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第一章 物語は落下して始まった
ブーイングって何ですか
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「まず、結論から先に話すこととする。我々は今、地上にいる!」
ザワザワしながらも比較的静かにしてハロルドの話を聞いていた生徒達だったけど、ハロルドの地上という言葉に爆発したように騒がしくなった。
「地上!? 今、地上って言った!?」
「あー、そうだってば!」
真由はもちろんだけど、隣で橘さんはサトルに掴みかかっているし、ローレンさんも顔が真っ青だ。
てか、そこら中から悲鳴みたいな声が聞こえてくるけど……
まあ、けど、それが事実だしな。
「なぜ、そんな事態に陥ったのか……これから包み隠さず説明しようと思う! よく聞いてほしい!」
そして、ハロルドはナサニエルからシエロが切り離されたこと、墜落する前にナサニエルを地上に不時着させたこと。
ほぼほぼ全てを説明していた。
そのほぼほぼっていうのは、ハロルドはあの身元不明の死体のことを省いて話し始めたからだ。
あと、どうも脚色が入っている。
事態の異常さに気付いたこと、不時着を提案したこと、それらを中心的に指揮したことなど。
ゾーイの手柄を、まるでハロルドが行ったことかのように話していた。
ハロルドの後ろでは、望達が何とも言えない顔をしているのが見える。
その顔だけで、ハロルドが勝手に話をしてるんだってことがすぐわかる。
サトルと目が合うと、俺達はお互いに苦笑いをする。
当の本人のゾーイは、興味なさそうに欠伸をしているけど……
「ということで、これがこの一連の出来事の全てになる! 理解はしてくれただろうか? さて、次はこれからの……」
「ちょっと、待てよ!」
半分はハロルドのヒーロー談義フィクション話になっていた。
まあ、それもようやく終わって、次は多分これからのことを話そうとしていたハロルドだが、誰かが声を上げた。
「質問か? 受け付けよう! 私も全てを把握しているわけではないが、この展望フロアにいるメンバーは全員が……」
「少し勝手すぎるんじゃないか?」
「え?」
予想外だっただろう言葉に、ハロルドは間の抜けた声を上げる。
あ、今ので素に戻ったな?
というか、今のブーイング……この流れはまずいんじゃないか?
「俺達に何の相談もなく、全部お前達で決めちまってよ! 不平等だろ!」
「そうよ、そうよ! エリート集団だか何だか知らないけど、このことに何の権利があるのよ!」
「怪我人もたくさん出てんだ! しっかり操縦しろよ、下手くそ!」
「地上に下りたからって、それからプランなんてないんでしょ!?」
「俺達にここで死ねって言うのか!? 空島に今すぐ返せよ! 無責任だ!」
案の定、そこからはとんでもないブーイングの嵐だった。
ハロルドは展望フロアであわあわするばかりで……あれはダメだな。
クレアやモーリスが落ち着いてって必死に叫ぶけど、この状況じゃ無意味。
その場が崩壊しかけていた時だ……
「じゃあ、ここまで上がってきな」
前触れもなく現れたその少女に、ブーイングは静まっていく。
「うわあ……綺麗な子……」
隣で真由がそう呟いたのが聞こえるほどに、大ホールは静まり返っていた。
遠くからでもわかる、人の目を引く儚さと独特の雰囲気。
きっと、その場の全員がゾーイに見惚れたことだろう。
けど、人は見た目によらないとはゾーイのための言葉だと思うほどに、外見と中身のギャップがあることを知っている俺はホッと胸を撫で下ろす。
サトルに至っては、溢れ出てくるニヤニヤが止まらないみたいだしな。
予想通りに、ハロルドから拡声器を奪ったゾーイはすごかった。
「意見があるならここまで来て、正々堂々と話せば? どうしたの? そんな低いとこで好き勝手は言えるのに、面と向かって話すこと、自分の言葉に責任持つこと、そんなこともできないわけ? それじゃ、あんたらがさっきまで散々な罵声を浴びせてた、ここにいるハロルドの方が三倍はマシね」
