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ミスカの誕生日
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もうすぐミスカさんの誕生日。
前ハインツさんの時に気合いを入れ過ぎてしまって、どうしても不安になってしまう。
これはもう…直接聞くしかない!
「あの、ミスカさんのお誕生日で何かして欲しいこととか無いですか?」
「して欲しいことか…」
しばらく考えて、真面目な顔で言われた。
「サキの可愛い姿が見たい」
「えぇ!?」
どういうこと…アバウトだし。
「…欲しい物はありますか?」
「サキの作るカレーが食べたい」
これは具体的だな…助かるけど。
あれからずっと考えている。
可愛い…姿?
彼の言う可愛いが何を指しているかが分からない。
とりあえず可愛いものを思いつく限り上げていくことにした。
ハート、スカート、フリル?動物…猫、ウサギとかハムスター…。
え、待って。これを纏めると…私が動物モチーフの可愛い服を着るってこと?
「流石に…うーん…」
私には到底似合うと思えないけど、他に全く思いつかない。
…喜んで貰えるかもしれないし…やってみよう!
彼らを思えば良い意味でも悪い意味でも行動力が上がる私は、早速誕生日に向けて準備を始めた。
そして当日。
ミスカさんがお休みを取ってくれたので、私が一日独り占め出来るのだ。彼に喜んで貰う為なのに私が浮かれてしまっている。
「カレーは昨日作って寝かせてあるんです。夕食で食べますか?」
「夕飯だと他の奴らに食べられそうだからな…」
否定出来ない懸念と二人ともお腹が空いているということで、お昼に食べることにした。
「やっぱりカレーは上手いな」
「沢山作ったので良かったらおかわりして下さい」
「ああ」
皆大好き定番の料理となったカレーも今日は特別仕様だ。
「肉が柔らかいな。いつもと種類も違う気がする」
「そうなんです!ちょっと良い牛肉にしてみました」
他愛も無い会話でいつもと同じように思うかもしれないけど、特別な日に二人きりで過ごせるのが凄く幸せだ。
私が半分食べ終わった時にミスカさんは大盛りのカレーを食べ切り、また大盛りでおかわりした。
「こんなに盛って大丈夫でしたか?」
「まだ全然入るからな。ありがとう」
「ミスカさん、食べるの速いですよね」
「すまない、目の前にあるとつい」
「いえ!美味しそうに食べてくれるから、嬉しいです」
ここまでで彼は二人前と半分は食べている。流石にもうお腹いっぱいになったかと思ったのだが…。
「おかわりしてもいいか」
「えっ、あ、はい!どれくらいにしましょうか」
「さっきと同じくらいで」
大盛り三杯目…?
一人前を食べ終わった私は彼の大きい一口を眺めていた。
「あの…実は作っていた分あと少ししか残っていなくて、足りますか?」
「ああ、これでちょうど良く満たされた」
「…今までのご飯だいぶ少なかったですか?」
「まあ…いや、二人前は貰っているから充分足りている」
ミスカさんは一瞬目を逸らしたので「充分」では無いだろう。
「言ってくれればちゃんと量増やしますから!」
「…すまないな、お願いしても良いか」
「ふふ…良いですよ」
気まずい顔をする彼に思わず笑いながら、結局残っていた分もミスカさんが食べ切り食事を終えた。
五人前くらい作ったと思うんだけどなぁ…。
次の日の私のお昼はカレーグラタンから野菜炒めに変更された。
部屋に戻りここからが本番。
「ちょっとだけ…待ってて下さい」
「?ああ」
不思議そうにしながらもソファに座った彼を確認し、シャワールームへ。
手には…もふもふのネコ耳とフリルのスカート。
ログさん経由でエバンさんに作って貰ったのだ。
恥ずかしくて夫たちには言えなかったのでこっそりお願いしたら凄く良い笑顔で了承してくれた。
また追加で注文してしまって、しかも急かしてしまって本当にエバンさんには申し訳ない。
一、二週間で作ったのは思えないほどの仕上がりの素敵なお洋服なので、今日だけで無く是非今後も活用していきたい。
上は元々持っていたニットを着る。スカートは普通に膝上丈の物なので日本だったら私の年齢でも着ている人は全然いるだろう。
ネコ耳カチューシャも付けたら…立派な白ネココーデの完成だ。髪は黒いけど。
「……恥ずかしいよぉ…」
実際着てみて、急に耐え難いほどの羞恥心が湧いてきた。
この歳で子供の仮装みたいなことするなんて…。
子供っぽい可愛いより女性として可愛いと思われたいのだけど、趣旨を間違えたかもしれない。
