここに!?」
「普通に通りすがりだけど?」
本当に神出鬼没というか、予測不可能というか。
思ってもいない時に、君は現われる。
突然のある意味で有名人のゾーイの登場に、真由、橘さんは恐縮していた。
ローレンさんは無表情だったけど……
「あ、あの……」
「突然ごめんね? あたしはゾーイ・エマーソン」
「えっと、湖中真由です」
「あ、橘菜々美です」
「……シャノン・ローレンです」
「よろしくね? へー、昴もサトルも意外と隅に置けないね? こんな揃いも揃って可愛い子達とお友達なわけだ?」
「は?」
「まあ、お世話にはなってるけど……」
可愛い子達に、隅に置けないって……
まさか、ゾーイからそんな普通の年頃の子どものような言葉が出てくるとは思わず、俺は間の抜けた声を上げる。
「さて、ちなみに、外に出るって言い出したのはあたしなの。まあ、特に強制をした覚えはないし、二人とも自分から行くって言った。そして、別に拒否する理由もないから合意したの。この二人の行動を縛る権利なんて誰もないしね」
ゾーイの、俺達の行動を縛る権利は誰にもないという言葉に、真由や橘さんはグサリと核心を突かれたようで俯いて黙ってしまった。
気まずさに耐えられず、俺はサトルと目を合わせて何か言おうとした時……
「だからって、心配をするななんてこと言わない。それも自由だしね? けど、この二人は外に出るなんてそれなりの勇気を振り絞ったんだと思うよ、それなら信じて待つとか言った方が、お互いに気分はいいんじゃない? まあ、あたしにはどうでもいいけど」
すると、ゾーイは言いたいことが言えてスッキリしたようで、その場を去って行ってしまった。
本当に、通りすがりだったんだな……
「……昴」
「え? あー、まあゾーイってちょっとあれだけど、すごい頼りに……」
「私は信じられないの」
「は?」
あれ、前々から思ってたけど、俺って真由からの信用なし?
「真由、薄々感づいてはいたけど……」
「頼りないし、カリスマ性ないし、特に運がいいとかでもないし」
真由は俯いたまま、これでもかと俺の悪口を並べたてる。
全部事実なのが悲しいけど……
「そ、そんな言わなくたって!」
「けど! そんな昴のことを私は言い訳にしているだけなのよ……」
「は? ま、真由……?」
「簡単に信じられるほど、私は怖いもの知らずにはなれないのよ……」
そう言って顔を上げた真由は、迷子の子どものように、心細くて不安で押し潰されそうだという顔をしていた。
真由のその顔は久しぶりに見たな……
「……俺だって本当は怖いよ」
「そうだと思ってたよ」
「本当に、お前はムカつくよな~!」
「幼なじみだから、わかるの!」
「それじゃあ、俺が何で外に行く気になったか、わかるのかよ!?」
「雨野が行くからでしょ?」
「……ハハッ、真由もまだまだだな? そんな理由なわけが……」
「あとは、ゾーイさんが行くから」
そう言うと、真由は途端に勝ち誇ったような顔を俺に向ける。
「もう二度に見失わないように、ついて行こうって思ったんでしょ? あんなに必死に捜してたものね」
「……そんな必死になってないよ」
幼なじみっていうのは厄介で、どんな嘘をついてもすぐにバレる。
俺が負け惜しみにそんなことを吐き出したって、俺がゾーイをどんなに必死に捜していたかなんて丸わかりだ。
ゾーイと出会って一か月だけど、話をしたのなんてまだ数えられる。
それなのに、俺も含めてゾーイに関わった人間がこんなにも執着する理由って何なのだろうか。
「昴、雨野、無茶だけはしないでね?」
「え!? 真由、行かせるの!?」
「菜々美、私と待っていようよ? この二人の意思は相当硬そうだし」
「けど……!!」
「菜々美? 無傷ってのは、さすがに保証できないけど、必ず帰って来るよ」
「……そこは保証してよ!!」
真由はどこか悟ったような様子で俺達の背中を押した。
一方で橘さんは真由とサトルの言葉に対して、渋々といった様子でどうにか了承してくれた。
ローレンさんは何も言わず、なぜかゾーイが歩いて行った方向を凝視していた。
その様子が気になったけど、内心では期待と不安で押し潰されそうな自分を、奮い立たせることに必死だった。
「すぐに帰って来るよ」
俺達が外に出ることはアーデルをはじめとした関係者にしか知らされず、極秘で実行された。
全てはパニックを防ぐためだ。
俺達代表者は、日が昇るのを待って出発した。
「何でここに!?」
「普通に通りすがりだけど?」
