美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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ラグトとのデート 1

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 ラグトさんと出かけることになって、ハインツさんに許可を貰いに行った。

「ラグトの故郷は確かブルージュだったか。あそこは少し遠いが、馬車で二時間だから一日で帰って来れるな」
「あ、はい…」

 お泊まりは当分許すつもりは無いらしい。
 それより馬車と言うのは…?

「ああ、馬車は既に買ったよ。これからはサキも移動がしやすくなるだろう」
「ありがとうございます…!」

 私だけの為にわざわざ…。でも、遠くまでも行けるってことだよね。

「それと、護衛は連れていきなさい」
「えぇ!?」
「ラグト一人では少し不安が残る」
「うぅ…否めない…」
「団員に御者を頼むから一緒に護衛をして貰う。まあ、気にせず二人で見て回れば良い」

 見られながらデート…ちょっと気まずいなぁ。

 という訳で、本日はラグトさんとのデートの日。
 馬車に乗るのでお洒落も出来る!
 あまり多くは無いお洒落服の中から厳選した物を部屋で着替えて髪も三つ編みにし、バッチリ決めて彼の元へ向かう。

「おはようございます」
「おは…!?サキさんっっ、かわ…」

 通りすがる団員たち皆に驚かれて少し照れてしまう。
 気合い入ってるの普通にバレちゃう…。
 途中でリュークにも会った。

「さ、サキ!?可愛すぎる…っ!!その格好で部屋から来たの!?」
「え、うん」
「皆に見られてんじゃん!そんな可愛い姿易々と晒しちゃ駄目だよ!」
「えぇ…」

 リュークが私の肩に上着をかけ、見られまいと庇うようにしながら付いてきた。

「あ、サキちゃん!…とリュークさん…?」
「ラグトさんおはようございます」
「ラグト、絶対サキのこと守れよ。一人足りとも近づけさせるな」
「は、はい!了解です!」

 デート前に何この緊張感。

「もう、リューク!大丈夫だから!」
「心配なんだよぉ…」
「ありがとう!」

 リュークには戻って貰い、ラグトさんと向き合う。

「サキちゃん…ヤバい…」
「どうですか…?」

 茶色のチェックとリボンのワンピースに白いふわふわのボレロ。
 自分で選んでいないのに、私好みの服を用意してくれているのが嬉しい。誰が選んでくれているのだろうか。

「凄く…可愛い。ちょっと抱きしめてもいい?」
「ふふ、どうぞ」

 ラグトさんは感動したように、私を優しく抱きしめ顔を肩に埋める。

「俺の為に選んでくれたっていうのでもうめちゃくちゃ嬉しい」
「勿論です。イヤリングとも合わせてみました」
「ありがとう…!本当に似合ってる!」

 沢山褒めて貰って上機嫌で私は馬車に乗り込み、彼と共に寮を出発した。

「馬車だとゆったり過ごせて良いですね」
「うん、だいぶ時間もかかるし何しよかっか」
「じゃあゲームしましょう!」

 私が教えたゲームをしたり、お喋りしていると意外とあっという間に到着した。
 ブルージュという町は王都に近いこともあってとても栄えているそうだ。

「お疲れ様です、ありがとうございました。護衛もお願いします」
「はい!必ずお守り致します!」
「どこか寄りたいところがあれば声かけてくださいね」
「えっ、は、はい!」

 二人の団員には後ろから見守って貰い、早速町の中へ足を踏み入れる。

「わぁ…!大きい町ですね!」
「うん、アルデンの中でも有名な方なんだ。お店も色々あるけど、俺が居た時と変わってるかも。回って見てみようか」
「はい!」

 歩き出した私は後ろの二人を気にしながらも、そっとラグトさんの手を取る。

「!」
「い、イチャイチャすると夫婦だって分かるから安全らしいです」

 リュークとミスカさんの教えだと言うと、ラグトさんは面白そうに笑った。

「リュークさんはあれだけど、先輩真顔で言ってたでしょ」
「凄い真面目に言われました」
「はは、でも確かにそうだね」

 ラグトさんは「前散々見られたからこれくらいはもう気にならない」と成長した姿を見せてくれた。
 …結果的には良かったのかな?

 背の高い建物が並ぶ通りには多くの人が歩いているのだが、私たちは誰にもぶつかることなくスムーズに前へ進んでいる。
 …歩きやすいから何でもいっか。
 周りからの視線も気にしないようにして、隣を歩く彼と、危なくないよう前方にのみ意識を向ける。