もだもだしていると彼を待たせてしまうので覚悟を決めて扉を開けた。
「み、ミスカさん」
「!」
「可愛い…ですか?」
ミスカさんは固まってしまってなかなか返事がない。
やっぱり変だったかな…。
彼の思う可愛いとは違ったのかと不安になっていると、彼はツカツカとこちらに来て私をギュっと抱きしめた。
「可愛い」
「本当ですか…!」
「凄く可愛い」
体を離した彼は一見無表情かもしれないが顔は赤くなって口角も少し上がっていて、内心凄く喜んでくれているのが分かる。
「ネコちゃんです!」
「ネコちゃんか」
その言葉をミスカさんの口から聞くとどうにも違和感があって少し笑ってしまった。
「その…だいぶ短いが、脚は寒くないか」
「部屋の中は暖かいので大丈夫ですよ」
クルッと回って彼に見せる。
「エバンさんに作って貰ったんです!どうですか?」
「可愛い…似合っている…可愛い…」
「良かった!それならこれもお出かけの時に…」
「それは駄目だ」
「えっ」
瞬で却下された。
「俺の前だけにしてくれ。他の奴には見せたくない」
「ミスカさん…!」
彼の独占欲が嬉しくて私も瞬で了解した。
抱えられてソファに行き、彼の膝の上に向き合って座った。
キスと共にスカートから伸びる脚をそっと撫でられる。
「ふふ、くすぐったいです」
「サキの脚は綺麗だな…最初の時も思ったが」
「最初?」
「ズボンを…履いていなかっただろう」
あ、ミスカさんが迎えに来てくれた時か!
「ミスカさんはその…本当に出会った時から私のこと…」
「気づいたのは少し後だが、今思えば一目惚れだったのだろう」
「一目惚れ…」
まさか人生の中で自分にその言葉がかけられるとは想定していなかったので戸惑いと喜びが入り交じり、とりあえず彼の肩に顔を押し付け落ち着いた。
「私は…」
恋だって、そういう好きなんだって自分の気持ちが分かったのは遅かったけど…その前から…。
「ミスカさんはずっと私に寄り添って居てくれて、それが凄く安心するんです」
ミスカさんの行動全てが私を思ってのことなのだと。
先日はすれ違いがあったけれどお陰でそれを確信出来たし、そういう事がちゃんと話し合って解決出来る人だということも彼が好きな理由の一つだ。
「初めてミスカさんの背に乗せて貰った時から、私も意識していたのかもしれません」
あの温もりがあったから、私は彼らを信じることが出来たのだと思う。
気恥ずかしくて誤魔化すように照れて笑うと、大きな手が頬に添えられて再び唇が重ねられた。
「ありがとう、サキ。あの時に出会えて良かった」
「本当に…良かったです。ミスカさんが黒騎士団に入ってここに居てくれたことも」
「リュークと出会っていなければ入らなかっただろうしな。そう考えるとあの家に生まれてきて良かったと思える」
「はい…!」
リュークとジンさんたちに出会う前の話をする時、ミスカさんは淡々としていてまるで他人事の様だった。それが彼の感覚なのだから駄目だとかでは無いけど、その頃の自分も思い出に出来たら良い事なのではと私は思う。
「ミスカさん、お誕生日おめでとうございます!今日は私が何でもしますよ!」
私だって彼らの我儘を聞きたいのだ。誕生日にこじつけて望みを求める。
「サキに甘えられたい」
「…そんなことで良いんですか?」
いつも甘えてばかりだけど…。いつもより甘えて欲しいってことかな。
「…にゃん?」
「!?」
「あ、すみません…せっかくネコなのでと思ったんですけど…」
彼の手が自身の顔を隠していてどういう心情なのか全然分からない。
「…天使……」
「?」
「そのまま…続けて欲しい」
「はい!じゃなくて…にゃん!」
「うっ……」
吹っ切れてしまえば普通に楽しくて、ネコに興じてただ甘えていたのだった。
「頭撫でて欲しいにゃん」
「ああ。…可愛いな…」
「ふふ、来世はネコでも良いかもです」
「じゃあ俺もネコになろう」
グレー毛並みで水色瞳のネコ…カッコいい!ネコになってもきっと出会って夫婦になれるね。
「ところでミスカさんはネコ好きでしたか?」
「好き…かもしれない。貴族がよく飼っているから王都で見かけるんだが…癒されるからな」
「分かります!見てるだけで笑顔になっちゃう…」
彼と戯れてのんびりした午後を過ごしていると、ふと扉がノックされた。
「サキー、居る?」
「はーい」
リュークの呼ぶ声が聞こえ、いつも通りに返事をしてしまった。今のこの格好に気づきミスカさんと顔を見合わせる。
ネコになりきってるなんて、リュークにバレたら絶対皆に言われる…!
