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リュークの誕生日
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もうすぐリュークの…
「サキ!もうすぐ俺の誕生日!」
リュークがまさか自分から来るとは思わなかった。
「そうだね、何かして欲しいことある?」
目を輝かせた彼は大きく頷く。
「一緒にスイカ飲みに行こう!」
「……ん?」
スイカ、飲む?
「エストロに毎年スイカのジュース売ってる店があるんだ!それがすっごく美味しくて」
「あ、ジュースか!良いね、行こう!」
リュークの誕生日は悩むことなくすぐに予定が決まった。
当日、ウキウキのリュークと共に馬に乗り彼の故郷であるエストロへ向かう。
「そろそろサキ連れていかないと冷たい目で見られそうだから……」と嘆く可哀想なリュークの為に、この前のお礼を兼ねてご実家にも寄る予定だ。別で私も今日は大切な用事があるので行きたいと思っていた。
「やっぱり馬に乗るの楽しいね!」
「それならよかった!でも馬車の方が楽じゃない?」
「体は楽だけど、こんなワクワクは味わえないもの」
「ちょっと分かるかも。乗りたい時はいつでも言ってね!」
再び夏の風を感じながらの乗馬は懐かしいような、新鮮なような、どちらとも言える清々しさだった。
町に着きリュークの手を借りて馬から降りる。
馬車よりも速く近場なので、その比較もあってか以前来た時よりも体感的に短かった気がする。
「今日ズボンで良かったの?スカート持ってこれたのに」
上は可愛い物を着てきたけれど下はいつもと同じズボン。女性でズボンを履く人は居ないみたいなので浮かないか心配だ。
「サキはどんな格好でも可愛いし、ズボンもめっちゃ似合ってるよ!」
「本当!リュークがそう言ってくれるならいっか!」
大事なのは周りとの違いより夫からの評価だ。
手を繋ぎのんびり歩きながら目的のお店へ向かった。
「今日は変な人居ないといいね」
「もう大丈夫!そんな怖いもの知らずな人は居ないから」
前剣抜いてたし、そりゃあ誰も寄ってこないよね。
「あ、この店だよ!」
「ここ?結構近いんだね」
なかなか昔ながらの、という佇まいのお店だった。
「入り口……どっち?あ、こっちか!」
「来たことあるんじゃないの?」
「いつも父さんに買ってきてもらってたんだ。一人で外出歩くことほとんど無くて」
そっか……子供のうちは特に周りからの視線に敏感だよね。
「いらっしゃ……い」
「スイカジュース三つで」
三つ?
しばらく待って、なかなか大容量のカップ並々のジュースを受け取った。
「リューク……二杯も飲める?お腹痛くならない?」
「大丈夫!スイカには負けないから!」
味わいながら戦ってるの……?
近くのベンチに座り早速一口飲んでみる。
「美味しい!凄く甘いスイカだね」
「でしょ!」
ジュースというよりスムージーだ。本当にスイカを飲んでいる感じ。
「普通にスイカ買うより良いかも。ハズレ無いし、種無いし」
「確かに!」
体温がスっと下がっていく感じが心地よく、多いように感じたジュースもいつの間にか半分になっていた。
「今日も結構暑いから冷たいもの飲むと丁度いいね」
「うん!やっぱり夏はスイカだよ」
笑顔でゴクゴクと飲むリュークはだいぶスイカ信者のようだ。
「リュークはいつからスイカ好きなの?」
「四歳の頃かな?ここのジュースを初めて飲んだ時だよ」
「えっ、そうなんだ!」
「見た目が赤いから気になって恐る恐る飲んでみたらめっちゃ美味しくてさ」
じゃあ思い出の味なんだね。
「こっちに住んでた時は毎年飲んでたけど黒騎士団入ってからは行かなくなっちゃったから、凄い久しぶりだなぁ」
リュークは私の肩に頭を乗せ擦り寄る。
「サキと来れて嬉しい!好きな物を好きな人と一緒に食べたらもっと美味しいから!」
「リューク……」
嬉しそうに目を細めた彼は顔を寄せ、周りから見えないようにしながらキスをした。
「!」
「へへ、イチャイチャ~」
「町中でしないでよ……!」
恥ずかしさを誤魔化す為、笑うリュークをデコピンした。
「いたっ」
「もうしちゃ駄目だよ!」
「デコピンで許されるならしたいけど」
私がこれ以上酷いことを出来ないと分かって言っているのだからタチが悪い。
