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求めているもの
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床座の部屋で勉強中、少しの休憩と称して寝転がり私はラグトさんの上にうつ伏せになっていた。
落ち着く……。
抱きしめられながら顔を擦り寄らせ彼の頬にキスしていると、何かを考え込んでいたラグトさんは躊躇いながら口を開いた。
「ねぇサキちゃん…」
「どうかしましたか?」
「やっぱ俺とのセックスだと物足りないとかある……?」
「え?」
急に何の話かと思えばセッ……うん。
「全然そんな事ないですけど……どうして急に?」
「だって俺さ……ヴェルストリアみたいに出来ないから……。もっとこう……たまには強引さも必要なんじゃないかと……」
あ、この前の事かな……。
確かにヴェルくんとラグトさんのえっちは全然違うし、ヴェルくんのは気持ちいいけど……。
「正直……」
「うん……」
「ラグトさんにはああいう感じではして欲しくないです……」
「え、逆に?」
「逆に」
ラグトさんがいわゆる……言葉責めとかしてるの想像つかないし。
「私は皆とそれぞれする理由が違うので、求めているものも違います。なので……そのままでいて欲しいです」
「そっか……余計なこと聞いちゃってごめんね」
「いえ!こういうのもちゃんと伝えないとですよね……」
一種のコミュニケーションなわけだし。
「ちなみに俺には何が求められてるの?」
「安心感……かな」
「それめっちゃ嬉しいんだけど!?」
凄く喜んでくれた。しかし「他の皆に安心感は求めていないのか」と聞かれると上手く答えられなかったのではぐらかした。
「特にゆっくりして欲しいとかでは無いので!今まで通りが一番嬉しいです」
「分かった!」
ニコニコになったラグトさんは私の髪を撫で付けながら口元にキスをする。
「勉強再開する?」
「はい!」
よいしょと起き上がり先程と同じように彼と隣同士で座る。
「さっきどこまでやったかな」
「野菜の名前一通り教えてもらいました」
「じゃあ次果物にしようか」
文字を一つずつより単語で覚えたほうが良いだろうということで、ラグトさんの見本を見ながら真似して一つずつ練習していた。
「あんまり基準は分からないんですけど、ラグトさんの文字凄く綺麗だと思います。丁寧っていうか」
「そうかな?」
先日リュークに教わった時のことを思い出す。
「リュークは書くの速くて、ほとんど繋がって見えました」
「書き方も人それぞれだからね。リュークさんの文字は……俺あんま見たことないから分かんないな」
隊が違うので書類のやり取りはほとんど無いそう。
「ミスカさんはペンの持ち方が違って」
「あーそうだね!手が大きいから持ちにくいんだって」
手を机に付けないで浮かせて書いてたんだよね……ペンも摘んでる感じでびっくりしたな…→。
「ラグトさんよりも少し大きいですよね?」
「うん、見て分かるくらいには大きい」
そうして私は意味も無くラグトさんの手を取り自分と比べる。
「ふふ……大きい……」
「サキちゃんの手が小さいんだよ」
指を絡ませ握り二人で笑う。
どうしよう、勉強に身が入らない……真面目に頑張ろう……。
勉強すると言ったのについ夫に甘えてしまう自分の不甲斐なさを反省しながら手をパッと離す。
「えっと…オレンジはどうやって書くんですか?」
「んー、オレンジはちょっと長いんだけど」
ラグトさんは右手で書きながら、空いている左手を私の腰に回す。
「!ら、ラグトさん……」
赤くなりながら見ると、彼はペンを置いて微笑みそっとキスをした。
「勉強はやりたい時にやればいいんじゃない?」
「っ……あ、甘やかされると……駄目になっちゃう……」
「俺はサキちゃん甘やかしたいよ?」
あぁ……欲に負けてしまう……。
チラッ、チラッと笑顔の彼を見ていたが堪えきれずに抱きついてしまった。