本当に神出鬼没というか、予測不可能というか。
思ってもいない時に、君は現われる。
突然のある意味で有名人のゾーイの登場に、真由、橘さんは恐縮していた。
ローレンさんは無表情だったけど……
「あ、あの……」
「突然ごめんね? あたしはゾーイ・エマーソン」
「えっと、湖中真由です」
「あ、橘菜々美です」
「……シャノン・ローレンです」
「よろしくね? へー、昴もサトルも意外と隅に置けないね? こんな揃いも揃って可愛い子達とお友達なわけだ?」
「は?」
「まあ、お世話にはなってるけど……」
可愛い子達に、隅に置けないって……
まさか、ゾーイからそんな普通の年頃の子どものような言葉が出てくるとは思わず、俺は間の抜けた声を上げる。
「さて、ちなみに、外に出るって言い出したのはあたしなの。まあ、特に強制をした覚えはないし、二人とも自分から行くって言った。そして、別に拒否する理由もないから合意したの。この二人の行動を縛る権利なんて誰もないしね」
ゾーイの、俺達の行動を縛る権利は誰にもないという言葉に、真由や橘さんはグサリと核心を突かれたようで俯いて黙ってしまった。
気まずさに耐えられず、俺はサトルと目を合わせて何か言おうとした時……
「だからって、心配をするななんてこと言わない。それも自由だしね? けど、この二人は外に出るなんてそれなりの勇気を振り絞ったんだと思うよ、それなら信じて待つとか言った方が、お互いに気分はいいんじゃない? まあ、あたしにはどうでもいいけど」
すると、ゾーイは言いたいことが言えてスッキリしたようで、その場を去って行ってしまった。
本当に、通りすがりだったんだな……
「……昴」
「え? あー、まあゾーイってちょっとあれだけど、すごい頼りに……」
「私は信じられないの」
「は?」
あれ、前々から思ってたけど、俺って真由からの信用なし?
「真由、薄々感づいてはいたけど……」
「頼りないし、カリスマ性ないし、特に運がいいとかでもないし」
真由は俯いたまま、これでもかと俺の悪口を並べたてる。
全部事実なのが悲しいけど……
「そ、そんな言わなくたって!」
「けど! そんな昴のことを私は言い訳にしているだけなのよ……」
「は? ま、真由……?」
「簡単に信じられるほど、私は怖いもの知らずにはなれないのよ……」
そう言って顔を上げた真由は、迷子の子どものように、心細くて不安で押し潰されそうだという顔をしていた。
真由のその顔は久しぶりに見たな……
「……俺だって本当は怖いよ」
「そうだと思ってたよ」
「本当に、お前はムカつくよな~!」
「幼なじみだから、わかるの!」
「それじゃあ、俺が何で外に行く気になったか、わかるのかよ!?」
「雨野が行くからでしょ?」
「……ハハッ、真由もまだまだだな? そんな理由なわけが……」
「あとは、ゾーイさんが行くから」
そう言うと、真由は途端に勝ち誇ったような顔を俺に向ける。
「もう二度に見失わないように、ついて行こうって思ったんでしょ? あんなに必死に捜してたものね」
「……そんな必死になってないよ」
幼なじみっていうのは厄介で、どんな嘘をついてもすぐにバレる。
俺が負け惜しみにそんなことを吐き出したって、俺がゾーイをどんなに必死に捜していたかなんて丸わかりだ。
ゾーイと出会って一か月だけど、話をしたのなんてまだ数えられる。
それなのに、俺も含めてゾーイに関わった人間がこんなにも執着する理由って何なのだろうか。
「昴、雨野、無茶だけはしないでね?」
「え!? 真由、行かせるの!?」
「菜々美、私と待っていようよ? この二人の意思は相当硬そうだし」
「けど……!!」
「菜々美? 無傷ってのは、さすがに保証できないけど、必ず帰って来るよ」
「……そこは保証してよ!!」
真由はどこか悟ったような様子で俺達の背中を押した。
一方で橘さんは真由とサトルの言葉に対して、渋々といった様子でどうにか了承してくれた。
ローレンさんは何も言わず、なぜかゾーイが歩いて行った方向を凝視していた。
その様子が気になったけど、内心では期待と不安で押し潰されそうな自分を、奮い立たせることに必死だった。
「すぐに帰って来るよ」
俺達が外に出ることはアーデルをはじめとした関係者にしか知らされず、極秘で実行された。
全てはパニックを防ぐためだ。
俺達代表者は、日が昇るのを待って出発した。
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