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戦争は何を生むのだろうか
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「そんな……!! 私が、みんなのことを恨むなんて、そんなのありえないよ!」
「嘘よ! それ以外、こんな仕打ちする理由なんてないじゃないの!」
「レギーナ! 俺、お前にしたこと本当に後悔してるんだ! 頼むから……!!」
レギーナは首をこれでもかと振って否定をするけど、パニック寸前のミカエラとトレヴァーには届かず……
「ミカエラ、トレヴァー、聞いて!? その逆! 大好きで、みんなのことが大好きで大切だから守るために……!!」
「それが! どういうことなのか、わかってて言ってるのか!?」
「クレイトン……」
二人のことをレギーナはどうにか落ち着かせようとするが、そんな彼女の言葉を遮ってクレイトンが怒鳴る。
そもそも、僕達がなぜ大好きなレギーナをこんなに責めているか……
「レギーナ、歴史本読んだのか? そこには何百、何千って数の魔法族が死ぬと書いてあったはずだ。それでも、お前は僕達を残して、魔法戦争に行くのか!!」
そう、彼女が明日、自分も魔法戦争に行くと言い出したからだ。
クレイトンは、もう抑えが効かないとばかりにレギーナを責めた。
魔法戦争とは魔法が使われる魔法族同士の戦争のことで、最後に起こったのは何十年も前だったのに……
三日前に隣国から魔法族が攻めてきたことで、我が王国は数十年ぶりの魔法戦争への参戦を余儀なくされた。
国王である父は必死に抵抗したが、攻めてこられては為す術はなく……
大昔に魔法戦争は魔法族同士の戦闘に限り、魔法族は人間のことを守らなければならないという契約が魔法族と人間の間で交わされたことは、この世界の常識の一つである。
つまり、僕達人間はせっかく手を取り合った魔法族を、戦地に送り出さなければならなくなったのだ。
それなら、レギーナを魔法戦争に送り出すのが筋だと思うだろうが、違う。
「わかってるけど……他のみんなが頑張ってる時に、私だけがこんな風に安全な場所で待ってるなんてできないよ!」
「そうだとしても、まだレギーナは百七十二歳でしょ? あなたは、まだ二百歳じゃないの! 大人じゃないのよ!」
「気持ちは痛いほどわかる! けど、権利や義務もないのに、わざわざ危険な運命に飛び込む必要はねえだろ!」
レギーナの訴えに、ミカエラは絶対に諦めないとばかりにまるで諭すように反論をして、トレヴァーは自分の経験と重ね合わせるように辛い表情をしながら説得を試みている。
魔法族の寿命はとても長く、目の前のレギーナも僕達と同年代に見えて、実際は今年で百七十二歳になる。
そんな魔法族の成人は二百歳で、魔法戦争は成人した魔法族は必ず参戦しなければいけないという掟があるが、その逆はなかった。
つまりは、まだ成人をしてなくても魔法戦争に参戦は可能ということだ。
そう、今回レギーナは魔法戦争への参戦の義務もないのに、自ら無謀にも魔法戦争に参戦しようとしている。
それが、僕達が彼女を責めてる……説得しようとしてる理由だ
「レギーナ……君が何千年に一人の魔力量の持ち主だとしても、僕達だって君のことが大切なんだ……こんな、仲間を見捨てるような真似、絶対できない!」
ミカエラとトレヴァーに続いて、クレイトンはさらに畳みかける。
クレイトンが言った通りに詳しいことはわからないけど、どうやらレギーナは何千年に一人の魔力量の持ち主、つまりは魔法族では天才なのだと言う。
僕達がそれを魔法族の長老に聞いたのは、つい先日のことだ。
すると、それを聞いたレギーナは、少し驚いた後、バツが悪そうに笑った。
「……私が魔法戦争なんか、パパっと終わらせて来る。待ってて……?」
この夜に、彼女の口から魔法戦争には行かないという言葉を聞き出すことはできなかった。
