121 / 184
ハインツとのデート 2
しおりを挟む ジェトレ村を、お昼前に出発した俺達は夜に少し休憩したくらい。
殆ど休憩も取らずに、夜通し歩いていた。
イザベラの姉の挙式が、刻一刻と迫っている事もある。
少しでも早く迷宮に行くという意見で、全員が一致していた。
どうやら……
改造された俺のチートな身体は、数日くらい眠らないでも平気らしい。
しかし、それ以上に凄いのが悪魔だ。
イザベラやアモンに聞いた所、彼等は睡眠を全然取らないでも平気だという。
だがメンバーの中で、まともな人間であるジュリアは、そのようなわけにはいかない。
竜神族の血が流れているらしいとはいえ、眠気を訴えるジュリア。
俺は、背中を差し出してやった。
ジュリアは嬉しそうにおぶさる。
これって、ジェトレへ来た時と同じ。
以前より、遥かに絆が深くなっているからジュリアは俺に甘えまくる。
そして「こてん」と寝てしまった。
そんなジュリアの様子を、イザベラはじっと見つめていた。
イザベラにしてみれば、ジュリアがとっても羨ましいと思ったようだ。
彼女からもジュリアが起きたら、交代で背負ってくれとせがまれたのは当たり前の事だった。
ジュリアも、多分断らないだろう。
俺はまたひとつ、嫁に対する接し方を学んだ。
常に公平であれと!
明け方になって漸《ようや》く目覚めたジュリア。
理由を話すと快諾してくれた。
なのですぐ交代すると、イザベラはおもちゃを与えられた子供のように無邪気に笑った。
そして安心したのか、ぐっすりと眠ってしまったのである。
旅立った時から目指す先がキャンプと聞いて、迷宮とのマッチングが余りピンと来なかった俺。
道すがらジュリアに、色々と疑問をぶつけてみた。
ジュリアによると……
この世界では迷宮が発見された場合、規模にもよるが一攫千金を狙って冒険者が殺到するという。
冒険者が大勢居れば、武器防具、魔道具、ポーション、薬草などの迷宮攻略用の商品が大量に必要とされる。
稼ぎになれば取り扱う商人も大挙して押し寄せる。
加えて、日々の生活用品も必要になるから、こちらを扱う商人達も集まるのは当然だ。
こうして人が集まれば、小さな集落や村が直ぐに出来る。
それがこの世界での『キャンプ』と呼ばれる拠点だそうだ。
移動が出来るような露店に近い店がまず出店し、小さな村の形態となる。
迷宮が攻略されるにつれて、得られる冒険者達の利益に比例して段々と大きな店や施設……それらが発展して大きな村、そして町が造られて行くらしい。
本来、俺とジュリアは商人だから店を出す方の立場。
だけど現在はイザベラの依頼を受けているので冒険者という立ち位置である。
そんなこんなで漸く、コーンウォールのキャンプへ到着した。
イザベラも起きていて元気一杯。
悪魔でも眠ればすっきりするのは同じみたい。
俺は改めてキャンプを見た。
ここも外敵の襲来に備えて、頑丈な岩壁でキャンプ全体を囲っている。
俺達は正門から入る。
当然所定の入場料、すなわち税金は必要だ。
その際、身分証明書としてジェトレ村の村民証が役に立ったのは言うまでもない。
だけど、入って吃驚。
聞いていたとはいえ、キャンプ内は冒険者と商人ばっかりだから。
たまに見られる綺麗で且つケバイ女性は、『お水』関係の女性が殆ど。
ちなみに冒険者の女性は、香りで敵に感づかれてしまうから、あまり化粧をしないのだ。
俺はつい、ジロジロ観察をしてしまった。
このコーンウォールのキャンプは、かつての旧ガルドルド魔法帝国の廃墟を囲むように造られた小規模な集落であったという。
しかし現在、人間族は勿論、アールヴやドヴェルグ、そして俺が初めて見る獣人族など冒険者と商人達の人種は多種多彩となっている。
ごみごみしているが、俺はこのコーンウォールのキャンプの雰囲気が嫌いではない。
昔、熱中したロールプレイングゲームの町に酷似しているからだ。
「ジェトレの村に比べればずっと規模が小さいけど何か活気がある場所だな」
俺の言葉を受けて、ジュリアが解説してくれる。
「この規模じゃあ、一般市民は殆ど居ない場所だよ。居るのは冒険者と彼等に対して商売をしようとする商人だけだもの」
「納得! 全てが迷宮ありき……って事か」
「そうだね、迷宮っていうのはこのコーンウォールみたいに古代の遺跡の中にある物もあれば、何者かが意図して最近作られた物もあるんだ。後者はだいたい邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って造り上げた物が多いんだよ」
邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って作り上げただと!?
駄目だ!
俺、何か……「うきうき」して来た!
「もう! トールったら呆れた! 凄く嬉しそうな顔をしてるんだから」
「そうか?」
「顔に出まくりだよ!」
「あはは……」
「もう! 言っとくけど、そんな危険な迷宮なんか絶対に行かないからね。闇の魔法使いは死霊術師が多いんだ。稀少なお宝を餌にして人間の魂を収集してから悪魔に契約を持ちかけるとんでもない輩共だよ」
悪魔!?
