美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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愛を込めて

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「サキ、少し良いかな」
「はい!」

 ハインツさんに呼ばれ近くに寄る。

「指輪が届いたんだ。サキから皆に渡すかい?」
「本当ですか!そうしま…あ、ええと…皆に集まって貰うことって出来ますか?」
「ああ、良いよ」

 指輪…!こんなタイミング良く届いてくれるなんて!
 今日は私がこの世界に来て一年の日。
 この節目に指輪を渡せるのは凄く嬉しい。

「あとは…」

 もう一つ用意する為、私は花壇に向かった。



「おぉー!綺麗!」
「綺麗だね!」

 リュークと私は前のめりになって机に置かれた指輪を眺める。

「ピカピカだね!」
「輝いてる!」
「…二人とも、別に触れてもいいんだよ」

 ハインツさんに言われるが、どうも気後れしてしまう。
 でも、これから一生共に過ごす大切なもの。触れなければ始まらない。

「皆には私から付けてもいい?」
「ああ、そうして欲しい」
「じゃあまずはミスカさんの…」
「えっ、俺が一番がいい!」

 何でも初めが大事なリュークは簡単には譲れないようだ。

「そこはそんなに拘らなくてもいいと思うな…」
「いえ、僕も一番が良いです」

 結局ジャンケンで決めた。

「あはは、なんか勝っちゃった」

 特に気にしていなかったラグトさんが一番になりリュークとヴェルくんはムスッとしている。

「左手の薬指だったよね」
「はい!では失礼します…」

 震える手でオレンジ色の宝石がはめ込まれた指輪を取る。
 左手で彼の手を掬い、右手で指輪をはめた。

「あ、ピッタリだ!わー凄い!」
「よく似合ってます!」

 ラグトさんは手を掲げ楽しそうに指輪を見つめる。

「ラグトさん」

 私が手のひらを出すと彼は素直にポンと上に手を乗せる。
 その左手を口元に近づけ、私は小さく指輪にキスをした。

「!」
「ずっと夫婦でいるっていう誓いのキスです。結婚式の真似事ですけど…」
「うん…誓うよ。夫としてサキちゃんをいっぱい笑顔にする!」
「一緒に、沢山笑って過ごしましょうね!」

 一安心したところで今度は水色のものを取る。
 大きな指に通し、ゴツゴツとした手の感触を愛おしみながら口付けた。

「今まで物を身につけることは無かったが、こんなにも嬉しいものなんだな。いつでもサキを感じられる」
「ミスカさん…。でも出来るだけ近くに居て欲しいです」
「ああ、そうだな。指輪に頼りすぎるのも良くない。改めて、サキと夫婦になれて幸せだ。ありがとう」
「はい…!ありがとうございます」

 待ちわびた様子のヴェルくんにピアスと同じ白い指輪をはめる。

「僕の体にサキさんからの贈り物がいっぱい…」
「ふふ、本当だね。でもあんまり多いとギラギラしちゃうかな」
「そうですね、今あるものを大事にします」

 ヴェルくんは触れていた私の手を取り敬うようにキスをした。

「僕はもっと強くなって、貴女を守れる男になると誓います」
「うん!ずっとヴェルくんのこと頼りにしてるよ」

 次はリュークに…。

「なんかムズムズする…」
「ちょっとじっとしてて!」

 何とか出来た。一瞬落とすかと思って焦った…。

「サキとお揃いの指輪!」
「黄色の宝石凄くリュークに合ってるよ」

「リュークの瞳みたい」と言いながらキスをして見上げると、彼は薄い唇を噛みながら笑った。

「サキは俺の瞳好き?」
「大好き。つい目が離せなくなっちゃう」
「俺もサキの瞳大好き。出会った時から真っ直ぐ俺を見てくれて…凄く嬉しいんだ」
「リュークも私のこといっぱい見てくれる?」
「…俺の瞳にはもうサキしか映らないよ」

