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近い距離
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誰か居るかなと思いリビングに向かうとちょうどミスカさんと廊下で会う。
「ミスカさん」
「リビングに居るかと思って来たがちょうど良かったな」
そっくり同じことを考えていて少し笑ってしまった。
「水飲むか?」
「あ、はい!レモン水作ったのでミスカさんも良かったら」
「サキは用意周到だな」
「…これは家事じゃないですよ」
「はは、セーフだ」
「えー厳しい…」
ミスカさんは二杯注いで一つをテーブルに置くとソファに座り、私はその彼の上に座る。
手を伸ばされると当たり前に体がそこに向かい、収まるように習慣づいてしまった。
「ありがとうございます」
「ああ」
渡された水を一口飲み、背中に分厚い体を感じながら遠慮なくもたれかかる。
「ミスカさん」
上を向いて彼をジッと見つめると、屈んでチュッとキスをくれた。
「ふふ…」
「随分機嫌が良さそうだな」
「だって今日から皆Tシャツ着てたじゃないですか!」
今もミスカさんが着ている白いTシャツを引っ張る。
「サキが考えたんだったな。涼しくて着やすい、ありがとう」
「こちらこそありがとうございます」
「?」
ワイシャツもカッチリとしていて良かったけれど、こちらのほうがラフでなんか…爽やかな感じがする!
夏の半袖Tシャツは絶対似合うと思ってたんだよね…うんうん。
どちらを着るかはそれぞれの判断に委ねられるが、ほとんどの団員が気に入って選んでくれたようだ。
「家で住むのもだいぶ慣れてきたな」
「そうですね。すっかり一番安心出来る場所になってます」
結局は皆が居ればどこでも楽しいってことだと思う。
「前は私の部屋に皆が来てくれていましたけど、今は皆で集まれる場所があるしそれぞれの部屋にもすぐ行けるし…これが家族の距離なんだなって」
私を抱きしめてくれる素肌の腕に触れて「嬉しい」と言うと、その腕に優しく力が入った。
「俺もだ」
「…はい」
夏でもいつでも、この温もりはずっと欲しいと願うものだ。
そうしているとヴェルくんもリビングにやって来た。
「ヴェルくん、お仕事終わった?」
「終わりました…」
書類仕事に追われていたヴェルくんはようやく缶詰状態から解放され伸びをする。
一緒に住み始めてからこういう気を張っていない彼の姿がより見られるようになって、私はその度にニコニコしてしまう。
私はミスカさんの膝から降りてヴェルくんを抱きしめる。
「お疲れ様!」
「サキさん…」
ヴェルくんの頭を撫でて労り、彼にも水を渡す。
「ありがとうございます。…これ、美味しいですね…!」
「さっぱりするでしょ?」
「言ってくれれば僕が…」
「これは家事じゃないから」
皆も家に来てから色々と気合いが入っているみたい。家中常にピカピカだし、洗濯はこまめにされているし、流し台に食器があればすぐに洗ってくれる。
リュークが料理関係はしない(させられない)以外は皆、人任せにせず積極的に家事に励んでいる。
本当によく出来た夫たちだ…。
「隊長に書類届けに行ってきます」
「うん」
私に出来る一番は彼らを癒すことかな。
「後で…部屋来る?」
「はい…!」
満面の笑みになったヴェルくんを見送った。
「仕事をしたらサキに真っ先に褒めて貰えるから全員やる気が増しているな」
「それなら良かったです。…これからも続いてくれますかね?」
「ああ、少なくとも俺はサキが傍に居てくれたらどこまででも頑張れる」
仕事をする時のカッコいい表情で私を求めるように見つめられ、堪らず駆け寄り彼に抱きつく。
「幸せです」
「幸せだな」
当たり前になったこんな日々が愛おしいと、何度も改めて感じていた。
「ミスカさん」
「リビングに居るかと思って来たがちょうど良かったな」
そっくり同じことを考えていて少し笑ってしまった。
「水飲むか?」
「あ、はい!レモン水作ったのでミスカさんも良かったら」
「サキは用意周到だな」
「…これは家事じゃないですよ」
「はは、セーフだ」
「えー厳しい…」
ミスカさんは二杯注いで一つをテーブルに置くとソファに座り、私はその彼の上に座る。
手を伸ばされると当たり前に体がそこに向かい、収まるように習慣づいてしまった。
「ありがとうございます」
「ああ」
渡された水を一口飲み、背中に分厚い体を感じながら遠慮なくもたれかかる。
「ミスカさん」
上を向いて彼をジッと見つめると、屈んでチュッとキスをくれた。
「ふふ…」
「随分機嫌が良さそうだな」
「だって今日から皆Tシャツ着てたじゃないですか!」
今もミスカさんが着ている白いTシャツを引っ張る。
「サキが考えたんだったな。涼しくて着やすい、ありがとう」
「こちらこそありがとうございます」
「?」
ワイシャツもカッチリとしていて良かったけれど、こちらのほうがラフでなんか…爽やかな感じがする!
夏の半袖Tシャツは絶対似合うと思ってたんだよね…うんうん。
どちらを着るかはそれぞれの判断に委ねられるが、ほとんどの団員が気に入って選んでくれたようだ。
「家で住むのもだいぶ慣れてきたな」
「そうですね。すっかり一番安心出来る場所になってます」
結局は皆が居ればどこでも楽しいってことだと思う。
「前は私の部屋に皆が来てくれていましたけど、今は皆で集まれる場所があるしそれぞれの部屋にもすぐ行けるし…これが家族の距離なんだなって」
私を抱きしめてくれる素肌の腕に触れて「嬉しい」と言うと、その腕に優しく力が入った。
「俺もだ」
「…はい」
夏でもいつでも、この温もりはずっと欲しいと願うものだ。
そうしているとヴェルくんもリビングにやって来た。
「ヴェルくん、お仕事終わった?」
「終わりました…」
書類仕事に追われていたヴェルくんはようやく缶詰状態から解放され伸びをする。
一緒に住み始めてからこういう気を張っていない彼の姿がより見られるようになって、私はその度にニコニコしてしまう。
私はミスカさんの膝から降りてヴェルくんを抱きしめる。
「お疲れ様!」
「サキさん…」
ヴェルくんの頭を撫でて労り、彼にも水を渡す。
「ありがとうございます。…これ、美味しいですね…!」
「さっぱりするでしょ?」
「言ってくれれば僕が…」
「これは家事じゃないから」
皆も家に来てから色々と気合いが入っているみたい。家中常にピカピカだし、洗濯はこまめにされているし、流し台に食器があればすぐに洗ってくれる。
リュークが料理関係はしない(させられない)以外は皆、人任せにせず積極的に家事に励んでいる。
本当によく出来た夫たちだ…。
「隊長に書類届けに行ってきます」
「うん」
私に出来る一番は彼らを癒すことかな。
「後で…部屋来る?」
「はい…!」
満面の笑みになったヴェルくんを見送った。
「仕事をしたらサキに真っ先に褒めて貰えるから全員やる気が増しているな」
「それなら良かったです。…これからも続いてくれますかね?」
「ああ、少なくとも俺はサキが傍に居てくれたらどこまででも頑張れる」
仕事をする時のカッコいい表情で私を求めるように見つめられ、堪らず駆け寄り彼に抱きつく。
「幸せです」
「幸せだな」
当たり前になったこんな日々が愛おしいと、何度も改めて感じていた。
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