美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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暗闇の中で

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 今日は早めに帰宅し、せっかくなのでお菓子作りをしていた。
 皆が「美味しいよ!」って喜んでくれる姿を想像してニヤニヤしながら生地を混ぜる。
 出来上がりと同時に玄関から音がして、ヴェルくんが一番に帰ってきた。

「ヴェルくん!あのね、お菓子作ったの!」
「いい匂いですね、クッキーですか?」
「うん!薔薇の香辛料入れてみたんだ」

 クッキーのバターと華やかな薔薇の香りがマッチしている、なかなかお洒落なお菓子になったと思う。

「さっき焼き上がったばかりなの。味見してくれる?」
「ありがとうございます!いただきますね」

 ホカホカのしっとりしたクッキーを手に取り笑顔で食べてくれる。

「美味しいです…!」
「良かった!」
「もう一つ貰って良いですか?」
「勿論!」

 その後帰宅した皆に紅茶も出して食べてもらう。

「クッキー美味しいー!」
「リューク、二枚同時に取るな」

 頬いっぱいに詰め込みまた手を伸ばすリュークをミスカさんが遮る。

「とても美味しいよ。サキのお菓子が一番だ」
「ハインツさん、こっちは砂糖をまぶしたので」
「ん…!なんだこれは…美味すぎる…」
「ふふ、絶対好きだと思ったんです」

 甘党のハインツさんを筆頭に皆パクパク食べてあっという間に無くなってしまった。

「二日分のつもりだったんだけどな…」
「えっ、ごめんね!?つい食べ過ぎちゃって…」
「いいえ!喜んで貰えて嬉しいです!良かったらラグトさん、今度一緒に作りませんか?」
「うん!沢山作ろ!」

 ふと隣に座っていたヴェルくんが私の腰に手を回す。

「最後の一つ、どうぞ」
「え、いいの?取っておいたのに」
「サキさん、自分はあまり食べていなかったでしょう」

 そういえばずっと皆が食べているのを眺めてばかりだった。

「ありがとう!」

 ヴェルくんが口元に差し出してくれたクッキーを食べる。モグモグしている私の唇を指で撫でた彼に軽くキスをされた。

「今日は一緒に過ごしましょうね」

 笑顔の彼に顔を覗き込まれ私は頬を赤く染める。

「ちょっ、なに目の前で誘ってんの!俺もしたい~」
「リュークさんはしたばかりでしょう」

 リュークだけで無く皆も口を尖らせているが、クッキーを飲み込んだ私はヴェルくんにキスを返す。

「……今日はヴェルくんとしたいな」
「!」

 ヴェルくんは一瞬驚いた顔をしたが、嬉しそうに目を細めた。

「サキがそう言うのなら仕方ないね」

 立ち上がったハインツさんにおでこにキスを貰う。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

 皆と別れて、私たちも部屋に向かった。

「ね、ヴェルくん…」

 中に入ってすぐに私は彼の袖を引く。

「ギュってして…」
「良いですよ」

 手を広げた彼に包まれる。

「今日はそういう気分ですか?」
「うん…」
「それなら…いえ、ベッドに行きましょうか」

 私を抱えてベッドに降ろし、ヴェルくんは深いキスを与えてくれる。
 いつもより心なしかゆっくりと服を脱がせ露わになった全身を手のひらで撫で、下に伸びた手も中を解すように緩く掻き混ぜる。

「ん…はぁ…」

 キスの合間に外に漏れる熱を持った吐息さえも惜しむようにヴェルくんはより口付けを深めていき、私はそれに追いつくの必死だった。
 唇が離れること無く、彼のモノと少しずつ繋がっていった。全部が埋まるとようやくキスは終わる。
 中に入れたがすぐには動くことなく、何かと思って顔を見ると彼は少し困ったように微笑んだ。

「この間は触れてあげられなくてすみませんでした」
「も、もう怒ってないよ…」
「ありがとうございます」

 急に謝られて驚きながら、彼に頭を撫でられる。

「今日はサキさんのして欲しいことなんでも言ってください。優しくでも激しくでも、酷くでも」

 結局は私に言わせたいだけだった。

「…優しくして…」
「分かりました」

 ゆっくり動き始めちょうど良い速度で彼のものが与えられる。揺れる胸もあまり力は入れずに角張った手で包み込むのみ。

「はぁ、ん…」
「気持ちいいですか?」
「きもち、いい…」

 気持ちいいけど…気持ちいいのに何かが違う。
 熱が足りない。私が彼から欲しいのはただの優しさじゃない。彼を強く欲している今日の私は先程沢山与えられた優しい愛撫で知らぬ間に焦らされていた。

「…ヴェルく、ん…」
「はい」

 こんなこと…言っていいのか分からないけど…。
 両手で顔を隠しながら躊躇っていたけれど、指の隙間から見える彼に引き込まれるように口が動いた。

「っ…酷くして…」
「…はは」

 彼らしくない笑い声が聞こえると、口元に当てた手のその下でヴェルくんは堪らないという笑みを浮かべていた。
 私は気づいていた。彼との行為で求めていたものが何か。それをあえて口に出すことは無かったけれど、きっと彼も気づいていた。
 触れられたあの時、彼から強い熱を感じた。それには私に対しての「虐めたい」という気持ちが少なからず含まれていたのだろう。それならば私は彼に同じものを返せない。