 最後はハインツさんの指にそっとはめた。
 初めて私の手を取ってくれた、あの温もりは絶対忘れない。

「大好きなハインツの手に私のものって印があるみたいで…嬉しいです」

 キスをするとその手は私の頬を包み優しく撫でる。

「この手は君のものだよ。サキを守る為の、愛する為の手だから」

 煌めく赤い宝石は、普段穏やかな彼の内側に秘めた情熱を見せているようで…。

「…もっと触れて欲しいです」
「っ……あ、後で…にしようか」

 周りからの冷たい視線と圧により二人は照れながらスっと離れた。

「サキの指輪をはめるのは…」
「これはジャンケンで決めることなのか?」
「なんか嫌ですよね」

 ハインツさんの言葉に皆首を傾げ、リュークが否定する。
 彼らは長いことうーん、と悩んでいて、このままでは拉致があかなそうだったので私は自分でスポッとはめた。

「ああっ!」
「僕がはめたかったのに…」
「どう?似合ってる?」
「凄く似合っている」

 ミスカさんが頷き、皆も褒めてくれてあっさり解決した。
 皆との夫婦の、愛の証。
 指輪を付けている人を見ていつも考えていた。
「この人は愛している人が居るんだ…。どんな気持ちなんだろう。私もいつか…」
 小さい頃からのぼんやりとした憧れが今、私の左手で輝いている。

「嬉しい……」

 言葉に出来ない程の幸せをただ噛み締めた。

「ハインツさん、ありがとうございます!」
「サキが喜んでくれて良かった。私にとって何よりの幸せだよ」

 胸が締め付けられるほどのいっぱいの気持ちを抱え、私は用意した物を取り出す。

「あのね、これを皆に」
「?」

 袋から包装紙で包んだ一輪のチューリップをそれぞれ一人ずつに渡した。

「可愛い!」
「花を貰ったのは初めてだ…」

 リュークとハインツさんは笑顔で花を見つめる

「サキちゃんが育ててたやつだよね。貰っちゃっていいの?」
「はい!どうしても渡したくて」

 私がそう言うとミスカさんは頷いた。

「ああ、そういうことか」
「ふふ、シオンさんから教えて貰ったんです」

 一人だけ理解したミスカさんと分からずポカンとする四人。
 言うのは少し恥ずかしいけど、改めて思いを伝えるきっかけになればと考えていた。

「赤いチューリップの花言葉は真実の愛なんだそうです」
「!」
「あと、もう一つは家族への感謝。普段から言っていることかもしれないけど…もっと伝われば良いなって」

 花と同じくらい顔が赤くなっているだろうと思いながらも、笑って大切な言葉を声に出した。

「一年間本当にありがとう。愛してます」
「サキ…私こそ、ありがとう。愛してるよ」
「出会えて良かった。俺も愛してる」

 ハインツさんとミスカさんの微笑みは柔らかく、ラグトさんは照れくさそうに笑った。

「俺恥ずかしくて今までちゃんと伝えれてなかったかも。サキちゃん愛してる!めっちゃ愛してる!」
「はい…!めっちゃ愛してます」

 いっぱいの愛で心が満たされていく。

「サキ…!俺も愛してるよ!いつも言葉にしてくれてありがとう」
「こちらこそだよ、リューク」
「サキさん…愛しています…」

 ふらふらと寄り、私に抱きついて泣くヴェルくんの頭を撫でる。

「もう、ヴェルくん泣き虫なんだから」
「ずみません…」
「ちゃんとヴェルくんだけの愛だよ」
「はい…」

 目元の涙を掬うとヴェルくんはふわっと微笑んだ

「サキちゃんありがとう!大事にするね」
「すぐ枯れちゃうから今だけですけど」
「枯れても一生持っとく!」
「それは衛生的に良くないかな…」

 リュークにツッコミながらも彼らの嬉しそうな顔が見れてホッとする。
 これからもちゃんと想いは伝え合っていきたいな。
 この世界に来て一年。
「まだ」のような「もう」のような、どちらとも言える感覚だけれど、生きてきた中で一番とも言える程大切な時間だった。
 毎年この日に思い出すだろう、森でのあの運命の出会いを。
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