またされない内に話を切り替えることにした。
「ほら、ジュースぬるくなっちゃよ。もう一杯あるんだから」
「そうだったそうだった。ゆっくり味わいたいけどこの気温だと難しいね」
一杯飲んでからもう一杯買えば良いのではと思ったが、両手に持ってニコニコしているのが可愛いので言わないでおこう。
「ご馳走様!」
「美味しかったぁ!満足!」
二人とも綺麗に飲み干し、一緒に立ち上がったリュークのお腹をさする。
「タプタプ?」
「全然」
顔を見合わせ同時に吹き出した。
「あはは!スイカどこいっちゃったのー」
「俺の全身に行き渡ってるところ!」
抱きしめられながら体を揺らしじゃれ合う。
「明日起きたら体が真っ赤になってるかも?」
「それはやだぁ」
ひたすら笑って、ようやく歩き出す。
「来年も一緒に飲も!」
「うん!」
この日、彼の大好きなスイカジュースは私にとっても思い出の味になった。
見知った道を通り橋を渡る。
そのレンガ調の家に来るのはまだ二回目だというのに不思議な程の懐かしさを覚えた。
リュークがノックすると扉はすぐに開いた。
「あぁ、リュークおかえり」
「父さんただいま!」
「今日は…」
「ちゃんとサキ連れてきたよ!」
リュークが私の手を引き見せつけるように前に出すと、ジンさんは嬉しそうにする。
「サキさん!いらっしゃい」
「お久しぶりです!お邪魔します」
中に入るとジンさんは私たちが来たことを伝えに行ったようだ。
「はぁ…二言目にはサキのこと聞いてくるんだから…」
「あはは……」
「サキさん、会いたかったわ!」
「お義母さん!先日のお荷物ありがとうございました」
「急に送ってごめんなさいね。家で使っていないものあるかしらと思ったんだけど、ジンの食器ばかりだったわ」
「いえ、どれも素敵なもので……大切に使わせて頂きます」
笑顔のアンナさんに会えて、えも言われぬ安心感を得る。
「ギルさんもお久しぶりです!」
「おお!久しぶり!」
ギルさんの後ろからルークくんが顔を出し、こちらに駆け寄ってくる。
「サキお姉ちゃんー!」
「ルークくん!」
抱きしめて久しぶりの対面を喜び合う。
「パズルとお手紙ありがとう!凄く嬉しかったよ」
「ほんと!あのね、お父さんが僕のかお姉ちゃんのどっちかって言うから、僕我慢したの…」
指差されたギルさんは慌てた様子で私に手を合わせる。
「そうなの!ありがとう。ルークくんは大人だね。じゃあ今度お姉ちゃんがルークくんに買ってあげる!」
「わーい!お父さんと違ってお姉ちゃん優しい!」
「うっ……」
一緒にお店に行く約束をして笑顔になったルークくんの頭を撫でる。
「サキさん悪いね……お金渡すから……」
「いえいえ、ルークくんの気持ちが嬉しかったので私から送らせてください」
コソコソと話していたが近くに居たアンナさんには聞こえていたみたいで、ギルさんは怒られていた。
「サキさんに迷惑かけてどうするの!」
「いや、ルークにもうちょっと我慢を覚えさせようってジンと話してて…」
「それとこれとは別よ!」
ジンさんにお茶を出してもらい、席に座る。
「またお菓子作ってきたので良かったら」
「ありがとう!実はだいぶ期待してしまっていて」
「ふふ、ありがとうございます。また期待していてください」
キッチンへ戻ったジンさんを置いて、向かいに座ったアンナさんは嬉しそうに話す。
「新しいお家はどんな感じなのかしら。黒騎士団の隣に建てたんでしょう?」
「はい、夫たちが皆黒騎士団なので不便の無いように」
「リュークとミスカ以外に夫が居るのね!そうよね、こんな素敵な人だもの」
そういえばお話してなかったかも。
「俺たちの他にあと三人居るよ。後輩二人と団長」
「「団長!?」」
アンナさんとギルさんの驚きの声はキッチンまで聞こえたようでジンさんも顔を出す。
「何が団長なんだ?」
「さ、サキさんの夫が黒騎士団の団長らしいぜ…」
「!?」
そんなに驚かれることだったんだ…。
でも、実際凄い人だし王様とも仲良いくらいだもんね。
「よろしければ是非家へ来てください。お義父さんとお義母さんには私の夫たちも紹介したいです」
「まぁ…ありがとう!なんてよく出来た娘なのかしら……。あら、ごめんなさい感動しすぎて…」
「娘と言って頂けるなんて…嬉しいです!」
「サキさん…!いえ、サキちゃんと呼んでもいいかしら」
