美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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家での過ごし方

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 隣に建った豪華な家に団員たちも興味があるようで、時々通りすがりに見に来る人たちが居た。ヨルアノくんも気になると言って私と来て、家の門の前で話していた。

「わぁ……!おっきい家ですね!」
「でしょ!内装整ったら中も見て欲しいな!」
「えっ、良いんですか!」

「勿論」と言おうとしたところで後ろから抱きしめられた。

「駄目ですよ。何自分から誘おうとしているんですか」
「ヴェルくん、ちょっとくらい良いじゃない。減るものでも無いし」
「……サキさん。もし僕たちが女性を家に連れて来たらどう思いますか?」
「あっ……」

 そう言われると……これは絶対駄目なやつだ……。

「ごめんなさい……」
「分かってくれたのなら良いんです」

 しょんぼり反省する私を見てヨルアノくんは慌てる。

「いや待って!サキさん何も悪いことしてへんやん。何でヴェルストリアが怒るん?」
「サキさんを他の女と一緒にしないで。僕たちの考えも尊重して受け入れてくれる優しい天使のような人なんだから」
「その優しい天使の考えを叱るんはどうなん?」
「……」

 苦い顔をしたヴェルくんは私の手を握る。

「貴女が……信頼出来る人なら、その……家に呼んでも構いません。一応僕たちに確認は取って欲しいです……」
「ヴェルくん……ありがとう。私ちゃんと気をつけるよ、皆に心配はかけたくないから」

 安易に人を招くのは止めよう……。

「ヨルアノくん、ごめんね」
「いえいえ!いつか見れると嬉しいですけど」
「……2m離れて」
「冗談や!冗談!」

 まあ内装整えるって言ったけど、私たちがまだ慣れていないのもあるんだよね……。
 とりあえずじゃれ合う二人を寮に連れて戻り、仕事へと見送った。
 住む場所が変わっても日々の生活はそんなに変わらず、しかし皆と居る時間は以前よりだいぶ増えていてそれが何より嬉しかった。
 夫たち同士も同じ屋根の下で関わる機会が増えたので、きっとより仲良くなっていくだろう。

 その日の帰宅後。

「サキちゃん、ここにあった俺のコップ知らない?」
「え、さっきリュークが……」

 ソファに座っていたリュークが気づく。

「これラグトの!?ごめん!」
「いいっすよ」
「ラグトと間接キスしちゃったぁ……」

 そう言いながらも開き直ってゴクゴク飲んでいる。

「二人ともあんまりそういうの気にしないタイプ?」
「んー今更っていうか」
「ほら、サキちゃん通して普通にしちゃってるから」

 確かにそうだなぁ……。

「私もご飯とか分け合うの好きだから意識しないでしちゃってた……」
「サキとの間接キスなら皆喜ぶでしょ」

 リュークは食べていた私の手作りクッキーを一つ手に取る。何かと思ったらこちらに来て口元にクッキーを差し出してきた。

「咥えて?」
「?」

 パクッと口で挟むと、彼はキスをするように反対側から食べた。

「っ……ん!んん!」

 私がモグモグしながら文句を言うと、リュークもモグモグしながら頷く。

「うん、美味しいね!」
「ん……違くて、これ間接キスじゃなくてキスでしょ」
「そうっすよ」

 ラグトさんも同意してる。

「いや、これは普通にしたかっただけ」
「「……」」

 なんだかこちらが勘違いしたみたいじゃない……。

「もう一回する?」
「しない!」

 私は新しいコップに水を注いでラグトさんに渡した。

「ありがとう!」
「どういたしまして。やっぱりコップもそれぞれの物があった方が良いですかね」
「んー、なんか結局ごちゃごちゃになりそうな気がするんだよね……」
「そうですね……」

 物を余計に買うのも良くないと思う。
 私も一人暮らし始めて色々買ったけど、その後全然使わなかった物沢山あったから……。

「ただいま」
「おかえり!ヴェルくん」

 私を見て嬉しそうに抱きついてくる彼に私も返す。

「帰ってきたらサキさんが居る……幸せですね」
「ふふ、ヴェルくんが先に帰った時は私のこと待っててね」
「はい!」

 何度もキスをするヴェルくんを少し止める。

「お風呂入るでしょ?」
「いえ、今日は当番なので掃除をしないと。それが終わってからにします」
「お家の掃除ならもうしたよ?」
「「……え?」」

 ヴェルくんだけじゃなくてリュークもラグトさんも固まった。

「お昼に寮の方は終わったからこっちも……」

 三人が突然こちらに詰め寄る。

「ダメだよ!家事は夫の仕事なんだから!」
「サキちゃんは何もしなくていいんだよ!?」
「そうです!寮であんなに働いているんですから、家のことは僕たちに任せてください!」

