美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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ヒューズ宅へ 2

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 次の日からは邸宅の中や庭でミスカさんとゆっくり過ごしていた。
 寮とは違う環境だから目新しい物も沢山あって、そういうものを眺めているだけでも頭の中が新鮮になるというか、不思議とスッキリした気分になる。

「これは何ていうお花なの?」
「ジーリアと言って北のほうの国が原産のものですよ」
「初めて見ますね!」
「そうだな」

 広いお庭も庭師が二人がかりで毎日手入れをしているのでとても立派でどこを見ても美しい。

「サキ様とミスカ様もお花を育てていらっしゃるんですよね。余っている種がいくつかありますので、お好きなものがあれば貰ってください」
「ありがとう!ミスカさん、行きましょう!」
「ああ」

 また、お爺様の仕事がお休みの日には改めてゆっくりお話ができた。
 隠居したのに?と思ったが、「領を統治している甥の手伝い」をしているそう。詳しくは分からない。

「孫に続きまさかひ孫だとは。私ももうそんな歳か」
「そんな、まだまだですよ!私の居た世界だと結婚も出産ももっと遅くて、それこそひ孫なんて生きてるうちにあえるか分かりませんから」
「そうなのか?」
「昔はそうでもなかったらしいですけど、私の時代だと三十、四十代で結婚する人も普通でした」
「「!?」」

 お爺様もミスカさんも凄い驚いている。

「そうするとやっぱり子供を産むのも大変になりますから、私は早くに皆と出会えて良かったなって思います」
「そうだな、サキの体が一番だ。若いうちでも無理はしないでくれ」

 頭を撫でてくれるお爺様の手は温かい。子供を産むお婆様を傍で見て、育てた彼はその大変さも理解している。

「子供は思った以上に動き回るんだ。いつの間にか部屋の隅に居たりしていたな」
「周りに何も置かないほうが安全ですよね」
「それはそうだが閉鎖的な空間に閉じ込めるのは良くない。親が生活する空間で一緒にいるのが一番だが」

 ミスカさんがお爺様から真面目に教わっているのを私も一緒に聞く。
 こうやって上の世代の人から学んで伝わっていくことなんだよね。
 他に結婚している人にも色々聞いたりして、有意義な話がいっぱい出来た。

 食事の後はミスカさんとお風呂に入る。脱ぎ気しやすい服だけれど毎回彼がしてくれるので私は立っているだけだ。

「個室に湯舟も付いているなんて凄いですよね」
「基本シャワーのみだからな」

 しかも凄いお洒落。ホテルみたい。
 掃除大変そうだなとか思っちゃった。
 背の高い椅子をわざわざ用意してくれていたのでとても有難い。気遣いに感謝しながらやっぱり今日も彼に洗ってもらうのだった。

「髪くらいは自分で……」
「大丈夫だ。任せてくれ」

 お風呂の入り方忘れちゃいそう……。
 綺麗になったところで彼の胸に背を預けながらお湯に浸かる。

「あったかい……落ち着く……」
「この入浴剤というのは良いな。肌が綺麗になるのか」
「艶々になれますね!」

 ミスカさんは自分の肌が艶々になったのを想像して顔を顰めていた。

「私の居た世界には炭酸入りの物とかもありましたよ」
「たんさん?」

 あ、炭酸はないのか。あれは空気を…圧縮?してるのかな。技術が難しそう。

「お湯に溶けると発泡してしゅわしゅわってなるんです。凄く気持ち良いですよ」
「しゅわしゅわ……気になるな」
「飲み物でも炭酸のものがあって、飲むと口の中で弾ける感じで」
「それは大丈夫なのか……?」

 なんだか飲みたくなってきちゃった。いつかこの世界でも作られないかな。
 話し込んでだいぶ長風呂になってしまった。
 火照る体を冷まし、ミスカさんと並んでベッドに横になる。

「今日も楽しかったです」
「それなら良かった」

 でも……。

「……皆に会いたいな」

 ここに居るのはとても楽しいけれど、彼らが居ないとやっぱり違うなって思ってしまう。

「あいつらはそろそろ泣いてる頃だろう」
「ハインツさんも?」
「意外と裏では泣いているかもしれない」
「ふふ……見てみたいな」

 同じ家に住み毎日会えることの喜びと大切さを実感しながら一週間を終えた。


「今度は子供と一緒に来ますね」
「ああ。落ち着いたらで良いから。体に気を付けて」

 お爺様にそっと抱きしめてもらう。

「…やっぱりお父さんって感じもしますね」
「はは、若く思われて嫌な気はしないな。娘でも孫でも私の大切な家族だ」
「はい……!」

 使用人の皆も若干涙ぐみながら見送ってくれる。

「また来るから……そんな悲しそうにしないで」
「いや……もう心配で……」
「サキ様なら大丈夫です!月並みな言葉ですが…頑張ってください!」
「ありがとう……!」

 迎えに来てくれたハインツさんとミスカさんと馬車に乗り込み手を振って邸宅を後にした。

「…サキが人気者すぎる……」
「本当にな……。この可愛さと優しさなら当たり前なのだけれど……」
「ミスカさん、ハインツさん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」

 私は隣に座るハインツさんにもたれ手を握る。

「ハインツさん、私の為にお仕事頑張ってくれてありがとうございます」
「!…ああ。サキの為ならいくらでも頑張れる。随分楽しめたようで、良かったよ」
「はい!朝お爺様に会ったら一番に抱きしめてくれて…」
「……そうか」

 邸宅での思い出も沢山できて、また気持ちを新たに黒騎士団寮での日々に戻ったのだった。
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