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第二章 クソボケ大魔王と魔法スキルと
持たざる者どころかの存在
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「おっ、おおお、お前! 一体、何をしたんだ⁉︎」
「は? え、別に何も……?」
「嘘をつくな! あんなに炎に包まれて、傷一つないとはどういうことだ⁉︎」
どういうことって言ったって、そんなのあたしが一番聞きたいんですけど……あたしは確かに大魔王によって炎に全身を包まれ焼かれたはずだ。
しかし、結果はこの通り、あたしの体には火傷どころかかすり傷一つ付いておらず、目の前の大魔王には詰め寄られ、他のみんなからは凝視される始末。
「まさか炎に耐性があるのか? それならば……水攻めだあああああ!!!!」
「え? 別に、そういうわけでは……?」
その後も大魔王はあたしの殺そうと、溺れさせようとしたり、ツタで縛り上げようとしたり、石化させようとまでしたのだが……不思議だけどことごとく、大魔王の魔法はあたしに効かなかった。
「え、これは本当に何事?」
「ノラ! 本当に大丈夫なのか⁉︎ こう何度も妹の窮地を見せられるっていうのは、もういい加減に兄ちゃんは心臓に悪いのだが⁉︎ 寿命が軽く三十年は縮んだと思うのだが⁉︎」
「ああ……うん。何か、大丈夫だよ? ついでに白状しておくんだけど、あたしも何度も心の中でアニキに遺言を叫んでいるもんだから、何かだんだん心が込もらなくなってきちゃった。ごめんね?」
「そんなカミングアウトは聞きたくなかったぞ、妹よ⁉︎」
アニキと漫才のようなやり取りを繰り広げているが、忘れちゃいかん……あたしは絶賛殺されようとしている真っ最中なのだが?
無傷のままでその場に立ち続けるあたしの前には、息も絶え絶えな大魔王の情けない姿……本当にあたし達は何をやっているんだろうか?
「おのれ、サクヤ……お、お前の妹は! 持たざる者ではなかったのか⁉︎ 兄と妹揃って、この俺様を騙したのか⁉︎ それではお前への見せしめのために妹を差し出させた意味がないではないか!」
「やっぱり、サクヤへの嫌がらせのためにノラを差し出させたのか……」
「どこまでも清々しいほどに最低ね。吐き気がするわ」
動揺のせいか、どさくさ紛れにとんでもないことをカミングアウトし出した大魔王に水晶玉からはリクくんの呆れた声とシナコちゃんのこれでもかと蔑んだ声が聞こえてくる……
というか、薄々気付いてはいたからあたしが世話係に指名された理由ががアニキへの嫌がらせだっていう件は置いておくとしてもよ、あたしは何で死なないわけ?
「あの、差し出がましいのですが……」
「パトリック! まだ無理に動いてはダメよ!」
「あ、パトリック様⁉︎ 目が覚め……」
そんな混乱が渦巻く空気を一変するような声を発したのはパトリック様で、あたしが目を向けた時には何とか自力で起き上がろうとするパトリック様をグレース様が悲鳴のような声を上げながら支えているところで、そこにあたしは声をかけようと無意識で言葉を切り出したのだが……
その無意識の中で出た言葉の意味を理解して、次に悲鳴のような声を上げたのはあたしの方だった。
「待って、待って! 一体どのタイミングで起きていらしたんですか⁉︎」
「あー、君が炎に焼かれている辺りから……」
「ほぼ最初からなんですね⁉︎ ああ! 気付かなくて、本当に申し訳ございません! お体は大丈夫ですか⁉︎」
「少し痛むところはあるけど……あんなに炎に包まれていた割にはすごく軽症だし、何より生きていることが奇跡だから」
多分真っ青になっていたのはあたしだけではなかったと思うけど、あたしは大して長くも生きていない人生の中でこんなに肝が冷えたことはなかったと思う。
まさか大魔王と魔法のことに夢中になっていて、パトリック様が気を失っていたことを忘れるなんて……
しかし、普通なら切腹か首吊りかわからないけどただでは済まないところを、この目の前の神様仏様パトリック様は苦笑いで許してくれる……王子って眩しすぎる、本当にごめんなさいです!