悪魔だったらもう俺とジュリアの目の前に居るけど……
それもふたりもだ。
「悪魔に契約を持ちかける、とんでもない輩共」と言ってからジュリアはハッと気がついた。
だって悪魔と『契約』したって今の俺達であり、それも単なる契約ではなく家族になってしまったのだから……
ジュリアはバツが悪そうにイザベラを見た。
そして、申し訳無さそうに両手を合わせたのであった。
殆ど休憩も取らずに、夜通し歩いていた。
イザベラの姉の挙式が、刻一刻と迫っている事もある。
少しでも早く迷宮に行くという意見で、全員が一致していた。
どうやら……
改造された俺のチートな身体は、数日くらい眠らないでも平気らしい。
しかし、それ以上に凄いのが悪魔だ。
イザベラやアモンに聞いた所、彼等は睡眠を全然取らないでも平気だという。
だがメンバーの中で、まともな人間であるジュリアは、そのようなわけにはいかない。
竜神族の血が流れているらしいとはいえ、眠気を訴えるジュリア。
俺は、背中を差し出してやった。
ジュリアは嬉しそうにおぶさる。
これって、ジェトレへ来た時と同じ。
以前より、遥かに絆が深くなっているからジュリアは俺に甘えまくる。
そして「こてん」と寝てしまった。
そんなジュリアの様子を、イザベラはじっと見つめていた。
イザベラにしてみれば、ジュリアがとっても羨ましいと思ったようだ。
彼女からもジュリアが起きたら、交代で背負ってくれとせがまれたのは当たり前の事だった。
ジュリアも、多分断らないだろう。
俺はまたひとつ、嫁に対する接し方を学んだ。
常に公平であれと!
明け方になって漸《ようや》く目覚めたジュリア。
理由を話すと快諾してくれた。
なのですぐ交代すると、イザベラはおもちゃを与えられた子供のように無邪気に笑った。
そして安心したのか、ぐっすりと眠ってしまったのである。
旅立った時から目指す先がキャンプと聞いて、迷宮とのマッチングが余りピンと来なかった俺。
道すがらジュリアに、色々と疑問をぶつけてみた。
ジュリアによると……
この世界では迷宮が発見された場合、規模にもよるが一攫千金を狙って冒険者が殺到するという。
冒険者が大勢居れば、武器防具、魔道具、ポーション、薬草などの迷宮攻略用の商品が大量に必要とされる。
稼ぎになれば取り扱う商人も大挙して押し寄せる。
加えて、日々の生活用品も必要になるから、こちらを扱う商人達も集まるのは当然だ。
こうして人が集まれば、小さな集落や村が直ぐに出来る。
それがこの世界での『キャンプ』と呼ばれる拠点だそうだ。
移動が出来るような露店に近い店がまず出店し、小さな村の形態となる。
迷宮が攻略されるにつれて、得られる冒険者達の利益に比例して段々と大きな店や施設……それらが発展して大きな村、そして町が造られて行くらしい。
本来、俺とジュリアは商人だから店を出す方の立場。
だけど現在はイザベラの依頼を受けているので冒険者という立ち位置である。
そんなこんなで漸く、コーンウォールのキャンプへ到着した。
イザベラも起きていて元気一杯。
悪魔でも眠ればすっきりするのは同じみたい。
俺は改めてキャンプを見た。
ここも外敵の襲来に備えて、頑丈な岩壁でキャンプ全体を囲っている。
俺達は正門から入る。
当然所定の入場料、すなわち税金は必要だ。
その際、身分証明書としてジェトレ村の村民証が役に立ったのは言うまでもない。
だけど、入って吃驚。
聞いていたとはいえ、キャンプ内は冒険者と商人ばっかりだから。
たまに見られる綺麗で且つケバイ女性は、『お水』関係の女性が殆ど。
ちなみに冒険者の女性は、香りで敵に感づかれてしまうから、あまり化粧をしないのだ。
俺はつい、ジロジロ観察をしてしまった。
このコーンウォールのキャンプは、かつての旧ガルドルド魔法帝国の廃墟を囲むように造られた小規模な集落であったという。
しかし現在、人間族は勿論、アールヴやドヴェルグ、そして俺が初めて見る獣人族など冒険者と商人達の人種は多種多彩となっている。
ごみごみしているが、俺はこのコーンウォールのキャンプの雰囲気が嫌いではない。
昔、熱中したロールプレイングゲームの町に酷似しているからだ。
「ジェトレの村に比べればずっと規模が小さいけど何か活気がある場所だな」
俺の言葉を受けて、ジュリアが解説してくれる。
「この規模じゃあ、一般市民は殆ど居ない場所だよ。居るのは冒険者と彼等に対して商売をしようとする商人だけだもの」
「納得! 全てが迷宮ありき……って事か」
「そうだね、迷宮っていうのはこのコーンウォールみたいに古代の遺跡の中にある物もあれば、何者かが意図して最近作られた物もあるんだ。後者はだいたい邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って造り上げた物が多いんだよ」
邪悪な闇の魔法使いが悪意を持って作り上げただと!?
駄目だ!
俺、何か……「うきうき」して来た!
「もう! トールったら呆れた! 凄く嬉しそうな顔をしてるんだから」
「そうか?」
「顔に出まくりだよ!」
「あはは……」
「もう! 言っとくけど、そんな危険な迷宮なんか絶対に行かないからね。闇の魔法使いは死霊術師が多いんだ。稀少なお宝を餌にして人間の魂を収集してから悪魔に契約を持ちかけるとんでもない輩共だよ」
悪魔!?
悪魔だったらもう俺とジュリアの目の前に居るけど……
それもふたりもだ。
「悪魔に契約を持ちかける、とんでもない輩共」と言ってからジュリアはハッと気がついた。
だって悪魔と『契約』したって今の俺達であり、それも単なる契約ではなく家族になってしまったのだから……
ジュリアはバツが悪そうにイザベラを見た。
そして、申し訳無さそうに両手を合わせたのであった。
151
お気に入りに追加
1,121
あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。
訳ありな家庭教師と公爵の執着
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷 さらりと読んで下さい。
※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)から、HOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです
狼蝶
恋愛
転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?
学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる