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第三章 戦争なんて真っ平御免だ
そこは樹海でございました
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「タービュランス様! お休みのところ、誠に申し訳ありません!」
「おっ、俺達はノラのことは必死に止めたのですが……‼︎」
「ご存知とは思いますが、力及ばず……ああ、申し訳ありませんでした!」
思った通りだったわ、このクソボケ大魔王は自分の部屋に好き好んで入ってくる人物がこの魔王城にいるとは思ってなかったのだろう、その油断の証にドアには何の変哲もない鍵が一つかけられていただけでこんな古びた鍵を壊すのは本当に簡単だった。
案の定、ドアからのあたし達の登場にクソボケ大魔王は年相応……いや、何年生きているか知らないし、ここはあたしと同い年くらいの見た目相応といったところな素直な反応を見せて、豪華絢爛な天蓋付きの真っ黒なベッドに横たわりながら目を丸くして驚いていた。
そんなクソボケ大魔王に対し真っ先に部屋に入って頭を下げたのは三バカ大将……グスタフは大量の冷や汗を流し、ウキョウは挙動不審に、グロワーズはほぼ泣いている。
まあね? 確かにこれ以上ないくらい必死に止められたけど、三バカ大将のことは全員投げ飛ばして強行突破しちゃったからね?
「お前達、この人間と随分仲良くなったようだな……?」
最後にちゃんと顔を合わせて言葉を交わしたのはここに来た最初の朝だっけな、それからもちょこちょこ見かけてはいたけどあからさまに避けられてたからな。
その時より明らかに、クソボケ大魔王の今怒っている姿には迫力と覇気が足りなかった……予想通りだ。
「ウキョウ? お前、先ほどノラと呼び捨てにしなかったか?」
「そっ、それは……あの……‼︎」
どうやら最初の標的はあたしの名前を呼び捨てにしたウキョウに向いたようで、まあ迫力足らずでもそこそこ怖いのだろう、ウキョウはそのクソボケ大魔王を前にしてガタガタと震えていた。
ああ、そういえば名前呼び合うくらい仲良くなったのよね、我ながらびっくりしてるけど……そうか、それが気に入らないのか、子どもかお前はと言ってやろうかと思ったのだが、それは俯いて怯えきっているグスタフとブロワーズ、泣いているグレース様と、そのグレース様を背に庇って臨戦態勢のパトリック様を見たせいでそれは叶わなかった……全員ビビりすぎだけど、まあこのままだと掃除も始められないしね?
「クソボケ大魔王! これ何だ~?」
あたしはその張り詰めた空気を断ち切るように、あえて緊張感のないような何でもないような声を出す。
すると、途端にその場の空気は緩んであたしに視線が向くわけだが、あたしの手に持つそれに今度は目を奪われていた……何でだよ、普通のサンドイッチですけど?
「あんた、律儀なんだかバカ真面目なんだか……それとも度が過ぎたプライドの塊か?」
「……ああ?」
「どっちにしても、あたしに啖呵切ったあの日からまともに食べてないでしょ? それであまりの空腹で動けなくなって、さらにイライラしっぱなしでその有様でしょ?」
最初は全員が何のつもりだとでも言うようにサンドイッチを凝視しており、クソボケ大魔王に関しては警戒心丸出しだったわけだが……あたしが皮肉たっぷりに皿に乗ったサンドイッチを差し出したことで、それが単純に食べろって意味を示すのだということを理解をすると、途端にその場の空気は緩む。
昨日の夜にアニキに言っていた考え……まあ、考えってほどではないかもだが、この無駄にプライドが高いクソボケ大魔王のことだから絶対に意地になって何も食べていないと思った、どんな悪党だって腹は減る。
それが満たされればほとんどがいい方向に行くとか行かないとか? とにかく、目を見開いてあたしとサンドイッチを交互に凝視するクソボケ大魔王は実に間抜けだ……まあ、そんなことよりもだと、あたしはベッドの上にサンドイッチを置いて部屋の中を見回す。
「まるで、この部屋って樹海ね……何があるわけよ?」
こんな奴の空腹からくるイラつきに付き合っている暇はないんだ……どうしてこうもこの城の中は、どこもかしこもこうなのか!?!?
まったく床が見えなくて、どこにも足の踏み場もないほどに積み上げられたぱっと見てもよくわからないもののガラクタの山、山、山! 登山でもするのかここで⁉︎ 呆れながら、あたしは天を仰ぐ。
他のみんなはこのクソボケ大魔王の方ばっかりに気を取られていたみたいだかど、あたしはこの惨状を見た瞬間に泣きたくなったよ!
どう考えてもそんな奴よりこっちの方が恐ろしいでしょうが⁉︎ 何で、最後の最後でこんな試練が待っているのよ、これは完全な嫌がらせだ!
「まっ、待て……⁉︎ この……気安く触るな!」
「無闇に動くな! 倒れるわよ?」
とりあえずの現状を把握するためにあたしはガラクタを掻き分けて進んで行く……途中でやかましいだけの怒鳴り声が部屋の主から入ったが、知るか! 倒れるぞ! ああ、もういっそのことお前は倒れとけ!
「何これ、短剣? こっちは盾と矛のセット?」
どうにかこうにか唯一無事なベッドにまでたどり着いてからそこに座り、適当に近くにあったガラクタを手に取ってみたものの……は?
他にもだけどよく間見回してみると、何だかここにあるものってどれもこれも高価そうなんだけど……?
「タービュランス様、これ……すべていつかの降伏の証のものでは?」
すると、恐る恐るといった感じに声を上げたのはさっきまで標的にされていたウキョウで……どうやら調子を取り戻したっぽいな?