「勿論です!」
アンナさんとの仲を急速に縮める私をリュークは複雑な表情で見ていた。
「リュークどうしたんだ」
「……母さんとサキが仲良いのは嬉しいけど、サキの時間取られたくない」
「なんだそれ」
不思議そうな顔のギルさんにリュークは無言で首を振った。
私の渡したお菓子も褒めてもらいながら尽きること無くお喋りは続き、お茶が無くなった頃にリュークが私の手を取る。
「今日は大事な日だから、もう帰るよ」
「そうなの?何かの記念日かしら」
「ふふん、俺の誕生日!」
ドヤ顔で言ったリュークに家族は皆ポカンとしている。
「今日お兄ちゃんの誕生日?」
「ああ、リュークの誕生日だな」
誕生日と大事な日が繋がっていない皆に私が説明する。
「私の故郷では誕生日をお祝いするんです。大切な人が生まれてきてくれた日だから」
彼の手を握り返し立ち上がる。
「お義母さん、リュークを産んでくださってありがとうございます」
リュークの大切なご両親に感謝を込めてお辞儀をする。
どうしても今日伝えたかった言葉。生まれてきてくれたことを祝う日であり、産んでくれた人に感謝する日でもあるから。
「サキ…」
リュークも立ち上がり頭を下げた。
「母さん俺を産んでくれてありがとう!」
「お義父さんもリュークを育ててくださってありがとうございます」
二人で顔を上げると皆大号泣だった。
「サキちゃん…本当に…ありがとう…」
泣き崩れそうなアンナさんをジンさんが抱きしめながら何度も頷く。
「確かに…そうだな。大事な人が…子供が産まれた日なんだから大事な日だ」
「っ……ルークもお祝いするか!」
「またお祭り?」
「いや、お前だけのお祝いだ」
ギルさんにくしゃくしゃっと頭を撫でられたルークくんも嬉しそう。
精一杯の感謝の気持ちはちゃんと伝わったようだ。
何とか涙は落ち着いて、私たちは玄関へ移動する。
「誕生日って…ただ歳をとるものでは無いのね。毎年生まれたことを祝う…素敵な日だわ」
「…はい、成長を祝う日でもありますから。リュークも今はこんなに背が高いけど、昔はもっと小さかったのかなぁなんて思っちゃいます」
私がそう言うと、アンナさんとジンさんはとても驚いた様子でまた涙を流す。
「ええ…こんなに小さくて、私も抱っこしていたわ」
「そうか…大きく…成長していたんだな」
お二人の様子を見て気づく。この世界ではあまり背が高くない方が良いから、そもそもその成長を祝うことがないのか。
「今は何歳だったか?」
ギルさんに聞かれリュークは鼻をすすりながら答える。
「今日で……二十二歳だよ」
「はは、まだ子供だな」
「父さんがおじさんなだけでしょ」
「それは地味に傷つくぞ…」
そう言いながらも笑って手を伸ばしリュークの頭を撫でた。
ジンさんも彼の手を取りアンナさんは抱きしめる。
「リューク、生まれてきてくれてありがとう」
「っ…母さん……ありがとう……。俺ずっと申し訳なかった。二人の子供なのにこんな容姿で……俺のせいで二人まで悪く言われて……」
「そんなこと……」
リュークは言いかけたジンさんを止める。
「うん、もう気にしてない。この容姿のお陰でサキと出会えたんだ。だから……二人の子供だって、皆の家族だって胸を張って言えるよ」
「当たり前よ!こんなに素敵なお嫁さんが居て、私たちの自慢の息子よ!もう周りに言いふらしちゃってるんだから」
「えっ、マジか……」
リュークから離れたアンナさんは私も抱きしめてくれた。
「サキちゃんに出会えて私たちも幸せだわ。息子を見つけて愛してくれてありがとう」
「お義母さん……いえ、リュークが私を見つけてくれたんです」
涙ぐむ彼を見つめ、目が合う。
「私が泣いていた時、ずっと背中をさすっていてくれたんですよ」
「ちょっ、サキ!?恥ずかしいんだけど!」
「リュークやるじゃない!それって付き合う前の話かしら」
「ふふ、そうです。出会った時に」
リュークは慌てて話を遮り、皆ようやく笑顔になった。
「引き止めちゃってごめんなさいね」
「来てくれてありがとう」
「ほら、ルーク」
「約束ぜったいだよー!」
「うん、絶対!お邪魔しました!」
今日も温かく見送られて、目を赤くしながら彼と並んで歩く。
「毎回騒がしくてごめんね」
「ううん、お義母さんたちとお話するの凄く楽しいから。今日ちゃんと伝えられたし」