そして、この夜に僕は一言も発することができなかった……こんなにも恋焦がれているくせに――
「嘘よ! それ以外、こんな仕打ちする理由なんてないじゃないの!」
「レギーナ! 俺、お前にしたこと本当に後悔してるんだ! 頼むから……!!」
レギーナは首をこれでもかと振って否定をするけど、パニック寸前のミカエラとトレヴァーには届かず……
「ミカエラ、トレヴァー、聞いて!? その逆! 大好きで、みんなのことが大好きで大切だから守るために……!!」
「それが! どういうことなのか、わかってて言ってるのか!?」
「クレイトン……」
二人のことをレギーナはどうにか落ち着かせようとするが、そんな彼女の言葉を遮ってクレイトンが怒鳴る。
そもそも、僕達がなぜ大好きなレギーナをこんなに責めているか……
「レギーナ、歴史本読んだのか? そこには何百、何千って数の魔法族が死ぬと書いてあったはずだ。それでも、お前は僕達を残して、魔法戦争に行くのか!!」
そう、彼女が明日、自分も魔法戦争に行くと言い出したからだ。
クレイトンは、もう抑えが効かないとばかりにレギーナを責めた。
魔法戦争とは魔法が使われる魔法族同士の戦争のことで、最後に起こったのは何十年も前だったのに……
三日前に隣国から魔法族が攻めてきたことで、我が王国は数十年ぶりの魔法戦争への参戦を余儀なくされた。
国王である父は必死に抵抗したが、攻めてこられては為す術はなく……
大昔に魔法戦争は魔法族同士の戦闘に限り、魔法族は人間のことを守らなければならないという契約が魔法族と人間の間で交わされたことは、この世界の常識の一つである。
つまり、僕達人間はせっかく手を取り合った魔法族を、戦地に送り出さなければならなくなったのだ。
それなら、レギーナを魔法戦争に送り出すのが筋だと思うだろうが、違う。
「わかってるけど……他のみんなが頑張ってる時に、私だけがこんな風に安全な場所で待ってるなんてできないよ!」
「そうだとしても、まだレギーナは百七十二歳でしょ? あなたは、まだ二百歳じゃないの! 大人じゃないのよ!」
「気持ちは痛いほどわかる! けど、権利や義務もないのに、わざわざ危険な運命に飛び込む必要はねえだろ!」
レギーナの訴えに、ミカエラは絶対に諦めないとばかりにまるで諭すように反論をして、トレヴァーは自分の経験と重ね合わせるように辛い表情をしながら説得を試みている。
魔法族の寿命はとても長く、目の前のレギーナも僕達と同年代に見えて、実際は今年で百七十二歳になる。
そんな魔法族の成人は二百歳で、魔法戦争は成人した魔法族は必ず参戦しなければいけないという掟があるが、その逆はなかった。
つまりは、まだ成人をしてなくても魔法戦争に参戦は可能ということだ。
そう、今回レギーナは魔法戦争への参戦の義務もないのに、自ら無謀にも魔法戦争に参戦しようとしている。
それが、僕達が彼女を責めてる……説得しようとしてる理由だ
「レギーナ……君が何千年に一人の魔力量の持ち主だとしても、僕達だって君のことが大切なんだ……こんな、仲間を見捨てるような真似、絶対できない!」
ミカエラとトレヴァーに続いて、クレイトンはさらに畳みかける。
クレイトンが言った通りに詳しいことはわからないけど、どうやらレギーナは何千年に一人の魔力量の持ち主、つまりは魔法族では天才なのだと言う。
僕達がそれを魔法族の長老に聞いたのは、つい先日のことだ。
すると、それを聞いたレギーナは、少し驚いた後、バツが悪そうに笑った。
「……私が魔法戦争なんか、パパっと終わらせて来る。待ってて……?」
この夜に、彼女の口から魔法戦争には行かないという言葉を聞き出すことはできなかった。
そして、この夜に僕は一言も発することができなかった……こんなにも恋焦がれているくせに――
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