私が慌ててネコ耳を外して扉が開いた。
「サキ、ミスカ見なかっ…た……!?」
「え、あっ」
間に合ったと思ったらスカートの事を忘れていた。頭隠して尻隠さず…。
「サキ何それ!?脚がっ…スカート短くない!?可愛い…えっちだ……何でミスカだけ」
「リューク、何の用だ」
ミスカさんが私を持ち上げ後ろに置きながらリュークに聞く。
「用…なんだっけ、忘れちゃった…」
「じゃあ帰れ」
「いや無理!サキ~可愛い~!!えっちするなら俺も混ぜて!」
部屋に飛び込んできたリュークをミスカさんは私に近づけまいとし、私も口を出す。
「今日は駄目!」
「えぇ…」
「ミスカさんのお誕生日だから」
「誕生日…あ、今日か!」
お祝いの文化が無いので誕生日の認知は薄いようだ。
「俺の誕生日の時もしてくれる…?」
「リュークのしたいこと何でもするよ」
「誕生日って凄いんだね…」
なんか誕生日が変な扱いになっちゃった。私の言い方が悪かったかな。
「絶対絶対だよ!」
「うん、ごめんね」
ミスカさんにポイッと部屋の外に出されたリュークに手を振って見送る。
「ふぅ…すみません…」
「いや、逆に…リュークがすまないな」
幼なじみの性格はよく分かっているのだろう。
お互い自分の事のように謝るから本当に仲良いなと思う。
「断わると可哀想なんですけど…今日は…」
「…俺だけとしてくれるか」
「!……はい」
やっぱり邪魔されず、二人きりで過ごしたい。
キスが始まりの合図で部屋が一気に甘い雰囲気になった。抱かれてベッドに移動すると寝かせられ、スカートの中に伸びた手がショーツを脱がす。
「短いと着たまま出来るな」
「んっ…」
スカートで隠れて見えないまま中を解されその感覚に敏感になる。
「リュークに、も…見せちゃったけど…」
「気にしなくて良い。俺が一番に見れたから、嬉しい」
「うん…っ」
しばらく経ち、指だけでぐずぐずに溶かされた私は気持ちよさはいっぱいなのに物足りなさも感じ体を疼かせていた。
しかし私が欲しいと言ったら今日は意味が無い気がする。
「み、ミスカさん…して欲しいこと、無いですか…?」
真っ赤な顔で息を切らしながら言うから格好はつかないけど…。
「…サキからキスして欲しい」
これもいつもしてる事だと思うけど…。まあ彼がそう望んでくれたのなら嬉しい限りだ。
私はミスカさんの頭を抱き寄せ唇を重ねた。
確かにいつもはリードして貰ってばかりだったと思う。積極的にいかなければ…と思い切って、自分から彼と舌を絡めた。
「!」
「ん…はぁ……合ってますか…?」
「ああ…もっとしてくれ」
求められてやる気になった私はまた精一杯のキスを続ける。その間に下はゆっくりと繋がっていた。
「あ…っ、ん…」
深くは入れないけれど速い抽挿に息が途切れ途切れでキスがままならない。
「…サキ、声出して」
「うっ、ん…は…あぁ…!」
口を離してしまえばとめどなく嬌声が漏れ、解放感も相まってすぐに体を震わせ中を締めた。彼も出してくれたことに安心しながら一つキスをした。
「サキ」
「ミスカさん…」
お互い頷くと、サッと体を起こした。いそいそと服を着替える。
「すまない、途中で思い出した」
「私もです…」
もうすぐ夕食を作りにいかなければならないのを二人して忘れていた。いや、私が覚えていなければいけないのだけど。
しかし中途半端に止めることも出来ず…欲に抗えなかった。
バタバタしながら部屋を出て食堂に向かう。
「今日はケーキも用意しているので、ご飯の後に食べましょう!」
「それは楽しみだな、ありがとう」
「あと…」
少し立ち止まりコソッと言う。
「その後に…またしてくれますか…?」
「ああ、勿論だ」
ミスカさんは目を細めて、幸せそうに微笑んだ。
一年に一度の特別な今日は、もう少し続く。
前ハインツさんの時に気合いを入れ過ぎてしまって、どうしても不安になってしまう。
これはもう…直接聞くしかない!
