美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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新居

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 ついにお家が完成し、本日お披露目となった。
 毎日遠目から見ていて分かってはいたけれど…

「大きい!!」

 想像の二倍大きかった。
 勿論私たち六人と未来の子供たち五人以上で暮らすのだから大きくて当たり前なのだけど…私の想像が追いついていなかった。
 見た目で言うとお洒落な西洋風の別荘という感じで、白塗りの外壁と少しくすんだ深緑の屋根が周りの木々や広い庭の芝生ととても合っている。

「これが私たちの家だなんて…夢みたい…!」
「夢じゃないよ。これから皆で住むのだから」
「ハインツさん、ありがとうございます!」

 お家の事は話し合って決めたけれどほとんどハインツさんに丸投げしてしまったから、大工さんとのやり取りで上手くイメージなどを伝えてくれたのだろう。

「喜んでくれて良かった。中も家具など大体は揃えてあるから、見てみようか」
「はい!」

 何だか一人暮らし始める時に内見したのを思い出すな…。

「俺たちもまだ見てないもんねー」
「ああ」
「楽しみー!」

 リュークとミスカさんは周りを見ながら歩き、ラグトさんは腕をブンブン振っている。

「サキさん一緒に行きましょう」
「ふふ、うん!」

 いつとなくはしゃぐヴェルくんと手を繋いで庭の石畳を通る。大きな扉を開けたその中にはまずエントランスホールがあった。
 玄関だけでこんなにスペースを使っていいのかと言いたくなってしまったが、開放感があって心地の良いものだ。