「あ、あの店覚えてる」
「黄色の看板のとこですか?」
「そうそう。俺が町出る少し前にちょうど店が出来てたんだ」

 そこはクレープやアイスなどがテイクアウト出来る店だった。

「サキちゃん、お腹空いてる?」
「結構空いてます」
「俺も」

 そうきたら食べるしか無い。列に並びメニューを決める。

「冬でもアイス売ってるんですね…」
「見ただけで寒くなってきた」

 護衛の二人に手招きすると、気づいてこちらにやって来る。

「どれか食べます?」
「お、俺たちもですか?」
「お肉の入ったクレープもありますよ」
「俺それが良い!」
「じゃあラグトさんはこれで」

 結局、二人もお肉のクレープを選んで私だけチョコと生クリームの甘いものにした。

「美味しいな、これ」
「初めて食べました!」

 団員たちも改めて町を見ることが少ないから、食べ歩きなどはした事ないそう。

「サキちゃん、一口食べる?」
「頂きます……ん!野菜も入ってて意外とさっぱりしてますね。私のもどうぞ」
「うん、甘いのもいいね!今度はそれにしよっかな」

 ペロリと食べ終えた頃、ちょうど通りがかったパン屋に目が行く。

「「…」」
「せっかくだしね!」
「そうですね!」

 今食べる分一つを買うつもりがどれも美味しそうで迷ってしまい、結局持ち帰りでいっぱい買ってしまった。

「どれにしよっかな…」
「お二人も今一つ要りますか?」
「これオススメって書いてあったっすよ」
「あ、じゃあそれ貰おうかな」
「僕甘いのが良いです」

 四人とも再びモグモグしている中、護衛二人は前を歩く夫婦を微笑ましく見ていた。

「なんか俺たち役得じゃね?今のところただ飯奢ってもらってるだけなんだけど」
「ほんとですね。ラグトで良かった…他の人たちはちょっと…」
「団長とミスカさんはさりげなく距離取って、リュークさんは普通に文句言ってきて、ヴェルストリアは…想像がつかん」
「はぁ…羨ましいなぁって思うんですけど、サキさんの優しさに触れてしまったから、もし普通の女性と結婚出来るってなっても喜べない気がします…」
「ほんとだなぁ…」

 そんな会話も知らず、私はパンも食べ終えお腹が良い感じに満たされていた。
 ふと、目に留まったのは可愛らしいワンピースが飾られているショーウィンドウ。

「あそこはお洋服売ってるのかな、見ても良いですか?」
「うん!あ、でも…」

 入ったそのお店はお高めな女性用の洋服店だった。

「わぁ、いっぱいある!これとか可愛い!あれ、でもサイズが無い」

 どれを見ても何故だか大きめのサイズしか売られていない。

「えと…サキちゃんが細すぎるから、そもそも合うサイズの服っていうのが売ってないと思う…」
「え!?でも最初に用意してくれた服は結構ピッタリの物もありましたよ」

 最初貰った皆と同じシャツ、ズボンと下着は色んなサイズのものが入ってて、私に合うものを着てくれってことなんだと思う。

「先輩から聞いたんだけど、サキちゃんの物買うってなって、全部ログさん任せだったんだ。あの人奥さんと凄く仲が良いから色々聞いて考えてくれたみたいだよ」

 そうなんだぁ…。その後サイズが分かってからは可愛い服も貰ったけど、奥さんセレクトだったのかな。

「サイズはログさんのとこの旦那さんが仕立屋やってるからそこで合わせて用意してくれたらしくて、サキちゃんが今着てる服は多分…オーダーメイドかな」
「おーだーめいど…」

 そんなに私のサイズって無いんだ…確かに周りの女性は皆ふっくらしているなと思ってはいたけれど…。
 チラッとお店の可愛い服たちを見る。
 なんだか服一着買うだけでも結構大変になっちゃうんだなぁ…。今日いっぱい買うつもりだったのに。
 しゅんとした私の様子を見たラグトさんは明るく声をかけてくれる。

「後で仕立屋行ってみよっか!今日すぐに買うのは無理だけど、こういうのが欲しいってお願いすれば作って貰えるし」
「本当ですか!」
「帰り道の途中ですぐ寄れるから。ここで色々お店見て欲しいの探してみよう!」
「はい…!」

 ラグトさんの機転のお陰ですっかり気分も取り戻し、通りがかる洋服店をいっぱい見て回った。

「これとかどうですか?」
「うん!もう少し暖かくなっても着れそうだね。この上着と合わせたら良いかも」
「凄く合いますね!着回しも出来そう!」

 ラグトさんはお洒落にとっても詳しくて、私の長々とした買い物を飽きるどころか一緒に楽しんでくれていた。

「ラグトさんがこんなに詳しいだなんて、ちょっとびっくりです」
「はは、昔から憧れはあったから。服って、色とか形の組み合わせのバランスだしね」

 ラグトさん製図とか得意そう…。
 彼は笑った後、少し言葉を詰まらせながら照れる。

「良かったらさ…俺の服も一緒に見てくれないかな」
「はい…!見たいです!」
「実は洋服店入ってみたかったんだ。昔はお洒落なんてしてもからかわれるだけだし意味無かったから」
「ラグトさん…。やりたいこと全部叶えましょう!今だから出来ることもありますし」
「今だから?」
「お金があるじゃないですか」