「あの、ミスカさんのお誕生日で何かして欲しいこととか無いですか?」
「して欲しいことか…」
しばらく考えて、真面目な顔で言われた。
「サキの可愛い姿が見たい」
「えぇ!?」
どういうこと…アバウトだし。
「…欲しい物はありますか?」
「サキの作るカレーが食べたい」
これは具体的だな…助かるけど。
あれからずっと考えている。
可愛い…姿?
彼の言う可愛いが何を指しているかが分からない。
とりあえず可愛いものを思いつく限り上げていくことにした。
ハート、スカート、フリル?動物…猫、ウサギとかハムスター…。
え、待って。これを纏めると…私が動物モチーフの可愛い服を着るってこと?
「流石に…うーん…」
私には到底似合うと思えないけど、他に全く思いつかない。
…喜んで貰えるかもしれないし…やってみよう!
彼らを思えば良い意味でも悪い意味でも行動力が上がる私は、早速誕生日に向けて準備を始めた。
そして当日。
ミスカさんがお休みを取ってくれたので、私が一日独り占め出来るのだ。彼に喜んで貰う為なのに私が浮かれてしまっている。
「カレーは昨日作って寝かせてあるんです。夕食で食べますか?」
「夕飯だと他の奴らに食べられそうだからな…」
否定出来ない懸念と二人ともお腹が空いているということで、お昼に食べることにした。
「やっぱりカレーは上手いな」
「沢山作ったので良かったらおかわりして下さい」
「ああ」
皆大好き定番の料理となったカレーも今日は特別仕様だ。
「肉が柔らかいな。いつもと種類も違う気がする」
「そうなんです!ちょっと良い牛肉にしてみました」
他愛も無い会話でいつもと同じように思うかもしれないけど、特別な日に二人きりで過ごせるのが凄く幸せだ。
私が半分食べ終わった時にミスカさんは大盛りのカレーを食べ切り、また大盛りでおかわりした。
「こんなに盛って大丈夫でしたか?」
「まだ全然入るからな。ありがとう」
「ミスカさん、食べるの速いですよね」
「すまない、目の前にあるとつい」
「いえ!美味しそうに食べてくれるから、嬉しいです」
ここまでで彼は二人前と半分は食べている。流石にもうお腹いっぱいになったかと思ったのだが…。
「おかわりしてもいいか」
「えっ、あ、はい!どれくらいにしましょうか」
「さっきと同じくらいで」
大盛り三杯目…?
一人前を食べ終わった私は彼の大きい一口を眺めていた。
「あの…実は作っていた分あと少ししか残っていなくて、足りますか?」
「ああ、これでちょうど良く満たされた」
「…今までのご飯だいぶ少なかったですか?」
「まあ…いや、二人前は貰っているから充分足りている」
ミスカさんは一瞬目を逸らしたので「充分」では無いだろう。
「言ってくれればちゃんと量増やしますから!」
「…すまないな、お願いしても良いか」
「ふふ…良いですよ」
気まずい顔をする彼に思わず笑いながら、結局残っていた分もミスカさんが食べ切り食事を終えた。
五人前くらい作ったと思うんだけどなぁ…。
次の日の私のお昼はカレーグラタンから野菜炒めに変更された。
部屋に戻りここからが本番。
「ちょっとだけ…待ってて下さい」
「?ああ」
不思議そうにしながらもソファに座った彼を確認し、シャワールームへ。
手には…もふもふのネコ耳とフリルのスカート。
ログさん経由でエバンさんに作って貰ったのだ。
恥ずかしくて夫たちには言えなかったのでこっそりお願いしたら凄く良い笑顔で了承してくれた。
また追加で注文してしまって、しかも急かしてしまって本当にエバンさんには申し訳ない。
一、二週間で作ったのは思えないほどの仕上がりの素敵なお洋服なので、今日だけで無く是非今後も活用していきたい。
上は元々持っていたニットを着る。スカートは普通に膝上丈の物なので日本だったら私の年齢でも着ている人は全然いるだろう。
ネコ耳カチューシャも付けたら…立派な白ネココーデの完成だ。髪は黒いけど。
「……恥ずかしいよぉ…」
実際着てみて、急に耐え難いほどの羞恥心が湧いてきた。
この歳で子供の仮装みたいなことするなんて…。
子供っぽい可愛いより女性として可愛いと思われたいのだけど、趣旨を間違えたかもしれない。
もだもだしていると彼を待たせてしまうので覚悟を決めて扉を開けた。
「み、ミスカさん」
「!」
「可愛い…ですか?」
ミスカさんは固まってしまってなかなか返事がない。