「ラグトさぁん……」
「可愛い……」
「意思が弱い……ごめんなさい……」
「さっきもこの前もいっぱい勉強したから良いんだよ」
「でも……」
未だモジモジと気にしている私を抱きしめながらラグトさんは突然聞く。
「ヒューマリンの特産は?」
「漆器……」
「アルデンの東を流れる川は?」
「ミューラ川……」
「三十年前に起きた出来事は?」
「害虫による小麦不足……」
「全部覚えてるじゃん!」
頭を撫でられて気分を良くした私は顔を上げる。
「凄い?」
「凄いよ!」
「…ご褒美……」
これだけの事でおこがましくも褒美をねだる私に、ラグトさんは面白そうに笑って頷く。
「良いよ!何が良いかなぁ」
私は少し考えて彼の頬をツンツンする。
「照れてるラグトさんが見たいです」
「えっ」
前回のが若干悔しい気持ちがあったので次こそはと意気込む。
「照れるって……俺どうやって照れたらいいの……?」
「……私が照れそうなことをするので照れてください」
「難しいなぁ……」
照れる……え、何しよう……。
言ったはいいもののあまり思いつかない。
「決まった?」
「…うぅ……」
やむ無しと私はラグトさんを押し倒し覆い被さるように床に手を着く。
床ドンからの……。
「ラグトさん…あ、愛してる…ぜ」
「………」
一定の沈黙の後、ラグトさんが吹き出した。
「っ……はは!何それ!ぜ…って……」
「…ふ、ふふ……ごめんなさい……思いつかなかった……」
照れるどころか全くのネタ枠になってしまって二人で笑い転げる。
「あー…可愛いなぁ……どうしてそうなったの」
「ドキドキするかなって……」
「笑いすぎてドキドキしてる」
「私も……」
まだ笑いが収まらず二人でクスクスしていると、部屋の扉が開いた。
「二人ともここに居たのか。……どうしてそんなに笑っているんだ?」
ハインツさんの不思議そうな顔に首を横に振って何とか起き上がった。
「コーヒーを入れたけど飲むかい?」
「頂きます……」
「俺も……」
それからしばらくの間は、この事で彼にからかわれた。
落ち着く……。
抱きしめられながら顔を擦り寄らせ彼の頬にキスしていると、何かを考え込んでいたラグトさんは躊躇いながら口を開いた。
「ねぇサキちゃん…」
「どうかしましたか?」
「やっぱ俺とのセックスだと物足りないとかある……?」
「え?」
急に何の話かと思えばセッ……うん。
「全然そんな事ないですけど……どうして急に?」
「だって俺さ……ヴェルストリアみたいに出来ないから……。もっとこう……たまには強引さも必要なんじゃないかと……」
あ、この前の事かな……。
確かにヴェルくんとラグトさんのえっちは全然違うし、ヴェルくんのは気持ちいいけど……。
「正直……」
「うん……」
「ラグトさんにはああいう感じではして欲しくないです……」
「え、逆に?」
「逆に」
ラグトさんがいわゆる……言葉責めとかしてるの想像つかないし。
「私は皆とそれぞれする理由が違うので、求めているものも違います。なので……そのままでいて欲しいです」
「そっか……余計なこと聞いちゃってごめんね」
「いえ!こういうのもちゃんと伝えないとですよね……」
一種のコミュニケーションなわけだし。
「ちなみに俺には何が求められてるの?」
「安心感……かな」
「それめっちゃ嬉しいんだけど!?」
凄く喜んでくれた。しかし「他の皆に安心感は求めていないのか」と聞かれると上手く答えられなかったのではぐらかした。
「特にゆっくりして欲しいとかでは無いので!今まで通りが一番嬉しいです」
「分かった!」
ニコニコになったラグトさんは私の髪を撫で付けながら口元にキスをする。
「勉強再開する?」
「はい!」
よいしょと起き上がり先程と同じように彼と隣同士で座る。
「さっきどこまでやったかな」
「野菜の名前一通り教えてもらいました」
「じゃあ次果物にしようか」