というかだけど……待てよ? 今あの鬼、このガラクタ見てなんて言ったよ⁉︎
「おっ、俺達はノラのことは必死に止めたのですが……‼︎」
「ご存知とは思いますが、力及ばず……ああ、申し訳ありませんでした!」
思った通りだったわ、このクソボケ大魔王は自分の部屋に好き好んで入ってくる人物がこの魔王城にいるとは思ってなかったのだろう、その油断の証にドアには何の変哲もない鍵が一つかけられていただけでこんな古びた鍵を壊すのは本当に簡単だった。
案の定、ドアからのあたし達の登場にクソボケ大魔王は年相応……いや、何年生きているか知らないし、ここはあたしと同い年くらいの見た目相応といったところな素直な反応を見せて、豪華絢爛な天蓋付きの真っ黒なベッドに横たわりながら目を丸くして驚いていた。
そんなクソボケ大魔王に対し真っ先に部屋に入って頭を下げたのは三バカ大将……グスタフは大量の冷や汗を流し、ウキョウは挙動不審に、グロワーズはほぼ泣いている。
まあね? 確かにこれ以上ないくらい必死に止められたけど、三バカ大将のことは全員投げ飛ばして強行突破しちゃったからね?
「お前達、この人間と随分仲良くなったようだな……?」
最後にちゃんと顔を合わせて言葉を交わしたのはここに来た最初の朝だっけな、それからもちょこちょこ見かけてはいたけどあからさまに避けられてたからな。
その時より明らかに、クソボケ大魔王の今怒っている姿には迫力と覇気が足りなかった……予想通りだ。
「ウキョウ? お前、先ほどノラと呼び捨てにしなかったか?」
「そっ、それは……あの……‼︎」
どうやら最初の標的はあたしの名前を呼び捨てにしたウキョウに向いたようで、まあ迫力足らずでもそこそこ怖いのだろう、ウキョウはそのクソボケ大魔王を前にしてガタガタと震えていた。
ああ、そういえば名前呼び合うくらい仲良くなったのよね、我ながらびっくりしてるけど……そうか、それが気に入らないのか、子どもかお前はと言ってやろうかと思ったのだが、それは俯いて怯えきっているグスタフとブロワーズ、泣いているグレース様と、そのグレース様を背に庇って臨戦態勢のパトリック様を見たせいでそれは叶わなかった……全員ビビりすぎだけど、まあこのままだと掃除も始められないしね?
「クソボケ大魔王! これ何だ~?」
あたしはその張り詰めた空気を断ち切るように、あえて緊張感のないような何でもないような声を出す。
すると、途端にその場の空気は緩んであたしに視線が向くわけだが、あたしの手に持つそれに今度は目を奪われていた……何でだよ、普通のサンドイッチですけど?
「あんた、律儀なんだかバカ真面目なんだか……それとも度が過ぎたプライドの塊か?」
「……ああ?」
「どっちにしても、あたしに啖呵切ったあの日からまともに食べてないでしょ? それであまりの空腹で動けなくなって、さらにイライラしっぱなしでその有様でしょ?」
最初は全員が何のつもりだとでも言うようにサンドイッチを凝視しており、クソボケ大魔王に関しては警戒心丸出しだったわけだが……あたしが皮肉たっぷりに皿に乗ったサンドイッチを差し出したことで、それが単純に食べろって意味を示すのだということを理解をすると、途端にその場の空気は緩む。
昨日の夜にアニキに言っていた考え……まあ、考えってほどではないかもだが、この無駄にプライドが高いクソボケ大魔王のことだから絶対に意地になって何も食べていないと思った、どんな悪党だって腹は減る。
それが満たされればほとんどがいい方向に行くとか行かないとか? とにかく、目を見開いてあたしとサンドイッチを交互に凝視するクソボケ大魔王は実に間抜けだ……まあ、そんなことよりもだと、あたしはベッドの上にサンドイッチを置いて部屋の中を見回す。
「まるで、この部屋って樹海ね……何があるわけよ?」
こんな奴の空腹からくるイラつきに付き合っている暇はないんだ……どうしてこうもこの城の中は、どこもかしこもこうなのか!?!?
まったく床が見えなくて、どこにも足の踏み場もないほどに積み上げられたぱっと見てもよくわからないもののガラクタの山、山、山! 登山でもするのかここで⁉︎ 呆れながら、あたしは天を仰ぐ。
他のみんなはこのクソボケ大魔王の方ばっかりに気を取られていたみたいだかど、あたしはこの惨状を見た瞬間に泣きたくなったよ!
どう考えてもそんな奴よりこっちの方が恐ろしいでしょうが⁉︎ 何で、最後の最後でこんな試練が待っているのよ、これは完全な嫌がらせだ!
「まっ、待て……⁉︎ この……気安く触るな!」
「無闇に動くな! 倒れるわよ?」
とりあえずの現状を把握するためにあたしはガラクタを掻き分けて進んで行く……途中でやかましいだけの怒鳴り声が部屋の主から入ったが、知るか! 倒れるぞ! ああ、もういっそのことお前は倒れとけ!
「何これ、短剣? こっちは盾と矛のセット?」
どうにかこうにか唯一無事なベッドにまでたどり着いてからそこに座り、適当に近くにあったガラクタを手に取ってみたものの……は?
他にもだけどよく間見回してみると、何だかここにあるものってどれもこれも高価そうなんだけど……?
「タービュランス様、これ……すべていつかの降伏の証のものでは?」
すると、恐る恐るといった感じに声を上げたのはさっきまで標的にされていたウキョウで……どうやら調子を取り戻したっぽいな?
というかだけど……待てよ? 今あの鬼、このガラクタ見てなんて言ったよ⁉︎
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