やっぱり変だったかな…。
彼の思う可愛いとは違ったのかと不安になっていると、彼はツカツカとこちらに来て私をギュっと抱きしめた。
「可愛い」
「本当ですか…!」
「凄く可愛い」
体を離した彼は一見無表情かもしれないが顔は赤くなって口角も少し上がっていて、内心凄く喜んでくれているのが分かる。
「ネコちゃんです!」
「ネコちゃんか」
その言葉をミスカさんの口から聞くとどうにも違和感があって少し笑ってしまった。
「その…だいぶ短いが、脚は寒くないか」
「部屋の中は暖かいので大丈夫ですよ」
クルッと回って彼に見せる。
「エバンさんに作って貰ったんです!どうですか?」
「可愛い…似合っている…可愛い…」
「良かった!それならこれもお出かけの時に…」
「それは駄目だ」
「えっ」
瞬で却下された。
「俺の前だけにしてくれ。他の奴には見せたくない」
「ミスカさん…!」
彼の独占欲が嬉しくて私も瞬で了解した。
抱えられてソファに行き、彼の膝の上に向き合って座った。
キスと共にスカートから伸びる脚をそっと撫でられる。
「ふふ、くすぐったいです」
「サキの脚は綺麗だな…最初の時も思ったが」
「最初?」
「ズボンを…履いていなかっただろう」
あ、ミスカさんが迎えに来てくれた時か!
「ミスカさんはその…本当に出会った時から私のこと…」
「気づいたのは少し後だが、今思えば一目惚れだったのだろう」
「一目惚れ…」
まさか人生の中で自分にその言葉がかけられるとは想定していなかったので戸惑いと喜びが入り交じり、とりあえず彼の肩に顔を押し付け落ち着いた。
「私は…」
恋だって、そういう好きなんだって自分の気持ちが分かったのは遅かったけど…その前から…。
「ミスカさんはずっと私に寄り添って居てくれて、それが凄く安心するんです」
ミスカさんの行動全てが私を思ってのことなのだと。
先日はすれ違いがあったけれどお陰でそれを確信出来たし、そういう事がちゃんと話し合って解決出来る人だということも彼が好きな理由の一つだ。
「初めてミスカさんの背に乗せて貰った時から、私も意識していたのかもしれません」
あの温もりがあったから、私は彼らを信じることが出来たのだと思う。
気恥ずかしくて誤魔化すように照れて笑うと、大きな手が頬に添えられて再び唇が重ねられた。
「ありがとう、サキ。あの時に出会えて良かった」
「本当に…良かったです。ミスカさんが黒騎士団に入ってここに居てくれたことも」
「リュークと出会っていなければ入らなかっただろうしな。そう考えるとあの家に生まれてきて良かったと思える」
「はい…!」
リュークとジンさんたちに出会う前の話をする時、ミスカさんは淡々としていてまるで他人事の様だった。それが彼の感覚なのだから駄目だとかでは無いけど、その頃の自分も思い出に出来たら良い事なのではと私は思う。
「ミスカさん、お誕生日おめでとうございます!今日は私が何でもしますよ!」
私だって彼らの我儘を聞きたいのだ。誕生日にこじつけて望みを求める。
「サキに甘えられたい」
「…そんなことで良いんですか?」
いつも甘えてばかりだけど…。いつもより甘えて欲しいってことかな。
「…にゃん?」
「!?」
「あ、すみません…せっかくネコなのでと思ったんですけど…」
彼の手が自身の顔を隠していてどういう心情なのか全然分からない。
「…天使……」
「?」
「そのまま…続けて欲しい」
「はい!じゃなくて…にゃん!」
「うっ……」
吹っ切れてしまえば普通に楽しくて、ネコに興じてただ甘えていたのだった。
「頭撫でて欲しいにゃん」
「ああ。…可愛いな…」
「ふふ、来世はネコでも良いかもです」
「じゃあ俺もネコになろう」
グレー毛並みで水色瞳のネコ…カッコいい!ネコになってもきっと出会って夫婦になれるね。
「ところでミスカさんはネコ好きでしたか?」
「好き…かもしれない。貴族がよく飼っているから王都で見かけるんだが…癒されるからな」
「分かります!見てるだけで笑顔になっちゃう…」
彼と戯れてのんびりした午後を過ごしていると、ふと扉がノックされた。
「サキー、居る?」
「はーい」
リュークの呼ぶ声が聞こえ、いつも通りに返事をしてしまった。今のこの格好に気づきミスカさんと顔を見合わせる。
ネコになりきってるなんて、リュークにバレたら絶対皆に言われる…!