 怒涛の勢いで責められてしまった。

「でも……ほら、時間が余ってて……」
「ゆっくり休んでいてください!リビングのソファもあるし、床座もあるし、貴女の部屋もあるじゃないですか」
「う、うん……ごめんね……」

 そっか……夫の仕事なんだね……勝手にしちゃ駄目なんだ……。

「えっと……サキちゃんに手伝って欲しい時はお願いするよ!でも俺たち毎日分担してちゃんとやるからさ、心配しないで?」
「そ、そうそう!俺キッチンには入らないよ!」

 三人に説得されて、私は了解した。

「じゃあ……お願いします」
「うん!」
「二人が帰ってくるまで部屋に居ますね」

 私はそっとリビングを出て寝室へ向かった。


「ど、どうしよう……サキ悲しそうだったよ?」
「家事させた方がいいんすかね……」
「流石にサキさんに頼り過ぎですよ」

 夫が家事をするというこちらでの常識とサキの常識が未だ噛み合っていない現状に三人は頭を抱える。

「料理とかお願いしても、それが出来なかった時にサキちゃん申し訳ないと思っちゃうんすよ」
「任せられたことはやり遂げたいタイプなんだね……」

 色々悩んで、ヴェルストリアはふと思い出す。

「サキさんは時間が余っているから家事をしたくなってしまうんじゃないですか?」
「何もしてない時間って長いと確かに苦痛だよね」

 そう言うリュークも常に動いていないと耐えられないので、ようやく気持ちが分かったようだ。

「余ってる時間にサキが何か出来ること……」
「明日聞いてみましょう」
「そうだな」

 サキの思った通り、夫たちの結束は固くなっていた。
 帰宅したハインツとミスカにも説明し次の日、五人はサキと話し合うことにした。


「皆がこの時間に揃うの初めてですね!ソファも六人で座ると小さく見えます」

 紅茶を入れようと立ち上がったが、すでにヴェルくんが用意して持ってきてくれた。

「ありがとう」
「この紅茶は砂糖無しの方が美味しいそうです」
「そうなんだ!初めて飲む種類だね」

 そんな会話をしたのだが、どうもいつもと空気が違う気がする。
 何かあったのかな……?

「サキ、昨日の話を聞いたのだが」

 ハインツさんに切り出されて考えると、昨夜の間接キスの件りが思い出された。

「ハインツさんも口付けたものは気にならないですか?」
「……?すまない、多分違う話だ」
「あっ、すみません……」

 気まずい……。

「家に居ても時間を持て余してしまうだろう?」

 その話か!

「何かその間にしたいことが無いか相談しようと思ってね」
「俺たちとしたいことでも、一人でやることでも良い」

 ミスカさんの言葉にすぐ頷く。

「私も昨日考えてたんです。空いてる時間に出来ること」

 家に居ると一人暮らしの癖でやることが思い浮かんできちゃうんだよね。寮に居た時は自分の部屋と物だけだったけど、今は全員分で余計張り切っちゃってた。
 せっかく時間があるんだし、有効に使わないと。

「勉強しようかなって」
「「……勉強?」」
「この世界のこととか文字とか。この前国王様にもお会いして、改めて興味が湧いちゃって」

 とってもいい案だと思ったのだが、皆あんぐり口を開けていて反応をくれない。

「あの……皆に教えてもらおうかなって思ってたんだけど……駄目ですか?」
「いや!駄目じゃないよ。サキは凄いなと思ったんだ」

 ハインツさんに続いて皆頷いて言う。

「今でも物知りなのに、もっとって頑張れるの本当に尊敬するよ!」
「ラグトさん……」
「家に居る時にいつでも言ってくれ。何でも教える」

 ミスカさんに優しく頭を撫でられて微笑む。

「はい!お願いします!」

 それからは早く帰宅した後や昼間休んでいる時などに、彼らと共にお勉強をするのだった。
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