リュークは横から私を抱きしめ肩に顔を押し付ける。
「リューク重いよー、ちゃんと歩いて」
「むりー」
容赦なく甘えてくる彼の背を叩き、二人でふらつきながら帰路についた。
夕方には帰ってきて、夕食もケーキも終えたリュークは私の部屋に着て一番に言った。
「この前のスカート見たい!」
やっぱそうなるよね……。
「ミスカさんに他の人に見せないでって言われたから」
「大丈夫!ちゃんと許可取ってきた!」
「……本当?」
「絶対周りにバラすなとも言われた」
守秘義務ありってそんな大層なものじゃないけど。
「分かったよ……シャワー浴びて着替えてくる……え、耳のことは聞いてないよね?」
「耳?なんのこと?」
「了解!待っててね」
「ちょっ……耳って何!?」
戸惑うリュークを無視してサッとシャワールームへ。
普通のスカートなんだけどなぁ……。こんなに喜んでもらえるものだなんて。
一瞬また何着か買おうかとも思ってしまった。
「…どう?」
「可愛い~!!」
私を抱きクルクル回るリュークに私も抱きつく。
「ドレスみたいにフリフリだね!」
「そうなの!ふんわりしてて可愛いでしょ」
「可愛い…」
言いながらさりげなくスカートの中に手を忍ばせてくる。
「ちょっと、お尻揉まないで」
「もちもち……」
そのまま私をベッドへ連れていく。
寝かせると両脚からスルッとショーツを脱がし指で入り口を撫でた。
それだけで愛液は溢れ二本の指はスムーズに中へと入る。
「…はぁ……ん……」
「短いスカートなんでこんなにえっちなんだろ……フリフリ可愛くてサキの脚が綺麗で…」
「これで…えっちなの……?そんなに短く無いのに……」
「え、これより短いのあるの?」
「あんっ……い、今は無い……」
話してる間に無意識なのか責めが速くなっていて、口を開けば共に嬌声も漏れる。
「俺が新しいの買うからさ、いっぱい着てよ」
「わかったからぁ……」
指を止めたリュークはスカートを捲り中に挿入する。
「んっ、あっ……」
彼はいつもより真剣に、何かを思いながら私を見つめる。
大好きな瞳を独占する喜びを感じながら、繋がったところから鳴る水音を聞いていた。
急にリュークは私の膝裏を持ち脚をグッと押さえつけると、激しく性急に突き始めた。
「あぁっ!あ……っ!」
「サキ……」
「りゅーく……っ!」
ちょうど中の弱いところに当たる体勢で私はすぐに耐えられなくなってしまった。
「イッ…く……あぁ!」
膣は収縮し痙攣するが構わずリュークは腰を動かす。
「っ!は…っ……んん」
「……ごめん」
「いい、の……っ…いっぱいして……」
「っ……」
こんな熱を帯びた視線を向けられて嫌だなんて言えない。私の全部を欲しがっているみたいで嬉しかった。
「あんっ、りゅーくぅ……」
「はぁ……サキ」
「んあ……!またイッちゃうっ」
「うん……俺も……っ」
勢いよく一突きされて私は、そしてリュークも荒い息を吐きながら果てた。
「は…ぁ……」
長いキスを交わし、唇が離れると小さなリップ音がなる。リュークはそっと私の髪を撫でた。
「シャワー浴びてくるね」
「うん……」
私は呼吸を整えてパジャマに着替える。ベッドで彼を待ち、しばらくして戻ってきたリュークは私の隣に横になった。
「ねぇ、サキ」
「ん?」
寝返りを打って彼と向き合う。
「俺……母さんと父さんに、ありがとうって言えて良かった。初めてちゃんと伝えられた」
申し訳ない気持ちがあったというリュークは、その意味を込めた言葉を軽々しくは言えなかったのだろう。
「あんなに喜んでくれるなんて思わなくて……言葉にしたらこんなに幸せなんだって……」
噛み締めるようにそう言うリューク。
「リュークの気持ち、きっと今までの分も全部伝わったよ」
「そう……かな」
「そうだよ」
私は彼をそっと抱きしめる。
「お誕生日おめでとう、リューク」
小さくキスをすると、リュークは一筋涙を流し枕に跡を残した。
「大好きだよ」
「うん」
「大好き……ありがとう……」
彼の優しいキスに私への沢山の愛と感謝を感じながら、私も同じ思いをキスに込めた。
「サキ!もうすぐ俺の誕生日!」
リュークがまさか自分から来るとは思わなかった。
「そうだね、何かして欲しいことある?」
目を輝かせた彼は大きく頷く。
「一緒にスイカ飲みに行こう!」
「……ん?」
スイカ、飲む?