「サキさんは虐められたいんですね」
「!」
「他の人にはそうは思わないでしょう。僕にだけ」

 そう、ヴェルくんにだけ。
 ヴェルくんは私を傷つけることは絶対にしない。普段私自身でも分からないような心の奥底を彼は見抜いて引き出し、それに応えているのだ。ヴェルくんにしか出来ないこと。
 最初は戸惑ったけれどこれが彼の愛情表現だから、私はそれが何よりも愛おしい。

「嬉しいです…こんな欲にまみれた僕のことを受け入れてくれる…。本当に優しくて美しくて…可哀そうな人だ」

 一度自身を抜いた彼は少し離れたかと思うとタオルを持ってくる。

「ヴェルくん…?」

 それを私の目元を隠すように頭に巻いた。急に視界が暗闇に包まれ胸に不安が広がる。
 思わず何かに縋るように手を伸ばすと、ヴェルくんの手がそっと触れ安心させるように手の甲を撫でた。

「大丈夫です。痛いことは何もしません」
「うん…」
「全部…気持ちいいことですよ」

 そこから何も見えない状態で体に触れられていく。
 いつどこに手がくるか分からなくて、体が強張り身構えしまう。

「緊張しないで」

 ゆっくりと肩を撫でられて少し体の力が抜ける。

「また中触りますね」
「…うん」

 下に彼の手を感じ、自然と脚が開く。
 膣に指が二本入り、少しずつ激しくかき回していく。

「んっ、あ…!」

 いつもより感覚が鋭敏でどんどん熱が溜まっていく。

「あぁっ!イッ……あ…なん、で…」

 あと少し、というところで指の動きが止まった。体に熱は篭っているのにそれを発散出来ずに快楽の波が引いていく。

「はぁ……んっ…」

 体が疼いて仕方が無く脚をモジモジさせる私にヴェルくんは何も言わず、今度は股の間を手で擦り始めた。
 手の平で入口から溢れるものを掬い全体を撫でると、硬くなった小さな陰核に擦れる。
 ほんの少しの刺激さえも今の私は細かく感じ取り、また絶頂に向かっていく。

「っ、あ……はぁ…」

 しかしまたギリギリで手を離され、それが何度も続いた。
 堪えきれないほどの熱を抱え頭がクラクラする。一つ、あと一つの何かを与えられればイけるのに、それがどうしても足りない。

「ヴェルくん…っもう…」
「なんですか?」
「い…イキたいの…苦しい…」

 声を震わせながら訴えかけると彼は耳元で囁き私を誘導する。

「じゃあ、どうしたらいいか分かりますよね?」
「っ…」

 羞恥心が邪魔をし言葉に詰まるが、体からの切実な欲求に反することは出来なかった。

「イかせて…ください…」
「よく言えました」

 ヴェルくんの手が中へ侵入し、私の弱い部分、お腹側のところを強く指で引っ掻いた。

「あぁっ!!」

 強烈に与えられたその一つで呆気なくイッたした私は、上手く息が出来ず足先のみがピクンと動く。
 頭が焼き切れそう。我慢させられていた分が一気に押し寄せる。

「は…っ…あ…」

 まだ痙攣している中に無理やり硬く熱いものが入ってきた。ピッタリと私を埋める彼のモノ。

「凄いビクビクしてますね、そんなに気持ち良かったですか?」
「あ…ぅ…」

 声を出せずにいる私の中をヴェルくんは強く一突きした。

「っ…」
「ちゃんと答えて」
「き、もち、いい…」

 小さなか細い声で返事をすると、またそれに応えるかのように中を突かれ始めた。

「あっ!ま…っ!あぁ!」

 先程弄られすぎて腫れてしまった膣の膨らみが容赦なく抉られる。

「やだっ、あ!ヴェルく…っ」

 暗闇の中両手を伸ばし彼の肩に触れると必死に抱き寄せて強く縋る。

「きもちい、の…とまんな…っい!あぁ!イッちゃ…っ!」

 体を丸め手に力を入れてグッと握りながらイッたけれど、まだ中を擦られ続ける。

「ヴェルくんっ、ヴェルく…」

 私がひたすら喘ぎ何度も彼の名を呼ぶと、動きが止まり低く熱の籠った吐息が聞こえた。

「こんなに虐められて、その助けを求める相手が僕だなんて」

 声だけで分かる。ヴェルくんはこれまでで一番恍惚とした表情で笑っていることだろう。

「なんて可愛いんでしょう…僕だけの…。いえ、貴女だけの僕ですから、一生求めてくださいね」

 お腹をそっと押されながら奥まで繋がる。深い快感に飲み込まれるように私は体を震わせ達し、お腹に精液を注がれる感覚が脳に刻まれた。

「はぁ…ぁ…っ…」

 全身の力が抜けた状態の私の上半身をヴェルくんは優しく抱き上げる。
 視界を遮っていたタオルが下に落ちて、一番に目に入ったのは大好きな彼の笑顔だった。
 きっとだらしない顔をしている私を、彼は頬を赤らめ愛おしそうに見つめる。
 乱れた髪を整えるように頭を撫で、唇を重ねた。

「いっぱい気持ちよくなれて偉かったですね」
「ん…」
「もう大丈夫ですよ。ゆっくり目を閉じて」

 甘い声に導かれ目を閉じた私はだんだん夢の中へと落ちていく。

「おやすみなさい、サキさん」

 幸せに満ちた心と体を彼に預け、私は眠りについた。
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