ザワザワしながらも比較的静かにしてハロルドの話を聞いていた生徒達だったけど、ハロルドの地上という言葉に爆発したように騒がしくなった。
「地上!? 今、地上って言った!?」
「あー、そうだってば!」
真由はもちろんだけど、隣で橘さんはサトルに掴みかかっているし、ローレンさんも顔が真っ青だ。
てか、そこら中から悲鳴みたいな声が聞こえてくるけど……
まあ、けど、それが事実だしな。
「なぜ、そんな事態に陥ったのか……これから包み隠さず説明しようと思う! よく聞いてほしい!」
そして、ハロルドはナサニエルからシエロが切り離されたこと、墜落する前にナサニエルを地上に不時着させたこと。
ほぼほぼ全てを説明していた。
そのほぼほぼっていうのは、ハロルドはあの身元不明の死体のことを省いて話し始めたからだ。
あと、どうも脚色が入っている。
事態の異常さに気付いたこと、不時着を提案したこと、それらを中心的に指揮したことなど。
ゾーイの手柄を、まるでハロルドが行ったことかのように話していた。
ハロルドの後ろでは、望達が何とも言えない顔をしているのが見える。
その顔だけで、ハロルドが勝手に話をしてるんだってことがすぐわかる。
サトルと目が合うと、俺達はお互いに苦笑いをする。
当の本人のゾーイは、興味なさそうに欠伸をしているけど……
「ということで、これがこの一連の出来事の全てになる! 理解はしてくれただろうか? さて、次はこれからの……」
「ちょっと、待てよ!」
半分はハロルドのヒーロー談義フィクション話になっていた。
まあ、それもようやく終わって、次は多分これからのことを話そうとしていたハロルドだが、誰かが声を上げた。
「質問か? 受け付けよう! 私も全てを把握しているわけではないが、この展望フロアにいるメンバーは全員が……」
「少し勝手すぎるんじゃないか?」
「え?」
予想外だっただろう言葉に、ハロルドは間の抜けた声を上げる。
あ、今ので素に戻ったな?
というか、今のブーイング……この流れはまずいんじゃないか?
「俺達に何の相談もなく、全部お前達で決めちまってよ! 不平等だろ!」
「そうよ、そうよ! エリート集団だか何だか知らないけど、このことに何の権利があるのよ!」
「怪我人もたくさん出てんだ! しっかり操縦しろよ、下手くそ!」
「地上に下りたからって、それからプランなんてないんでしょ!?」
「俺達にここで死ねって言うのか!? 空島に今すぐ返せよ! 無責任だ!」
案の定、そこからはとんでもないブーイングの嵐だった。
ハロルドは展望フロアであわあわするばかりで……あれはダメだな。
クレアやモーリスが落ち着いてって必死に叫ぶけど、この状況じゃ無意味。
その場が崩壊しかけていた時だ……
「じゃあ、ここまで上がってきな」
前触れもなく現れたその少女に、ブーイングは静まっていく。
「うわあ……綺麗な子……」
隣で真由がそう呟いたのが聞こえるほどに、大ホールは静まり返っていた。
遠くからでもわかる、人の目を引く儚さと独特の雰囲気。
きっと、その場の全員がゾーイに見惚れたことだろう。
けど、人は見た目によらないとはゾーイのための言葉だと思うほどに、外見と中身のギャップがあることを知っている俺はホッと胸を撫で下ろす。
サトルに至っては、溢れ出てくるニヤニヤが止まらないみたいだしな。
予想通りに、ハロルドから拡声器を奪ったゾーイはすごかった。
「意見があるならここまで来て、正々堂々と話せば? どうしたの? そんな低いとこで好き勝手は言えるのに、面と向かって話すこと、自分の言葉に責任持つこと、そんなこともできないわけ? それじゃ、あんたらがさっきまで散々な罵声を浴びせてた、ここにいるハロルドの方が三倍はマシね」
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