「エストロに毎年スイカのジュース売ってる店があるんだ!それがすっごく美味しくて」
「あ、ジュースか!良いね、行こう!」
リュークの誕生日は悩むことなくすぐに予定が決まった。
当日、ウキウキのリュークと共に馬に乗り彼の故郷であるエストロへ向かう。
「そろそろサキ連れていかないと冷たい目で見られそうだから……」と嘆く可哀想なリュークの為に、この前のお礼を兼ねてご実家にも寄る予定だ。別で私も今日は大切な用事があるので行きたいと思っていた。
「やっぱり馬に乗るの楽しいね!」
「それならよかった!でも馬車の方が楽じゃない?」
「体は楽だけど、こんなワクワクは味わえないもの」
「ちょっと分かるかも。乗りたい時はいつでも言ってね!」
再び夏の風を感じながらの乗馬は懐かしいような、新鮮なような、どちらとも言える清々しさだった。
町に着きリュークの手を借りて馬から降りる。
馬車よりも速く近場なので、その比較もあってか以前来た時よりも体感的に短かった気がする。
「今日ズボンで良かったの?スカート持ってこれたのに」
上は可愛い物を着てきたけれど下はいつもと同じズボン。女性でズボンを履く人は居ないみたいなので浮かないか心配だ。
「サキはどんな格好でも可愛いし、ズボンもめっちゃ似合ってるよ!」
「本当!リュークがそう言ってくれるならいっか!」
大事なのは周りとの違いより夫からの評価だ。
手を繋ぎのんびり歩きながら目的のお店へ向かった。
「今日は変な人居ないといいね」
「もう大丈夫!そんな怖いもの知らずな人は居ないから」
前剣抜いてたし、そりゃあ誰も寄ってこないよね。
「あ、この店だよ!」
「ここ?結構近いんだね」
なかなか昔ながらの、という佇まいのお店だった。
「入り口……どっち?あ、こっちか!」
「来たことあるんじゃないの?」
「いつも父さんに買ってきてもらってたんだ。一人で外出歩くことほとんど無くて」
そっか……子供のうちは特に周りからの視線に敏感だよね。
「いらっしゃ……い」
「スイカジュース三つで」
三つ?
しばらく待って、なかなか大容量のカップ並々のジュースを受け取った。
「リューク……二杯も飲める?お腹痛くならない?」
「大丈夫!スイカには負けないから!」
味わいながら戦ってるの……?
近くのベンチに座り早速一口飲んでみる。
「美味しい!凄く甘いスイカだね」
「でしょ!」
ジュースというよりスムージーだ。本当にスイカを飲んでいる感じ。
「普通にスイカ買うより良いかも。ハズレ無いし、種無いし」
「確かに!」
体温がスっと下がっていく感じが心地よく、多いように感じたジュースもいつの間にか半分になっていた。
「今日も結構暑いから冷たいもの飲むと丁度いいね」
「うん!やっぱり夏はスイカだよ」
笑顔でゴクゴクと飲むリュークはだいぶスイカ信者のようだ。
「リュークはいつからスイカ好きなの?」
「四歳の頃かな?ここのジュースを初めて飲んだ時だよ」
「えっ、そうなんだ!」
「見た目が赤いから気になって恐る恐る飲んでみたらめっちゃ美味しくてさ」
じゃあ思い出の味なんだね。
「こっちに住んでた時は毎年飲んでたけど黒騎士団入ってからは行かなくなっちゃったから、凄い久しぶりだなぁ」
リュークは私の肩に頭を乗せ擦り寄る。
「サキと来れて嬉しい!好きな物を好きな人と一緒に食べたらもっと美味しいから!」
「リューク……」
嬉しそうに目を細めた彼は顔を寄せ、周りから見えないようにしながらキスをした。
「!」
「へへ、イチャイチャ~」
「町中でしないでよ……!」
恥ずかしさを誤魔化す為、笑うリュークをデコピンした。
「いたっ」
「もうしちゃ駄目だよ!」
「デコピンで許されるならしたいけど」
私がこれ以上酷いことを出来ないと分かって言っているのだからタチが悪い。
またされない内に話を切り替えることにした。
「ほら、ジュースぬるくなっちゃよ。もう一杯あるんだから」
「そうだったそうだった。ゆっくり味わいたいけどこの気温だと難しいね」
一杯飲んでからもう一杯買えば良いのではと思ったが、両手に持ってニコニコしているのが可愛いので言わないでおこう。
「ご馳走様!」
「美味しかったぁ!満足!」