 キリッとキメて言うと彼は吹き出した。

「あはは!ほんとだね、お金…はは、サキちゃん面白い…」
「ふふ…ありがとうございます」

 しばらく探していると男性用の洋服店を見つけたので早速入ってみる。

「結構広いですね!」
「うん…!あ、そっちのほう見てもいい?」
「はい!」

 はしゃぐ彼に私もついていく。

「シャツも色んな種類あるんだなぁ」
「でも、どれも丈が短い気がするんですけど…」
「これが普通だよ。俺は背が高いからちょっと…足りなかったりするかも」

 そっか、背が低くて横に大きい人が多いから大きさは合うけど丈が合わないんだ。

「もしかしてズボンも…」
「…そうだね」

 手に取り彼に合わせてみると、膝下丈くらい。

「これはこれでラフでいい感じですね」
「え、脚見えても良いの?」
「夏とかは肌出てたほうが涼しげじゃないですか?」
「そうなんだ…」

 しかし今は冬なので暖かい長ズボンが良いだろう。
 うーん、丈が短い…。

「あの、トップスは丈が短くても良いんじゃないでしょうか」
「え、でも変になる気がするけど…」

 ラグトさんを鏡の前に連れて行き、ハイネックニットの一番大きいサイズをあてる。

「横はだいぶゆとりがあって、丈のここの足りない分はズボンのウエストを高くすればちゃんと隠れます」
「ズボンの…股の上が高いデザインにするってこと?」
「そうです!腰の部分を太いベルトみたいにして」

 ハイウエストにすれば脚長効果もあるし!充分脚長いけど。

「上が短くて下が長い…面白いね!サキちゃん凄い!」
「いえ…受け売りというか…」

 向こうでは当たり前だったのです。偉そうに言ってしまってすみません…。

「トップスだけ買って、ズボンは私と一緒にオーダーしたらどうですか?」
「そうしようかな!」
「はい!せっかくなら上着も見ましょう!」

 私も随分はしゃいでしまって、彼の手を引いて店内を駆け巡る。

「これなら丈は足りてますね」
「結構ブカブカじゃない?」
「オーバーサイズだと思えばいい感じです!今履いてるズボンともピッタリですし」
「ほんと!今着てても良いかな」
「はい!じゃあ靴も合わせましょう!」

 しかし、流石にはしゃぎ過ぎているのではと我に返り不安になってラグトさんを見ると、彼は凄く嬉しそうに笑った。

「サキちゃんと一緒に見るの楽し過ぎる!」
「っ…」

 屈託のないその笑顔は輝いていて、堪らなくって思わず顔を近づけ頬にキスをした。

「ラグトさん大好き」
「えっ、ありがとう…」

 お互い真っ赤になりながら上着に合わせて靴も選び、やっとお会計をする。

「お二人はご夫婦ですかな」
「は、はい!夫婦…です」

 改めて言うの恥ずかしいな…。

「とても仲が良さそうで。沢山お買い上げして頂きましたし、良ければおまけも付けましょうか」
「えっ、ありがとうございます!」

 店主のおじいさんはアクセサリーを一つ袋に入れてくれた。

「またいつでもいらして下さい」
「はい!ありがとうございました!」

 お店から出て顔を見合わせる。

「凄く良い人でしたね!品揃えも良かったですし」
「初めての買い物でこんな良い店に出会えるなんて、サキちゃんのお陰だね」
「ふふ、こっちの道で正解だったかも」

 人の少ない路地に移動し、タグを切って貰った上着と靴に着替える。

「どう?」
「カッコいい!!似合いすぎ!!」
「そ、そんなに?」

 黒騎士団の白シャツと黒ズボンは変わらず、上着は茶色のオーバーサイズのジャケットと、靴は上に合わせてごつめに黒色のコンバットブーツ。

「さっき貰ったアクセサリーも付けてみようかな…。あ、ブレスレットだ!」

 上着に合った茶色のレザーブレスレットも付けたら、もう完璧すぎる。

「ラグトさんカッコいい…なんでそんなにカッコいいんですか…?」
「はは、サキちゃんが傍に居てくれるからだよ」
「セリフまでカッコいい!」

 語彙力が飛んで「カッコいい」しか出てこないので、ジロジロ眺めて堪能したあとようやく路地から出る。

「えっ!ラグトが服着てる!」
「いや、服は最初から着てるっすよ…」

 護衛の二人が凄い驚いている。

「カッコいいですよね!茶色の上着をメインに小物はシルバーでまとめて、上はゆったりとしていますけど細身のパンツでスラッとしたスタイルはそのままで、大きめのブーツでより足長効果もありラグトさんの身長と体格が存分に活かされている、ラグトさんが誰よりも世界で一番似合っているコーデです!」
「はい…そう、ですね…」
「熱量がいつもの二倍くらいな気がする」
「サキちゃんと色一緒だもんねー」
「ねー!」

 ウキウキルンルンな私たちは腕を組んでまた町を歩き出した。
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