「いっぱい部屋あるね!迷っちゃいそうだなぁ…」
「最初は迷子になるかもですね」

 ラグトさんの心配は正直私も思っていた。どれがどの部屋なのか、まずちゃんと覚えないと。

「サキ、あっち見に行こ!」
「わっ、リューク早いよ!」

 リュークに手を引っ張られた私はヴェルくんを引っ張り、あちこちを見て回った。

「お風呂!」

 扉を開けたリュークに続き中に入る。
 いや、広い!!
 四人纏めて入れる程の規模に驚愕した。

「一緒に入れるね!」
「え、皆が?」
「サキとだよ!何で家でも男と入らなきゃいけないの!」
「あ、そうだね」

 効率を重視してるのかと思っちゃった。

「サキちゃんここ床座だよ!」
「本当だ…!嬉しいです!」

 靴を脱いで一面に敷かれた絨毯の上をパタパタ歩く。
 結構ふかふか!そのまま座っても痛くないかも。

「可愛い…」
「可愛いっね…」

 ミスカさんとラグトさんと他皆の温かい視線には気づかず一人ではしゃいだ。

「ここはリビングとダイニングだね」
「「おぉ…!」」

 皆の憩いの場になるであろう場所にはすでにソファとローテーブルが置かれている。

「シンプルなデザインにしたけれど良かったかな」
「凄く良いです!」

 全員が座れるL字のソファにミスカさんと並んで座ってみる。

「ちょうどいい硬さだな」
「はい!座りやすいです!」
「キッチンは向こう側だよ」

 今度はダイニングとキッチンの方へ。

「ダイニングの方に壁が無いから移動も楽ですね」
「ヴェルくん!収納いっぱい!」
「ふふ、お皿もいっぱい買いましょう」

 ダイニングには大きなテーブル。

「人数が増えたら横に増やせるよ」
「凄い!」

 食堂があるから今はここで食べることは少ないかもだけど、揃った時は六人で食べたいな。

「二階は子供部屋だね、今は何も置いていないけど」
「広さもちゃんとありますね!」

 ここが物で溢れるのが楽しみだな。

「三階はそれぞれの部屋だな。誰がどこに入るか決めていないが」

 ミスカさんに聞かれ四人は首を傾げる。

「どこでも良いよね?」
「どこでも良いっす」
「特に希望はありません」

 適当に決めたようだ。

「あれ、私の部屋は…?」
「サキの部屋は一階だよ」

 そう言われ下に降りる。
 入口からエントランスホールを進み奥の所だった。

「わぁ…!」

 淡いグリーンの壁紙と木の床板。

「私の想像してた部屋だ…!」
「本当かい?良かったよ」

 家具も木製で柔らかい雰囲気で纏められている。
 ここまで希望通りにしてくれたなんて、感動しかない。

「ソファの赤が差し色になっているのも完壁…!窓が丸くなってるの可愛い…!」

 胸がいっぱいでハインツさんに抱きつく。

「ハインツさんー!」
「はは、そんなに喜んでくれるなんて」

 私を抱っこして頭を撫でてくれる。

「これから住んでいく内にもっと素敵な場所になっていくよ」
「はい…!」

 そうして新しい生活を始める為、私たちは少しずつ引越しの準備をしていた。

「これは…こっちの箱に」

 まだすぐに住むわけでは無いので必要最低限は残して箱に入れていく。

「サキ、運ぶものはあるか」
「ミスカさん!そっちの箱だけお願いします」
「分かった」

 彼らも持ち物は少ないみたいで、特に苦もなく済みそうだ。
 大体は運んで貰い、最後少しだけを自分で持って行った。
 黒騎士団寮の隣へ。
 ちなみに防衛の観点から外へ出なくても直接通れる門がある。
 …全然慣れないなぁ…。
 玄関までの広い庭を通る時もまだ違和感がありキョロキョロと見回してしまう。

「お邪魔します…」

 扉を開けてそっと言う。

「それではまるで他人の家みたいだな」
「わっ、ハインツさん!」

 後ろから声をかけられ驚いて振り向く。

「まだ慣れない?」
「はい…何だか落ち着かなくて」

 嬉しさも相まってソワソワしてしまうのだ。

「始めは仕方ないね。しかしもうすぐ住む訳だし、練習しておこうか」
「練習?」

 ハインツさんは私を追い越し中へ入るとこちらを向いて手を広げた。

「おかえり、サキ」
「!…ハインツさん、ただいま!」

 荷物も置いて彼の胸に飛び込む。

「ふふ……今までよりずっと特別な感じがします」
「特別でこれからの当たり前だよ」

 私を抱きしめながら少し屈んだハインツさんとキス……。

「ちょっと団長!玄関でイチャつかないでくださいよ!」

 大きな荷物を持ったリュークを遮ってしまっていた。

「すまない」
「ごめんね!」

 二人でサッと避けた。

「リュークそんなに沢山荷物あったの?」
「ううん、母さんに新しい家住むーって言ったら昨日送られてきて。何が入ってるかまだ見てないんだ」

 お義母さんから貰ったという物を、箱を開けて確認してみる。

「食器か」
「可愛い!大皿だね!」
「俺こんなの見たことないけど……父さん使ったことあるのかな」

 リュークが次々と出すお皿を私とハインツさんで机に並べる。

「あ、これルークからサキにだって」
「リュークの弟か?」
「そうです」

 四角い袋を渡されて開けてみると、中には小さなパズルが入っていた。九個のピースにお花が描かれている。

「手紙も付いてたよ。えっと……「お店でいちばんかわいいのにしました。またあそんでほしいです」だって。えー!ルーク可愛い~!」
「ルークくん可愛い~!」

 ほぼ同時に声を上げキャッキャとはしゃぐ。

「またお礼しに行かないとね!」
「本当……俺一人で行ったらサキは居ないのかって迫られて……」
「それは嬉しいけど……」

 リュークがちょっぴり可哀想…。

「ルークも俺には手紙無いのかぁ……」
「お前が会いに行ったのだから必要ないだろう」
「あ、そうですね」

 可愛い義弟からのプレゼントを持って部屋に向かう。早速棚の上に飾り、この部屋を彩る記念すべき一つ目となった。
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