二人とも綺麗に飲み干し、一緒に立ち上がったリュークのお腹をさする。
「タプタプ?」
「全然」
顔を見合わせ同時に吹き出した。
「あはは!スイカどこいっちゃったのー」
「俺の全身に行き渡ってるところ!」
抱きしめられながら体を揺らしじゃれ合う。
「明日起きたら体が真っ赤になってるかも?」
「それはやだぁ」
ひたすら笑って、ようやく歩き出す。
「来年も一緒に飲も!」
「うん!」
この日、彼の大好きなスイカジュースは私にとっても思い出の味になった。
見知った道を通り橋を渡る。
そのレンガ調の家に来るのはまだ二回目だというのに不思議な程の懐かしさを覚えた。
リュークがノックすると扉はすぐに開いた。
「あぁ、リュークおかえり」
「父さんただいま!」
「今日は…」
「ちゃんとサキ連れてきたよ!」
リュークが私の手を引き見せつけるように前に出すと、ジンさんは嬉しそうにする。
「サキさん!いらっしゃい」
「お久しぶりです!お邪魔します」
中に入るとジンさんは私たちが来たことを伝えに行ったようだ。
「はぁ…二言目にはサキのこと聞いてくるんだから…」
「あはは……」
「サキさん、会いたかったわ!」
「お義母さん!先日のお荷物ありがとうございました」
「急に送ってごめんなさいね。家で使っていないものあるかしらと思ったんだけど、ジンの食器ばかりだったわ」
「いえ、どれも素敵なもので……大切に使わせて頂きます」
笑顔のアンナさんに会えて、えも言われぬ安心感を得る。
「ギルさんもお久しぶりです!」
「おお!久しぶり!」
ギルさんの後ろからルークくんが顔を出し、こちらに駆け寄ってくる。
「サキお姉ちゃんー!」
「ルークくん!」
抱きしめて久しぶりの対面を喜び合う。
「パズルとお手紙ありがとう!凄く嬉しかったよ」
「ほんと!あのね、お父さんが僕のかお姉ちゃんのどっちかって言うから、僕我慢したの…」
指差されたギルさんは慌てた様子で私に手を合わせる。
「そうなの!ありがとう。ルークくんは大人だね。じゃあ今度お姉ちゃんがルークくんに買ってあげる!」
「わーい!お父さんと違ってお姉ちゃん優しい!」
「うっ……」
一緒にお店に行く約束をして笑顔になったルークくんの頭を撫でる。
「サキさん悪いね……お金渡すから……」
「いえいえ、ルークくんの気持ちが嬉しかったので私から送らせてください」
コソコソと話していたが近くに居たアンナさんには聞こえていたみたいで、ギルさんは怒られていた。
「サキさんに迷惑かけてどうするの!」
「いや、ルークにもうちょっと我慢を覚えさせようってジンと話してて…」
「それとこれとは別よ!」
ジンさんにお茶を出してもらい、席に座る。
「またお菓子作ってきたので良かったら」
「ありがとう!実はだいぶ期待してしまっていて」
「ふふ、ありがとうございます。また期待していてください」
キッチンへ戻ったジンさんを置いて、向かいに座ったアンナさんは嬉しそうに話す。
「新しいお家はどんな感じなのかしら。黒騎士団の隣に建てたんでしょう?」
「はい、夫たちが皆黒騎士団なので不便の無いように」
「リュークとミスカ以外に夫が居るのね!そうよね、こんな素敵な人だもの」
そういえばお話してなかったかも。
「俺たちの他にあと三人居るよ。後輩二人と団長」
「「団長!?」」
アンナさんとギルさんの驚きの声はキッチンまで聞こえたようでジンさんも顔を出す。
「何が団長なんだ?」
「さ、サキさんの夫が黒騎士団の団長らしいぜ…」
「!?」
そんなに驚かれることだったんだ…。
でも、実際凄い人だし王様とも仲良いくらいだもんね。
「よろしければ是非家へ来てください。お義父さんとお義母さんには私の夫たちも紹介したいです」
「まぁ…ありがとう!なんてよく出来た娘なのかしら……。あら、ごめんなさい感動しすぎて…」
「娘と言って頂けるなんて…嬉しいです!」
「サキさん…!いえ、サキちゃんと呼んでもいいかしら」
「勿論です!」
アンナさんとの仲を急速に縮める私をリュークは複雑な表情で見ていた。
「リュークどうしたんだ」
「……母さんとサキが仲良いのは嬉しいけど、サキの時間取られたくない」
「なんだそれ」