私が慌ててネコ耳を外して扉が開いた。
「サキ、ミスカ見なかっ…た……!?」
「え、あっ」
間に合ったと思ったらスカートの事を忘れていた。頭隠して尻隠さず…。
「サキ何それ!?脚がっ…スカート短くない!?可愛い…えっちだ……何でミスカだけ」
「リューク、何の用だ」
ミスカさんが私を持ち上げ後ろに置きながらリュークに聞く。
「用…なんだっけ、忘れちゃった…」
「じゃあ帰れ」
「いや無理!サキ~可愛い~!!えっちするなら俺も混ぜて!」
部屋に飛び込んできたリュークをミスカさんは私に近づけまいとし、私も口を出す。
「今日は駄目!」
「えぇ…」
「ミスカさんのお誕生日だから」
「誕生日…あ、今日か!」
お祝いの文化が無いので誕生日の認知は薄いようだ。
「俺の誕生日の時もしてくれる…?」
「リュークのしたいこと何でもするよ」
「誕生日って凄いんだね…」
なんか誕生日が変な扱いになっちゃった。私の言い方が悪かったかな。
「絶対絶対だよ!」
「うん、ごめんね」
ミスカさんにポイッと部屋の外に出されたリュークに手を振って見送る。
「ふぅ…すみません…」
「いや、逆に…リュークがすまないな」
幼なじみの性格はよく分かっているのだろう。
お互い自分の事のように謝るから本当に仲良いなと思う。
「断わると可哀想なんですけど…今日は…」
「…俺だけとしてくれるか」
「!……はい」
やっぱり邪魔されず、二人きりで過ごしたい。
キスが始まりの合図で部屋が一気に甘い雰囲気になった。抱かれてベッドに移動すると寝かせられ、スカートの中に伸びた手がショーツを脱がす。
「短いと着たまま出来るな」
「んっ…」
スカートで隠れて見えないまま中を解されその感覚に敏感になる。
「リュークに、も…見せちゃったけど…」
「気にしなくて良い。俺が一番に見れたから、嬉しい」
「うん…っ」
しばらく経ち、指だけでぐずぐずに溶かされた私は気持ちよさはいっぱいなのに物足りなさも感じ体を疼かせていた。
しかし私が欲しいと言ったら今日は意味が無い気がする。
「み、ミスカさん…して欲しいこと、無いですか…?」
真っ赤な顔で息を切らしながら言うから格好はつかないけど…。
「…サキからキスして欲しい」
これもいつもしてる事だと思うけど…。まあ彼がそう望んでくれたのなら嬉しい限りだ。
私はミスカさんの頭を抱き寄せ唇を重ねた。
確かにいつもはリードして貰ってばかりだったと思う。積極的にいかなければ…と思い切って、自分から彼と舌を絡めた。
「!」
「ん…はぁ……合ってますか…?」
「ああ…もっとしてくれ」
求められてやる気になった私はまた精一杯のキスを続ける。その間に下はゆっくりと繋がっていた。
「あ…っ、ん…」
深くは入れないけれど速い抽挿に息が途切れ途切れでキスがままならない。
「…サキ、声出して」
「うっ、ん…は…あぁ…!」
口を離してしまえばとめどなく嬌声が漏れ、解放感も相まってすぐに体を震わせ中を締めた。彼も出してくれたことに安心しながら一つキスをした。
「サキ」
「ミスカさん…」
お互い頷くと、サッと体を起こした。いそいそと服を着替える。
「すまない、途中で思い出した」
「私もです…」
もうすぐ夕食を作りにいかなければならないのを二人して忘れていた。いや、私が覚えていなければいけないのだけど。
しかし中途半端に止めることも出来ず…欲に抗えなかった。
バタバタしながら部屋を出て食堂に向かう。
「今日はケーキも用意しているので、ご飯の後に食べましょう!」
「それは楽しみだな、ありがとう」
「あと…」
少し立ち止まりコソッと言う。
「その後に…またしてくれますか…?」
「ああ、勿論だ」
ミスカさんは目を細めて、幸せそうに微笑んだ。
一年に一度の特別な今日は、もう少し続く。
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