美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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再会

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「サキさんおはようございます!」
「ヨルアノくん、おはよう」

 入団してから数日、ヨルアノくんはすっかり黒騎士団に馴染んでいた。

「今日はヴェルストリア居ないんですか?」
「うん、朝早くから出発しちゃって」

 騎士というお仕事だから勿論外へ行くことが多くて、一日二日居ない時もある。
 今日は一緒に寝ていたから眠い目を擦りながら見送ることが出来たけど。

「サキさんのご飯本当美味しいです!毎日食べれて幸せやわ……」
「良かった!いっぱい食べてね」
「ありがとうございます!」

 私も片付けを終え早速ご飯をよそう。そこへラグトさんもご飯を食べにやって来た。

「おはようございます!」
「おはよう!一緒に食べよ!」

 二人で準備していると何やら視線を感じる。
 振り向くとご飯を食べ終えたヨルアノくんが傍に居た。

「あのっ!」
「え、俺?」

 ヨルアノくんに急に話しかけられたラグトさんは驚く。

「急にすみません。ラグトさん……ですか?」
「うん、どうかした?」

 ヨルアノくんは少し戸惑いながら話す。

「三年前に南部の村に来とりませんでしたか?」
「ああ、三番隊で遠征に行った時かな」
「あの時、俺も村に来とってラグトさんに助けてもらったんです」

 真剣な眼差しのヨルアノくんにラグトさんはしばらく考え込んで、思い出したようだった。

「ああ!あの家に居た子か!」
「そうです……!顔も薄らとしか見えとらんくて合ってるか分からんかったんですけど……」

 確信を得て安心したようだ。

「あの後アルデンの黒騎士団やって知って、俺もなりたいと思って来たんです」
「え、じゃあ俺を見て入団しようって……」
「はい!あの時は本当にありがとうございました!」

 その時のことは分からないけど、ラグトさんに救われた人が憧れて黒騎士団に来てくれたんだ。

「めっちゃ嬉しい……!わざわざ遠くから来てくれたんだ!」
「イヤマの護衛として訓練はしとって、もしかしたらいけるかもと思ったんです」
「それで入団試験も合格してるんだから凄いよ!わー!ありがとう!」

 ラグトさんとヨルアノくんは固い握手を交わす。
 感動の再会を果たしヨルアノくんは凄く嬉しそうに手を振って去って行った。

「サキちゃん……!」
「ふふ、良かったですね」
「うん!」

 ラグトさんも喜びのあまり私を抱きしめ飛び跳ねる。私は揺れながら彼の頭を撫でていた。
 ご飯を食べ始めてもラグトさんはにやけが収まらないみたいで、何度も私の肩に頭を擦り寄せていた。

「へへ……嬉しいな。あの時初めての遠征だったんだよね」
「入団して初めてですか?」
「うん、まだ前には出れないから援護だったんだけど」

 その中で周りの家に取り残されていた人に気づき助けたのだそう。

「勝手に動くし背後取られて怪我するしでめっちゃ怒られたんだけどさ、初めて先輩に褒められたんだ」

 ミスカさんとの思い出もあるからこそ、ヨルノアくんに「ありがとう」と言ってもらえて余計に感慨深いのだろう。

「よし、仕事めっちゃ頑張ろ!今月は忙しいし」
「何かあるんですか?」
「もうすぐ祭りがあるから、黒騎士団はその警備で結構忙しくて」

 祭りと聞いて盆踊りのような夏祭りが思い出されたが少し違うみたいだ。

「エーテル祭っていうんだ。エーテルはアルデンの国花で、春に種を撒いてその豊作を願う祭りだよ」

 アルデン各地の町でそれぞれ盛大に行われ、家庭でもお祝いをするそう。

「実はサキちゃんの誕生日のお祝いも、エーテル祭を参考にしたんだ。俺たちにとってはお祝いってこの祭りだからさ」

「キラキラの飾りはリュークさんが実家から借りてきてくれた」とラグトさんが言い納得する。
 一日の間に色々考えて用意してくれたんだなぁ……。
 楽しかった記憶が思い出されてついニコニコしてしまう。
 そういえばヴェルくんの誕生日ももうすぐだ。

「お祭りは何日なんですか?」
「16日と17日の二日間だよ」
「……ヴェルくんの誕生日と被ってる!!」
「え!?マジ!?」

 16日……お祭り真っ只中……。

「ヴェルストリアも……どっちかだったら休み取れるんじゃないかな?」
「そう、ですね……。でも皆忙しいのに申し訳ないな……」
「忙しいって言っても警備だけだから!俺たちが見回りしてるっていうのが大事なんだ」

 警察の人が立ってるだけでちょっとドキドキしちゃう時あったから、それと同じ感じかな。

「帰ってきたら聞いてみます……」
「うん……そっかぁ、誕生日……俺一年前はまだヴェルストリアと話したこと無かったんだな……」

 そういえば二人は食堂で会ったのが初めてだったよね。

「サキちゃんが居たから関わりが出来たっていうか、そのうち話はしてたとしてもきっと今みたいでは無いから」
「二人で居る時はどんな話をしてるんですか?」
「……ほとんどサキちゃんの話しかしてないな……」
「え、恥ずかしい……」

 内容を聞きたいけど聞きたくない。

「でも一緒に居て楽しいから、良かったなって思うよ。向こうがどうかは知らないけど……」
「ヴェルくんもラグトさんと話してる時、楽しそうですよ」
「そうかなぁ……?」
「ふふ、とっても仲良しに見えます」

 そんな話をして、夜帰ってきたヴェルくんに躊躇いながらも聞いてみる。

「16日……お祭りがあるって聞いたんだけど……」
「そうなんです……すみません、僕も今日気づいて……。休みは一応取れたんですけど」
「本当……!」
「ええ、でも僕が警備に当たるのがここからだいぶ遠い町なんです」

 全国各地の警備の為、朝から間に合うように前日に到着しなければいけないのだとか。

「なので、サキさんが良ければ前日に一緒に行って祭りを見たらどうかと思って」
「うん!誕生日にお祭りデートだなんて素敵だね!」
「!サキさんと……デート……!」

 ヴェルくんがぱぁっと笑顔になる。
 仕事にも間に合うし祭りも楽しめる、まさに一石二鳥だ。

「夜はヴェルくんたちはどこかに泊まるの?」
「はい、すでに宿が手配されているので」
「「……」」

 二人でハインツさんの所へ向かう。

「それで……サキも同じ宿に泊まれないかと?」
「その日のうちにサキさんが寮に戻るのは時間的にも難しいかと」

 馬車で片道三時間以上かかってしまうそうなので往復だけで一日がほとんど終わってしまう。

「……」
「「……」」
「分かった、宿には団員しか居ないから安全だろう」
「「ありがとうございます!」」
「あと護衛については……」

 やっぱり護衛は必要なんだ……ヴェルくん凄く不服そう。

「今回は人員が足りていないから団員に任せることは出来ない。あそこは王都の騎士もつくから……大丈夫とするか」
「それって……」
「ヴェルストリア、絶対に気を抜くなよ」
「はい!」
「何かあればすぐに他の団員と騎士を呼べ。一人で解決しようとするな」

 ヴェルくんはその言葉を噛み締め了承した。
 こうして二人きりでの誕生日デートが決まったのだった。
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