それにパトリック様の言う通り、正常に話ができてるし、目立った外傷もなく、火傷の後遺症らしきものはなさそうだ、良かった……
「それより、君の能力についての話なんだけど……無効化じゃないかな?」
すると、話がひと段落し、あたし達が安堵の顔を浮かべたのを確認したであろうパトリック様はあたしと目を合わせると、誰も予想だにしなかったことを言い出したのだった……
「聞き慣れないよね? 無効化というのは……」
「パトリック、あなたはもう喋らないで。あとは、私がご説明するわ……‼︎」
パトリック様はその聞き慣れない言葉の説明を話してくれようとするが、それは今度こそグレース様によって止められてしまっていた。
「あの……お願いします、グレース様! 無効化とは、何なのですか?」
「無効化とは、その名の通りに無効化。すべての魔法を無効化にする最高レベルの身体的防御魔法の一つです」
まさかの衝撃的な展開に動けなくなっていたあたし達の中でいち早く我に返ったアニキが、慌ててグレース様に事の詳細を懇願する。
そして、そのアニキの言葉に答えるように神妙な面持ちのグレース様から語られたその事実の数々は、やっぱりあたしには信じられないことばかりで……それは他のみんなも同じで、その場は堰を切ったように一気に騒がしくなった。
「は? え、別に何も……?」
「嘘をつくな! あんなに炎に包まれて、傷一つないとはどういうことだ⁉︎」
どういうことって言ったって、そんなのあたしが一番聞きたいんですけど……あたしは確かに大魔王によって炎に全身を包まれ焼かれたはずだ。
しかし、結果はこの通り、あたしの体には火傷どころかかすり傷一つ付いておらず、目の前の大魔王には詰め寄られ、他のみんなからは凝視される始末。
「まさか炎に耐性があるのか? それならば……水攻めだあああああ!!!!」
「え? 別に、そういうわけでは……?」
その後も大魔王はあたしの殺そうと、溺れさせようとしたり、ツタで縛り上げようとしたり、石化させようとまでしたのだが……不思議だけどことごとく、大魔王の魔法はあたしに効かなかった。
「え、これは本当に何事?」
「ノラ! 本当に大丈夫なのか⁉︎ こう何度も妹の窮地を見せられるっていうのは、もういい加減に兄ちゃんは心臓に悪いのだが⁉︎ 寿命が軽く三十年は縮んだと思うのだが⁉︎」
「ああ……うん。何か、大丈夫だよ? ついでに白状しておくんだけど、あたしも何度も心の中でアニキに遺言を叫んでいるもんだから、何かだんだん心が込もらなくなってきちゃった。ごめんね?」
「そんなカミングアウトは聞きたくなかったぞ、妹よ⁉︎」
アニキと漫才のようなやり取りを繰り広げているが、忘れちゃいかん……あたしは絶賛殺されようとしている真っ最中なのだが?
無傷のままでその場に立ち続けるあたしの前には、息も絶え絶えな大魔王の情けない姿……本当にあたし達は何をやっているんだろうか?
「おのれ、サクヤ……お、お前の妹は! 持たざる者ではなかったのか⁉︎ 兄と妹揃って、この俺様を騙したのか⁉︎ それではお前への見せしめのために妹を差し出させた意味がないではないか!」
「やっぱり、サクヤへの嫌がらせのためにノラを差し出させたのか……」
「どこまでも清々しいほどに最低ね。吐き気がするわ」
動揺のせいか、どさくさ紛れにとんでもないことをカミングアウトし出した大魔王に水晶玉からはリクくんの呆れた声とシナコちゃんのこれでもかと蔑んだ声が聞こえてくる……
というか、薄々気付いてはいたからあたしが世話係に指名された理由ががアニキへの嫌がらせだっていう件は置いておくとしてもよ、あたしは何で死なないわけ?
「あの、差し出がましいのですが……」
「パトリック! まだ無理に動いてはダメよ!」
「あ、パトリック様⁉︎ 目が覚め……」
そんな混乱が渦巻く空気を一変するような声を発したのはパトリック様で、あたしが目を向けた時には何とか自力で起き上がろうとするパトリック様をグレース様が悲鳴のような声を上げながら支えているところで、そこにあたしは声をかけようと無意識で言葉を切り出したのだが……
その無意識の中で出た言葉の意味を理解して、次に悲鳴のような声を上げたのはあたしの方だった。
「待って、待って! 一体どのタイミングで起きていらしたんですか⁉︎」
「あー、君が炎に焼かれている辺りから……」
「ほぼ最初からなんですね⁉︎ ああ! 気付かなくて、本当に申し訳ございません! お体は大丈夫ですか⁉︎」
「少し痛むところはあるけど……あんなに炎に包まれていた割にはすごく軽症だし、何より生きていることが奇跡だから」
多分真っ青になっていたのはあたしだけではなかったと思うけど、あたしは大して長くも生きていない人生の中でこんなに肝が冷えたことはなかったと思う。
まさか大魔王と魔法のことに夢中になっていて、パトリック様が気を失っていたことを忘れるなんて……
しかし、普通なら切腹か首吊りかわからないけどただでは済まないところを、この目の前の神様仏様パトリック様は苦笑いで許してくれる……王子って眩しすぎる、本当にごめんなさいです!
それにパトリック様の言う通り、正常に話ができてるし、目立った外傷もなく、火傷の後遺症らしきものはなさそうだ、良かった……
「それより、君の能力についての話なんだけど……無効化じゃないかな?」
すると、話がひと段落し、あたし達が安堵の顔を浮かべたのを確認したであろうパトリック様はあたしと目を合わせると、誰も予想だにしなかったことを言い出したのだった……
「聞き慣れないよね? 無効化というのは……」
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そして、そのアニキの言葉に答えるように神妙な面持ちのグレース様から語られたその事実の数々は、やっぱりあたしには信じられないことばかりで……それは他のみんなも同じで、その場は堰を切ったように一気に騒がしくなった。
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