不思議そうな顔のギルさんにリュークは無言で首を振った。
私の渡したお菓子も褒めてもらいながら尽きること無くお喋りは続き、お茶が無くなった頃にリュークが私の手を取る。
「今日は大事な日だから、もう帰るよ」
「そうなの?何かの記念日かしら」
「ふふん、俺の誕生日!」
ドヤ顔で言ったリュークに家族は皆ポカンとしている。
「今日お兄ちゃんの誕生日?」
「ああ、リュークの誕生日だな」
誕生日と大事な日が繋がっていない皆に私が説明する。
「私の故郷では誕生日をお祝いするんです。大切な人が生まれてきてくれた日だから」
彼の手を握り返し立ち上がる。
「お義母さん、リュークを産んでくださってありがとうございます」
リュークの大切なご両親に感謝を込めてお辞儀をする。
どうしても今日伝えたかった言葉。生まれてきてくれたことを祝う日であり、産んでくれた人に感謝する日でもあるから。
「サキ…」
リュークも立ち上がり頭を下げた。
「母さん俺を産んでくれてありがとう!」
「お義父さんもリュークを育ててくださってありがとうございます」
二人で顔を上げると皆大号泣だった。
「サキちゃん…本当に…ありがとう…」
泣き崩れそうなアンナさんをジンさんが抱きしめながら何度も頷く。
「確かに…そうだな。大事な人が…子供が産まれた日なんだから大事な日だ」
「っ……ルークもお祝いするか!」
「またお祭り?」
「いや、お前だけのお祝いだ」
ギルさんにくしゃくしゃっと頭を撫でられたルークくんも嬉しそう。
精一杯の感謝の気持ちはちゃんと伝わったようだ。
何とか涙は落ち着いて、私たちは玄関へ移動する。
「誕生日って…ただ歳をとるものでは無いのね。毎年生まれたことを祝う…素敵な日だわ」
「…はい、成長を祝う日でもありますから。リュークも今はこんなに背が高いけど、昔はもっと小さかったのかなぁなんて思っちゃいます」
私がそう言うと、アンナさんとジンさんはとても驚いた様子でまた涙を流す。
「ええ…こんなに小さくて、私も抱っこしていたわ」
「そうか…大きく…成長していたんだな」
お二人の様子を見て気づく。この世界ではあまり背が高くない方が良いから、そもそもその成長を祝うことがないのか。
「今は何歳だったか?」
ギルさんに聞かれリュークは鼻をすすりながら答える。
「今日で……二十二歳だよ」
「はは、まだ子供だな」
「父さんがおじさんなだけでしょ」
「それは地味に傷つくぞ…」
そう言いながらも笑って手を伸ばしリュークの頭を撫でた。
ジンさんも彼の手を取りアンナさんは抱きしめる。
「リューク、生まれてきてくれてありがとう」
「っ…母さん……ありがとう……。俺ずっと申し訳なかった。二人の子供なのにこんな容姿で……俺のせいで二人まで悪く言われて……」
「そんなこと……」
リュークは言いかけたジンさんを止める。
「うん、もう気にしてない。この容姿のお陰でサキと出会えたんだ。だから……二人の子供だって、皆の家族だって胸を張って言えるよ」
「当たり前よ!こんなに素敵なお嫁さんが居て、私たちの自慢の息子よ!もう周りに言いふらしちゃってるんだから」
「えっ、マジか……」
リュークから離れたアンナさんは私も抱きしめてくれた。
「サキちゃんに出会えて私たちも幸せだわ。息子を見つけて愛してくれてありがとう」
「お義母さん……いえ、リュークが私を見つけてくれたんです」
涙ぐむ彼を見つめ、目が合う。
「私が泣いていた時、ずっと背中をさすっていてくれたんですよ」
「ちょっ、サキ!?恥ずかしいんだけど!」
「リュークやるじゃない!それって付き合う前の話かしら」
「ふふ、そうです。出会った時に」
リュークは慌てて話を遮り、皆ようやく笑顔になった。
「引き止めちゃってごめんなさいね」
「来てくれてありがとう」
「ほら、ルーク」
「約束ぜったいだよー!」
「うん、絶対!お邪魔しました!」
今日も温かく見送られて、目を赤くしながら彼と並んで歩く。
「毎回騒がしくてごめんね」
「ううん、お義母さんたちとお話するの凄く楽しいから。今日ちゃんと伝えられたし」
リュークは横から私を抱きしめ肩に顔を押し付ける。
「リューク重いよー、ちゃんと歩いて」