文字を一つずつより単語で覚えたほうが良いだろうということで、ラグトさんの見本を見ながら真似して一つずつ練習していた。
「あんまり基準は分からないんですけど、ラグトさんの文字凄く綺麗だと思います。丁寧っていうか」
「そうかな?」
先日リュークに教わった時のことを思い出す。
「リュークは書くの速くて、ほとんど繋がって見えました」
「書き方も人それぞれだからね。リュークさんの文字は……俺あんま見たことないから分かんないな」
隊が違うので書類のやり取りはほとんど無いそう。
「ミスカさんはペンの持ち方が違って」
「あーそうだね!手が大きいから持ちにくいんだって」
手を机に付けないで浮かせて書いてたんだよね……ペンも摘んでる感じでびっくりしたな…→。
「ラグトさんよりも少し大きいですよね?」
「うん、見て分かるくらいには大きい」
そうして私は意味も無くラグトさんの手を取り自分と比べる。
「ふふ……大きい……」
「サキちゃんの手が小さいんだよ」
指を絡ませ握り二人で笑う。
どうしよう、勉強に身が入らない……真面目に頑張ろう……。
勉強すると言ったのについ夫に甘えてしまう自分の不甲斐なさを反省しながら手をパッと離す。
「えっと…オレンジはどうやって書くんですか?」
「んー、オレンジはちょっと長いんだけど」
ラグトさんは右手で書きながら、空いている左手を私の腰に回す。
「!ら、ラグトさん……」
赤くなりながら見ると、彼はペンを置いて微笑みそっとキスをした。
「勉強はやりたい時にやればいいんじゃない?」
「っ……あ、甘やかされると……駄目になっちゃう……」
「俺はサキちゃん甘やかしたいよ?」
あぁ……欲に負けてしまう……。
チラッ、チラッと笑顔の彼を見ていたが堪えきれずに抱きついてしまった。
「ラグトさぁん……」
「可愛い……」
「意思が弱い……ごめんなさい……」
「さっきもこの前もいっぱい勉強したから良いんだよ」
「でも……」
未だモジモジと気にしている私を抱きしめながらラグトさんは突然聞く。
「ヒューマリンの特産は?」
「漆器……」
「アルデンの東を流れる川は?」
「ミューラ川……」
「三十年前に起きた出来事は?」
「害虫による小麦不足……」
「全部覚えてるじゃん!」
頭を撫でられて気分を良くした私は顔を上げる。
「凄い?」
「凄いよ!」
「…ご褒美……」
これだけの事でおこがましくも褒美をねだる私に、ラグトさんは面白そうに笑って頷く。
「良いよ!何が良いかなぁ」
私は少し考えて彼の頬をツンツンする。
「照れてるラグトさんが見たいです」
「えっ」
前回のが若干悔しい気持ちがあったので次こそはと意気込む。
「照れるって……俺どうやって照れたらいいの……?」
「……私が照れそうなことをするので照れてください」
「難しいなぁ……」
照れる……え、何しよう……。
言ったはいいもののあまり思いつかない。
「決まった?」
「…うぅ……」
やむ無しと私はラグトさんを押し倒し覆い被さるように床に手を着く。
床ドンからの……。
「ラグトさん…あ、愛してる…ぜ」
「………」
一定の沈黙の後、ラグトさんが吹き出した。
「っ……はは!何それ!ぜ…って……」
「…ふ、ふふ……ごめんなさい……思いつかなかった……」
照れるどころか全くのネタ枠になってしまって二人で笑い転げる。
「あー…可愛いなぁ……どうしてそうなったの」
「ドキドキするかなって……」
「笑いすぎてドキドキしてる」
「私も……」
まだ笑いが収まらず二人でクスクスしていると、部屋の扉が開いた。
「二人ともここに居たのか。……どうしてそんなに笑っているんだ?」
ハインツさんの不思議そうな顔に首を横に振って何とか起き上がった。
「コーヒーを入れたけど飲むかい?」
「頂きます……」
「俺も……」
それからしばらくの間は、この事で彼にからかわれた。
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