「むりー」
容赦なく甘えてくる彼の背を叩き、二人でふらつきながら帰路についた。
夕方には帰ってきて、夕食もケーキも終えたリュークは私の部屋に着て一番に言った。
「この前のスカート見たい!」
やっぱそうなるよね……。
「ミスカさんに他の人に見せないでって言われたから」
「大丈夫!ちゃんと許可取ってきた!」
「……本当?」
「絶対周りにバラすなとも言われた」
守秘義務ありってそんな大層なものじゃないけど。
「分かったよ……シャワー浴びて着替えてくる……え、耳のことは聞いてないよね?」
「耳?なんのこと?」
「了解!待っててね」
「ちょっ……耳って何!?」
戸惑うリュークを無視してサッとシャワールームへ。
普通のスカートなんだけどなぁ……。こんなに喜んでもらえるものだなんて。
一瞬また何着か買おうかとも思ってしまった。
「…どう?」
「可愛い~!!」
私を抱きクルクル回るリュークに私も抱きつく。
「ドレスみたいにフリフリだね!」
「そうなの!ふんわりしてて可愛いでしょ」
「可愛い…」
言いながらさりげなくスカートの中に手を忍ばせてくる。
「ちょっと、お尻揉まないで」
「もちもち……」
そのまま私をベッドへ連れていく。
寝かせると両脚からスルッとショーツを脱がし指で入り口を撫でた。
それだけで愛液は溢れ二本の指はスムーズに中へと入る。
「…はぁ……ん……」
「短いスカートなんでこんなにえっちなんだろ……フリフリ可愛くてサキの脚が綺麗で…」
「これで…えっちなの……?そんなに短く無いのに……」
「え、これより短いのあるの?」
「あんっ……い、今は無い……」
話してる間に無意識なのか責めが速くなっていて、口を開けば共に嬌声も漏れる。
「俺が新しいの買うからさ、いっぱい着てよ」
「わかったからぁ……」
指を止めたリュークはスカートを捲り中に挿入する。
「んっ、あっ……」
彼はいつもより真剣に、何かを思いながら私を見つめる。
大好きな瞳を独占する喜びを感じながら、繋がったところから鳴る水音を聞いていた。
急にリュークは私の膝裏を持ち脚をグッと押さえつけると、激しく性急に突き始めた。
「あぁっ!あ……っ!」
「サキ……」
「りゅーく……っ!」
ちょうど中の弱いところに当たる体勢で私はすぐに耐えられなくなってしまった。
「イッ…く……あぁ!」
膣は収縮し痙攣するが構わずリュークは腰を動かす。
「っ!は…っ……んん」
「……ごめん」
「いい、の……っ…いっぱいして……」
「っ……」
こんな熱を帯びた視線を向けられて嫌だなんて言えない。私の全部を欲しがっているみたいで嬉しかった。
「あんっ、りゅーくぅ……」
「はぁ……サキ」
「んあ……!またイッちゃうっ」
「うん……俺も……っ」
勢いよく一突きされて私は、そしてリュークも荒い息を吐きながら果てた。
「は…ぁ……」
長いキスを交わし、唇が離れると小さなリップ音がなる。リュークはそっと私の髪を撫でた。
「シャワー浴びてくるね」
「うん……」
私は呼吸を整えてパジャマに着替える。ベッドで彼を待ち、しばらくして戻ってきたリュークは私の隣に横になった。
「ねぇ、サキ」
「ん?」
寝返りを打って彼と向き合う。
「俺……母さんと父さんに、ありがとうって言えて良かった。初めてちゃんと伝えられた」
申し訳ない気持ちがあったというリュークは、その意味を込めた言葉を軽々しくは言えなかったのだろう。
「あんなに喜んでくれるなんて思わなくて……言葉にしたらこんなに幸せなんだって……」
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「リュークの気持ち、きっと今までの分も全部伝わったよ」
「そう……かな」
「そうだよ」
私は彼をそっと抱きしめる。
「お誕生日おめでとう、リューク」
小さくキスをすると、リュークは一筋涙を流し枕に跡を残した。
「大好きだよ」
「うん」
「大好き……ありがとう……」
彼の優しいキスに私への沢山の愛と感謝を感じながら、私も同じ思いをキスに込めた。
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